KADOKAWA Group
ものがたり

第2章『キセキのドッペルゲンガー』


ある日、結乃(ゆの)が出会ったのは、鏡でも見ているぐらいにそっくりな顔した女の子・芽衣(めい)。もしかして、生き別れのふたご!?と思ったけれど、学年が違うからふたごじゃないし、姉妹でもない。…わたしたち、いったい何者!?
超気になるこのお話は、2025年12月10日発売の『ふたりはニコイチ そっくりさんはヒミツの親友』(夜野せせり・作 駒形・絵)! 性格はぜんぜん違うけど、ヒミツの親友になったふたりの、超ドキドキでワクワクな毎日を、先行ためし読みで楽しんじゃおう!


※クリックすると拡大表示されます



そっくりな顔をした女の子・芽衣(めい)に出会った結乃(ゆの)。きっとわたしたち、ふたごだよ!……ともりあがったけれど、学年がちがうから、ふたごじゃない!?
フシギな二人の話はまだまだ続きます!


★2★ キセキのドッペルゲンガー

「うーん……」

 ふたたび、赤西さんが口をひらいた。

「本当は同い年だけど、なにか事情があって、1年ずれたとか?」

「どんな事情?」

「たとえば、赤ちゃんの時、大きな病気をして、小学校入学が遅くなった、とか……」

「それは、ないよ」

 ない、はず。

「赤ちゃんの頃のことは覚えてないけど、お父さんもお母さんも、結乃はめったに熱も出さない元気な子だったって、言ってたから」

「そっか……」

 赤西さんは、あごに手をやって、少し考えたあと。

「結乃ちゃん。ちょっと立ってみて」

 と言った。

「ゆ、ゆのちゃん? 名前呼び?」

「だって、他人とは思えないし。よかったら、あたしのことも名前で呼んで?」

 赤西さんが、にーっと笑う。

「う、うん」

 うなずいて、立ち上がった。赤西さ……芽衣ちゃんも立ち上がり、わたしのとなりにならんだ。

「やっぱり。あたしのほうが背が高い」

「ほんとだ」 

 顔も声も同じなのに、身長はちがう! 

 こぶしひとつぶんぐらい、芽衣ちゃんのほうが高い。

 わたしは今日、白いハーフパンツにストライプのシャツの、シンプルなかっこう(だけど、シャツにはフリルがついてるし、バッグは緑で、差し色にしてるんだよ)。

 芽衣ちゃんはショートパンツ。トップスはスポーティなパーカー。腰位置が、わたしより少し高い。

「あたしのほうが1年年上だから、背が伸びるタイミングも早くて、結果、今、結乃ちゃんより高いんじゃない?」

「……そう、かも。ふたごだと、身長も同じなのかな?」

「まったく同じかはわかんないけど、そんなに差はないんじゃないかな」

「やっぱりふたごじゃないってこと? じゃあ何なんだろう。ドッペルゲンガーで決まりかな」

「ドッペル……なに?」

 芽衣ちゃん、知らないんだ。

 わたしは、本棚をながめた。

「これにのってないかな」

『恐怖の都市伝説』とおどろおどろしい文字で書かれた本を手に取って、ぱらぱらめくる。

「あっ。あった、これ」

 ページを開いたまま、芽衣ちゃんに本を渡した。

「ドッペルゲンガー……。この世には、自分と同じ顔をした人間が、3人いる。3人集まると、ば、爆発して消滅する!?」

 ひえっ、と、芽衣ちゃんは本を取り落としそうになった。

「結乃ちゃんがあたしのドッペルさん!? ってことは、もうひとりいるの? っていうか爆発ってなに!?」

「落ち着いて芽衣ちゃん。あくまで都市伝説だから。爆発するなんて説、わたしが読んだ本には書かれてなかったよ」

 っていうか、芽衣ちゃんも「ドッペルゲンガー」のこと、「ドッペルさん」って呼んでるし。

 そのとき。わたしのスマホが、ぶるっとふるえた。

 見ると、お母さんからのメッセージ。もう電車に乗った? って。

「あっ!」

 あわててスマホを見ると、もう5時半!

 6時までには帰ってきなさいって言われてたんだった。

「ごめん芽衣ちゃん。わたし、もう帰らなきゃ」

「そ、そっか。じゃ、とりあえず連絡先……」

 芽衣ちゃんが、自分のバッグからスマホを取り出した。

 あわただしく、電話番号を教え合い、メッセージアプリで「友だち」になる。

「あたしね。今ちょっと忙しくて、あんまりやりとりできないかもしれないんだけど」

「うん」

 そうなんだ。部活とか、勉強とかかな……?

「でも、落ち着いたら、絶対、絶対、連絡するからね!」

 芽衣ちゃんがわたしの目を見て、強く言い切った。

 そして、すぐさま、

「会う日、決めとこうよ。あたし、つぎの日曜日があいてる……っていうか、そこしかあいてないんだけど、結乃ちゃんはどう? 用事ある?」

 早口でたたみかけた!

「えっ。何もないけど……」

 さっそく、約束しちゃうの?

「結乃ちゃんは、また会いたくない? あたしに」

 芽衣ちゃんがわたしの目をのぞきこむ。

「あ……会い、たい」

 キセキで、運命。

 芽衣ちゃんが言ってたけど、わたしも、そう思う。

 ドッペルさんに会えるなんて、こんなキセキ、ないよ。また会いたいに決まってる!

「じゃ、日曜の午後2時に、ここに集合ね」

 芽衣ちゃんが、ぱちんとウインクした。

「了解です!」

 笑顔でこたえると、わたしは「すずらん図書室」を出た。

 見送ってくれた芽衣ちゃんが、別れ際に、わたしの目をまっすぐに見つめた。

「あたしたちが、どういう存在なのか、今はまだわからないけど」

「うん」

「あたし……、あたし、ね」

 芽衣ちゃんの瞳が、きらりとかがやく。

「わくわくしてる!」

 花が咲いたみたいに、笑顔がはじけた!!

 芽衣ちゃんの、きらきらの瞳に、まったく同じ顔したわたしがうつりこんでいる。

 きっとわたしの瞳も、同じように、きらきらかがやいているんだ。

「わたしも……!」

 わたしも、だよ。

 どうしようもなく、胸が高鳴る。

 うなずき合って、ぎゅっとあくしゅした。

 もっとおたがいのことを知りたい。

 もっと仲良くなりたい。

 なぞの「ドッペルゲンガー」のわたしたち。

 わからないことだらけだけど、これだけは言える。

 きっとふたりは「トクベツ」なんだ!



「トクベツ」な二人が出会って、これから、わくわくな毎日が始まりそう!
ところで、結乃ちゃんと芽衣ちゃんって、どんな子なの? 
次回は2章分を一気に公開! 11月26日公開の先行れんさい第3回目『わたしの『両親』』『いつの間にか「地味」キャラに』をまっててね!


書籍情報


作: 夜野 せせり 絵: 駒形

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323880

紙の本を買う



つばさ文庫の連載はこちらからチェック!▼



この記事をシェアする

ページトップへ戻る