挑戦したいんだ。自分の好きなことを「好き」って言うために。言いつづけるために。
いつもチャレンジしつづけるふたごのあかねとかえで。今回は、めっちゃ楽しい林間学校編!
なんたって、緑田小のみんな――鈴華ちゃんや凜ちゃんやさわや莉々乃ちゃん、藤司や吉良くんや真壁のほかに
あざみ小の子たち――そう、太陽もいっしょに行くんだから‼
いつもとはちがう経験がいっぱい、いつもなら見られない表情もいっぱい‼ トキメキもい――――っぱい‼‼なスペシャルな1冊。
先取りでためし読み、どうぞ‼ 読むときっと元気になっちゃうよ。(公開期限:2026年11月30日(月)23:59まで)
6 きみと、いっしょなら
「え、林間学校の部屋分け? あかねちゃん、いっしょの部屋になろうよっ!」
「楽しそー、私も入れてー!」
と、さわと春葉ちゃん。
「いやいや、あかねは俺らと同室で、まくらなげ大会っしょ!」
「そうそう、寝落ちするまで盛りあがろうぜー! あ、辰紅も参加するよな!」
と、真壁や藤司。
うちが、個室にするか、4人部屋にするか、迷ってるってみんなに話したら。
こうして、女子からも男子からも、声がかかったんだ。
「いやー、人気者はつらいねえ~!」
と、うちはおどけてみせる。
みんな笑ってくれるけど、吉良くんだけ、なんだか心配そうな顔をしてる。
「あかねは、俺らと……男子部屋で、いいのかよ?」
吉良くんの言葉に、うちはすぐにこたえられない。
「うーん……いいのかなあ?」
「自分のことなのに、なんで疑問形なんだぁ?」
真壁が首をかしげるけれど。
なんとなく、さ。
これって、自分がよければいいって話じゃないと思うんだよね。
そのとき、ふと、うちらの輪の外でかわされてる会話が、耳に飛びこんできた。
「……俺は、しょーじき、あかねと同室は気まずいぜ?」
うちらのおしゃべりのボリュームが下がったことで、きこえてきたみたい。
「だよなあ。あかねと遊ぶのおもしろいし、同室になったらなったで楽しいだろうけど……やっぱちょっと、な」
その会話は、すぐにべつの話題に移ったけど。
「おいおい、失礼だろあいつら!」
「あ、みんなにもきこえてた?」
「きこえたさ。あかね、ガツンと言ってやるか?」
真壁や藤司は、むっとしたみたい。
「いいっていいって! 気まずいって思うのは、その人の自由じゃん。べつに悪口じゃないよ」
「うーん、そうなのか……?」
うちの言葉に、首をひねる真壁。
真壁や藤司は、「うちと同室なのが気まずくてイヤ」って感覚が、ピンとこないみたいだけど。
吉良くんが、さっききいてくれたのは、「うちが」気まずくないのか。
そして、さっきの男子たちは「自分たちが」気まずくなるのを心配してる。
つまり、うちがいることで、クラスに1つ、ギクシャクのタネを作っちゃったわけで。
せっかく、みんなが楽しみにしてる林間学校を、うちの存在がかきまわしちゃったようで。
あああ、居心地がわるいなあ……。
●▲●▼
「――ってわけなんだ。自分がいなければ、こんなこと話題にもならなかっただろうなって思ったら、なんかもうしわけないなっていうかさあ~」
うちが話している相手は、スマホの中にいる、太陽。
ビデオ通話で、うちは太陽に、今日あったできごとを話してたんだ。
太陽は、途中で言葉をさえぎったりせず、静かにうちの話に耳を傾けてくれていた。
こういうクラスでのできごとって、クラスメイトには話しづらいけど。
学校のちがう太陽が、じっくりきいてくれるのが、ありがたいんだ。
うちの言葉がとぎれると、太陽がため息といっしょに、言った。
「……そうか、あかねもなんだね」
「えっ?」
「そういうこと、俺もいつも思ってるからさ。――俺がいるせいで、みんなに時間や気をつかわせちゃうなあって」
あ、そっか。そうだよね。
太陽は、生まれつき、人よりもずっと体が弱い。
だから、授業やイベントで、みんなと同じようにはできないことが、いろいろあるんだ。
そのたびに、先生も、クラスメイトも、対策を考えておかなきゃいけないんだね。
「楽しいはずのイベントなのに、楽しみな気持ちだけじゃいられないのって、しんどいよね」
「わー、そうなんだよ! 今うち、ちょっとだけ楽しみよりユウウツな気持ちが勝っちゃってる~~~~~!」
