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ものがたり

【先行ためし読み!】『ふたごチャレンジ!』7巻 第2回 おかし作りの才能?


【「女の子らしい」や「男の子らしい」をぶっ飛ばす、ふたごの挑戦(チャレンジ)ストーリー!】

「おとなのルール」と戦うふたご、あかねとかえでの物語は、ハラハラドキドキがいっぱい! 今回はバレンタインデー…ウキウキ&ドキドキのイベントって思われてるけれど、ふたごの場合はそんなにカンタンじゃなくて…!? 最新刊を、どこよりも早くためし読みしてね!(毎週木曜日更新・全3回)
 

【このお話は…】
鈴華ちゃんや凜ちゃんたち、なかよしメンバーで 「友チョコ交換をしよう!」と約束して、うきうきのふたご。
手作りにも挑戦しちゃう!?
そこにかかってきたのは太陽からの電話…。

 

4  バレンタインに約束!?

 その名前を見て、はねた心といっしょに、体まで、ぴょんととびあがりそうだった。
 太陽とは、こまめにメッセージのやりとりはしている。
 でも、直接話すのは、病院でのハンドベルコンサート以来……!
 うれしさと、ひとつまみの不安。
 あっでも早く出ないと。
 うちは、うきたった心がまだ落ちつかないまま、通話ボタンに指をのばす。
「も、もしもし!?」
「あかね、やっほー。今、電話してヘーキだった?」
 明るい太陽の声に、ほっと肩の力がぬける。
「うん、おうちにいるよ!」
「そっか、よかった。ねえ、ビデオ通話にしてもいい?」
「えっ!? も、もちろん!」
 太陽のほうから、顔を見て話そうだなんて!?
 ちょっと前は、あんなにいやがっていたのに……。
 いそいでティッシュケースを支えにして、テーブルにスマホを立てて……。
 よし!
 いすにすわりなおして、ドキドキしながらカメラに切りかえると――
 おだやかな顔をした太陽が、ひらひらと手をふっていた。
 画面の背景は病室じゃなくて、白い壁紙に、本棚やランドセルなんかが見える。
 入院前のビデオ通話で何度か見たことのある、太陽の部屋だ。
「わあ、太陽、顔色がよくなったんじゃない!?」
「そうでしょ、退院もできたしね。とはいえ、まだ安静にしなくちゃいけないから、学校はしばらく休んでるんだ」
 太陽は口を動かしながら、さりげなく髪をなでて、整えている。
 うちも、画面に映る自分の髪が、静電気であばれているのに気づいて、手ぐしでなおす。
「またぶり返したら大変だもんね。家ではゆっくりできてる?」
「もちろん。でも、おくれをとらないように、できるかぎり勉強はしてるよ」
 わっ、えらいなあ。
 表情ににじむ自信から、がんばっているんだろうなってことが伝わってくる。
 そのとき、
   パキ パキッ
 キッチンのほうから小気味いい音がして、ふとかえでのほうを見ると。
 チョコを手でくだいて、ボウルへ入れているところだった。
 うちと目があうと、にこっとほほえむ。
 うちを待たずに、チョコ作りを始めてくれたんだ。
「ぼくのことは気にせず、ゆっくりおしゃべりしてね」ってことなんだろうな。
 ありがと、かえで!
「あかね、どうかした?」
 画面に視線をもどすと、太陽が首をかしげていた。
 そっか、太陽には、かえでの姿は見えないからね。
「ううん、なんでもないよ! それより太陽、勉強以外はなにしてるの?」
「じつはサッカーのゲームを始めたよ! 自分自身がプレイしてるみたいで、すっごく楽しいんだ」
「わーいいじゃん! うちも、引っ越し前はサッカーゲームしてたけど、ゲーム機がこわれちゃってから、そのままなんだよねえ」
 今は、ゲームがやりたいってそんなに思わなくなったから、放置してる。
 ちゃんと修理してたら、太陽とプレイできたかもしれないのに……。
「ゲーム機がなくても、俺んちにきて、いっしょにプレイしようよ」
「えっ……いいの!?」
 太陽の家に……うちが!?
「もちろん。父さんも母さんも、あかねがきてくれたら喜ぶよ」
「う、うん! 太陽の体調が完全回復したら、絶対いく!」
「やったー、楽しみだ」
 スマホの画面越しに笑う太陽の顔を見ていると、胸がドキドキする。
 太陽……。
 自分からビデオ通話を提案してくれたり。
 おうちによんでくれたり。
 うちに、ますます気をゆるしてくれたことが伝わってくる。
 太陽の入院中はケンカもしちゃって、一時はどうなることかと思ったけど。
 結果的に、距離がちぢまったよね。
「でも、家におじゃまするとなると、おうちの人の都合とかもきかなきゃでしょ。その前に、べつの場所でも会いたいなあ」
「そうだね、そうしよう! 俺もあかねに早く会いたい」
 !
 太陽のストレートな言葉に、また心臓がぴょんとなる。
「いつがいいかな?」
「うーん。じゃあ、14日とかどう? そのころなら、体調も完全によくなってると思うから」
 じゅ、14日っていうと、その日は……っ!
「……! い、いいよ!!」
 内心の動揺をおさえて、うちが答えると、太陽は、ニコッとした。
「よかった。場所はどうしようか?」
「外は寒いし、図書館の談話室とか、どうかな?」
 うちの提案に、太陽がうなずく。
「いいね。ゆっくりしゃべれそう」
「学校が終わって家についたら、すぐ連絡する!」
「うん! それじゃあ、14日。楽しみにしてるね」
「またね」と言いあって、通話を終える。
 …………ふう。
   ドキドキドキドキドキドキ
 心臓の鼓動は、全力ダッシュしたときみたいに速い。
 1人じゃ、かかえきれなくて、
「うわあ―――――かえで! 太陽と14日、会う約束しちゃった!!」
 うちは、キッチンにいるかえでにむかって、さけんだ。
「わあっ! じゃあ、太陽くんにチョコ、わたせちゃうね?」
「……!」
 うちは、こくりと大きく、うなずく。
 当然、気づいていたけどさ。
 かえでに言葉にされると、現実味を帯びてくる。
 ……でも、太陽のほうは、約束した日がバレンタインデーだってこと、ぜんぜん気にしていない感じだったけど……。
 いや。
 太陽に「気にされていない」のかどうかは、まだわからないじゃん?
 ……うん。
 せっかくのチャンスなんだ。
 太陽にあげるチョコ……――チャレンジしてみちゃう!?
 キッチンからただよってくる、あま~いチョコの香りに、うちは胸をふくらませた。

