
2024年 新シリーズ売上 第1位の「放課後チェンジ」。
人気うなぎ登りの第3巻が60ページも試し読みできちゃう!
第3巻から読んでもおもしろい!
ハラハラドキドキ、おなかをかかえて笑っちゃうお話を今すぐチェック!
まなみ、尊(たける)、若葉(わかば)、行成(ゆきなり)は動物に変身できる! 大喜利(おおぎり)大会やクイズ大会など、大笑いのイベントの連続。
ところが、悪霊による「ほれ薬」の事件が発生!!
行成が、まなみに恋をしちゃった!? あわてる尊も巻きこんで、まさかのドキドキの関係に!
『放課後チェンジ 友情の危機!? 波乱の夏祭り』
(藤並みなと・作 こよせ・絵)
8月6日発売!
※これまでのお話はコチラから
2章 伝説の宝とほれ薬(ぐすり)の呪(のろ)い
1 家宝に悪霊(あくりょう)がとりついた!?
翌日は、日曜日。
「まなみ、いつまで寝てるの? お母さんとお父さん、お出かけするからね。ちゃんと起きてご飯食べるんだよ?」
「ふあ~い、いってらっしゃ~い」
夢うつつで返事をしたあと、お布団の中でまどろんでいて。
次に目を開けたのは、スマホのコール音が鳴りひびいた時だった。
「もしもし……?」
『まなみ。その声は、やっぱり今起きたな?』
「行成(ゆきなり)? うん、おはよー」
『おはよう。メッセージを送っても既読(きどく)がつかないから電話した。今日の二時半に駅前のボスバーガー、来られるか?』
「うん……? 行けるけど……?」
『大事な話がある。チーム㋐、緊急集合だ』
「! わかった」
一気に目がさめて飛びおきると、電話は切れた。
時計を見ると、なんともう昼の一時半すぎ!
昨日は夜ふかししたとはいえ、我ながらよく寝たな⁉
これはのんびりしてる時間はないぞ。急がなきゃ!
お母さんが作り置きしてくれたご飯を食べて、身支度をととのえて、五分遅刻でボスバーガーにかけつけると、窓ぎわの席に、もうみんな集まっていた。
「ごめん! お待たせ!」
「ねぼすけ」
いつものようにてりやきバーガーにかぶりついていた尊(たける)に、あきれ顔でむかえられる。
「まなみ、口のはしに歯みがき粉がついてる」
「うそ⁉」
ハンカチでわたしの口元をふいてくれる若葉(わかば)ちゃん。
「いきなり呼びだして悪かったな。長時間スイミン記録の更新をジャマしたか」
「べつに記録ねらってないからね⁉ むしろ起こしてくれてありがとう」
わたしがレジで買ったジュースを持って席に着くと、行成は、「さっそく本題に入るが」と話しはじめた。休日のボスバーガーはざわざわとにぎわっていて、普通の声でしゃべる分にはまわりに聞こえる心配はなさそうだ。
「今朝がた、うちに代々伝わる家宝の一つ、『折平(おりべい)の茶しゃく』が行方不明になっていることがわかった」
「折平の、茶しゃく?」
「茶しゃくって、抹茶(まっちゃ)を容器から茶わんに入れる時に使う、竹のスプーンみたいな道具だよね?」
若葉ちゃんの言葉に、行成はコクリとうなずく。
「そう。『折平の茶しゃく』は、有名な茶人である文福(ぶんぶく)折平が作り、愛用していた茶しゃくなんだ」
「家宝ってことは、高いのか?」
「時価(じか)数百万円といわれている」
飲んでいたジュースをふきそうになった。
「数百万円⁉ 竹のスプーンが⁉」
「それ、抹茶を入れる以外に使い道あるのか?」
「ない」
「実は純金製とかなの?」

「百パーセント竹製。歴史に名を残すような茶人が作った茶しゃくは、高い価値がつけられて美術館や博物館にかざられたり、愛好家の間で取引されたりするんだ」
あんな、ぱっと見、耳かきみたいな棒が、数百万円……!
「父さんはショックで寝こんでいるが、問題は値段じゃない」
あ然とするわたしたちに、行成は淡々と言葉を続ける。
「茶しゃくが行方不明になったことが発覚した後、俺は庭によく来るメジロに、あやしい人物が出入りしたのを見ていないか聞いてみたんだ」
メジロって、目のまわりが白い緑色の小鳥だよね。
指輪の力を使うと、動物の言葉がわかるんだ。
「するとメジロは、昨日の夕方ごろ、茶しゃくがふわふわと浮かんでどこかへ行くのを見たという」
「! それって、まさか……」
「ああ。古い物だから、指輪に引きよせられた悪霊が、とりついたのかもしれない」
新たな怪事件だ!
