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注目シリーズまるごとイッキ読み!『放課後チェンジ 世界を救う? 最強チーム結成!』第6回 心にささったトゲ


2024年 新シリーズ人気【第1位】「放課後チェンジ」の1巻がまるごと読める!
「イッキ読み」を公開中!
4人は、ドキッとしたら動物に変身!? 
力を合わせて大事件を解決する、無敵のコメディ&アクションのストーリー!

まなみ、尊(たける)、若葉(わかば)、行成(ゆきなり)は仲良しの4人組。
中1のゴールデンウイーク、フシギな指輪を見つけたことで、なんと、動物に変身しちゃった!!!
猫や犬の運動能力、タカの飛ぶ力が使える! でも……指輪が指から外れない!!!


※これまでのお話はコチラから

 

4 心にささったトゲ


「……っ……うう……っ……!」

 自分の部屋に着いたとたん、ガマンしていたなみだが、ボロボロとこぼれだした。

 ランドセルをドサッと下ろして、わたしは床に座りこむ。

 にゃーん、とすぐに白猫が近づいてきた。

「シロップ~、オーディション、落ちちゃったよ~!」

 ふわふわした体を抱きしめて、わたしは声をあげて泣きだした。

 悲しくて、さびしくて、みじめで、情けなくて──ヒック、ヒックとしゃくりあげていたら。

 ぺろっ。

 ざらざらしたあたたかいものが、わたしのほおをなでた。

 ぺろ、ぺろ……。

 シロップが、わたしのなみだをなめてたんだ。なぐさめようとしてくれてるの……?

「ありがとう、シロップ……」

 お礼を言うと、シロップは賢そうな金と青の目でわたしを見あげて、にゃーん、と鳴いた。

「でもちょっと、痛い。舌」

「…………」

「ごめん! ウソウソ、シロップ大好き!」

 少しすねたように、ひざから下りようとする白猫を、あわてて抱きしめる。

 わたしが抱きしめて泣いてたせいで、シロップのふわふわの毛は、ビチャビチャだった。

 猫は水がキライなのに、いやがらずに、ずっとそばにいてくれたんだね。

「シロップとお話しできたらいいのにな~」<

「にゃー」

「でも、こうしてそばにいてくれるだけで、幸せだよ」

 シロップのあたたかい体をなでていると、トゲトゲしていた心が、丸くなっていく気がした。

「シロップ、大好き。ずっといっしょにいてね」

 ギュッとした瞬間(しゅんかん)、するっと腕の中からシロップはぬけだしてしまう。

「え……?」

 いつもわたしがそう言うと、まるで返事をするみたいに鳴いてくれたのに。

 そのまま、シロップは少しだけ開いていたドアの方へと歩いていく。

 突然(とつぜん)、ものすごくいやな予感に襲われた。

「ダメ、シロップ……行かないで……!」

 ドアの向こうは、まっくら闇。

 なぜか、どうしても止めなきゃ、と思うのに、体が急に動かなくなる。

 シロップはわたしの声も聞かず、出ていこうとする。

 胸がドキドキと鳴り、体中からイヤな汗がふきだす。

「シロップ……!」


 ボン! と変身する感覚とともに、わたしは目を覚ました。 

 宙にのばしていた手を下ろして、ベッドの上で、深々とため息をつく。

 シロップの夢は、半年前から、何度も見ていた。

 最後はいつもシロップがどこかへ行ってしまう恐怖で、目が覚める。

 ……今日の夢は、館林(たてばやし)さんたちとのことがあったからかな。

 小四の時の、現実の記憶がまざっていた。

 学芸会で劇をやることになって、台本を見たら、主役四人のキャラがわたし、尊、若葉ちゃん、行成に似てる気がしたんだ。

 それで、四人でいっしょに主役をやろうって約束したんだけど、希望者がいっぱいいて、オーディションをすることになって。

 結果、わたしだけ、落ちちゃった……。

 みんなには、ちゃんと笑顔で、おめでとうって言ったよ。

 こういうこともあるよねって、平気なふりして、帰ってきた。

 でも、オーディションの前にいっぱい練習(れんしゅう)してたし、すごくショックだった。

 わたしは幼なじみたちとはちがうんだ、ダメな子なんだって思って、苦しかった。

 せっかく選ばれた三人も、心から喜べなくなっちゃって、足を引っぱったみたいな自分が、情けなかった。

 家に着いたとたん、泣いちゃって……そしたら、シロップがなぐさめてくれたんだ。



 ……苦い思い出だけど、引きずったりはしてないし、普段は忘れてるよ。だけど……。


 ──「長所ゼロなのにカンちがいしてるイタい子」


 また、あのイジワルな声がよみがえり、胸がチクチクした。


 ──「言っとくけどオレ、今んとこ、まなみが指輪見つけてよかったって思ってるから」


 尊の言葉には、すごく救われたけど、わたしが三人の足を引っぱってるんじゃないかって気持ちは、消えない。

「……シロップ……なんで、そばにいてくれないの?」

 こんなことを言う資格なんて、わたしにないこと、わかってる。

 もしかしたら、わたしをうらんでいるのかもしれないのに、それでも、思ってしまう。

 うれしい時や、楽しい時はもちろん──

 大好きな幼なじみたちにも相談できないような、つらいことや悲しいことがあった時。

 いつもシロップはそばにいて、わたしに寄りそってくれたのに……。

「……さびしいよ、シロップ……」

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