
わたし心葉(ここは)! 今日はあこがれの星ヶ浜(ほしがはま)学園中等部の入学式!
ずーっと、サッカー部のマネージャーになりたくて、受験勉強もがんばったんだ。
新生活、ワクワクがとまらない! と思っていたけど、入学早々大ショックなことが……!?
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#1 星ヶ浜学園に入学!
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「ココ、おはよ」
「咲結(さゆ)、おはよーっ」
四月。桜の花びらが、はらはらと舞う並木道。
胸までのばしたセミロングの髪が、やさしいそよ風にゆれる。
わたし、立花心葉(たちばな ここは)。今日から、ドキドキの中学一年生!
ずっとあこがれだった、私立星ヶ浜(ほしがはま)学園中等部に入学したんだ。
星ヶ浜学園は、中等部、高等部があって、受験に合格しないと入学できない。
海沿いの通学路には、レトロな電車が走っていたり、おしゃれなカフェや雑貨屋さんが立ち並んでいたりする。勉強にも部活にも力をいれているし、学校行事も盛り上がって、すごく楽しい学校なの。
ここでなら、THE青春!っていう毎日を送れるにちがいない。
わたしがなんで星ヶ浜にあこがれていたのかは、……もうちょっとあとで話すね。
校門で待ち合わせたのは、小学生のころからの親友、星野咲結(ほしの さゆ)。
前髪を流していて、ストレートヘアがおとなっぽい、頼りになる女の子なの。
咲結も、同じ星ヶ浜学園に入学して、これから高等部まで一緒なんて。
わたしのスクールライフ、ワクワクが止まらない!
「制服、似合ってるじゃん」
「ほんと? やったー! 星ヶ浜の制服、めちゃめちゃかわいいよね」
スカイブルーのラインが入ったセーラー服の襟に、ピンクの大きなリボン。
同じブルーと紺のチェックのスカートも、すっごくかわいい。
この制服に袖をとおせる日を、心待ちにしてたんだ。
わたしと咲結は、足早に昇降口に向かった。
「クラスわけ、ドキドキするーっ。咲結と同じクラスだといいな!」
「ほんとにね。早く見よう」
うわ、すごい人だ。見えないよ~。
クラス発表の貼り紙の前には、生徒たちがごった返している。
咲結とちがって、そこまで身長が高くないわたし。
うーんと背伸びして、自分の名前を探す。
えっと、たちばな、たちばな……。
ぴょん。軽くジャンプをしてみたら、ちょうど自分の名前をみつけた。
「あ、あった!」
わたし、二組だ。
そう、わかった瞬間。
「いてっ」
んん……? 隣から、低い声。
なんだろう?
「え?」
見れば、わたしは、隣にいた男子の足を踏んづけていた。
わたしのブラウンのローファーが、ぴかぴかのスニーカーの上に、少しだけのってしまっていて……。
わっ、どうしよう!
わたしはあわてて、男子のほうに向きなおって、頭を下げた。
「ごめんなさい!」
おそるおそる顔をあげれば。サラサラの黒髪が風になびく。
形のきれいな切れ長の目と、すっととおった鼻筋。
身長も高くて、モデルさんみたいなスタイル。
すごく、かっこいい……。なんだか、吸いこまれそう。
今までみたことのないイケメンを目の前にして、ぽうっとみとれていると。
「浮かれてんなよ。鈍くさい女」
その男子は、それだけ言い放って、さっさと立ち去ったんだ。
「……へ?」
わたしはあぜんとする。
……な、なに、あの人!
前言撤回。ぜんっぜんイケメンなんかじゃない。
超、感じ悪いじゃん! ちょっと足踏んじゃったくらいで!
「ココ、クラス一緒よ。やったね」
「なんなの、もう!」
「……ココ?」
はっ。わたしは我に返る。
うわの空になっちゃってた。
「あっ、咲結。二組だった?」
「そうだけど……ココってば。ぼーっとしちゃって。どうしたの?」
「あの人の足、ちょっと踏んじゃったんだけど。なんか、感じ悪くて!」
わたしは、去っていく男子を指す。すると、咲結は目を見張った。
「あの人、って。もしかして、速水颯馬(はやみそうま)?」
「えっ、咲結、しってるの?」
「塾で、めっちゃ有名だったから。あいつ、成績優秀、スポーツ万能、そして見てのとおり、超イケメン。塾でもそうだったけど、小学校でも、女子からの人気がすごいって、うわさになってたからね」
「へ、へえー」
たしかに、イケメンでは、あるかもだけど。
とはいえ、あんな性格じゃあ……。
「けど本人は、女子とか恋愛には、まったく興味ナシ。むしろ、好きじゃなさそうね」
咲結は肩をすくめて言った。
そんな雰囲気あった。めちゃくちゃ無愛想だったもん。
「そうなんだ。まあ、もうかかわることは、ないと思うけどね!」
わたしは、さっきの速水くんの態度を思い出して言いすてた。
……そう、思っていたのに。
「それでは、自己紹介をしていきましょう。出席番号順で、すすめていきます」
教壇に立った担任の先生が、クラスを見渡す。
ちょ、ちょっと。なんで隣の席なのーっ?
あろうことか、速水くんは同じクラスの、しかも隣の席だった。
うそでしょ! こんな偶然、ある?
わたしが肩を落としているなかで、すすんでいく自己紹介。
いけない。大事な初日だもん。ちゃんとみんなのこと、覚えなきゃ!
みんなの自己紹介を楽しんでいるうちに、あっというまに順番が回ってきた。
立ち上がったわたしは、ひと呼吸おいて、息をすうっと吸う。
「はじめまして、立花心葉です。星ヶ浜には、サッカー部のマネージャーになりたくて、入学しました! サッカー部マネージャーとして、必ず全国大会にいきます! よろしくお願いします!」
わたしは笑顔で声を張った。あたりから、一斉に拍手が巻きおこる。
みんな、興味しんしんにきいてくれた感じがする。うれしいな。
そう、わたし、サッカー部のマネージャーになりたいの!
ずっとずっと、あこがれていたんだ。それも、この星ヶ浜学園のサッカー部に。
この星ヶ浜を受験したのも、それが理由。
順番を無事おえて、席に座ろうとすると。隣の速水くんが目に入った。
なぜか、ツンとした表情をしていた。
あ、あれー? 速水くん?
そして。席についた瞬間、ぼそっと言われたのだ。
「……サッカーも、マネージャーも、そんなに甘くねえぞ?」
な、なんて!?
ぶっきらぼうな言葉に、思わず耳を疑った。
こ、この男は~……! 速水くん、ほんっと性格悪い!
そんなこと、わかってるって!
わかってるけど。夢をもって、叶えたいって思うことくらい、いいじゃん!
速水くんになにか言われる筋合い、ないもん!
「うるさい! 絶対に叶えるんだから!」
わたしはとっさに声を大きくしてしまった。
途端に、教室中がしんと静まり返る。
……あ。やってしまった!
「すみません、すみません……!」
四方八方に、ぺこぺこと頭を下げる。ふつうなら、顔から火が出るくらい、はずかしいシーンだけど。
今はなんだか、それよりも、速水くんの言葉がくやしくて。
わたしの胸は、静かにめらめらと燃えていた。
サッカー部のマネージャーになって、全国にいって、速水くんを見返してやる!
<第2回へつづく> 4月23日(火)公開予定
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