ゴクリとみんなが息をのんだ。
「じゃあ、まずは現場を調べる?」
「今は警察がいて、俺たちは近づける状況じゃない。調査をするとしたら、もう少し落ちついてからになるだろうが、チーム内でなるべく早く情報の共有をしておきたかった」
「なるほど……」
そこまで話して、行成はコーヒーを口元に運ぶ。
わたしたちも、それぞれカロピスソーダ、いちごシェイク、アイスティーのストローに口をつけた。
ズズッとシェイクを最後まで吸った尊が、ふと窓の外を見て、「あれ」と言う。
ほぼ同じタイミングで行成が、「一つ気になることが――」と話しはじめて、言葉を切った。
「どうした?」
「牛山(うしやま)団長だ」
見れば窓のすぐ向こうの道に、たしかに赤組応援団長が、浴衣(ゆかた)姿で歩いていた。
「めずらしいね、浴衣なんて。牛山団長も行成みたいに和服が好きなのかな?」
「でも、なんとなく様子がおかしくない?」
若葉ちゃんの言うとおり、牛山先団長は肩を落として、なんだかフラフラしている。
「やけに元気がない感じ? どうしたんだろう?」
「ちょっと心配だけど今は事件の話が優先だよな」
「いや……」
自分に言い聞かせるような尊のセリフに、行成が首を横にふる。
「まだはっきりしないから、あとは急ぎじゃなくていい」
「サンキュー。なら、行ってくる」
尊は残っていたてりやきバーガーを一口でほおばると、トレーを持って立ちあがる。
わたしたち三人も顔を見合わせてから、すぐに尊の後を追って店を出た。
「団長! こんにちは」
尊がかけよって声をかけると、牛山団長はのろのろとふり返った。
「……神崎か」
「どうしたんですか? この世の終わりみたいな顔してますよ」
「…………早織が……っ……」
青白い顔をした牛山団長は、そこまで言いかけて、グッと何かをこらえるようにくちびるをかんだ。そして。
「すまん、今は一人にしてくれ!」
泣きそうな顔でそう言いのこすと、浴衣のすそをひるがえして、走りさってしまった。
「早織って、牛山団長の彼女の白組団長だよね?」
「ああ、琴井早織(こといさおり)団長。いったい、何があったんだろうな……」
牛山団長の後ろ姿を見送って、首をかしげていたところ。
「あっ、まなみちゃんたち! いいところに……」
顔見知りの町内会長のおじさんが、駅前広場の方から近づいてきた。
「会長さん、こんにちは」
「こんにちは。実はこれから駅前広場で【最強の織姫(おりひめ)&彦星(ひこぼし)コンテスト】っていうイベントをするんだけど、だれか二人、これに出場してもらえないかな?」
「今から⁉」
「何するイベントなんですか?」
「仲良しカップルがクイズやゲームで競って、優勝を目指すコンテスト。だけど、出場予定だったカップルが一組、急に不参加になっちゃって、出場者が足りなくなったんだよ」
仲良しカップル……急に不参加……。
「もしかして、その不参加になったカップルって、牛山さんと琴井さんだったりする?」
尊の質問に、「よくわかったね⁉」と町内会長さん。
「青白い顔で男の子が『出られなくなりました』って言いに来てさ。相手の体調不良とかではないらしいから、ありゃあ失恋したんだろうねえ、気の毒に」
失恋……⁉ ちょっと前まで短冊に『結婚できますように』とか書いてたのに⁉
おどろくわたしたちだけど、町内会長にはそんなことより、出場者をさがす方が重要みたい。
「もうステージに席を作ってあるから出場者がへると盛りさがるしさ。この際ほんとの恋人じゃなくてもいいし、男の子同士や女の子同士でもいいから、たのむよ! 代わりに参加して!」
両手を合わせておがむような仕草をされる。
「そういうことなら、若葉ちゃん、いっしょに出ない?」
「うーん……まなみといっしょなら、いいか」
わたしのさそいに若葉ちゃんがうなずくと、町内会長さんは顔をかがやかせた。
「よかった、助かるよ! ありがとう!」
つづきは、『放課後チェンジ 友情の危機!? 波乱の夏祭り』を読んでね!
書籍情報
8月6日発売!
シリーズ1、2巻ためし読み公開中★
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