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注目シリーズまるごとイッキ読み!『神スキル!!! キセキの三きょうだい、登場!』第2回


神バズリ中☆ファン増加率【No.1】の超人気シリーズ「神スキル!!!」1巻がまるごと読める! 「イッキ読み」を公開中!!

朝陽、まひる、星夜の三きょうだいは、
めちゃくちゃすごい能力〈神スキル〉を持っていた!
ただし、「神スキルを秘密にする」——これが三人の約束だ。

新学期、クラスメイトの様子がおかしいことに気づいた、朝陽たち。スキルを使っての初めての調査をスタート!
危ない犯罪組織? 銃? 印刷工場でニセ札!? 大事件の計画を見ぬいた時、クラスメイトがさらわれて…!
「警察も解決できないなら、おれたちが、敵のアジトに潜入して、人知れず助けだす!」
手にあせにぎるドキドキの物語の幕が開く!


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※これまでのお話はコチラから

 

第4章 まひるのさがしもの!


 そのころ、わたし、まひるは中学校の自分の教室の席に座っていた。

 まわりがおしゃべりに夢中なクラスメイトでいっぱいななか、閉じたまぶたの裏には、朝陽(あさひ)の姿が視(み)えている。

「ふんふんふん、ふ〜ん♪」

 朝陽は、中学生との3オン1の対決が終わって、友だちとバスケを始めてる。

 バスケに夢中の朝陽は気づいていないけど、近くで遊んでいた子たちも、いばっていた先輩(せんぱい)がいなくなって、のびのび遊べるようになってうれしそう。

 朝陽、カッコいいじゃない。

 しかも、ああいうところでスキルを使わないのが、朝陽のいいところだよね。

 スキルで視ていたってわかったら文句を言われそうだから、心の中でほめておこうっと。

「まひるちゃん、どうかしたの?」

 親友の桜子に声をかけられて、わたしは、ぱちっと目を開けた。

「ううん、なんでもない。ちょっと目が疲れちゃっただけ」

 わたしのスキル――『はなれた場所を視るスキル』は、すごく便利なんだけど、使うときに目を閉じないといけないのが欠点。ま、目に見える現実と二重に見えちゃっても困るけど。

 ちなみに大川桜子は、たくさんいる友だちの中でも、特に仲良しの大親友。春休みにも、いっしょにお買い物に行ったり遊んだりしたけど、やっぱり学校でおしゃべりするのも楽しい!

 わたしは桜子に、にっこり笑いかけた。

「桜子。さっきの数学の問題、解けた?」

「うん、一回でできたよ。やっぱりまひるちゃんは教えるのじょうずだよね。塾の先生よりわかりやすかった。ありがとう」

 話がとぎれた瞬間、クラスメイトの男子が、問題集のページを指さす。

「あ、まひる! この理科の電流の問題も教えて。わからなくてさ~」

「オッケー、まっかせて。えっと、電池はプラスとマイナスで通電するから――」

 わたしはノートに、さらさらと図を描いていく。

 ついでに、かわいいペンでちょっとデコレーションして……。

 お気にいりのクマちゃんも描いて。よし、できた!

「はい。これが電流の基本ね。ほとんどの電気の問題が、この応用でできるから、わからなくなったらこれに戻るといいよ」

「サンキュ、まひる。これで宿題も、ギリギリ間に合いそう!」

「まひる、あたしもそのプリント書きうつしてもいい?」

「いいよ。さあさあ、写すがよい~」

 うんうん、やっぱり学校は楽しい! みんなとたっぷりおしゃべりできるよね。

 ふふふっ、朝陽や星夜が興味なさそうな話も、友だちとなら何時間でも話せるし!

