人気急上昇 第1位の「放課後チェンジ」。
人気うなぎ登りの第4巻が発売前に59ページもためし読みできちゃう!
この巻から読んでもおもしろい!
女子も男子も大笑い、ドキドキハラハラのお話を今すぐチェック!
まなみ、尊(たける)、若葉(わかば)、行成(ゆきなり)は動物に変身できる!
4人は学校の大イベント、二泊三日の林間学校へ出発!
牧場では若葉がハムスターレースに参加したり、キャンプ場では、おかしなカレーを作ったり、キザ男子の登場、肝試(きもだめ)し、オリエンテーリングなど、大笑いのハプニングが連続!!!
さらには、ゲームの異世界へ……!?
『放課後チェンジ 林間学校で永遠の誓いを!?』
(藤並みなと・作 こよせ・絵)
2月12日発売予定!
※これまでのお話はコチラから
4 若葉のミラクル・クッキング
「寿命(じゅみょう)がちぢんだよ……」とぐったりした若葉(わかば)ちゃんが行成(ゆきなり)ともどってきたところで、ちょうど全体の集合時間になった。
またバスに乗って、星見里(ほしみさと)自然センターというところでこの地方の自然について学習したり、見晴らしがいい展望台(てんぼうだい)にのぼって景色を楽しんだりした後、キャンプ場にとう着。
あらかじめ設営してあるテントに班ごとに荷物をおいたら、すぐに炊事場(すいじば)へ移動した。
夕食は、飯(はん)ごう炊(すい)さんでカレーを作るんだ!
わたしはキャンプも飯ごう炊さんも初体験。うまくできるかな~、ドキドキ。
まきや食材、調理器具などを先生から受けとったら、火起こし組と、料理の下準備組にグループ分け。
グッパーで分かれて、わたしは海妃(みき)ちゃんと彩音(あやね)ちゃんといっしょに火起こし組になった。
「いきなり木に火をつけようとしてもダメなんだっけ?」
「新聞紙をぎゅっとまいて、そこに火をつけて、細い木に燃えうつらせるんだよね」
みんなで確認しながら、かまどの中に新聞紙やまきをセットしていく。
「まなみ、火をつけて」
「オーケー!」
ちょっと緊張(きんちょう)しながら思いきってマッチをすると、ボウッと火がついた!
「あちちち」
風のせいで指の方に火があおられて、あわててかまどの中にマッチを放りこむ。
火は新聞紙を燃やして、そこから小枝にも燃えうつった! ……けど、大きいまきには上手く着火(ちゃっか)しなくて、すぐに消えてしまった。
「もう一回だね」
――それから何度かチャレンジしたけど、なかなか大きなまきが燃えてくれない……。
「新聞紙、なくなっちゃったねー」
「またもらいに行こうか?」
海妃(みき)ちゃんたちとこまっていたら、
「火がつかないのか?」
となりで一発で火起こしに成功してた尊(たける)が、こっちのかまどをのぞきこんできた。
「うん。どうしても大きいまきに火がつかなくて……新聞紙もなくなっちゃった」
「ものが燃えるには酸素(さんそ)がいるから、空気の通り道ができるようにまきを組むんだよ。で、新聞紙の代わりに……」
尊はちゃっちゃと手際よくまきを組みたてると、ポケットから、何かを取りだす。
「松ぼっくり?」
「そう。これ、よく燃えるから、いくつか拾っておいた」
組みたてたまきの真ん中の空洞(くうどう)になっているところに松ぼっくりを置き、シュッとすったマッチを、かまどに投げいれる。
松ぼっくりに点いた火は小枝へ、そして、大きなまきへと順調(じゅんちょう)に燃えうつっていった……!
