
三風たち四つ子の四姉妹は、学校でも大注目! テレパシーが使えるとか、毎日こっそり入れ替わってるとか、いろんなウワサが広がって、ついに新聞部に取材されることになっちゃった!?
角川つばさ文庫の大人気シリーズ第3巻が、期間限定で1冊まるごと読めちゃうよ!
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10 四つ子はいじめっこ!?
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その日の放課後。
いつもどおり、私は昇降口(しょうこうぐち)を出たところで、姉妹たちと待ちあわせ。
結局、今日は、湊くんと杏ちゃんについて、新しくわかったことはあまりなかった。
明日以降も、なんとかして調べてみようかな……。
なんて、ひとり考えていたら、
「おまたせ、三風」
「あとは二鳥姉さんだけですね」
「ごめんごめん、みんな待ったー?」
一花ちゃん、四月ちゃん、二鳥ちゃんの順で、姉妹たちが次々に集まってきてくれた。
自分とそっくりな家族の顔をみると、あっという間に気持ちが安らいでいく。
「四人そろったし、帰ろっか」
私が、笑顔で明るくそう言ったとき。
――ピンポンパンポーン……
校内放送が入った。
――新聞部からよびだしです。一年生の宮美さん、一年生の宮美さん、至急(しきゅう)、四人そろって、多目的室まで来てください。くりかえします。一年生の宮美さん、至急、四人そろって――
この声……杏ちゃん?
「なんなのかしら?」
「至急や言うてるで」
首をかしげると同時に、
「えーっ……」「クスクス……」「ふふふ……」――
まわりから、笑い声が聞こえはじめた。
「『一年生の宮美さん、四人そろって』だって」
「こんな放送流れるの、四つ子がいるうちの学校だけね」
「早く行きなよ、四つ子ちゃん!」
男子の先輩が大声でよびかけたら、まわりの人たちもドッと笑う。
私たち、すっかりはずかしくなっちゃった。
「行ったほうが、いいのかな?」
「これだけ注目をあびたら、無視して帰るわけにもいかないわよ」
一花ちゃんが面倒くさそうに言って、
「まあ、行くべきやろなあ。昨日、イラストももろたしな」
やれやれ、というふうに二鳥ちゃん。
やっぱりそうだよね……。
しかたなく、私と四月ちゃんもうなずいて、昇降口へ引きかえした。
クツをうわばきにはきかえ、四人でわたりろうかを進む。
北校舎の階段を四階までのぼって、ろうかを曲がると、多目的室が見えてきた。
杏ちゃん、一体、何の用だろう?
またインタビューをするつもりなのかな?
あ、そうだ。もしチャンスがあれば、
『昔、湊くんと、何かあったの?』
『私たちが子どもだけでくらしてるってことを、だれから聞いたの?』
って、杏ちゃんに直接、たずねることはできないかな?
答えてくれないかもしれないけれど、聞くだけ聞いてみよう。
よしっ……。
「失礼しますっ」
私は勇んで、ガラガラッ、と多目的室の戸を大きく開けた。
部屋の中にいたのは……、
「待ってたわ。容疑者(ようぎしゃ)さんたち」
えっ? 容疑者さんたち?
杏ちゃん、うでを組んで、仁王立ちしてる。
それに、なんだか、すごくきびしい目で、私たちをにらんでるけど……!?
ただならぬふんいきに、一花ちゃんと二鳥ちゃんはまゆねを寄せ、私と四月ちゃんは立ちすくむ。
その様子を見て、杏ちゃんはますます視線をとがらせた。
「さっそくだけど、これについて説明してくれるかしら!?」
ビッ、と一枚の紙きれをつきつけられて。
私はそれを受けとり、姉妹たちと読んでみた。
宮美さんのせいで、
毎日が変わってしまった。
もう、
いつもみたいに笑えない。
ひとり苦しくて、
孤独(こどく)でつらくて。
お願い、
だれか、助けて。
えっ……!?
なに、これ……?
「今日、新聞部の部室のポストに入っていたのよ。一体どういうこと?」
杏ちゃんにつめよられて、私はもう一度、手に持った紙を読みかえす。
だけど、やっぱりよくわからない。
ほかの姉妹たちも、みんな首をかしげてる。
「何よこれ……イタズラかしら?」
「『宮美さんのせいで』? なんや感じ悪いなあ」
「これを書いた人が、私たちのせいで、辛くなっちゃった、ってこと……?」
「一体、だれが書いたんでしょう……」
頭の上に「?」をいっぱいうかべた私たちに、杏ちゃんは刺すように言った。
「とぼけないで。これはいじめの告発状じゃないの! 四つ子ちゃん、あなたたちは、いじめっこだったのね!」
ええっ、いじめの告発状!?
私たちが、いっ、いじめっこ!?
部屋の空気が、一度にキンとはりつめる。
「私、この告発状のこと、記事にするわ! だってこの学校で、だれかがいじめられてるのよ。その事実をみんなに伝えて解決にみちびくのは、情報発信の力を持つ新聞部の使命だもの」
「ちょっと待って!」
一花ちゃんがするどく一喝(いっかつ)した。
「私たちがだれかをいじめているなんてまったくのまちがいよ。ここに書かれている内容に、私たち、全っ然身に覚えがないもの。そうよね? 二鳥、三風、四月」
「「「うん」」」
私たち妹三人は同時にうなずく。
二鳥ちゃんはおこったように口を結んでて。
私は体じゅう、とまどいの気持ちでいっぱいで。
四月ちゃんは、ただぼうぜんとしてて。
絶対にみんな、だれかをいじめてなんていないってことが、はっきりとわかる。
だけど、杏ちゃんは聞いてくれそうにない。
「しらばっくれないで。じゃあ、どうしてこんな告発状が書かれたの?」
「そんなの知らないわ。きっと何かの誤解(ごかい)よ」
「誤解だったとしても、これを書いた人は、あなたたちのせいでたしかに傷ついたのよ。『苦しい』『つらい』って、しっかりと書いてあるじゃない。あなたたちの行ったいじめのせいで、この人は不登校になったり、引きこもりになったりするかもしれないわ」
「だから私たち、いじめなんてしてないんだってば!」
「本当かしら。あなたたち、だれかをいじめている自覚がないだけじゃないの?」
「……あのなぁ…………」
わーっ!
ドスのきいた低い声。
一花ちゃんが不良モードになっちゃうよっ。
一方的に言われて腹が立つのはわかるけど、ここはおさえて!
私は一花ちゃんの背中にぎゅっとしがみついた。
同時に、二鳥ちゃんは一花ちゃんの前に出て、杏ちゃんにうったえる。
「ほんまに知らんねんって。こんなん、だれが書いたかもわからへんし――」
「と、に、か、く」
杏ちゃんは、私たち四人に向かって、きっぱりとこう告げた。
「自覚がないにしても、なんにしても、その告発状のことを記事にしてほしくないのなら、ちゃんとこれを書いた子に会って、あやまって、解決して。あさってまでに!」
四つ子にいじめギワク!? そんなこと、絶対してないのに! 大ピンチの四姉妹は、告発状を書いた子を見つけ出すことができるの? 気になる続きは、4月28日(月)にアップ予定だよ。おたのしみに!
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