KADOKAWA Group
ものがたり

【先行ためし読み!】『ふたごチャレンジ!』10巻 第2回 天井裏にしまわれたナゾ?


今年のうちらの誕生パーティーは、きっと最高の一日になる! だってうまれてはじめて「自分らしいうちら」を、みんなに祝ってもらえちゃう日なんだもん…!!
読むといつでも、ちょっと元気がもらえちゃう、チャレンジしつづけるふたご、あかねとかえでの物語。10巻はいつもよりさらに、ワクワク・ドキドキ・ハラハラが大増量なのです! いますぐためし読みしてね!
(全3回、公開は2025年9月30日(火)まで。




 

2 天井裏にしまわれたナゾ?

「よいしょ……よいしょ……」

「ふはー、大量だねえ!」

「みんなで、お店じゅうを飾りつけたからねっ」

 うち――――あかねとかえでは、おばあちゃんの車から降ろしたおっきなビニール袋を、両手でかかえるようにして持ち運ぶ。

 中には、輪飾りやポンポンなど、色とりどりの飾りつけが入っている。

「たくさん作るのは大変だったけど、すっごく楽しかったよね!」

「うんっ。でも、鈴華ちゃんや藤司くん、凜ちゃんとおしゃべりしながら作ったから、ぼくはあっという間に感じたよっ」

「うちもー! よし、着いた着いた」

 うちらが足を止めたのは、庭にある蔵の前。

「「よいしょっと!」」

 かえでといっしょに力をこめて、ガラッと重いとびらを開ける。

「うんうん。ここなら、安心してしまっておけるね」

「だねっ。ぼく、おばあちゃんから段ボールもらってくる!」

「ありがと! うちは飾りの種類ごとに分けておくね!」

 お店を出るときは、いそいで撤収したから、テキトーに入れちゃったんだよね。

 飾りって、パーティーが終わったら捨てちゃったりもするけど。

 今日は、そんな気分になれないよ。

 テキパキ分けていると、かえでが、折りたたんだ段ボールとガムテープを持ってきてくれた。

 箱を組みたて直してから、2人で、ていねいに中におさめていく。

 お誕生会の、にぎやかで弾けるようなふんいきとは一転して。

 今は、おだやかでゆったりした空気が流れてる。

 よし、あとはこのポンポンで、お片づけおしまいっ!

「は―――――。お誕生会、すっっっごく楽しかったね」

「うんっ。みんなのサプライズのダンスも、ホントにビックリしたよ」

「ねー! 超うれしかった!」

「だれが言いだして、計画してくれたのかなあ。鈴華ちゃんか、藤司くんかなあ?」

 お誕生会を、じっくりかみしめるように、かえでと話していると。

「……本当に、今日は忘れられないお誕生日になったなあ」

 かえでが、胸に手を当てながら、つぶやく。

「うん。かざらないうちらを、あんなふうにたくさんの人にお祝いしてもらえるなんてね」

「1年前の自分に言っても、信じないだろうな……」

 かえではすわりこんだまま、さっきまで着ていたドレスを、うれしそうにだき寄せる。

 そんなかえでを、うちはうしろから、ぎゅっとだきしめる。

「なあに、あかね?」

「んーん。うちら、転校して……チャレンジして、よかったなあって!」

「うん、ぼくも思うよ――――わあっ」

 かえでをだきしめたまま、うちがこてんと寝ころがると、かえでも引っ張られて横になる。

「へへへっ」

「もう、あかねったら」

 かえではあきれたような口調で言うけど、表情はおだやかで、いっしょに笑ってくれてる。

 ごろんと仰向けになって天井を見ると、目の前にひろがるみたいに、ある思い出がよみがえってくる。

「――――そういえば。去年の、お誕生会のあとも」

「うん。こうやって2人で寝ころがったね」

 かえでも、同じことを思いだしていたみたい。

「ビリビリにした飾りの上でね。あれも花吹雪みたいでキレイだったし、楽しかったけど……。今みたいに、心からスッキリはできなかったな」

「うん。でもさ、あれはあれで、今思うと大事な思い出だって、うちは思うな」

 すごくつらかった、あの日がなかったら。

 うちらは、今につながる一歩を、踏みだせてなかったんだから。

 イヤな思い出だって、消してしまいたくない。

 うちの想いは、かえでにもちゃんと伝わったみたい。

「! そうだね。心の中に、ちゃんととっておこう。それで、今年の飾りは、心の中にも、この蔵にも、大切にしまっておこうね。箱をあけたら、今日の幸せな気持ちを思いだせるように」

