挑戦したいんだ。自分の好きなことを「好き」って言うために。言いつづけるために。
いつもチャレンジしつづけるふたごのあかねとかえで。今回は、めっちゃ楽しい林間学校編!
なんたって、緑田小のみんな――鈴華ちゃんや凜ちゃんやさわや莉々乃ちゃん、藤司や吉良くんや真壁のほかに
あざみ小の子たち――そう、太陽もいっしょに行くんだから‼
いつもとはちがう経験がいっぱい、いつもなら見られない表情もいっぱい‼ トキメキもい――――っぱい‼‼なスペシャルな1冊。
先取りでためし読み、どうぞ‼ 読むときっと元気になっちゃうよ。(公開期限:2026年11月30日(月)23:59まで)
4 心乱れる重大問題!!
なんだろう?
先生の表情を見るに、怒られるとかじゃなさそうだったけど。
そんなことを思いながら、中休みにうちらは職員室に出むいたんだ。
待ちかまえていた左野先生と辻堂先生と、来賓用のテーブル席につくなり、左野先生が切りだした。
「中休みなのにわるいね。林間学校のことで、2人から早めに意見をききたかったんだ――部屋をどうしたいか、ってことなんだけど」
「「!」」
ハッと顔を見合わせる、うちとかえで。
そうか……左野先生、みんなの前じゃ、うちらが話しにくいと思って移動させてくれたんだ。
左野先生のあたたかな視線が、まずは、かえでにむく。
「えっと……ぼくは……どうするのが一番、みんなに迷惑がかからないのかなって……考えてました……」
言葉を選びながら、ひかえめに答えるかえで。
迷惑……かあ。
「それはつまり……個室か、男子部屋か、女子部屋か。どこに入るのが迷惑じゃないか……ってことなのかな?」
左野先生の確認に、こくんと、静かにうなずいた。
話しにくそうで、消え入りそうな、かえでの表情を見て。
朝、林間学校って言葉をきいたとき、かえでがうれしそうじゃなかった理由がわかった。
うち、最近は、あんまり自分の性別のことを気にせずにすごせてたけど……。
そうだ。
旅行って、うちらにとっては、手放しで楽しめるイベントじゃなかったんだ。
うちは、ひさしぶりに、目の前を、どーんとでっかい壁にふさがれたような気持ちになる。
「……あの……き、きっと、個室を選ぶのが、迷惑じゃな――」
目を伏せたまま、ぼそぼそと言う、かえでの肩に、辻堂先生が、ぽんっと手をおいた。
「迷惑かどうかってものさしは、いったん横においておきましょうよ、かえでくん。かえでくんは、どうしたい?」
目を見ひらく、かえで。
辻堂先生は、いつもの――ほっとするような、おだやかな笑みをうかべながら、かえでの顔をのぞきこんでくれたんだ。
「えっと……ぼくは……ひとりの部屋は、さみしいし……あかねといっしょか……ぼくといっしょの部屋でも気にならない子だったらいいなって……でも……」
やっぱり、個室っていうのは、まわりのための言葉だったんだ。
かえでの本当の気持ちがきけて、うちは、ほっとする。
せっかく楽しい林間学校なのに、みんなのためにムリしてひとりになるなんて、よくないよ!
「いっしょでも気にならない子がいいわよね。心当たりの子は、いるでしょう?」
「は、はい。けど……」
言いよどむ、かえで。
辻堂先生は、せかしたりせずに、じっとかえでの次の言葉を待ってる。
「…………本当の気持ちは、わからないじゃないですか。クラスで親しくしてるからって、いっしょの部屋に泊まるのまではイヤだって思っても、言いづらいだけかもしれないし……」
かえでは、言葉を選びながら、説明する。
心の中を、深くふかく考える、かえでらしい考えだなあ。
「なるほどね。たしかに、本音かどうかわからないっていう不安はあるかもしれないわね……」
と、そのとき、ハキハキした声がきこえてきた。
「失礼します、5年の北大路鈴華ですっ。児童会のプリントを提出しにきました」
あっ、鈴華ちゃん!
