角川つばさ文庫の人気シリーズ『神スキル!!!』最新8巻が、【さし絵ぜんぶカラー】のトクベツ版で7月8日(水)に発売! 発売前にドドンとイラストつきで、ためし読みしちゃおう!
めちゃくちゃすごい能力〈神スキル〉を持った神木三きょうだいは、豪華客船で二泊三日の旅へ!
海上プールや夕食ビュッフェで、特別な夏休み♪ になるはずが……朝陽たちの正体をうたがう宮野警部と再会!? しかも船上のシークレット・パーティーで3億円の王冠がねらわれて……長男・星夜のようすもどこかおかしい?
海の上で大ピンチ! 王冠もスキルのヒミツも、きょうだいのきずなも守り抜け! 波乱の豪華客船出港――!(9月30日(水)23:59まで公開)
『神スキル!!! 夏休みはきらめく豪華客船!?』
(大空なつき・作 アルセチカ・絵)
7月8日発売予定
※これまでのお話はコチラから
◆4 船内探検は出会いの予感?
……おれたちの船の旅、もしかして呪われてる?
部屋で元の服に着替えたあと、ふたたび通路へとくりだしながら、まひるが言った。
「えへへ、ごめんごめん! まさか、こんなことになるなんて。それにしても、スキルで視た海の中はきれいだったなあ。いろんな魚が泳いでて、深くて……ここで、まひるの豆知識!」
ここで!? しかも、二回目!
「海の深さの平均は、約三八〇〇メートル。三七七六メートルの富士山が丸ごと沈んじゃうような海がたくさんあるの。陸地を削って海をうめようとしても、ぜんぜん足りないんだから」
「えっ、海ってそんなに深いの? じゃあ、この船の下も富士山くらい深い可能性も……」
そう考えてたら、なんだか、こわくなってきた!
星夜が笑った。
「さあ、気を取りなおして船内探検に戻ろう。ハル兄に見せる写真も、まだまだ足りないしな」
あ、そうだった! さすがにプールの写真だけじゃ、カタログにならないか。
三人でエレベーターに乗りこむと、まひるが、五階のボタンをすぐに押す。
「じゃあ、乗客が入れる一番下のフロア、五階から順番に船の中を回っていこう。はい、これ。二人の分の船内マップと、船内新聞も持ってきたよ」
まひるが、おれと星夜に、手早く二枚の紙を渡す。
さすが、まひる。準備がいい。さっきプールでおぼれてた人と同一人物とは思えない!
「ん? まひる、この船内新聞って何? いろんな予定が書いてあるけど」
「船内新聞は、船の情報をお知らせする新聞なの。何時からどこでどんなイベントがあるかとか、船でのおすすめの過ごし方とかね」
「へえ。専用の新聞まであるんだ。豪華客船って、すごいな」
「こっちは、船内マップね。このクリスタル・ダイヤ号で乗客が自由に移動できるのは、五階から十三階までなの。船の全長が二百メートルあるから、ぜんぶ歩くと一.八キロはあるかな。すごいでしょ」
星夜も、マップを広げる。中には、船の形をした各フロアの図が、ずらりとのっていた。
「一.八キロか。軽い散歩にちょうどいいな。フロアの中身は、それぞれどうなってるんだ?」
「おおまかに言うと、八階から十一階が客室、他のフロアが施設かな。もちろんカンペキには分かれてないけどね。スペシャルなスイートルームは、十二階にあるし――あ、着いた!」
エレベーターから降りると、船に入ったときに通った大きなロビーに出る。あのときは空いていたソファも今は満席で、たくさんの人があちこちで楽しそうにおしゃべりしていた。
演奏してた人たちは、いなくなってるな。
まひるが、スマホで写真を撮りながら言った。
「ここは、メインのロビーね。ハル兄がいる医務室は、この奥。反対側には、夕食会場があるよ。おいしいものが食べ放題の、スペシャルビュッフェ!」
「えっ、ビュッフェ? 今すぐ行きたい!」
早めに行けば、料理の近くのいい席が取れるかも!?
「さすがに早すぎ! 開くのは夕方だから。ま、でも、朝陽の気持ちはわかるし、わたしもさっき飲み物をゲットしそこねちゃったから……あ・そ・こ!」
まひるが、ロビーの横をビシッと指さすと、大きなガラスケースの奥に立っていたスタッフが、ほほ笑む。
「いらっしゃいませ。クリスタル・ダイヤ号の限定アイスはいかがですか? 全二十種類、毎日食べてもあきませんよ。もちろん、何個でも無料です」
「何個でも!?」
タダ、最高!