「すごい、神崎(かんざき)くん!」
「天才!」
「うちの家族、アウトドア好きで、よくキャンプに連れてかれたから慣れてるんだ。――ここまで火が育てば、あとは不器用なまなみでもだいじょうぶだろ」
歓声をあげる海妃ちゃんたちに説明してから、わたしの方を見てニヤッと笑う尊。
「一言多いよ! でも、ありがとう、助かった。お礼にカレーができたら分けてあげるね」
「うちも同じカレーだし、どう考えてもオレたちのがうまそうだけどな」
「くっ、こっちには秘密兵器があるから、負けないもん! じゃあわたし、若葉ちゃんたちの様子を見に行ってくるね」
海妃ちゃんたちにそう言うと、「秘密兵器?」と首をかしげる尊を残して、わたしは洗い場へ向かった。
「斬(ざん)! 斬!」
洗い場へ行くと、まな板の上で若葉ちゃんがダイナミックに包丁(ほうちょう)をふるっていた。
その横ではすでに作業を終えたらしい行成がキョーミ深そうに腕組みしながら、希望(のぞみ)ちゃんや他の生徒はあんぐりと口を開けて、若葉ちゃんの雄姿(ゆうし)(ご乱心?)を見つめている。
「おつかれ様~、せいが出るね」
「ああ。あいかわらず、若葉の太刀筋(たちすじ)は迷いがない」
「あ、まなみ、聞いて!」
若葉ちゃんが、いつになくコーフンした様子で話しだす。
「ついに真っ向斬(まっこうぎ)りと、さらに一文字斬(いちもんじぎ)りをマスターしたよ!」
「すごい! けさ斬(ぎ)り以外もできるようになったんだね!」
うれしそうな若葉ちゃんにつられてわたしも声をはずませたけど……これ、料理をする時に出てくる単語じゃないよね?
「見ててね……斬(ざん)! 斬!」
若葉ちゃんは気合いをこめて包丁をふりおろすと、ニンジンをたてに真っ二つにした後、横にも真っ二つにしてみせた。
「おお~、ちゃんとまっすぐに切れてるね」
「でしょ⁉ これで全て、斬りおえたよ」
まるで刀についた血をはらうように包丁をピッとふりながら、ほほ笑む若葉ちゃん。
なんか敵を全員たおしたみたいに聞こえる……って待って。これで完成⁉
斬った、もとい切った野菜を入れたボールを見ると、どれも四分の一サイズ。でかい!
「若葉ちゃん、ちょっと豪快(ごうかい)すぎるから、もう一文字斬りお願いできる?」
「そっか、ごめん。じゃあ……斬(ざん)! 斬!」
若葉ちゃんはわたしがまな板にのせた四分の一サイズのニンジンを、たてに真っ二つにした後、横に真っ二つ。
「「「「⁉」」」」
わたしや行成、希望ちゃんたちだけでなく、切った本人である若葉ちゃんもギョッとしたように目をみはる。
「若葉ちゃん、横に一回切るだけでいいよ?」
「うん、私もそのつもりだったんだけど……もう一度やってみるね」
また別のニンジンをまな板にのせて。
「斬(ざん)! 斬! ……ダメだ、一文字斬りだけしたくても、どうしても最初に真っ向斬りしちゃう!」
頭をかかえる若葉ちゃん……なんで!?
「若葉……おそらく若葉がマスターしたのは、真っ向斬りと一文字斬りじゃない」
ゴクリ、とつばをのみこんでから、行成が口を開く。
「と、いうと……?」
「若葉がマスターしたのは、十文字斬(じゅうもんじぎ)りだ」
行成の指摘に、ハッと大きく目を見開き、「そういうこと……!?」とつぶやく若葉ちゃん。
いや、だからなんで⁉ どういうこと⁉
とりあえず、料理するには不便(ふべん)すぎる特性だな……。
ふぞろいではあるけど細かく切れた野菜や肉、とぎおわって飯(はん)ごうにセットしたお米を持って、若葉ちゃんたちとかまどにもどる。
「おかえりー。火はちゃんと燃えてるよー」
「ありがとう! じゃあ、カレー作りにとりかかろう」
かまどの上に飯(はん)ごうを、その横になべを置いて、なべにサラダ油を引いて、食材をいためてから、水を入れる。
ふっとうしたらアクをとって、あとはフタをして材料がやわらかくなるまで煮るんだよね。
「ご飯も、しばらくこのままでいいんだっけ?」
「うん、『はじめちょろちょろ なかぱっぱ じゅうじゅう吹いたら火をひいて 赤子(あかご)泣いてもフタ取るな』ってね」