「そういえば、みんなは春休み何してたの? どこか行った?」

「オレはサッカークラブばっかりだったな。あと、映画を見に行った。春休みに公開したやつ」

「あたし、家族で温泉に行ったよ! はじめて旅館に泊まったんだ〜」

「へえ、みんないいなあ。充実してる〜ってかんじ。わたしは、今年の春休みはあまりお出かけできなかったんだよね。保護者(ほごしゃ)のお兄ちゃんがよく外出してて」

「そうなんだ。そういえば、わたしの行ってる塾の友だちも、家族の仕事の関係でどこにも行けなかったって子がいたよ。すっごく落ちこんでてさ」

「どこにも!? それは悲しすぎる~!」

 うちも、春休みはハル兄がやけに忙しそうだったもんなあ。こんなこと今までなかったのに。

 ……もしかして、今日の放課後の急な待ち合わせに関係ある?

 あ~、今からこっそりスキルで調べたい!

 いや、ダメダメ。ハル兄にもきっと理由があるはず……。

 そう自分に言いきかせていると、となりの席の女子が、急に顔を赤くした。

「わたしも、いい春休みになったんだ。じつは……春休みのあいだに、彼氏ができたの!」

「え――――!? そっ、そうなの―!?」

 いいなあ、いいなあ、いいなあ!

 わたしは思わずその女の子の肩をつかむと、ぐっと顔を近づけた。

「お願い、教えて! どこで? どうやって? どんなふうに!?」

「ま、まひる、落ちついて。ね?」

「あ、ごめんごめん」

 つい、前のめりになっちゃった。

 なんとか席に座りなおすと、となりの席の女の子は、うれしそうに話しはじめた。

「ええっとね、相手は同じ塾の人なんだ。違う学校の一つ上の先輩なんだけど、同じ時間に帰ることがあってね。ときどき話すようになって……」

「そうなんだ。それで、どんな人?」

「えっとね、国語と英語が得意で……って、そうじゃないよね。話がおもしろくって、やさしい人だよ。前に消しゴムを忘れたときに貸してくれたんだ」

「わあぁ、いいなあ」

 わたしがうらやましがると、となりの席の女の子は、ますますはにかんでいく。

 ううっ、その笑顔がかわいい! やっぱり恋をするとかわいくなるって本当!?

「いいなあ、わたしも好きな人がほし〜い! いっそ一足飛びに恋人でもいいのに!」

「まひる、興奮しすぎだよ」

 桜子が、くすっと笑った。

「でも、あこがれるよね。わたしも、すてきな人がいたら、つきあってみたいな」

「そう、それが問題だよね。つきあいたいって思える人は、そうそういないし」

「あ、でも、まひるの兄弟は、けっこうかっこいいよね!」

 まわりの子たちが、きゃっと声を上げた。

「わかる。朝陽くんと星夜(せいや)先輩、いいよね! 朝陽くんは、運動が得意でカッコいいもん。去年、学校の球技大会でサッカーしてたけど、中学生も軽々かわしてシュートを決めてたよ!」

「星夜先輩は一つ上とは思えないくらい大人っぽいし、クールでイケメンだと思うなあ」

「えー、朝陽と星夜?」

 うーん……たしかに、カッコいい、はカッコいいんだけど。

「でも、朝陽は、ギリギリまでテスト勉強しないだらしないところがあるし、星夜もやさしすぎて優柔不断なところもあるよ。わたしは、二人じゃ満足できないかなあ」

「じゃあ、まひるの理想の恋人ってどんな人?」

「よくぞ聞いてくれました。それはもちろんっ」

 わたしは、人差し指をぴんと立てた。

「カッコよくてやさしくて、笑顔がさわやかで頭がよくて、キュートで強くってクールで、さりげない気遣いができて、おしゃれでプレゼントのセンスがよくって、でもちょっとドジなところもあって、かわいくて、とにかく、ゾクッとしちゃうくらいのあまくて大人っぽい声で!」

 そのとき、まわりのクラスメイトの心に同じ言葉が浮かんだ。

(まひるって頭はいいけど、恋愛に関しては、けっこう夢見がちだなあ……)