大きなケースにかけよって中をのぞくと、色とりどりのアイスが目に飛びこんでくる。
バニラ、チョコミント、ストロベリー――。
くだものがそのまま入った豪華なものや、シャーベットもある。まるで、アイスの宝石箱だ。
これ、ぜんぶ食べていいの
「うっ、めっちゃ迷う! 今、今日の夜、明日の朝昼夜、あさっての朝……三つずつ食べてもまだ十八種類? あ、明日のおやつと、最終日に船を降りるときにプラス一つ食べれば――」
「朝陽、全種類食べるの!? 二人目の医務室送り、決定っと。わたしは、どれにしようかな……あ、マシュマロ入りのストロベリーがある~! すみませんこれと、キャラメルを、カップでお願いします!」
「あー、おれが先に頼むつもりだったのに! ええっと、おれはコーンで、マンゴーのシャーベットと、チョコチップと、チョコレートをお願いします。ちなみに、チョコが一番下で!」
「オレは、カップで……ブルーベリーのシャーベットをお願いします。それと、黒糖も」
「「黒糖!?」」
そんなアイスあるの? 星夜、しぶっ!
「二個、三個、二個ですね。少々お待ちください」
スタッフさんが笑いながら、取りだしたカップに、アイスをリズムよくのせていく。
まひるの次は、おれの分。茶色、白黒――真ん丸なアイスがコーンにつぎつぎ積みあげられる。
最後にマンゴーのオレンジ色がのったら、完成!
受けとったコーンの上で、三色のアイスがキラキラと輝く。
最後に星夜がアイスを受けとれば、食べる準備はかんぺきだ。
せーのっ。
「「「いただきまーす!」」」
シャクッ
一番上のマンゴーシャーベットにかぶりついた瞬間、口の中で濃厚なあまみがとろける。
んんっ、おいしい。本物のマンゴーを食べてるみたいだ!
まひるも、スプーンを持ったまま、ふくらませたほっぺにパッと手を当てた。
「あまずっぱくって、おいし~い! これ、本物のいちごを使ってる。なめらかなアイスとふわふわなマシュマロの組みあわせが、新食感でたまらない!」
「オレの黒糖も、おいしいな。コクのあるあまみがする。しつこくないけど、しっかり濃厚で、後味がくせになりそうな……まひる、あそこは何だ?」
星夜が、アイスを持ったまま、ロビーからのびる階段の上を指さす。
まばゆいライトの向こうに見えるのは、大きくて高級そうなソファと、いくつもの本棚だ。
すごい。床から天井まで、びっしり本が並んでる。本でできた秘密の部屋みたいだな。
「ああ。あそこは六階の図書室ね。小説から図鑑、解説書まで、海や船に関する本が集められてるんだって。本屋さんや街の図書館じゃ見つけられない貴重な本もあるみたいだよ」
「そういえば、パンフレットにも書いてあったな……」
星夜が、本棚に目を向けたまま、ぽつりとつぶやく。
もう、完全に集中してる。手にアイスを持ってること、忘れてない?
「せ・い・や」
「あ、ああ。悪い、ぼうっとしてた。次に行くか。まだ上にも、見たいフロアがたくさんあるだろ?」
はー、おれたちにまで、気をつかわなくていいのに。
おれは、星夜の背中をトントンと軽くたたいた。
「星夜、いいよ。ここで本を読んでたら? 船内探検は、おれとまひるでやっとくから」
「いや、でも……」
まひるも、アイスをほおばりながら言った。
「そんなの、気にするわけないじゃない。星夜はいつもみんなに気をつかってるから、こういうときこそゆっくりしないとね。キリがいいところで部屋に戻ってきて。ね?」
「……わかった。ありがとう」
星夜は、おれとまひるにうなずくと、先に階段を上りはじめる。
まさかプールに続いて、船内探検でも読書するなんて。星夜って、本当に本が好きだよな。
でも……。
まひると階段をのぼりながら上を見ると、星夜は、もう本棚の前で本を選んでいる。
星夜は、背表紙を一冊一冊じっくり眺めた後、一冊の本を抜きだし、テーブルにアイスを置いて、そっと本を開く。窓から差しこんだ光が、かすかにほほ笑む星夜をやさしく照らした。
……のびのびしてる。うれしそうな星夜を見ると、おれもうれしくなるな。
トントンとさらに階段を上ると、すぐに七階に着く。
少しせまい通路。その左右にあるいくつかの部屋の外は、デッキになっているみたいだ。
「あ~っ!」
突然、まひるが大声を上げながら、ガラス張りの部屋を指さす。
あそこは、イベントスペース? 船員とお客さんが集まって、何かやってるみたいだ。
看板がある……〈ロープワークでステキなアイテムを作ろう〉?
「開始時間を、すっかり忘れてた! 朝陽、わたし、このイベントに参加したかったの。今から行ってきてもいい!?」
「えっ! それ、どれくらいかかるの?」
「えーっと……たしか、三十分、一時間……一時間半くらいカナ~?」
めっちゃ目そらしてる!
おれはまだ返事してないのに、まひるの体は少しずつイベントスペースに引きよせられていく。
「じゃ、じゃあ、また後でね、朝陽。このイベントの写真は、わたしがしっかり撮ってくるから!」
「あ、まひる!」
まひるがイベントスペースに勢いよく飛びこむと、静けさが、おれを包みこんだ。
……えーっと、つまり、残ったのは、おれ一人?
「あーもう!」
まさか、こんなにあっさり一人になるなんて! もしかして、うちの家族って全員自由人?
「ま、でもしょうがないよな。この船、気になるところがいっぱいあるしさ」
それに、一人で船をめぐるって、いかにも探検っぽい。
ここから、おれだけの旅が始まるかも!