こんなネガティブな気持ちを、はきだせるの、すごくほっとするよ。
太陽がニコッとしてくれる。
「俺も。やっぱり、泊まりのイベントって、すごく大変なんだ」
「そうかあ。太陽は、どんなことにこまってるの?」
「じつは……俺の場合、泊まりがけのイベントってなると、いざってときのために親にもついてきて、近所で待機しててもらわなきゃいけないらしいんだ。そんな手間ひまかけてでも、俺が『みんなと同じ体験ができるように』って、先生や親が対策してくれるのはありがたいんだけど……みんなは自分ひとりで参加するのに、俺にはそれができないんだっていうのが、くやしくて……ううん、はずかしい、かな?」
スマホの画面の中で、太陽が顔をしかめる。
そうだよね、太陽の場合は、最悪、命にかかわることもあるもんね……。
でもうちは「はずかしい」なんて言葉を、すなおに伝えてくれてることが、うれしいな、なんて思ってる。
だって以前の太陽なら、絶対言わなかったと思うし……。
「太陽もそうなんだ。……なんかさ、みんなとちがうってソンだなーっていうか……いちいち考えこんじゃうっていうか」
「うんうん! そのうち、もんもんと考えてる自分のことがイヤになってきちゃうんだ」
「! あーそうかも。だからうちも最近、心に霧がかかったみたいでイヤだったのかも」
うちって、イヤなことをずーっと考えてるよりも、さっさと楽しいことに目をむけちゃおう! って思うタイプだから。
自分のネガティブな気持ちとむきあったこと、正直、あんまりなかったけど。
でも、太陽は、自分のそういうネガティブさを、すっかりわかってるみたいだ。
……ず―――っと、考えてきたんだろうな。
自分のままならなさと、つきあってきたんだ、太陽は。
「うちは、それでもさ。林間学校、いきたいなって思ってるけど。太陽は、どうするの?」
すると、太陽が、まっすぐうちを見かえした。
「俺も……いくつもりだよ」
わ! 声が、力づよい!
声色と表情から、迷ってないことが、伝わってくる。
「わあっ、じゃあうちら、いっしょにいけるんだ……!?」
「うん! あ、でも、俺はバスには乗らずに、現地から合流するつもりだけど。長距離バスは、けっこう体にくるんだ」
そっか。いっしょに遊園地にいったとき、しんどそうだったもんね。
太陽、なんだか、うまく力を抜けるようになった感じがするなあ。
「……じつは、親からは『林間学校はやめておかない?』って言われたりしたんだ。旅先で体調が悪化したら、心配だって」
「え! そうなの!?」
「うん。俺も今までなら、やめるほうを選んでたと思うよ。でも今回は……あかねがいるから」
「!」
「あかねのことを思いうかべたら、俺、ユウウツな気持ちをぶっとばして、どうしてもいきたいって思えたんだ」
「!!!」
うわああああ……。
うちの存在が、太陽が林間学校にチャレンジする、きっかけになったってこと?
し、しかも、その言い方……!!
あ、赤くなるな、うちの顔!
「もちろん、藤司や鈴華さんたちといっしょなのも、楽しみだしね」
「あ、う、うん、そうだよねっ!!」
スマホ越しで、ホントによかったよ。
直接会って話してたら、うちの様子がおかしいこと、絶対にバレてた……!
「じゃ、じゃあ、次に会うのは林間学校で、かなっ!」
「うんっ。楽しみにしてるね」
…………ふー。
通話を切ると、やっと少し、胸のドキドキがおさまってきた。
あんなふうに、ストレートに言葉にできちゃうって。
――太陽って、マジで、うちのこと、どう思ってるんだろ……?
やっぱり「親友」、なのかな……。
う――――む。
太陽のうちへの気持ちがなんなのかは、わかんなくても。
でも……うちの太陽への気持ちは、もう否定できないんだ。
太陽が、林間学校にくる!
それだけで、心がぴょんぴょんしちゃってる。
1泊2日もいっしょにすごすなんて、初めてだもん。
楽しみだけど……ドキドキするなあ。
第7回につづく(9月4日公開予定)
書誌情報
- 【定価】
- 880円(本体800円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324092
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