 シーン――

「? みんな、どうしたの?」

「……い、いやあ、なんでもない。まひる、がんばれよ」「あたしたちも応援してるね」

「ありがとう! あ、そろそろ昼休みが終わるね。授業の準備をしないと」

 えっと、理科のプリントはしまって、国語の教科書を出して、と。

 ノートを机に出したところで、前の席の桜子(さくらこ)があわてだした。

「桜子、どうしたの? 忘れ物?」

「……手帳がないの」

「えっ」

 桜子が、バッグの中身を机の上に広げる。教科書にノートに、ふでばこに……。

 たしかに、いつも使ってるドット柄の手帳がない!

「どこにいったのかな? 桜子、今日、手帳を持ってきたのはまちがいない?」

「うん。家を出るときにバッグに入れたから。学校でも持ちあるいてて……どこかで、落としたのかも。どうしよう、まひるちゃん!」

 わ、めずらしい。桜子が、すごくあわててる!

 とにかく、安心させてあげなきゃ。

「桜子、だいじょうぶ。落とし物として見つかるよ。学校の中にあるんだから」

「でも……手帳の中身を人に見られたくないの。わ、わたし……」

 桜子が、今にも消えいりそうな小さな声で言った。

「中に、す……好きな人の写真を入れててっ」

「ええ!?」

 それは大変! どうにかして、だれよりも先に見つけなきゃ!

 でもでも、もうすぐ授業だから走りまわってさがす時間はないし……。

 えーい、朝陽も友だちのためにがんばってた。わたしも困ってる親友を助ける!

「ねえ、桜子。最後に手帳を見たのがいつか覚えてる?」

「えっ、最後に見たのは……移動教室で行った理科室かな。その授業のあと、学級委員の仕事で調理実習室へ行って、帰りに中庭を通って……」

「まかせて!」

 スキル連発しなくっちゃ。しばらく、息を止めないと。

 わたしのスキルは目を閉じるだけで使えるけど、遠い場所を視ようとしたり、連続して視ようとしたりすると、息を止めるくらい集中しないとむずかしい。

 そっと目を閉じる。口も閉じる。

 集中。ざわざわする教室の声が遠くなる。宙に浮かんでいるような、変な感覚がしてくる。

 準備オーケー。

 まずは、理科室!

 たしか、一番後ろの席に座ってたよね――。

 頭の中に、最初はぼんやりと、だんだんはっきり理科室の映像が浮かんでくる。

 リアルタイムの――今の、理科室の映像だ。

 次の授業では使わないのか、生徒の姿はなく、理科の先生しかいない。

 あ、先生がテストの丸つけしてる。点数が気になる~。

 でも、それより桜子の手帳をさがさなきゃ!

 桜子が座っていたテーブルの上は――片づけられていて何もない。

 引き出しの中――こちらも、空っぽだ。

 床のすみずみまで視てみるけれど、落ちているのは小さな紙くずだけ。先生の机にも、ない。

 たぶん、他のところで落としたんだ。

「桜子、理科室の次にあやしいのはどこ?」

 目を閉じたまま質問すると、桜子がすぐに答えた。

「次? 理科室の次は、調理実習室だけど」

 そうそう、調理実習室。特別棟の一階!

 こめかみを押して集中すると、まぶたの裏に映る映像が切りかわる。

 昼休みでだれもいない調理実習室。

 調理台の引き出しの中、なし。調理台の下、なし。

 先生の調理台の上には――次の調理実習「ゼリー」のお知らせプリントだけ!?

「う~ん、ここでもないの!?」

 じゃあ、ラストは中庭。一階の渡り廊下のすぐ横!

 急げ急げ〜!

