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◆第3回
空を飛ぶ船・ローアがプププランドに墜落(ついらく)。ローアに乗っていた旅人マホロアは、故郷に帰れなくなってしまった。
カービィ、デデデ大王、バンダナワドルディ、メタナイトは、ポップスターに落ちてしまったローアのパーツを集めに行くことに。
すると、カービィたちに声をかけてくる住民がいて……?
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パーツを探せ!
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カービィたちが、ローアをはなれて歩き出すと、すぐに声をかけられた。
「あ、いたいた! おーい、カービィ!」
駆け寄ってきたのは、プププランドの住民の一人、バーニンレオだった。
「探したぜ。大事件が起きたんだ!」
カービィを押しのけて、デデデ大王が勢いこんだ。
「ひょっとして、空から落ちてきた船のことか?」
バーニンレオは、興奮(こうふん)したようにうなずいた。
「それ、それ! でっかくて、ピカピカ光る物が、北の森に落ちてきたんだ。なんだかわからなくて、みんな困ってる。来てくれよ!」
「よーし、オレ様にまかせろ!」
デデデ大王は、張り切って走り出した。
バーニンレオに案内されて、一行が向かったのは、ローアの墜落(ついらく)地点の北に広がった森の中。
住民たちが、光る物体を取り巻いて、さわいでいた。
「なんだろ、あれ? でっかい、おしゃもじかな?」
「あんな大きなおしゃもじを使うのは、カービィぐらいなもんだぜ」
「すべり台じゃないかな? ツルツルして、よくすべりそうだもん」
ワイワイ言い合っているが、だれも、近づこうとはしない。みんな、正体のわからない物体を、こわがっているのだ。
それは、長い棒と板を組み合わせたような、ふしぎな形をしていた。しかも、内側から、ほんのりと青白い光を放っている。このプププランドでは、誰も見たことのない物だ。
そこへ、デデデ大王を先頭に、一行がやって来た。
「お、早速、見つけたぞ! あれが、ローアのパーツとやらだな!」
大王は、集まった住民たちをかき分けて、近づこうとした。
キャピィが、心配そうに止めた。
「デデデ大王、さわらないほうがいいよ。あれ、空から降ってきたんだ。やけどするかもしれない。あぶないよ」
「ははは! オレ様は、やけどなんか、少しもおそれんのだ!」
そう言いながらも、デデデ大王は慎重(しんちょう)にパーツに歩み寄り、ガウンのそでを伸ばして手をくるんでから、おそるおそる、つついてみた。
幸い、熱くはなかった。デデデ大王は胸を張って、さけんだ。
「一つ目のパーツを発見したぞ! これは、えーと、ローアのおしゃもじ……」
「オールだな」
追いついたメタナイトが、じっくりとパーツを観察(かんさつ)しながら言った。
「船を前進させるためのパーツだ。このようなパーツを使って宇宙空間を航行(こうこう)するとは、あのローアという船の構造は、わが戦艦ハルバードとは根本的に違っているようだ。実に興味深い」
「フ、フン! オレ様も、そう言おうと思っていたのだ」
デデデ大王は、もったいぶった表情で、うなずいた。
カービィが、オールにぴょこんと飛び乗ってさけんだ。
「これが、ローアのオール? 大きいなあ。それに、キラキラしていて、すごくきれい!」
メタナイトが、オールに歩み寄って、うなずいた。
「うむ。船体からもぎ取られてはいるが、その他には目立った傷がない。非常にかたい材質で作られていることがわかる。さすがは、古代文明ハルカンドラの産物だな」
「フン! オレ様もそう思っていたわい」
デデデ大王は、ブツブツ言った。
バンダナワドルディが、周囲をきょろきょろ見回して、さけんだ。
「あ、大王様! あそこに、何かが落ちています!」
「なに?」
バンダナワドルディは走って行き、草の上に落ちていた物を拾い上げた。
ほんのりと、青白い光を放つ球の中に、金色の歯車が収まっている。
バンダナワドルディは急いで駆けもどり、それをデデデ大王に渡した。
「マホロアが言ってた『歯車』……エナジースフィアじゃないでしょうか?」
「そのようだな」
デデデ大王は、エナジースフィアを指でつまみ、光にかざしてみた。
エナジースフィアは、陽光(ようこう)をすいこんだかのように、キラキラと輝いた。
「こんな小さな部品なのに、強いエネルギーを感じるぞ……おい、みんな」
