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ものがたり

第5回 「立ちはだかるメニュー」/『神スキル!!!』最新7巻・試し読み

特殊能力を持った三きょうだいが、人知れず、困っている人を救う!
角川つばさ文庫の人気シリーズ『神スキル!!!』最新7巻が、もうすぐ発売☆
発売前にドドンとイラストつきで、試し読みしちゃおう!
(公開期限:2026年2月27日(金)23:59まで)


めちゃくちゃすごい能力〈神スキル〉を持った神木三きょうだいが通う学園で、文化祭が開幕! お化け屋敷、占い、カフェに演劇……出し物の準備でトラブル続出!? なにより、まひるが実行委員の先輩に恋しちゃった! そんななか、売上金がねらわれて……犯人を追いかけるまひるが大ピンチ。いったいどうなっちゃうの!?



『神スキル!!! ようこそ! 恋とあらしの文化祭』
(大空なつき・作 アルセチカ・絵)
1月7日発売予定!



人物紹介


目次


 5 立ちはだかるメニュー


 放課後の、調理実習室。

 おれ、朝陽(あさひ)は、家庭科で作ったエプロン姿で、キラキラと目を輝かせた。

 目の前の大きな台には、小麦粉や牛乳。

 何より……おれの大好きな板チョコがある!

 ――ついに、やってきた。準備で一番楽しみにしてた、この時間。

 ホワイトボードの前に立った久遠(くおん)さんが、集まったみんなに向かって宣言する。

「それじゃあ、六年二組スイーツカフェ、メニューの試食会を始めます!」

「おー!」

 みんなで、ガッツポーズする。

 学級委員の中村(なかむら)さんに良介(りょうすけ)、陸上クラブの高坂(こうさか)さん、料理好きの男子と女子、ぜんぶで十人が集まっている。全員、色とりどりのエプロンと三角巾をつけて、気合い十分だ。

 久遠さんが、言った。

「今から、あらかじめ話しあって決めていた、スコーンと紅茶を作ります。レシピの確認もかねているから、気づいたことがあったら教えてね。協力してがんばろう」

 そのとき、いなずま柄のエプロンをつけた良介が言った。

「そういえば、今日のレシピは朝陽が準備してきてくれたんだっけ。スコーンって、どんなお菓子なんだ?」

「わたしも、食べたことないかも」「クッキーみたいなお菓子?」

 待ってました!

 おれは、自慢げにピンと人差し指を立てた。

「スコーンは、紅茶によく合うイギリスのお菓子なんだ。材料を混ぜて焼くだけでできて、紅茶といっしょに出すと、ぐっと雰囲気が出る! 何よりおいしいんだ」

 ぜんぶ、ハル兄の受け売りだけど。

「いろんな材料を足せば味のバリエーションも作れるから、今回は、チョコを入れたチョコスコーンのレシピを持ってきたんだ。やっぱり、いろんな人がおいしいと思うものがいいしさ」

「それ、朝陽くんがチョコ好きだからじゃない?」

 高坂さんの言葉に、みんなが明るくうなずく。

 あれ、もしかして、おれのチョコ好きってみんなにバレてる

 久遠さんも、おかしそうに、くすっと笑った。

「じゃあ、調理スタート! 困ったことがあったら、なんでも言って。まずは計量からかな」

「オーケー!」「はかり、ここにあるよー」

 みんながさっと動きだすと、あちこちでカチャカチャと調理器具がふれあう音がする。

 あ~、完成が楽しみ! おれも、早く作りはじめようっと。

 まず、軽量カップとはかりを準備して――。

「ええっと、牛乳百グラムに、お酢を十グラム……」

 薄力粉三百グラム、グラニュー糖三十五グラムに、ベーキングパウダー、十グラム。

 塩一・五グラムに、冷たいバターが百グラム……。

「あー、一個一個、はかるのが大変!」

 でも、量は間違わないようにって、ハル兄に念を押されたんだっけ。

 中村さんが、はかりおえた材料を調理台に並べながら言う。

「朝陽くん、もう混ぜていいんだよね? 何か、コツはある?」

「ええっと、牛乳はお酢と混ぜて、十五分くらい置いておいて。そうすると、お酢が牛乳のタンパク質を変化させて、スコーンをふわっとさせるバターミルクの代わりになるんだ」

