
神バズリ中☆ファン増加率【No.1】の超人気シリーズ「神スキル!!!」1巻がまるごと読める! 「イッキ読み」を公開中!!
朝陽、まひる、星夜の三きょうだいは、
めちゃくちゃすごい能力〈神スキル〉を持っていた!
ただし、「神スキルを秘密にする」——これが三人の約束だ。
新学期、クラスメイトの様子がおかしいことに気づいた、朝陽たち。スキルを使っての初めての調査をスタート!
危ない犯罪組織? 銃? 印刷工場でニセ札!? 大事件の計画を見ぬいた時、クラスメイトがさらわれて…!
「警察も解決できないなら、おれたちが、敵のアジトに潜入して、人知れず助けだす!」
手にあせにぎるドキドキの物語の幕が開く!
※これまでのお話はコチラから
第7章 最高のプレゼント
それからなんとか、おれたち四人は無事にショッピングモールへ到着した。
けれど、車だから勝手が違うと、駐車場までの道に迷って十五分。
さらにさらに、駐車場で車を駐車スペースの枠の中に停めるのに、十五分。
しかも、ハル兄(にい)がお菓子の材料を買うためにやってきた大きなスーパーは、いつもより混んでいた。おれたちと同じで、学校が終わったあとに来た家族が多かったらしい。
「ああ、もうへろへろ……体力の限界なんだけど……」
まひるがスーパーで買い物を終えて座りこむと、ハル兄は、悲しそうに肩を落とした。
「まひる、ごめんね。ぼくが車で迎えに行ったばっかりに……」
「あっ、いいの。スーパーが混んでたのはたまたまでしょ? 途中でジュースも買ってもらえたし、車で酔ったのはハル兄のせいじゃないし、いや、ハル兄のせいだけど」
「……まひる、本音がもれてる」
星夜(せいや)がすかさずツッコんだ。
「ああ! と、とにかく朝陽(あさひ)はケロッとしてるし、わたしが車酔いしやすいだけだから! 運転はこれからきっとうまくなるよ。ハル兄、元気だして。運転の練習、しっかりがんばってね!」
やっぱり練習はさせるんだ。ま、それはおれもお願いしたいかも。
ハル兄は、まひるの言葉に心を打たれたのか、明るくうなずいた。
「ありがとう、まひる。がんばるよ。それで買い物は終わったけど、これからどうしようか? ショッピングモールのお店を見ていこうと思っていたけど、もうみんな疲れちゃったかな」
「うう、わたしは無理かも。あー、くやしい。ハル兄に中学校の入学祝いをお願いするつもりだったのに~。三人そろっていれば買ってもらいやすいはず、っていうわたしの作戦がっ」
「まひる、そんなこと考えてたんだ。どうりでいつも以上にはしゃいでると思った」
「だって、お祝いしてもらえるチャンスなんてそんなにないじゃない? だけど、ほしいものは無限! 新しい服に、かわいいノートにキラキラしたペン、キュートな雑貨にマンガ、推しアイドルのグッズにおしゃれな髪どめ、スキンケアアイテムに、新色リップに~」
「うわあ……」
ホントに無限に言いつづけそう。
「……まひる、よくそれだけ思いつくな」
星夜があきれて言うと、まひるは、ぺろっと舌を出した。
「だって、ほしいものはほしいんだもん。欲ばっちゃいけないなんて、だれが決めたの? ふふふっ、二人も、ほしいものあるでしょ。せっかくだから言ってみたら? じゃあ星夜から!」
「えっ、急に言われても……本とか?」
「星夜、欲がなさすぎ~! それじゃあ、わたしだけ、ねだってるみたいになるじゃない。じゃあじゃあ、朝陽は? 朝陽はたくさんあるよね?」
「そりゃあ、たくさんあるけど。やっぱり、まずはチョロルチョコ。百個入りを箱買いして、全種類制覇したい。めっちゃほしい」
「……まさかとは思うけど、一日で食べないよね?」
ぎくっ! いや、さすがにそんなこと……でも、一日ダラダラしてたら食べきるかも。
「あとは、大きな水筒もほしいな。外で運動してるといつもすぐ飲みほしちゃって」
「それは買ってもらったほうがいいかもね。水分補給は大事──って、そういう日用品じゃなくて! こういう機会じゃないとなかなか買ってもらえない、特別なものはないの?」
「うーん。ゲームは、まひると星夜とお金を出しあって買ったし、サッカーボールもまだ使えるし……」
でも、たしかに〈特別なもの〉っていい響きだな。期待で、体がむずむずするような──。
「そうだ! 新しい道具がほしい。体を動かせるもので。早く移動できて、カッコよくて」
「……たとえば、ああいう物?」
星夜が、近くのショーウィンドウを指さす。
中に飾られたそれを見た瞬間、おれは思わず目を奪われた。
幅の細いボードに、小さな車輪が二つと、にぎりやすそうな黒いハンドルがついている。シンプルだけど、スタイリッシュなカッコいいデザイン。
──折りたたみ式の、キックスケーターだ。
足でブレーキをかけるタイプ。カーボンファイバー製で、軽くて丈夫な──。
「わ~、カッコいい!」
おれの背中ごしに、まひるも歓声を上げた。
「このキックスケーター、センスよくていいね! スイスイ乗れたら気持ちよさそう」
「そうだな。朝陽ならすぐ乗れるんじゃないか?」
「え? まあ、乗れると思うけど……」
値段は──うわっ、さすがに高い! おこづかいを一年くらい貯めないと買えなそう。
でも、カッコいいなあ。これで出かけたら、それだけでテンションが上がりそう。
地面をけるたびに、体全体で気持ちいい風を感じて──。
「朝陽、ほしいの?」
ハル兄の声に、ハッとする。
うわ、見入っていたから、ちょっとバツが悪いな。
「えーと……カッコいいとは思うよ。でも、ええと、あの」
「いいじゃん、朝陽、買ってもらえば。今日の昼休みも、クラスの子のために活躍してたしね」
「ああ、オレが昼休みにぶつかった先輩の心の声は、そういうことだったのか。朝陽のことを考えていたから、不思議に思ってたんだ」
「ええっ、まひるに、星夜まで!?」
おれ、二人にこっそり監視されてない?
