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こわい話にはウラがある?
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『学校の怪異談 真堂レイはだませない』は2022年12月14日発売予定です! お楽しみに♪
表紙・もくじページ
【2-4 呪われてしまったの! 怪文書が、こんなにも!】
「あれが相談者の、小日向比奈(こひなた ひな)さん。ボクと同じ二年生だ」
小日向さんは短いツインテールに、つり目がちの目をした、勝ち気な印象の人だった。
「気が強そうな人ですね……」
「気が強い人は苦手?」
「基本、人は苦手です」
「じゃあ、どんな人なら得意なの?」
「あきらかに、わたしより弱い人とか」
「聞かなきゃよかったな」
「言わなきゃよかったです」
「柊より弱い人って、赤ちゃんとか?」
「赤ちゃんは苦手ですね、なに考えてるかわからなくて」
「きみが言うか」
「……たぶん、人はみんな苦手です」
「ふうん。だから柊はいつもうつむいているのか」
「そうですね……人の視線は怖いので」
「なにか、トラウマでもあるのかな? いや、話したくないならムリには聞かないけれど」
「いえ、たぶん生まれつきです。それか前世でモグラだったとき、人からにらまれたとか」
「前世がモグラなのは確定なんだ」
「……わたしのおばあちゃんが昔、言ってくれたんです。『ムリに人と目を合わせなくていい。むしろ、イヤなら合わせるな』って」
「いいおばあさまだ」
「そう思いますか? ほかの親戚(しんせき)からは、そんなこと言うなって批判(ひはん)されてましたが」
「ボクは賛成だね。海外じゃ、人と目を合わせて話すのがマナー違反の国もある。いちばん大事なのはそこじゃない」
じゃあ、いちばん大事なことってなんですか――と聞こうとして、わたしは気づく。
「っ! せ、先輩、後ろ!」
「後ろが、なんだい?」
「小日向さんの後ろに、は、背後(はいご)に、幽霊がいます……!」
どうして、いまのいままで気づかなかったんだろう。
その幽霊は体が半透明で、なんというか、存在感がたよりない。息を吹きかければ消えてしまいそうな、そんな儚さがあった。
「背後に? ふうん、そうか。柊には、そう見えるのか」
先輩は声を弾ませる。先輩には見えていないってことは、やっぱり、あれは幽霊なんだ。
よかった。透明なのに幽霊じゃなければ、3Dホログラムやら、VR空間に入りこんだ可能性やらを疑わなきゃいけないところだった。
「柊、幽霊はどんな姿かな?」
「智聡中(ちさとちゅう)の制服を着た、ポニーテールでメガネの少女です。大人っぽい顔立ちなので、たぶん上級生かと」
「うむ、悪くないな。柊にはそう見える。その事実が、いちばん大事なのかもね」
先輩は自分に言い聞かせるかのようにつぶやき、歩きはじめるのだった。
距離が近づくにつれ、わたしの目は、やはり幽霊に引き寄せられる。
幽霊は、小日向さんをじっとにらみつけていた。
「遅かったじゃないの、比奈は待ちくたびれたわ!」
わたしと先輩の姿を認めたとたん、小日向さんは口を開いた。
「比奈は戦争と差別の次に、待たされるのが嫌いなの!」
つり目がちの目が、さらにつり上がっている。
やっぱり、気が強い。人は見かけによらないと言うけれど、見かけはその人の大事な一部なんだから、ムシはできない……と、思う。
「悪かったよ、このとおりだ」
ぜんぜん悪びれていない声で、ウィンクする先輩。いや、どのとおりだよ。
「まあ、比奈も、ちょっと怒りすぎたわ……」
小日向さんはポッと顔を赤らめた。……おそるべし、美少年効果。
「さて、小日向比奈さん。きみは、ボクらにどんな相談があるんだろう?」
「もちろん妖怪についてよ!」
なにが『もちろん』なのかも気になったけど、わたしは『妖怪』に引っかかる。
妖怪? 幽霊じゃなくて?
「妖怪おすんうぇについてよ!」
お、おす……? え、なに?
「おすんうぇ、おすんうぇ、うん、なつかしいな。ひさしぶりに聞いたよ、おすんうぇ」
「先輩、知ってるんですか?」
「この学校に古くから伝わる怪談(かいだん)さ。通称、おすんうぇの怪――いや、正しくは、おすんうぇの怪文書(かいぶんしょ)、か」
「か、怪文書?」
怪文書って、出どころも書いた人もわからない、正体不明の怪しい文書のこと、だっけ。
「うむ。智聡中に住み着く妖怪おすんうぇは、生徒に怪文書を送る。その怪文書には必ず、最後にアルファベットでosnwe!と書いてあるんだ」
先輩は指を動かして、空中に文字を書いた。
「それが名前の由来だよ。osnwe!は、おすんうぇって読めるだろう?」
ああ、なるほど。わたしもスペルを覚えるために、friend(フレンド)をフリエンドって読んだりする。
「そう、その怪文書が、比奈のもとに届いたのよ!」
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『学校の怪異談 真堂レイはだませない』は、いよいよ明日2022年12月14日発売予定です!
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※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・伝承等とは一切関係ありません。
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