「さてと。それじゃあ、どこに行こうかな。今いるのは、七階だったっけ?」
まだ見てないところが、たくさんあるな。
五階のショップも見てないし、六階にもシアターや小さなレストランがあって――。
「うーん。レストランめぐりをしてもいいけど、まだアイスがあるしなあ。ゲームコーナーは、だれかといっしょのほうが楽しいし……」
マップを目で追っていると、重ねて持っていた船内新聞の記事が目に入る。
『船の楽しみ方はいろいろありますが、
ひそかなオススメは〈お気に入りの場所を作ること〉。
自分だけのお気に入りの場所ができると、船の旅が一段グレードアップしますよ』
「……おもしろそう!」
お気に入りの場所って、なんだか秘密基地みたいでいい。
それに、とびきりの場所を見つけられたら、みんなをびっくりさせられるよな。
でも、どんなところがいいだろ? やっぱり、海が見えて、潮風を感じられて……。
「そうなると、外? この船で外に出られるのは、十三階の展望デッキと、十二階のプール、今いる七階のランニングコースにもなるデッキに……」
ドアから、ちらりと外を見ると、広いデッキに集まったたくさんの人が見えた。
「ここ、救命ボートがあるデッキだっけ。ここも気持ちよさそうだけど、ちょっと人が多いな。とびきりの場所にはしづらいかも。ええっと、他に外に出られるのは――」
あ、十一階にもデッキがある。
しかも、船の後ろのほう。左右に分かれて伸びた二つの通路の先に、小さなスペースがある。
「……ここに行ってみよう」
エレベーターで一気に十一階に上がって外へ出る。
足の下でギシッと音がする。少しせまいけれど、立派な木製のデッキだ。
船を縁どるように伸びた通路が、そのままデッキになっている。人も少ない。
――ここなら、いい場所が見つかりそう。
どこまでも広がる海を見ながら、ゆっくり歩く。
細くなった通路を抜けて、船の一番後ろのスペースまで来ると、もうだれもいない。
ただ、いくつかのイスとテーブルがあるだけだ。
ボボボボボボ…… ザアアッ……
すみのイスに座って目を閉じると、船のエンジン音と波の音だけが聞こえる。
……まるで、おれ自身が船になって、海に揺られてるみたい。
「ふう~~~~」
なんだか、落ちつくな。
さっきまでのドキドキがウソみたいだ。これが、お気に入りの場所の効果なのかも……。
…………ッ …………
「……ん?」
音がする。
船の音でも波の音でもない。高くなったり低くなったり。
なめらかで、やさしくて、まるで心にしみわたるような――。
「……バイオリン!」
ガタン!
目を開けて立ちあがった瞬間、音がぴたりと止まる。
近くにいるのは一人だけ。バイオリンを構えた、少しはねた髪の若い男の人だ。
「あっ」
あの人――船に乗ったとき、ロビーでバイオリンを演奏してた人だ!
今の演奏は、あの人が? ……もしかして、おれ、思いっきりジャマした!?
あやまろうとした瞬間、男の人が、あわててテーブルの上のファイルをつかんだ。
「すみません! お客さんがいるとは思ってなくて。すぐに片づけ、わっ!」
ごうっ!
突然、強い海風が吹きつけて、男の人の手から三枚の紙が舞いあがる。
音符が書いてある。楽譜? すごい書きこみの量!
もしかして、大事なもの!?
「ああっ!」
――取らなきゃ!
反射的に、風に乗った紙を追って、全速力で走りだす。
走りながら一枚目を捕まえ、スライディングで二枚目をキャッチすると、さっと顔を上げた。
あと一枚は!?
頭上で、白い楽譜がきらりとひらめく。
あんなところに!?
このままじゃ海に落ちる!
「っつ!」
ぐっとひざを曲げて力をため、上へと跳びあがる。伸ばした手の指先は、楽譜まで――。
あと三センチ、届かない!
力をこめた目でひらめく紙をにらんだ瞬間、スキルを使う感覚が首の後ろにぞわりと走る。
風に逆らって……引きよせる!
ぐいっ
まるでつながった糸にでも引っぱられるように、楽譜がおれの手の中へすべりこむ。
取った!
「お兄さん、これ――」
「あぶない、上!」
え、上?
空を見あげると、何かがくるくると回転しながら、おれのほうに落ちてくる。
真ん丸の茶色い物体と、とがったコーン――アイス!?
さっき、とっさに残ってたアイスを上に投げてた!
もちろん、楽譜を持ったまま、スキルでアイスを宙に浮かせることはできる。できるけど――。
目の前に人がいる今は、そんなことできないって~~~~!
さよなら、おれのアイス‼
べちゃっ
顔に直撃したチョコアイスで、目の前が茶色に染まった瞬間、お兄さんのとまどったような声が聞こえた。
「ええっと……だ、だいじょうぶ?」
「……ダイジョウブ」
やっぱり、おれたちの船旅、呪われてない?
おれはぎこちなく返事しながら、たれてきたチョコアイスをぺろりとなめた。
★<ためしよみ・第5回>へ続く★
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