
ひとりぼっちだった三風の前に、同じ顔をした四つ子の姉妹たちがあらわれて、姉妹四人だけの、たのしくてちょっと大変な毎日がスタート! でも、別々の場所で育った四人だから、まだ、姉妹に言えていない「ひみつ」があって…?
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18 おみまいへ
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次の日、私たちは、姉妹そろって千草(ちくさ)さんのおみまいへ行った。
「うわっ、一花が四人いる!」
病室にやってきた同じ顔の私たちを見て、千草さんはびっくり。
それから、気を失ってたおれるマネをしたので、私たちは大笑い。
千草さんって、本当に面白い人っ。
なんだか、ちょっとだけ二鳥ちゃんに似てるかも。
……あ、もしかして。
一花ちゃんは、二鳥ちゃんに、千草さんのおもかげを感じていたのかな?
なんて思ったけど……。
一花ちゃんも二鳥ちゃんも、はずかしがっちゃうと思うから、たずねるのはやめておこう。
「ねえ、自己紹介してよ」
千草さんにねだられて、私たちは一列にならんだ。
「長女の一花です」
ピンクの髪飾りで、ポニーテールの女の子が言う。
「次女の二鳥です」
赤い髪飾りで、ツインテールの女の子が言う。
「三女の三風です」
水色の髪飾りで、三つ編みの私が言う。
「四女の四月です」
紫色の髪飾りで、ハーフアップの女の子が言う。
「みんなそっくり!」
四人の顔を見比べて、千草さんは面白そうに笑った。
今日は、昨日より、ずっと顔色がいいみたい。
「そうそう、一花。今朝、愛子さんたちから連絡があってさ」
一花ちゃんが「え?」とまゆを上げる。
愛子さんって、一花ちゃんと千草さんの、里親さんのことだよね。
千草さんはおだやかに笑って、こう告げた。
「愛子さんがね、『千草、しばらくの間、うちにもどっておいで』って」
「ほ、本当?」
「うん。まずは体を治して……しばらくしたら、またやりなおすよ」
千草さん、前を向きはじめてるみたい。
自立って、たしかにむずかしい。
だけど、失敗しても、支えてくれる人は必ずいるんだよね。
一花ちゃんは、ほほえみながら千草さんの目を見て、力強い口調で言った。
「千草ちゃん、もし何か困ったことがあったら、私に――私たちに言って。今度こそ、力になるから」
「ふふ、そりゃあたのもしいな。一花が四人もいるんだから」
「もうっ。私の妹たちは私じゃないの。みんな同じだけど、みんなちがうのよ」
「だって〜――」
千草さんは、しばらくそんなふうにふざけていたんだけど……。
ふいにまじめな顔になって、一花ちゃんの手をぎゅっとにぎった。
「ありがとう一花。いつの間にか、すっごく大きくなってたんだね」
急なことにおどろいたのか、一花ちゃんはほおをサッとそめて。
その様子を見ていた私たち三人の妹まで、ホッとあったかい空気につつまれた。
それからしばらくたったころ。
「んー……にしても病室ってなんにもないんだよね。トランプもない。せっかく来てくれたんだし、何かみんなで遊べるゲームでもあればいいのになあ」
千草さんはベッドの上でのびをしながら、そんなことをつぶやいた。
「「「「ゲームといえば」」」」
そっくりな声がぴったり重なって、千草さんはきょとん。
私たちは顔を見合わせてクスッと笑った。
「ねえ千草ちゃん。私たちが今ハマってる『だれでしょうゲーム』っていうのがあるの」
一花ちゃんはマナーモードにしたスマホをカバンから取りだす。
「え、何ゲーム?」
「『だれでしょうゲーム』よ。たとえば、これは、だーれだっ?」
一花ちゃん、楽しそうに笑ってる。
「――ええっ、全員一花に見えるよ。むずかしーっ」
ふふっ、ゲームは千草さんにも好評みたい。
やっぱり私たちは、四人いっしょでなくっちゃね。
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書籍情報
- 【定価】
- 814円(本体740円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046318411
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