鈴華ちゃんなら、かえでと同じ部屋でもイヤだって、思わない気がする。
これまでの、たくさんの思い出をふりかえってみたとき……鈴華ちゃんが、かえでの……うちのもだけど、性別を気にしてるそぶりを感じたことがないもん。
でも、直球で、きいてみたい。
そしたら、鈴華ちゃんなら、自分の気持ちを、言いにくくても、しっかり言葉で伝えてくれると思うんだ。
ん? 左野先生、うちらに目くばせしてる?
そうかっ、左野先生も同じことを考えたんだ!
かえでにも、それが伝わったみたいで、うちらは左野先生にむけて同時にこくっとうなずいた。
「北大路さん、ちょっといいかな?」
「はい、左野先生。……あら、あかねちゃんとかえでちゃんもいたのね」
左野先生の声に、鈴華ちゃんがこっちへきてくれる。
「うんっ、今、部屋決めの相談をしてたんだ」
「あら、そうなのね。どんなこと?」
「え、えっと」
「かえでは、4人部屋がいいんだって。鈴華ちゃんは、どう思う?」
言いづらそうにしてるかえでに代わって、うちが言うと、鈴華ちゃんは、パッとかえでに笑顔をむけた。
「よかった、それならかえでちゃん、私といっしょのお部屋にしましょうよ! 班は別だもの」
「でも……いいの?」
「もちろんよ。凜ちゃんも、きっとかえでちゃんといっしょがいいって言うわよ。あとは――莉々乃ちゃんはどうかしら? だれとも班がかぶってないはずよ」
「うれしい。……でも、本人がOKでも……その、ほ、保護者が」
かえでが、不安そうに言うと。
「じゃあ、私のお母さんにもきいておくわ。心配なら、先生から電話で確認してもらってもかまわないわ。お母さんには『かえでちゃんは大事なお友だち』だって、よく話してるから」
胸をはって言いきる鈴華ちゃん。
その堂々とした姿を見て、かえでの表情も、ホッとやわらいでる。
「そうね、とっても気が回るかえでくんだから、とことん確認したほうが安心かもね。秋倉さんと須田さんがOKだったら、私のほうで保護者にお電話するわ。どうかしら?」
「は……はい、おねがいしますっ」
ぺこっと頭を下げたかえでに、あたたかな目をむけている辻堂先生。
それから、その視線が、うちへ移る。
「それで、あかねちゃんは? お部屋をどうしたいか、希望をきかせて?」
「「!」」
左野先生や鈴華ちゃんが、ちょっとおどろいた顔をしてる。
辻堂先生……うちのことも、ちゃんと見ててくれたんだ……!
――そうなんだ。
部屋分けの話が出てからずっと考えてるけど、うちは、どれも、しっくりこないんだよね。
個室か、4人の『男子部屋』か『女子部屋』。
そりゃ、だれかいたほうが、夜もおしゃべりできるし、お泊まり会みたいで楽しいだろう。
でも……。
「うちは……もうちょっと考えていいですか?」
内心、少しドキドキしながら言った、うちに。
「ええ、もちろん」
辻堂先生と、左野先生は、すぐにうなずいてくれて、ホッとする。
「さあて、あざみ小の先生に連絡しないとなあ。わすれないようにメモしておこう……」
ふせんを取り出して、書きこむ左野先生。
「そうですね、個室は、あざみ小とのかねあいもあるから、こまめに情報共有しておかないと」
辻堂先生の言葉に、左野先生はうなずく。
「ええ。班のほうはすんなり決まったので、それも共有して、名簿を作らないと」
「ああ、あざみ小の子と合同の班になるんだったわよね」
鈴華ちゃんのつぶやきで、思いだした。
そうだ、あざみ小の子と、おんなじ班で行動するんだ。
運動会のときは、競いあったけど、林間学校では垣根なく、わいわいやれるんだよね!
……って、ことは……あれっ?
「わっ、たいよ……っ」
職員室で大声を出しかけちゃって、うちは、あわてて自分の口をふさぐ。
わあああ……そうだ!
あざみ小と合同ってことは、太陽とも、いっしょに林間学校にいけるんだ!
うわ~~~やったあ!!
太陽と同じ班になれたらいいなあ――。
……あ、でも、太陽って。
そもそも、林間学校にくる……こられるのかな?
第5回につづく(8月31日公開予定)
書誌情報
- 【定価】
- 880円(本体800円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324092
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