驚くおれを見て、ハル兄は、くすっと笑った。
「新学期早々、がんばってるみたいだね。それならやっぱり、進級祝いにぼくがプレゼントするよ。朝陽がよければ」

「……いいの?」
「大切にしてくれるならね。あと、交通ルールを守って、人が多いところでは安全に乗ること」
「もちろん。守るよ」
手を上げて宣誓するように返事しつつも、胸がドキドキ鳴る。
本当!?
これでいろんなところにキックスケーターに乗って行ける!
「え~、朝陽いいなあ。あっ、この展開は、もしかして?」
「もちろん。まひると星夜には今度あらためて、別のプレゼントをおくるよ」
「やった~。ハル兄、ありがとう! やっぱりなんでも言ってみるもんだなあ」
「ハル兄、ありがとう。まひる、あまり高いものは頼むなよ」
ていねいに頭を下げる二人に、ハル兄は照れながら手を振った。
「それじゃあ、ぼくは、あのキックスケーターを買ってくるよ」
やった!
ドキドキしながら店の前で待っていると、ハル兄が大きな紙袋を持って戻ってくる。
思ったより大きい。いや、大きさより何より、おれにとっての最高のプレゼントだ!
「朝陽、六年生に進級おめでとう。ケガをしないように、気をつけて使ってね」
「うん。ハル兄、ありがとう」
おれは笑顔でプレゼントの紙袋を受けとる。
自分でもわかるくらい浮かれてる。紙袋を大事に抱えて駐車場へ歩く足が、今にもスキップしそうだ。
これで、どこに行こう?
まずは近くの公園だな。自転車用のコースをこれで走ったら絶対に気持ちいい。
青空の下、風を受けて──そうだ。スキルを使って、加速できるかな?
「朝陽、あぶない乗り方はしないように気をつけろよ」
星夜が、おれの目をまっすぐに見て言った。
「交通事故に気をつけるのはもちろんだけど、キックスケーターをスキルで操作すると不自然な加速になって、人に見られたとき不審に思われるかもしれない。だから……」
「わかってるって。そんなヘマしないし、安全に乗るから」
「ううん、だといいけど」
「だいじょうぶ。おれたちでした三つ目の約束──忘れてないよ」
そう言った瞬間、星夜が、ハッとする。
何も知らないハル兄は、自分の車を見つけると、小走りにかけよって乗りこんだ。
「それじゃあ、車を出すから少し待っていてね。ええっと、まずはシートとハンドルの位置を確認して……」
うわっ、動きがたどたどしい! これじゃあ、車を出すだけで、また十分はかかりそうだな。
買ってもらったキックスケーターも早く開けたい。でも、帰りのハル兄の運転で、家に帰りついたときには気持ち悪くなってたりして。
……そうだ。いい方法が一つある!
「ねえ、おれ、一人で帰るよ」
「ええっ!」
ハル兄は、車の窓から驚いた顔を出した。
「朝陽、どうしたの!? 急に一人でなんて」
「ほら、このキックスケーターを試したいから。まだ明るいし、家までならちょうどいい距離だし」
「あーっ! 朝陽、一人だけこの恐怖の車から逃げる気?」
「あっはは、まさか」
いや、それが大きな理由だけど!
さっとプレゼントの包みを開けると、折りたたみのボードを広げる。
空になった紙袋は、まひるに押しつけた。
「じゃあ、行くな。まひる、帰りの車はおれのスキルなしで、がんばって!」
「ええ~!? ああ、待って朝陽、行かないで~~~!」
脱出、成功!
まひるの悲鳴を聞きながら、おれは気持ちよくキックスケーターを走らせた。