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ものがたり

注目シリーズまるごとイッキ読み!『四つ子ぐらし④ 再会の遊園地』第14回 お願い、無事でいて!


お休みの日に、みんなで楽しく遊園地へ! 苦手だけど、がんばってジェットコースターに乗っていた三風は乗り物酔いでヘロヘロに……。休憩している三風へ「にとちゃん!」話しかけてきた、小さな男の子。この子、もしかして、二鳥ちゃんの弟!? とんでもない事態のいっぽうで、別行動していた一花チームは……?
つばさ文庫の大人気シリーズ第4巻が、期間限定でまるごと読めちゃうよ!

※これまでのお話(4巻)はコチラから
 1巻はコチラから
 2巻はコチラから
 3巻はコチラから


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14 お願い、無事でいて!

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『いました! オレンジ色の服の小さな子! 林の奥です!』

 一花ちゃんのスマホから、四月ちゃんの声が聞こえた。

 観覧車のとなりの林。

 そこに、あゆむくんはいるんだ!

「行こ!」

「ええ」

「うんっ」

 二鳥ちゃん、一花ちゃん、そして私・三風の三人はうなずきあい、林へと走りだした。

「見つかって、よかったね……!」

 走りながら私が言う。すると、一花ちゃんが低い声で答えた。

「まだ安心はできないわ。あの林、けっこう広そうだったし、中には古い遊具があるって、直幸くんが言ってたもの」

 あっ、そうか。古い遊具で遊んで、ケガでもしたら大変だ。

「あゆむ……!」

 二鳥ちゃんはつぶやき、走る速度をぐんと上げた。


「あそこよ……!」

 やがて、林の入り口が見えてきた。

 そこには、立ち入り禁止の看板が立てられ、人が入れないよう、ロープが張ってある。

 だけど、今は緊急事態。

 この中に、迷子の幼い男の子がいるんだもん。

 大人の人をよんでくる時間もおしいよ。

「入ろ!」

 二鳥ちゃんを先頭に、私たちが張りめぐらされたロープをくぐった、そのとき。

「姉さんたち~」

「み、宮美さーん」

 四月ちゃんと直幸くんが、観覧車のほうからかけてきた。

「二人とも! ありがとう」

 一花ちゃんがお礼を言うあいだに、四月ちゃんたちも、迷わずロープをくぐる。

「あゆむがおったのはどこ?」

「あのっ……そこの案内板を見てください」

 直幸くんは、林に入ってすぐのところにある、古びた案内板の地図を指ししめした。

「僕らがあゆむくんを見たのは、この林の奥……こっちがわの、このあたりです。もしかしたら、もう移動しているかもしれませんが……」

「…………ここって……!」

 二鳥ちゃんは青ざめた。

 直幸くんが指したところ。

 そのすぐとなりが、水色にぬられている。

 書いてある文字は、

《まんまる池》

「っ……!」

 不吉な想像に、私は息をのんだ。

 池に落ちちゃったら、あゆむくん、おぼれて死んじゃうかもしれない!

「あゆむっ!!」

 二鳥ちゃんは林の奥へかけだした。

 私たちもあとに続く。

 お願い、あゆむくん、無事でいて!

「あゆむーっ! あゆむーっ!」

「あゆむくーん!」

「あゆむくーんっ!」

 私たちは手分けして、あゆむくんをさがした。

 声のかぎりに名前をよびながら、林の中を走りまわる。

「あゆむーっ! あっ……」

 ――ドシャッ!

「二鳥ちゃん!」

 二鳥ちゃんが目の前で転んだので、私は悲鳴をあげた。

「二鳥ちゃん、大丈夫?」

「いったた……。……うん、全然平気や」

 いつもと変わらない口調だけど、二鳥ちゃんの顔はすごくけわしい。

 きっと、あゆむくんが心配でたまらないんだ。

 こんなに大声でよんでも、まだ見つからないんだもん。

「あゆむくーんっ!!」

「あゆむくーんっ!!」

 みんなの声にも、あせりがにじんでる。

「あゆむくん、一体、どこにいるんだろう……っ」

「……………………」

 私のつぶやきに、二鳥ちゃんからの返事はない。

 まさか、転んでどこか痛めたの?

 ハッと目を向けると……。

 二鳥ちゃんは、古い落ち葉のつもった地面を見つめて、じっと固まっていた。

「二鳥ちゃん……? どうし――」

「ナオくん!!」

 私がたずねおわらないうちに、二鳥ちゃんは大声で直幸くんをよんだ。

「ハイッ!? な、なんですか?」

「この辺にどんぐりの木ある?」

「へ? どんぐり?」

 直幸くんは意外そうな顔だけど、二鳥ちゃんは真剣だ。

 ……あ、そうか!

「あゆむ、どんぐりが好きやねん。よう拾って、二人で遊んでた。もしかしたら……!」

「どんぐりのなる木は、たしかこの林にありました。あっちです」

 私たちは直幸くんの指したほうへと走る。

 一花ちゃんも、四月ちゃんも、いっしょについてきてくれた。

 急な斜面(しゃめん)をこえると、木々がとぎれ、少し開けたところに出て。

「あっ、あゆむ!!」

 そこにいたのは、あゆむくんだ!

 大きな木の根元にこしかけ、幹にもたれかかるようにして、目を閉じてる……!

「あゆむ、あゆむっ、しっかりしい!」

 二鳥ちゃんがあゆむくんを優しくゆする。

 すると――。

「……うぁ…………」

 あゆむくんは、ゆっくりと目を開けた。

 よかった……! ねむくなっちゃっただけなのかな。

「あゆむ……!」

 二鳥ちゃんが心底ホッとしたような顔でほほえんで。

 一花ちゃん、私、四月ちゃんの三人も、にっこり笑って、同時に名前をよんだ。

「「「あゆむくんっ」」」

 すると……。

 こっちを向いたあゆむくんの目が、みるみる大きく開かれて。

 小さな口も、自然にポカンと開いちゃって。

 あれ……? あれれ? どうしたの?

 私が……たぶんみんなも、そう思った瞬間。

 あゆむくんの顔が、一度にクシャッとゆがんで、あっという間に泣き顔になっちゃった。

「ふうぅう~~っ、ううううわあぁあーーん!」

 えっえっえっ?

「ど、どないしたんあゆむ……!?」

 たずねた二鳥ちゃんに、あゆむくんは大声で泣きながら答えた。

「あーッ、にっ、にどぢゃん、よにんいる~~~!」

「「「「あっ……! ……あはは……」」」」

 私たちは、おたがいの顔を見て苦笑い。

 あゆむくん、目が覚めたら、お姉ちゃんと同じ顔の人が四人もいて、びっくりしたんだね。

「わあぁー~~~ッ、うあぁ~~~ん」

 なんだか、赤ちゃんみたいな元気な泣き方だ。

「あゆむ……よかった」

 二鳥ちゃんは、べそをかくあゆむくんをぎゅっとだきしめた。

 私、そのすがたを見たとき……。

 ああ、二鳥ちゃんって、本当にあゆむくんのお姉ちゃんなんだ。

 二鳥ちゃん、あゆむくんのことが大好きなんだ。

 って、実感して。

 体のしんから、じわっと、うれしさでいっぱいになったんだ。


第15回へつづく

書籍情報


作: ひの ひまり 絵: 佐倉 おりこ

定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046319067

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