 …………だったんだけど……!?

5  おかし作りの才能?

「はああああ……」
「あかねちゃん、どうしたのっ!?」
「体調わるいの……?」
 次の日。
 つくえにつっぷすうちを見て、鈴華ちゃんと凜ちゃんが、心配そうに声をかけてきた。
 昨日とは打って変わって、テンション低めのうち。
「鈴華ちゃん、凜ちゃん~~~~。うち……うち、おかし作りの才能、ない……っっ!!」

   ★

 太陽との電話のあと。
 うちは意気ごんで、チョコ作りにチャレンジした。
 かえでは、ずいぶん先に進んじゃってたから、うちだけでがんばってみた。
 初めてとはいえ「チョコを溶かして、型に流しいれるだけなら楽勝じゃん」って思ってたの。
 そ・れ・な・の・に!
 いざ、レンジでチョコを溶かしてみると、ぜんぜん溶けなくて。
 もう一度チンすると、今度はなぜか、チョコがぼそぼそに!
 それでも、ボウルをかたむけて、カップに流しこんでみたら。
 今度はカップからチョコがあふれちゃって、あやうくヤケドしそうに!
 なんとかチョコが入ったカップを冷やしてみると、チョコの表面はボコボコのボロボロ……。
 アラザンは、豆まきの後みたいに散らばっていて、見栄えがよくない。
 うちは……うちは……。
 とてもじゃないけど、だれかにあげたりなんて絶っっ対にできないブツを、錬成してしまったのだ―――――っ!?
 うちの話をききおえた鈴華ちゃんが、苦笑いをうかべる。
「あらあら……。でも、初めて作ったんだから、しかたないじゃない?」
「そうかもしれないけどさあ! かえでだって初めてで、材料も同じだったのに、かえでの作ったチョコは、すごくキレイで、おいしかったんだよ……っっ!!」
 じっと、自分の席についているかえでに、涙目の視線を送ると。
 それに気づいたかえでが、こっちにきた。
「その様子だと、昨日のチョコ作りの話してるの?」
「うん……やっぱり、かえでとちがってうちは器用じゃないんだ。才能が、ないんだなーってさ……」
 うちがつくえにひじをついて言うと、かえでは首を横にふる。
「ううん。才能がないとかじゃないよ。きちんとポイントを守ったら、あかねも上手に作れると思うよ」
「えっ、ポイント?」
 うちは、目を丸くする。
 かえでが、エンリョがちに言う。
「うん、あのね。昨日、あかねがチョコを作ってるところ、遠目で見てたんだけどね。……もしかしてあかね、1回加熱したとき、目視だけで『まだ溶けてないな』って思った……?」
「うん、だって、器の中で、板チョコのかたちがしっかり残ってたもん!」
 うちが答えると、かえでが解説してくれる。
「レンジだけで完全に溶かそうと思うと、加熱しすぎになっちゃうんじゃないかな? 器の下のほうがだいたい溶けたら、あとはヘラを使って混ぜると、チョコの熱が全体にまわって溶けきるよ」
 ははあ!
 そんなこと、考えもつかなかった!
「あんなふうにぼそぼそになっちゃったのは、熱しすぎのせいか……!」
「たぶんね。チョコを型に流すときも、ヘラとかスプーンを使って、流れていくチョコを導いてあげると、安全だし、入れすぎをふせげるよ」
「ふむ……!」
「あと、型に流しいれたあとにね、かるくトントンってならすと、チョコの表面がたいらになったよ」
「ほう……!」
 同じレシピを見て。
 同じ材料を使って。
 同じものを作ったのに。
 きいてみると、うちとかえでで、やったことがぜんぜんちがう!!
