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想いをこめて作ったチョコは、「バレンタイン禁止令」によって没収(ぼっしゅう)されてしまった……。
そうしてむかえた放課後と、部活は……?
*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*
♪渡せなかったチョコ
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バレンタイン禁止令の影響か、部活はなんの問題もなく、おだやかに終わった。
部室に詰めかけるファンもいなかったし、こっそりチョコを渡す部員もいなかったみたい。
でも、さすがにいつもどおりというわけはなくて。
「おつかれさまです……」
「おつかれさま……」
まるでおそうしきのように、女子はみんな、ずーんと落ちこんでる。
2年生や3年生の女子の先輩も、さっこも加代ちゃんも。
そして崎山くんまで。
崎山くんは、みんなからもらった大量のチョコだけじゃなくて、伊吹先輩に渡そうと思ってた本命チョコも没収されちゃったのかな。
もちろん、私も納得してチョコを提出したけれど、やっぱりショックが消えない。
がんばって作った生チョコを渡せないことも悲しいけれど……。
今は、それ以上につらいことがある。
「おつかれさま、伊吹。今日も残って練習するの?」
「ああ、少しだけしていく」
「ソロコンテストの県大会、近いもんね。がんばって」
「ありがとな」
高田先輩と会話をする伊吹先輩が、すごくホッとした顔をしてるんだ。
伊吹先輩は、バレンタイン禁止令が出て、よかったって思ってるみたい。
それって、チョコをもらいたい人がいないってことだよね。
チョコを渡せてないのに、いらないって言われちゃった気分だよ。
伊吹先輩は、私に『恋愛対象じゃないなんて、言ってないだろ』って言ってくれた。
先輩のこと、『好きでいたらダメ』とも言わなかった。
でも、それって……。
イコール『特別』ってわけじゃない。
みんなと同じ、恋のスタートラインに立ってるってだけだ。
音楽準備室から、伊吹先輩のトランペットの音色が聞こえてくる。
いつもと変わらない、美しい演奏。
先輩にとっては、バレンタインはドキドキわくわくする日ではなくて、ただただ迷惑な日なんだろうな……。
私もチョコを渡していたら、迷惑をかけていたかもしれない。
「これでよかったんだよ……」
楽器を片づけて、帰る準備をしながら、私は自分をはげました。
ムリヤリ自分を納得させて、前を向こうとするさくら。
さくらと同じように、伊吹先輩にチョコを渡せなくて落ち込んでいる人はほかにもいて……?
次回、「あのひと」のようすにせまります!!!
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…チョコが、渡せない!?
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恋の『終わり』まで、あと少し。大注目の第7巻です!