挑戦したいんだ。自分の好きなことを「好き」って言うために。言いつづけるために。
いつもチャレンジしつづけるふたごのあかねとかえで。今回は、めっちゃ楽しい林間学校編!
なんたって、緑田小のみんな――鈴華ちゃんや凜ちゃんやさわや莉々乃ちゃん、藤司や吉良くんや真壁のほかに
あざみ小の子たち――そう、太陽もいっしょに行くんだから‼
いつもとはちがう経験がいっぱい、いつもなら見られない表情もいっぱい‼ トキメキもい――――っぱい‼‼なスペシャルな1冊。
先取りでためし読み、どうぞ‼ 読むときっと元気になっちゃうよ。(公開期限:2026年11月30日(月)23:59まで)
5 これからのぼくが、たどる道?
ぼく――かえでは、今朝も、あかねといっしょに登校して、校門を抜ける。
校舎づたいに、下駄箱をめざして歩いていると、
「おはよう、あかねちゃん、かえでくん」
声がしたほうをふりむくと、辻堂先生が、保健室の窓から、ぼくらに手をふっている。
「わー辻堂先生!」
あかねもぼくも、笑顔で窓の近くに駆けよった。
「「おはようございますっ」」
ぼくらが声をそろえてあいさつすると、先生はくすっと笑った。
「かえでくんに、伝えたいことがあってね」
そう言って、先生は、少しだけ声のトーンを下げた。
「昨日のうちに、かえでくんと同室を希望している子たちの保護者に確認をとったわ。みなさん『よろこんで、ぜひおねがいします』とのことでした」
わ……っ。
ぼくは、とっさに声が出なかった。
「ほらねっ。よかったね、かえで!」
まるで自分のことのように、あかねが顔を明るくして言う。
ぼくが、吸ったままになってた息をついたら、ほっ、とため息になった。
「またなにか心配ごとがあれば、エンリョなく言ってね。林間学校当日も、同行しているから」
「はい、ありがとうございます、先生……!」
林間学校に、辻堂先生もいてくれる。
それだけで、すごく気持ちが楽になったんだ。
林間学校については、いろいろ考えすぎてしまうことが多くて、正直ヘトヘトだったから……。
「安全な居場所」である辻堂先生がいるっていうだけで、どれだけ心強いかわからない。
辻堂先生と別れて、教室にむかう間も、ぼくはぐるぐると考える。
――ぼくと同じお部屋に泊まる3人ともが、OKしてくれて、保護者への確認もできた。
これで、だれもイヤな気持ちになる人はいない……それは本当かな、って。
昨日のうちに話をした鈴華ちゃんと凜ちゃんは、くもりのない笑顔で、
「いつか、かえでちゃんとお泊まり会したいと思ってたから、ラッキー!」
なんて言ってくれた。
だからこそ……ぼくは勇気をだして、
「でも……もし、気持ちが変わったりしたら、教えてね」
――って、もう一度、伝えることができたんだ。
「何度も確認するなんて、しつこいな」とか、「信じられないのかな」とか。
そんなふうに感じさせちゃったらどうしようって、ドキドキしたけど。
2人とも、いつも通りの笑顔で、
「わかったわ」「わかったよっ」
って、うなずいてくれたんだ。
2人とも、ぼくが林間学校のお部屋で悩んでることや、その意味をわかってくれてたんだろうな……。
本当にステキな友だちを持ったなあ、ぼく。
うれし涙で、鼻の奥がツーンとするのを感じながら、ぼくは、教室に入る心の準備をする。
あと、心配なのは、もうひとりの莉々乃ちゃんだけど――。
教室に入っていくと、ぼくらに気づいた莉々乃ちゃんが、たたっと駆けよってきた。
「かえでちゃん! お母さんが昨日、辻堂先生から電話がかかってきたって言ってたよ。林間学校のお部屋、いっしょになれるんだよねっ?」
「あ……うん。いっしょのお部屋になってくれて、ありがとうね」
「え~~~? ありがとうは、こっちのセリフだよ! 誘ってもらえて私、とってもうれしかったの! 林間学校がさらに楽しみになったよ~」
目をキラキラッとかがやかせて言う莉々乃ちゃん。
それなのに、ぼくがつい、
「ほ、ホント?」
と、きいてしまうと。
「うんっ。お部屋でおしゃべりできるのも楽しみだし、かえでちゃんがいるんだもん、いっしょにかわいい髪形にしたいなって思って! どの髪飾りを持ってくか、今から迷ってるんだっ」
はじけるような笑顔でこたえる莉々乃ちゃん。
ムリして言ってるわけじゃないっていうのが、全身から伝わってくる……。
莉々乃ちゃんとは、凜ちゃんや鈴華ちゃんみたいに、いつもおしゃべりする「一番の友だち」っていうわけじゃないけど、こんなふうに言ってくれる。
ぼくがクラスの中にいていいんだって感じさせてくれるんだ――。
「そうだねっ、ぼくも楽しみっ」
「ふふ、でしょ! おもいっきり楽しもうねっ」
莉々乃ちゃんと笑いあって、ランドセルを背負ったままだったぼくは、自分の席にむかう。
――――ふう。
林間学校にむけて、ざわざわ毛羽だってた心が、ふんわりとほぐれてきた。
なんとか、乗りこえられそうな気がするよ。
でも――
次のときは、どうだろう?
