
四つ子と湊くん、直幸くん、杏ちゃんの7人で、遊園地へ! みんなでワイワイ楽しいし、気になる人もいっしょでドキドキしちゃう一日……になるはずが、二鳥の『過去』にかかわる『ある人物』があらわれて、波乱の展開に!? つばさ文庫の大人気シリーズ「四つ子ぐらし」の第4巻が、期間限定で1冊まるごと読めちゃうよ!
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4 仲よくなりたい!
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「行ってらっしゃいませ~! 楽しい一日をおすごしください」
係員さんに招待券をわたして、フリーパスをもらい、遊園地の入場ゲートをぬけると……。
「わあぁ……!」
観覧車にジェットコースター、お化けやしき、コーヒーカップ、メリーゴーランド……!
パンフレットで見たとおりの……ううん、それ以上にワクワクする景色が広がっていた。
南国風の背の高い木や、色とりどりのお花が、道にずらりと植わってて。
大きな噴水の近くでは、ワゴンで風船がいくつも売られてて。
あちこちにある建物の屋根も、みんなカラフルで個性的。
どこからか、ポップコーンのあまい香りがただよってくる。
「別の世界みたいね……」
一花ちゃんがうっとりそう言って、私はだまってうなずいた。
「リニューアルしたとは聞いていたけど、こんなにきれいになってるなんて……」
感心したように杏ちゃんがつぶやくと、
「ほんとだなぁ。昔の面影(おもかげ)、全然ないじゃん。あんな噴水も、昔はなかったよな」
湊くんはごく自然に返事をする。
「え……湊くんたち、この遊園地に来たことあるの?」
私がたずねると、湊くんはうなずいた。
「うん。昔は年に一回、必ず来てたよ。杏とナオもいっしょに」
「年に一回じゃなくて、二回来てたわ。だって、冬は毎年、ここのスケートリンクでスケートしてたじゃない」
「あぁ、そうだった。あのスケートリンク、また行きたいなぁ」
「ああっ、行きたい! あそこの売店で食べたアメリカンドッグ、すっごくおいしかったわね」
「そうそう。運動したあと食べるからよけいにさ――」
楽しそうに思い出話を始める湊くんと杏ちゃん。
二人のすがたを見ていたら、心がキュッと苦しくなった。
話に入りたいけど、私、この遊園地のことはよく知らないし……。
くちびるを、軽くかんだとき、
「さあ! 何乗ろっ? まずはあっちのほうに行ってみいひん?」
もうガマンできないというように、二鳥ちゃんが大声で言って、思い出話をさえぎってくれた。
ナ、ナイスだよ二鳥ちゃん!
って……こんなこと思っちゃうなんて、私、湊くんと杏ちゃんの友達としてどうなんだろう。
なんだか、自分がイヤになっちゃいそうだよ~……。
「そうね!」
「うん、行こうか」
みんなは二鳥ちゃんの指すほうへ、ぞろぞろと歩きだす。
私の複雑な気持ちはともかく……。
今は素直に、遊園地を楽しもうかなぁ。
私たちは七人で、ワイワイおしゃべりしながら、遊園地を回った。
お客さんは多いけど、アトラクションに何十分もならんで待つほどじゃないみたい。
まずみんなで乗ったのが、メリーゴーランド。
子どもっぽいかな? って最初は思ったけど、豪華なかざりのついた馬にまたがると、
(わあっ、遊園地だ……! 遊園地に来たんだ!)
って実感して、心がおどりだすようだった。
その次に乗ったのが、コーヒーカップ。
私は、二鳥ちゃんと杏ちゃんの二人といっしょに乗ったんだけど……。
二人が調子に乗って、どんどんぐるぐるカップを回すから、目が回りそうになっちゃった。
二鳥ちゃんはともかく、杏ちゃんも、意外とけっこうはしゃぐタイプみたい。
そのあと、
「ねえ、次はあれに乗ろうよ!」
湊くんが指さしたアトラクションを見て、私はひゅっと息をのんだ。
それは……高くそびえる黒い塔――フリーフォール!
座席に座ったまま、ものすごく高いところまで上昇して、名前のとおり自由落下する乗り物だ。
――キャアアアアアァ~~~!
という絶叫が、フリーフォールが動くたびに聞こえてくる。
「僕ムリ」
直幸くんはすぐに首をふり、
「ぼ、僕も、あの……えんりょします」
かぼそい声で言って、四月ちゃんも首をふる。
「わ、私も……やめておこうかな……」
私がみんなの様子をうかがいながらそう言うと、すぐに、
「じゃあ、ナオと四月さんと三風ちゃんは見学ね。外で待ってて。湊、二鳥ちゃん、一花ちゃん、行きましょ!」
杏ちゃんは笑顔でハキハキそう言って、お姉ちゃんたちと湊くんを連れ、フリーフォールの列にならびに行っちゃった。
少し待つと、杏ちゃんたちの順番がやってくる。
「あっ……」
そのとき、私、思わず声がもれた。
杏ちゃん……湊くんのとなりに座ってるんだもの。
ここからじゃ、二人がなんて話してるのか、わからないけど……。
たぶん、「ちょっとこわいわ」「大丈夫だよ」とか話してるのかな?
二人とも、とっても楽しそうに笑ってる。
いいなぁ……。
私も乗ればよかったかな。
そんな気持ちになったとたん、
――プーッ
ブザーが鳴って、フリーフォールがゆっくりと上昇を始めた。
うわ、うわ、うわぁ……!
湊くんも、杏ちゃんも、一花ちゃんも、二鳥ちゃんも。
足をブラブラさせながら、もう、あんなに高いところまで上がっていっちゃった!
ハラハラした気持ちで、こぶしをきゅっとにぎった瞬間。
――キャアアアアアァーーーーーーッ!
――ゴォーッ!
ものすごい高さからものすごい速さで、フリーフォールが落ちてきた!
ひええ…………。
見てるだけでおそろしくって、体のしんがギュッとちぢむ。
やっぱり私、ムリ、かも。
あんなの乗ったら、こわくて死んじゃうかもしれない……。
だけど……。
「ああ! こわかったなぁ!」
「上のところで一度、ガクン! ってゆれたでしょ。ドキッとしちゃった」
「そうそう!」
フリーフォールをおりてきて、楽しそうに話している湊くんと杏ちゃんを見ると、
(や、やっぱり私も乗っておけばよかったぁ~)
って思っちゃう。
私だって、湊くんと、もっと仲よくなりたいもの。
湊くんと同じ乗り物に乗って、「こわかった!」とか、「びっくりした!」とか。
感想をならべあって、おしゃべりしてみたいよ。
次は絶対、絶対絶対、湊くんと同じ乗り物に乗ろうっ。
決意を固めたそのとき。
「そろそろお弁当にしない? もうすぐ十二時だし」
一花ちゃんが、みんなによびかけた。
お弁当!
そういえば、私、さっきから少しだけ、おなかがすいたなぁって思いはじめてたんだ。
「賛成! うち、もうおなかペコペコやわ」
「ピクニックコーナーはあっちだよ」
湊くんが指をさす。
「行きましょう」「うん!」「ええ」
私たちは階段をのぼり、ピクニックコーナーへと向かった。
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