「お酢でそんなことができるの? すごい。不思議だね」

「まあね。その間に、他の材料をヘラでサクッと混ぜて、バターをできるだけ細かくして、全体をサラサラしたかんじに……」

「うわっ、バターが固い。もしかして、冷やしすぎた? とにかく、ぎゅうっと、うわっ!」

 ガタンッ!

 力のかけすぎで、材料を混ぜていた良介の手から、ボウルが飛びだす。

 そのまま調理台をすべった良介のボウルは、向かいにいた久遠さんのボウルに直撃した。

「あっ!」

 みんなの目の前で、久遠さんのボウルが調理台から宙へ飛びだしていく。

 あ~、このままだと真っ逆さま

「っ!」

 ボウルを鋭くにらんだ瞬間、首の後ろをぞわりと独特の感触が走る。

 ――間に合え!

 クルッ ――ぐわん、ぐわんぐわん

 ひっくりかえった中身をスキルで押さえながら、ボウルを一回転させて下に押さえこむ。

 形が丸いから、押さえにくいっ……集中!

 ぴたっ

 コマみたいに回ったボウルが、やっと床の上で動きを止める。

「……ふうっ」

 あっぶな! スキルが間に合ってよかった。あやうくスコーンの数が減るところだった――。

「なあ、朝陽……今、ボウルが空中で向きを変えなかったか?」

 ぎくっ

 良介、そこはツッコむな~! これは、クラスのみんなと、おれのおなかのためなんだから!

「さ、さあ? ほら、ボウルって丸いから、いい感じにくるくる回ったのかも! とにかく、混ぜよう。えーっと、でも、混ぜすぎない程度で!」

 あとは、さっき混ぜて置いておいた牛乳とお酢を、ボウルの中に入れる!

 トクトクトク

 全体に水分がいきわたるように、くるくると回しかける。

 ここに、くだいた板チョコを投入! 食べたとき、チョコのサイズがバラバラで楽しいんだ。

 さらに、ヘラでさっくり混ぜて、生地がパラパラくずれるなら、小さじ一ずつ牛乳を足して……。

「よし、生地が完成っと」

 ボロボロの状態だけど、水分がなじんでるから、ここで止めてオーケー。

 あとは、生地を袋につめて、三十分から一時間、冷蔵庫で寝かして……。

 その間に、調理台にシートを広げて、強力粉をまいておく。

 冷蔵庫から生地をシートに出して、めん棒でのばし、さらに三十分、冷蔵庫で寝かせる。

 今のうちに、オーブンを百八十度に予熱!

「朝陽くん、いっしょに切りわけよう」

「ありがとう、久遠さん」

 よーし、ラストスパート!

 寝かしおえた生地を取りだして、久遠さんと三角形に切りわける。それから、プレートに並べ、表面にうすく牛乳をぬってから予熱したオーブンに入れた。

 焼き時間は、二十分前後。焼き色がつくまでだ。

 じりじりじり……ぐっぐぐぐっ

 オーブンの中であぶられた生地が、少しずつ少しずつふくらんでいく。

 チョコがとけるあまい香りが、たまらない。

 十分、十五分……やっと二十分。もう待ちきれない!

 チーン!

 焼きあがったスコーンをオーブンから出して、お皿に移す。

 これで完成! ハル兄直伝・神木(かみき)家あつあつチョコスコーン!

「いただきまーす!」

 みんなで声をそろえると、全員がいっせいにお菓子に手を伸ばす。

 うっ、緊張する! ハル兄のレシピだからおいしいはずだけど……。

 スコーンを一口食べた料理好きの子が、大きく目を見ひらいた。

「……これ、おいしい!」

「朝陽くん、すごくおいしいよ。手が止まらない!」「このレシピ、すげえ!」

 みんな、どんどん食べてる……やった、大成功!