 この1つ1つのちがいが、チョコの出来ばえを左右したんだ。
 料理って、なんだかナゾときみたい……!?
 そんでかえでは、やっぱり名探偵だ!
 うち、「才能がない」って言葉でひとくくりにして、かんたんにあきらめそうになってたけど。
 かえでの言う通り、きちんと「ポイント」さえ守れば、うまく作れるのかも……っ!!
「教えてくれてありがとう、かえで。もう一回、今度は気をつけてやってみるっ!」
 やっぱり、かえでと「2人で1つ」、作らなくてよかった。
 いっしょに作っていたら、きっとうち、かえでに全部おまかせしちゃって、自分の力でやってみようって思わなかったかもしれないもん。
「あかねちゃん、本気なんだねっ」
「うん! うち、がんばるから、期待してて!」
 凜ちゃんにそう宣言して、またチョコを買ってこなくちゃ、おこづかい残ってたかな……なんて思っていた、そのとき。
 左野先生が、息を切らして教室へ入ってきた。
「みんな、おはよう」
 いつもと同じあいさつだけど、先生の表情が、いつもとちがう。
 いったい、なに……!?
「みんな。辻堂先生が……今日から、復帰されるよ……!!」
「「「えっ!?」」」
 みんな声をあげて、友だちと顔を見あわせる。
 今……なんて?
 辻堂先生が……復帰……。
 つまり、学校へくるってこと?
 しかも「今日から」ってことは、今、保健室にいるの……っ!?
「っっ!」
 気づいたら、うちの体が飛びだすように動いてた。でも、
「待った! あかねさん、今から朝の会が始まるよ」
 左野先生の声がかかって、とびらにむかって伸ばしていた手が、宙をつかむ。
 そっか……。
「す、すみません」
「気持ちはよくわかるけど、辻堂先生は逃げないよ」
 左野先生から、ニコッと、心からのうれしそうな笑顔をむけられる。
 先生もずっと、辻堂先生のこと心配していたもんね!
「はいっ……!」
 うちも笑顔でこたえた。
 クラスじゅうが、とつぜんとびこんできた大ニュースに、大喜びで盛りあがってる。
 そりゃあそうだよ。
 だって辻堂先生は、だれよりも、生徒の心によりそっていた人で。
 たくさんの生徒が、大好きな先生なんだもん!
 この光景を見ていると、なんだか胸がジーンとする。
 うちがかえでの席にいくと、かえでが両手を広げてきた。
 うちらは自然にハグしあって、うれしい知らせをかみしめた。

辻堂先生が、学校に帰ってきてくれた――!?
大喜びのニュースを受けて、次回、あかねとかえでが、走る!
次回の更新は3月7日(木)予定。楽しみにしていてね!



『ふたごチャレンジ!』最新7巻 3月13日発売予定!


作:七都 にい 絵:しめ子

定価
792円(本体720円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322838

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『ふたごチャレンジ!』6巻のためし読み公開中!



作:七都 にい 絵:しめ子

定価
792円(本体720円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322494

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