若葉ちゃんがやけに語感がいいフレーズを口ずさむ。
「えっ、何それ?」
「お米の上手な炊(た)き方についての言葉だよ。最初は弱火で、中ごろは火を強めて、ふっとうしたら火を弱めて、どんなことがあってもとちゅうではフタを取らないことが大事なんだって」
「へえ~、おもしろい!」
はじめちょろちょろ……リズムが良くて、耳に残るな~。
「じゃあ、じゅうじゅう吹くまで様子見だね。そうだ、今のうちにカレーに秘密兵器を投入しよう!」
「さっきも言ってたけど、まなみの秘密兵器って何?」
彩音(あやね)ちゃんに聞かれて、ふふふ……と、ふところからソレを取りだす。
「カレーに入れたらおいしくなるという特製(とくせい)スパイス。その名も――『ケサランパサラン』!」
「「「「???」」」」
「お母さんが教えてくれたの。これを入れたら風味がグッと増すんだって」
「まなみ……たぶんだけどソレ、『ガラムマサラ』じゃねーの?」
となりで聞いてたらしい尊からツッコまれて、スパイスを見ると、たしかに『ガラムマサラ』と書かれていた。
「まちがえた!」
「ケサランパサランは毛玉みたいなナゾの生物のことだよね」
若葉ちゃんがほおをほころばせながら教えてくれる。
「そっか、どっちも魔法の呪文(じゅもん)みたいだから、まざっちゃってた。とにかく、このスパイスを入れたらいいらしい」
「あはは、おおざっぱ!」
「どれくらい入れるの?」
「はて? せっかくだし、全部入れたらいいんじゃない?」
「待て待て待て!」
全力の尊ストップが入った。
「ガラムマサラはその人数分なら、小さじ1くらい。入れるのもルーを入れて煮(に)こんだ後、完成する直前だ」
「なんと。入れれば入れるだけおいしくなると思ってた」
「そんな調味料はねえ! さとうも塩も、とりすぎたら死ぬだろ? なにごとも適量がかんじんだ」
「ラジャーです、教官!」
尊に教わったとおり、最後にガラムマサラを入れて、カレーができあがった。
「いいにおい!」
「こげてないし、とろみもいい感じだし、上出来だね!」
「うん、早く食べたい……けど、ご飯はまだしばらくかかりそう?」
飯ごうをかまどの火にかけてもう四十分はたつのに、全然ふっとうする気配がない。
「ふっとうしたらじゅうじゅう蒸気(じょうき)が吹きでてくるんだよね?」
「どうなってるか気になるけど、フタはとっちゃダメだしね……」
3班のみんなで落ちつかない気分になりながら、うんともすんとも言わない飯ごうを見つめる。
「とっくに黒こげで、フタの中には絶望(ぜつぼう)が広がってるのかもしれないわ……」
希望ちゃんの言葉に心配になって、尊たちはどうだろうとのぞき見ると、すでに飯ごうはカレーのなべとともに横にどけて、今はかまどにアミをのせて、じゃがいもやニンジンを焼いている。
「何してるの?」
「カレーの野菜を煮(に)こまずに、直火で焼いてる。これをのせたら完成」
「おいしそう! ……ところで神崎(かんざき)教官、うちの飯ごうがまだ吹きこぼれないんだけど、どうしたらいいと思いますか?」
「フタ取って確認すれば?」
「『赤子泣いてもフタ取るな』じゃないの?」
「ああ、あれはウソだ」
「「ウソなの⁉」」
若葉ちゃんといっしょに目を丸くする。
「正確にいえば、シロートは火加減の調整がむずかしいから、不安な時はフタをとって中を確認した方がいい。フタはすぐしめれば問題ないし、多少味は落ちるとしてもこげるよりずっとマシだろ」
「そ、そうなんだ……」
「オレの経験では、吹きこぼれないまま中で水分が蒸発(じょうはつ)して、米が炊(た)けてたこともあるしな。その時はたぶん、最初に火が強すぎた。とにかく、上手くいってなさそうなら要確認(ようかくにん)」
いそいで飯ごうのフタを取ってみると、尊の言うとおり中はすっかり水分がなくなって、お米が炊きあがっていた。
スプーンをつっこんで底を見ると、おこげになって固まってるけど、こげるギリギリ一歩手前状態!