デデデ大王は、周囲(しゅうい)の住民たちに命じた。
「これと同じ歯車が、他にも落ちているはずだ。探すのだ!」
「……ええ?」
「なんで、オレたちが?」
住民たちは、不服(ふふく)そうに文句を言った。
けれど、カービィが張り切ってさけんだ。
「よーし、競争しようよ! ぼくが一番たくさん、歯車を集めるぞ!」
これを聞くと、負けずぎらいのバーニンレオやナックルジョーのたましいに火がついた。
「なに? カービィには負けられないぜ!」
「いやいや! 俺が一番っス!」
草むらをかき分け始めたカービィたちを見て、他の住民たちは、顔を見合わせた。
デデデ大王の命令に従うのは気が進まないが、探しもの競争となれば、話は別。楽しそうだ。
そもそも、プププランドの住民たちはみんな、楽しいことが大好き。わいわいさわぎながら、歯車探しに加わった。
「あったぁ! 見つけたぞ!」
「へへっ、こっちにも!」
「やった! オレは二個見つけたぜ!」
まもなく、デデデ大王の前に、いくつもの歯車がつみ上げられた。
大王はニコニコしながら、歯車を数え上げた。
「一つ、二つ……十二、十三……二十二、二十三、二十四!」
大王は、住民たちを見回して言った。
「二十四個。もう、落ちていないか? 見落とすんじゃないぞ。一つ残らず、探し出すのだ!」
「それで全部だよ」
頭上から、声が降ってきた。
「……む?」
デデデ大王は、顔を上げた。
声の主(ぬし)は、ウィスピーウッズだった。
ウィスピーウッズはプププランドの住民で、目と鼻と口をもつ巨木(きょぼく)だ。動くことができないので、みんなの歯車探しをたいくつそうにながめていたのだが、とつぜん、口を開いたのだった。
「なんだと?」
「このあたりには、もう落ちてないよ。上から見りゃわかる」
住民たちの中でも、ぬきん出て背が高いウィスピーウッズのことだ。彼なら、このあたりに落ちている物を見逃すことはないだろう。
カービィが、たずねた。
「ウィスピーウッズ、他のパーツを知らない? 全部で、五つのパーツが落ちてきたはずなんだけど」
「この森に落ちたのは、それだけだよ」
ウィスピーウッズは答えた。
「オレ、船が落ちて来るのをずっと見てたんだ。この森に落ちてきたのは、それだけだ。あとのパーツは、四方八方(しほうはっぽう)に散らばっちゃったよ」
「四方八方(しほうはっぽう)って?」
「一つは、東のほう。たぶん、遺跡(いせき)のあるあたりだね。もう一つは、南の海のほうだよ。あとの二つは西に落ちたみたいだけど、とちゅうで見えなくなっちゃったから、よくわからない」
「むむむ……」
デデデ大王は、むずかしい顔になった。
「ずいぶん遠くまで散らばったようだな。やっかいな……」
メタナイトが言った。
「ひとまず、このオールとエナジースフィアをマホロアに届けよう」
「うむ。こんなに早く部品が見つかって、あいつ、びっくりするだろうな!」
大王の指示で、地面にめりこんでいたオールが掘り出された。
カービィ、デデデ大王、メタナイト、バンダナワドルディの四人は、力を合わせて巨大なオールをかつぎ上げ、ローアへ戻った。
さっそく、ひとつめのパーツと、エナジースフィアを見つけたカービィたち。
ウィスピーウッズのおかげで、のこりのパーツがどこに落ちたのかも判明(はんめい)!
カービィたちのパーツ探しの冒険が、いよいよ始まります!
『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』れんさい第4回(4月15日更新予定)に続く
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書籍情報
あくびが出るほど平和な、プププランドの昼下がり。
ショートケーキを持って仲良くピクニックをしようとしていたカービィ、デデデ大王、バンダナワドルディそしてメタナイトの目の前で、晴れた青い空を切り裂いて、突如、巨大な船が落ちてきた。
ふしぎな光につつまれた、その船の名は――ローア。
すでに滅びた超古代文明ハルカンドラが生み出した、奇跡の船。
カービィたちは、船の持ち主だという旅人マホロアに助けを求められ、墜落とともに失われてしまった、船のパーツを探すことになった。
遺跡や海の底に雪の中…そして異空間をかけめぐる、大冒険が始まる!
【解説:熊崎信也「星のカービィ」シリーズ ゼネラルディレクター】
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