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第3章『わたしの『両親』』/第4章『いつの間にか「地味」キャラに』


ある日、結乃(ゆの)が出会ったのは、鏡でも見ているぐらいにそっくりな顔した女の子・芽衣(めい)。もしかして、生き別れのふたご!?と思ったけれど、学年が違うからふたごじゃないし、姉妹でもない。…わたしたち、いったい何者!?
超気になるこのお話は、2025年12月10日発売の『ふたりはニコイチ そっくりさんはヒミツの親友』(夜野せせり・作 駒形・絵)! 性格はぜんぜん違うけど、ヒミツの親友になったふたりの、超ドキドキでワクワクな毎日を、先行ためし読みで楽しんじゃおう!


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おんなじ顔をしているけれど、ふたごじゃないことが分かった結乃(ゆの)ちゃんと芽衣(めい)ちゃん。
今回は、二人がどんな子なのか、学校やお家の話が明らかになっちゃいます!


★3★ わたしの『両親』

 つぎの日の、朝。

 ベッドから身を起こすと、わたしはすぐに、スマホを手に取った。

 きのうの、あれ。やっぱ夢だったってこと、ないよね……? 

 メッセージアプリを開くと、「友だち」の一覧に、「赤西芽衣」の名前があった。

 しかも、芽衣ちゃんのアイコンは、「くらげさん」っていうゆるキャラで、わたしのと同じ。

 好きなキャラクターが同じだなんて、これもちょっとしたキセキ?

 にんまりとほおがゆるむ。

 うーん、とのびをして、ベッドからすべり降りた。

 リビングに行くと、お味噌汁のいいにおいがする。ぐうっと、おなかが鳴った。

「おはよう結乃」

 キッチンから、エプロンすがたのお父さんがわたしに声をかける。

「おはようお父さん」

「はやく顔洗って、着替えておいで。いっしょにごはんを食べよう」

「うん」

「おはよう、結乃」

 お母さんは、洗濯物を干している。

「おはよう」

 お父さんとお母さん、ふたりとも会社員で、いつも忙しい。でも、わたしの学校行事や授業参観のときは、かならず休んで来てくれる。基本やさしいけど、怒るとこわい。

 一見、どこにでもいる、ふつうの家族だと思う。

 でもね。実はそうじゃないんだ。

 わたし、お父さんとお母さんの、本当の子どもじゃないの。

 赤ちゃんの頃、施設から引き取られたんだって。

 そのことを知ったのは、小学校の卒業式の日。

 お父さんとお母さんが、「話がある」って言って、真剣に説明してくれた。

 7月28日が本当の誕生日じゃないって知ったのも、この時。

 ショックだった。そして、つぎつぎに疑問がうかんだ。

「じゃあ、わたしの本当の両親は? 今、どこでどう過ごしてるの?」とか。

「どうしてわたしは施設にあずけられたの?」とか。

 でもね。そんなこと聞けない。

 だって、ふたりとも、わたしのこと、すごく大切に思ってくれてるもん。

 わたしが、ほんとの両親のことを知りたがったら、きっと悲しむよね。

 だから、知りたいって気持ちは、心の中に押し込めた。

 だけど、ある時、ふっと思いついたんだ。

 もしかして、どこかにわたしの「きょうだい」がいるんじゃない? って。

 本当の両親のことは気になるけど、知るのも、会うのも、こわい。

 でも、きょうだいはちがう。きっとわかりあえるはず。

 それから、こっそり、想像するようになった。

 生き別れのきょうだいは、どんな子? 

 できれば女の子がいいな。お姉ちゃん? 妹?

 いっそ、ふたごだったら、最高じゃない?

 大好きな漫画やアニメに出てくる「ふたご」たちは、みんな、トクベツなきずながあって。ふたりでひとつ、「ニコイチ」の「親友」みたいなんだ。

 なんでもわかりあえる、信じあえる、かけがえのない「親友」。

 わたしにも友だちはいるし、大好きだけど、「ニコイチ」って感じじゃないもんなあ。

 洗面所で顔を洗ったあと、部屋に戻って制服に着替える。

 晴海第三中学校、略して三中の制服は、女子がセーラー服、男子が学ラン。

 9月なかばの今は、夏服と中間服、どっちか好きなほうを着ていい。

 日焼けしたくないから、長そでの中間服にそでを通した。紺色のえりのセーラー服、リボンは赤。

 この制服も悪くないんだけど、芽衣ちゃんのかよう春蘭学園中は……。

 白いブラウスにブレザー、ボトムスはグレーベースのタータンチェック。ネクタイとリボン、好きなほうをつけていいし、色も、えんじ、青、緑から選べる。

 ニットやカーディガン、パーカーとか、手持ちのものを自由に合わせていいし、ボトムスは、男女ともに、スカートとスラックス、両方から選べる。

 なんでこんなに詳しいかというと、あこがれて、いっぱい画像を見ていたからなんだよね。

 わたしと同じ顔の芽衣ちゃんは、いつも、あの制服を着ているんだ。

 そう思うと、なんだかふしぎな気持ちになる。

 まさか、本当にあらわれるなんて思わなかった。

 わたしの、ドッペルゲンガー。

 家族3人で朝ごはんを食べたあと、身支度をしてから、わたしは家を出た。

 うちは、6階建てのマンションの3階。エレベーターで1階に降りる。体といっしょに、気持ちも

落ちていくみたい。

 学校が楽しくないわけじゃないけど……。めちゃくちゃ楽しいってわけでもないから。

 ため息をつきながらエントランスを出ると、

「あ」

 海里(かいり)くんと目が合った。

 となりの部屋に住んでいる、島崎海里くん。クラスも

いっしょ。

 海里くんも、ちょうど、家を出たばかりだったみたい。

「お、……はよ」

 ぺこっと頭を下げる。

「はよ」

 海里くんも、ぼそっと、そっけないあいさつを返した。

 さらさらの黒髪に、黒ぶちめがね。いかにも「秀才」って感じの見た目で、一部の女子のあいだでは「クール」って言われて人気がある。

 わたしたちは、となり同士だけど、「幼なじみ」じゃない。海里くんが、5年生の時に引っ越してきたんだ。

 わたしは人見知りだし、海里くんは「クール」だから、おとなりさんっていっても、ドラマチックにキョリが縮まることもなくて。せいぜい、ちょっと世間話をするぐらいの関係。

 漫画だと、となりに住む同い年の子は、めちゃくちゃ仲がいい「幼なじみ」じゃない? 

 おたがいの家を行き来したり、いっしょに登校したり、ピンチの時は助けあったりするの。

 いいなあ。ほしかったな、幼なじみ。

 っていうか、わたしって、「生き別れのふたご」とか、「ニコイチの親友」とか、「幼なじみ」とか、そういうのに、憧れすぎかも。

 だって……。あまりにも、現実がぱっとしないんだもん。


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