「あぶなかった~」
「すべりこみセーフ!」
「ごめん、みんな。まちがった情報を教えちゃった……」
班のメンバーに手を合わせて謝る若葉ちゃんに、みんな、笑顔で答える。
「ううん、私もあの言葉、聞いたことあったし、フタは絶対取っちゃダメだと思ってた」
「こげなかったからいいじゃん」
「この巧妙(こうみょう)なワナを見ぬくのは、至難(しなん)のわざよ……」
「ねー。でも神回避(かみかいひ)したし、やっと食べられる! おなか空いた~」
紙皿にご飯とカレーをたっぷりと盛って、炊事場(すいじば)のそばにある、長テーブルが並んだ野外食堂に移動した。
「いただきまーす!」
パクリとスプーンで一口ほおばると、スパイスの香りが鼻へぬけて、口いっぱいに広がるカレーの味と、存在感バツグンのお米の歯ごたえ。
「ご飯はけっこうバキバキするけど、この食感もシンセンで楽しいね~」
「うん……歯がきたえられそうだね」
「苦みがないだけマシかな」
「いちおう食べられるし、カレーはおいしいよね」
「……かたいわ……」
希望ちゃん、ハッキリ言っちゃった!
ご飯は食べてみるとパサパサだし、ところどころ固まって厚焼きせんべいみたいになってて、失敗だったかも。でも、わいわい言いながらみんなで作ったカレーを食べるのは楽しかったし、おなかが空いてたから、最後までおいしく食べられた。
尊たちの直火焼(じかびや)き野菜カレーは見るからにめっちゃおいしそうで、班のメンバーの絶賛(ぜっさん)の声がひびいてたから、今回は敗北をみとめざるをえないけど……。
「……えっ?」
ふと視線を向けると、行成がテーブルの上の茶わんにシャカシャカとお茶を点ててたから、ビックリした。
行成は茶せん(抹茶(まっちゃ)を点てる道具)を置くと、両手で茶わんを持って、コクリと一服(いっぷく)。
「……ふう」
「ええっ、わざわざお茶の道具持ってきたの?」
「アウトドア専門店で売ってた、コンパクトセット。通常は野点(のだて)……野外で茶を点(た)てる時は茶箱やカゴに入れて持ちはこぶが、かさばるからな。これを見つけた時は感動した」
なんと茶わんは軽くてじょうぶなステンレス製で、重ねることも可能。
茶しゃくは折りたたみ式だし、使う道具は全て茶わんの中に入れて、まとめて小さなビニール製のふくろに収納(しゅうのう)できるらしい。
「なんか、新しいね……」
「茶道って、道具にこだわって、伝統とかお作法とかをすごく重視するイメージだったよ」
「なにごとも臨機応変(りんきおうへん)、状況に合わせて柔軟(じゅうなん)に対応する方がいいだろう。まなみたちも飲むか? もうすぐ茶うけもくるぞ」
「「茶うけ?」」
若葉ちゃんとキョトンとしていたら、尊が、「おまたせー」とやってきた。
その手の皿にのっているのは――焼きリンゴ⁉
「どこから持ってきたの、このリンゴ!?」
「家からに決まってるだろ。デザートに作ろうと思って持ってきた」
先生、リンゴはおやつに入りますか?
「ほんと自由だな、この人たち……」
「ふつう、林間学校でデザートまで勝手に作ろうと思わないよね……」
「なんだよ、いらないのか?」
「「いる!」」
尊は二つの班の他のメンバーにも声をかけて、行成は人数分のお茶を用意する。
切り分けられた焼きリンゴは金色にかがやき、高原の澄(す)んだ空気の中で、フルーツとシナモンの甘い香りがただよっていた。
こうして、わたしの初めての飯(はん)ごう炊(すい)さんは、まさかのアウトドアお茶会で幕を閉じた。
つづきは、『放課後チェンジ 林間学校で永遠の誓いを!?』を読んでね!
書籍情報
2月12日発売予定!
シリーズ1、2、3巻ためし読み公開中★
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