 まぶたの裏に中庭が視えた瞬間、目を閉じているのに思わずまぶしく感じる。

 お昼の日差しのなか、中庭を、さっと視まわす。

 調理実習室から戻るときに通るなら、ここで曲がって……。

「あっ!」



 ベンチのそばの芝生の上に、きれいな水色の手帳が視える。

 ドット柄の、桜子の手帳だ!

「あった〜!」

「えっ、まひるちゃん、どうしたの?」

「え? ああ、ええっと、なんでもない、なんでもない」

 さすがに、中庭に手帳があるよ、なんて突然言ったら変だもんね。

「桜子、わたし、朝陽にわたすものを思いだしたの。ちょっと行ってくるね」

「えっ。でも、まひるちゃん、もうすぐ先生が来ちゃうよ!?」

 そうだった。

 パチっと目を閉じて、こんどは職員室を視る。国語の白石(しらいし)先生は……職員会議が長びいてる。

「だいじょうぶ。たぶん、間に合うから!」

 わたしは、さっと廊下に出る。目指すのは、もちろん中庭。

 階段を下りて、スキルで視た中庭のベンチへ走った。

「あった、手帳!」

 手帳をすばやく拾って、ついていた土をハンカチで落とす。

 ふ〜、これで解決! このスキルって、さがしものでは特に便利なんだよね。

ああ、中に入ってる桜子の好きな人の写真が見たい! スキルでこっそり視られるけど……。

ううん、絶対しない。

 人のヒミツは、勝手に視ない――それがわたしのルール。

 桜子にないしょで視たら、気持ちよくおしゃべりできなくなるから。

「さてとっ。あとはゆっくり教室に帰ろうかな。先生はまだ職員室のはず――ああっ!」

 スキルで職員室を視て、ぎょっとする。

 いつの間にか、会議が終わってる。先生が職員室を出るところだ!

 このままじゃ、教室に着くのが先生より遅くなる。

 怒られて、その手帳はなんだって言われたら!?

「急いで帰らなきゃ。あー、でも走ってきたから、もう疲れた〜!」

 そう言いながらも、重い足を引きずって教室へ走りだす。

 はあ、はあっ……息、きつーい! わたし、運動はきょうだいで一番ダメなんだよね……。

 疲れきって、思わず目を閉じる。

 先生は、今――もう二階!? うわあ、全速力〜!

 ひいひい言いながら、階段を上る。

 先生も、別の階段を上ってる。もうすぐ教室のある三階だ。

 間に合わない!?

「ううん、あきらめない~!」

 三階まで上りきり、あわてて教室にかけこむ。席についた瞬間、先生が教室のドアを開けた。

「みなさん、すみません。職員会議で遅くなりました。今から授業をはじめますよ」

「はあ~~~~……」

 ギリギリセーフ。

 へなへなと机にうつぶせになると、桜子が不安そうに振りかえった。

「まひるちゃん、だいじょうぶ? すごく苦しそうだよ」

「ぜえ、ぜえっ……ぜんぜんっ! そうそう、これ、桜子の手帳だよね?」

 わたしが手帳をとりだすと、桜子が目を見ひらいた。

「これ、わたしの! まひるちゃん、すごい。どこで見つけたの?」

「朝陽の教室に行く途中、中庭でね。えへへ。なんとなく、そこにある気がしたの」

「いつもの〈まひるちゃんのカン〉? まひるちゃんは、すごくカンがいいもんね」

「大川(おおかわ)さん、神木(かみき)さん、授業はじめますよ。教科書を開いて」

「はーい」

 あわててページを開く。先生がホワイトボードを向いたところで、桜子がこっそりとささやいた。

「まひるちゃん、本当にありがとう。あとで、何かお礼させて!」

「そんな、気にしなくていいよ」

 わたしは桜子の顔に、大きくピースサインした。

  あ、そうだ。いいアイディアを思いついた!

「じゃあ、今度ある家庭科の調理実習で、作ったスイーツを交換しよう。きっと、わたしの大好物のゼリーを作ると思うんだ。これも、わたしのカンね!」


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