……って、ぼくは、考えずにはいられない。
こういうことは、今回だけじゃないはずなんだ。
ぼくは、この先もずっと……6年生になっても、中学生や、高校生になっても。
こんなふうに、学校生活の中で、心を揺さぶられるような選択を、何度も迫られるだろう。
「かえでちゃん」で在りつづけることは、この先、ずっとずっと大変になっていく……。
今回つきつけられるまで、まったく想像してなかったってわけじゃない。
ただ「どうにかこうにか、やりすごしていくんだろう」って、覚悟するしかなかった。
たくさんガマンすることや、人からひどいことを言われることだってあるかもしれない、でもそれは避けられないんだ――なんてね。
だから……。
この間、凜ちゃんが教えてくれた、「夢をかなえるために中学受験をする」っていう考えが、ぼくにとって、目からウロコだったというか。
つらくても、まっすぐつづく一本道をいくしかないって思いこんでたところに、とつぜん分かれ道が現れた、みたいな。
とにかく、衝撃だったんだ。
そうか、ぼくも、目指す場所を――たどる道を、自分で選ぶことができるのかも、って。
「少しでも自分らしくいられそうな場所」を自分で目指していくっていう方法も、あるんだって――。
たとえば。
凜ちゃんが教えてくれた私立中学校にいけば。
ぼくの中にずっとある「絶対に、男女どちらかの制服を選ばなきゃいけないのかな? 選んでも、それを学校はゆるしてくれるのかな?」っていう不安が、1つ消える。
まあ、私服だって、悩みが0になるわけじゃないんだけどね。
お金だっていっぱいかかるし、学力もだ。
調べてみたら、中学受験の勉強は、中学年のころから始める子も多いらしい。
それに、ほとんどの子は塾に通って準備をするみたい。
なにより「公立じゃない学校にいきたい」ってことを、お母さんとお父さんに説明して、話しあわなきゃいけないのが、ユウウツだ。
2人は、ぼくが男らしい「かえでくん」になったって思っているんだから……。
そして、べつの学校に進んだら、これまで、ずーっといっしょにいたあかねとも離れることになる。
藤司くんや、鈴華ちゃんたちとも、お別れになる。
そのことを考えるだけで、すごくさびしい。
………………それでも、凜ちゃんがいてくれるなら――。
凜ちゃんは、この間、
「かえでちゃんと通いたい」
――って、言いかけていた。
でも、きっといろんなことを考えて、ぐっと飲みこんだんだ。
進学って、すごくすごく大事な選択だから、カンタンに言っちゃいけないって思ったのかも。
でも、ぼくも思ったんだ。
凜ちゃんといっしょに通えるのなら、って。
ほかに知り合いのいない、まったく新しい環境でも、きっとがんばれる。
5年生のぼくには、ぐるぐると迷っている時間はない。
……うん。
今度の林間学校が終わるころまでに、「ぼくはどうしたいか」、とことん考えてみよう。
どんな結論になるのかちょっとこわいけど、今、絶対に必要なことだって思うから――。
第6回につづく(9月2日公開予定)
書誌情報
- 【定価】
- 880円(本体800円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324092
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