「二度目に生地を寝かせるとき、一晩待つと、外はもっとカリッと、中はしっとりおいしくなるって。どうする?」

「まだおいしくなるの? 絶対やりたい!」「すごく話題になるよ。お客さんが殺到するね」 

 みんなの声に、久遠さんも、ほほ笑んだ。

「スコーンの試作は、これでばっちりだね。あとは前日から、みんなで準備しよう」

「賛成!」「これ、出店優勝も目指せるんじゃない」

 パチパチパチパチ

 大きな賛成の拍手に、おれと久遠さんは目を合わせてうなずきあう。

 一人じゃたくさんの量は準備できないけど、みんながいればできる。

 ……協力してお店をするって、楽しいな。

 この調子でいけば、とんでもなくすごいカフェにできそう!

 久遠さんが、メモ帳を開いた。

「じゃあ次は、飲み物のメニュー……紅茶だね。今から、いれてみよう」

「それ、おれがやるよ。そっちも家で教わってきたんだ」

 まず、用意していたポットにお湯を入れる。次に、ポットが温まったら、お湯を捨てて、取っ手のついた茶こしにスプーン三杯の茶葉を入れた。

「ここで、ポットの蒸気で少し蒸らして……」

 コポコポコポ……と、新しいお湯をポットにそそぐ。

「あとは、フタをして。タイマーで三分!」

 ふう。これなら、うまくいれられそう。早く飲みたいな。

 そういえば……まひるは、ちゃんと実行委員やれてるかな?

 先輩に見とれて大失敗したり、はりきりすぎて大暴走したりしてなきゃいいけど。

「あとで、実行委員室に様子を見に行こうっと」

 あーあ、おれにまひるのスキルがあれば、ここからでも様子が視(み)られるのに――。

「……くん、朝陽くん、三分たったよ?」

「えっ」

 ピピピピピピッ!

 すぐ横で、さっきかけたタイマーが鳴っている。

 うわっ、いつの間に!

「何するんだっけ。そうだ、茶葉を出さないと! 茶こしをつかんで……あちっ!」

「朝陽くん、だいじょうぶ」

「だ、だいじょうぶ」

 あぶなっ。茶こしの取っ手が熱くなってた! 

 これは、当日も注意しないと。

 少しだけ紅茶を注いだ紙コップをみんなに配り、おれも自分のぶんを手に取る。

 ……うん、いい香り。

 おいしくできてそう!

「いただきまーす!」

 みんなそろって、紙コップを持ちあげる。

 そっと、口をつけて――。

 ごくっ

 ……にっ。

「にっが~~~~い!!」



 にがすぎ。なんだこれ? ハル兄がいれてくれた紅茶と、ぜんぜん違う!

 みんなが手で口を押さえるなか、良介は紙コップを持ったまま調理台に倒れこんだ。

 いや、それはオーバーすぎ。気持ちはわかるけど!

「朝陽、にがい! これをお店で出したら、みんな、ぎょっとするって!」

「うっ、なんでだろ。茶葉を出すのが少し遅かった? でも、こんなに味が変わるなんて!」

 あわてて水を飲んだ高坂さんが、苦しそうに言った。

「時間ぴったりにあげないといけないんじゃない? とにかく練習しよう! ええっと、まずポットに茶葉を入れて……」

「先にポットを温めないと」「あれ、茶葉って何杯入れるの?」

 みんなが、紅茶のいれ方を書いた紙を見ながら、バタバタ走りまわる。

 ええっと、ひのはら祭当日は、お客さんの注文を取りながら準備するんだよな。

 しかも、スコーンもいっしょに出さなきゃいけないわけで……。

「もしかして、カフェって、ちょっと……いや、かなりむずかしい?」

 あ~、だんだん不安になってきた。このままで、本当にカフェを開店できる

「ごめん、星夜! おれ、まひるの心配をしてる場合じゃない!」


第6回へつづく


書籍情報


作: 大空 なつき 絵: アルセチカ

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323774

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