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ものがたり

注目シリーズまるごとイッキ読み!『神スキル!!! キセキの三きょうだい、登場!』第1回


神バズリ中☆ファン増加率【No.1】の超人気シリーズ「神スキル!!!」1巻がまるごと読める! 「イッキ読み」を公開中!!

朝陽、まひる、星夜の三きょうだいは、
めちゃくちゃすごい能力〈神スキル〉を持っていた!
ただし、「神スキルを秘密にする」——これが三人の約束だ。

新学期、クラスメイトの様子がおかしいことに気づいた、朝陽たち。スキルを使っての初めての調査をスタート!
危ない犯罪組織? 銃? 印刷工場でニセ札!? 大事件の計画を見ぬいた時、クラスメイトがさらわれて…!
「警察も解決できないなら、おれたちが、敵のアジトに潜入して、人知れず助けだす!」
手にあせにぎるドキドキの物語の幕が開く!


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第1章 あぶない寝起き注意報!?


「きゃあーっ!!」

 叫び声が聞こえて、おれ、神木朝陽(かみきあさひ)は、ハッと顔を上げた。

 いつの間にか、人気のない街の中に立っている。

 あたりはうす暗くて、まわりにはだれもいない。

 けれど、遠くに悲鳴を上げながら走る女の子が見えた。

 その子を、大きな体の男が捕まえようと追いかけている。

 女の子を助けなきゃ!

 迷わずかけだす。でも、女の子とはかなり距離がある。

 このままじゃ、男が、先にその子を捕まえてしまう。

 ダメか!? ……いや、おれがスキルを使えば!

 あたりをさっと見まわすと、視界のすみに、ちょうどよい大きさの白い物があった。

 その白い物を見つめて、すべての意識を集中させる。

 背中に、独特の感覚が走る。

 この重さなら――飛ばせる!

「行け!」

 ビュンッ ――ドンッ!

 おれがスキルで飛ばした白い物が宙(ちゅう)を飛び、男のひざに勢いよく当たった。

 男が転ぶように倒れたすきに、女の子は無事に走りさっていく。

 よかった、助けられた! と、ほっとしたのもつかのま。

 男にぶつかったものを見て、目が点になる。白い物の正体は――ニワトリの目覚まし時計だ。

「ええっ、なんで、おれの目覚まし時計が~~~~!?」

 ――そこで、夢は終わった。 


 ピピピピ ピピピピ!

「あ・さ・ひ、起きて!」「もう朝だぞ、朝陽」

 目覚まし時計の音と二人の声に、おれは、ぼんやり目を開ける。

 この声は、姉のまひると兄の星夜(せいや)だ。遅刻しないように、わざわざ起こしにきたらしい。

「ふはあ……なんだ夢かあ」

 でも、変な夢だったな。少し遅くまでゲームしたせいかも? とりあえず……。

 ていねいに布団をかぶりなおす。

「……おれ、もうちょい寝る」

「ダメッ、ダメダメダメ! 朝陽、二度寝なんて絶対ダメ~~~~!」

「朝陽、頼むから起きてくれ! このままじゃ、オレたちの命があぶないっ」

「はあぁ……二人ともオーバーじゃない。ただの遅刻で命にかかわるなんて――」

「「オーバーじゃな~い!!」」

「うわっ! びっくりした。二人の声、目覚まし時計より大きくない?」

「い、いっ、いいから今すぐ起きてー! ああっ、もう限界~」「朝陽、早く!」

「あ~、わかった! 今、起きるから。えっと、目覚まし時計はここに――」

 スカッ

 まくらの横にのばした手が、空を切る。

 あれ? 時計がない。

 布団から顔を出すと、目の前をニワトリが羽ばたいていく。

 いや、あれは、ニワトリ形の目覚まし時計だ。

 ビュンッ ビュンビュン

「……目覚まし時計が飛んでる。おれ、まだ夢、見てる?」

 違う、現実だ……。まわりを見ると、他にもいろんなものが、すごい速度で飛びかってる。


 エンピツも、マンガも、かばんも、山積みにしていた洗濯ものも――。

 そのたくさんの物の間を、必死な顔のまひると星夜が、あちこち逃げまわっていた。



 あれを動かしてるの、ぜんぶ、おれ!?

「げっ!? おれ、また寝てる間に神スキルを使ってた!?」

 そう叫んだ瞬間、まひるが飛んできた教科書をしゃがんでよけた。

「早くスキルを止~め~て~~~~!」

「わかった! 今、止めるから」

「あっ待て、朝陽。慎重(しんちょう)にしないと」

 ゴツッ

「いてっ!」

 スキルを解除(かいじょ)した瞬間、真上を飛んでいた目覚まし時計が落ちてきて、おれのおでこに直撃する。

 気をぬくと、スキルが切れるのは一瞬だ。

 同時に、部屋中を飛びまわっていたものがすべて床に落ちた。

「きゃああああ!」「うわあっ」

 ガシャン! ガラガラ、ドシン、ドスーン!

 ……あー。

 たくさんの物が床に落ちた振動が、ベッドまで伝わってくる。

 おそるおそる床を見ると、まひると星夜が、上から降ってきた物の下敷きになっていた。

「いたたっ。あ〜もう、どんな夢を見たら、こーなるの」

「朝陽……これ、もう何回目だ?」

「えーっと、さ、三回くらい?」

「もう百回目~~~~!」

 まひるが、ノートを頭にのせたまま叫ぶ。

 そんなこと言われても、寝てるときはコントロールできないわけで……。

 とはいえ、これはやっぱり、おれが悪い。

 だって、これは、『物を動かすスキル』――おれの、神スキルのせいだから。

「ご……ゴメンナサイ」

 おれは痛むおでこをなでながら、目覚まし時計のニワトリといっしょに頭を下げたのだった。

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