「うん!! ……あーでも、1回寝っころがると、なかなか起きあがれないやあ」

 朝からずっと、はしゃぎっぱなしだったからね。

「ふふっ、ぼくも。ちょっと眠くなってきちゃったかも」

 天井を見つめる、うちら。

 木目を見てると、うちもだんだんまぶたが勝手に閉じていくような――――――――ん?

 あれれ?

 あれ、なんだろう?

「かえで。なんかさ、よく見ると……天井、ヘンなところがない?」

「え、どこ?」

 うちは、ぐぐっと上半身を持ちあげて、体を起こして指さす。

「ほら、あそこ、左のほう。あの一角だけ、ちょっと色がちがうよ」

「あ、言われてみるとそう……かも?」

「これまでぜんぜん気づかなかったな」

「なんだろうね?」

 うーむ。一度気づいてしまったら、気になる。

 そんなに天井は高くないし……そうだ!

「かえで、ちょっと待ってて!」

 うちは、ぴょんっと立ちあがると、蔵を飛びだす。

 数分後、もどってきたうちは、

「じゃーん!」

 家からせっせと運んできた脚立を、さっきの天井の真下におく。

「近くで見てみるよ!」

「じゃあぼく、ぐらつかないように、支えておくね」

「さんきゅー!」

 うちは慎重に脚立をのぼっていき、色のちがう部分の天井に、そっと手を伸ばす。

 カタッ

「わ、え! かえで、ちょっとさわったら、なんかここ、はずれたんだけど!」

「えっ!?」

「うち、天井こわしちゃった!?」

 あわてふためく、うち。

 かえでからも、あわてた返事がくる。

「ええ!? はずれた奥は、どうなってるの?」

「うーん、真っ暗でなんにも……あ、スマホで照らせばいいのか!」

 うちはポケットからスマホを出して、ライト機能をオンにする。

 ドキドキしながら、のぞきこんでみると。

「お。ほこりっぽい? 土っぽい? けど……うちらがすわっていられるくらいの高さがあるよ」

「っていうことは……あかねがこわしたんじゃなくて、……そこって、天井裏の入り口なんじゃないかな?」

「あー天井裏かあ! うち、初めて見た! あっ、ここから上にあがれるみたい!」

「あかね、気をつけてね?」

 うちは、興味津々で、薄暗いスペースにあがりこむ。

 空気がよどんでて、あまり長居はしたくない感じだ。

 でも、ダンジョンのかくし部屋を見つけたみたいで、ワクワクする!

 さっきまで感じていた眠気は、すっかりどこかへ消えていた。

「ね、ねえあかね、……そこ、ネズミがいたりとか、しないよね……?」

 下から、かえでの声がする。

「ええっ!?」

 ネズミは、ちょっとイヤかも!!

 かえでに言われて、あわててスマホであたりを照らしなおす。

 と。

「おっ!」

「え!? やっぱりネズミっ!?」

「いや、ちがうよ。奥になんかいろいろ、おいてあるんだよね」

 おびえるかえでにそう答えてから、うちは、ゆっくり奥に進んでいく。

「古いビニールプールとか、スケッチブックとかがあるよ!」

「へえ。おばあちゃん、屋根裏を収納スペースにしてたのかな」

「いっちばん奥には、段ボールがあるなあ」

 ガムテープで封をしてあるけど、だいぶ古いみたいで、端からはがれかかっている。

 むむっ、これは気になるぞ。

 なにかお宝が入っていたりして……!?

 気になって、ついガムテープをちょっとひっぱってみる。

 するするっと、とれた。

 さあ、中身は……!?

「えっ?」

「あかね、どうかした?」

「今、段ボールを開けてみたんだけど……」

「だけど?」

 うちは、その中身を手にとって、しっかりライトを当ててみる。

 ……うん。これってやっぱり、あれ、だよね?

「それ」は想像もしてなかったもので、うまく頭が働かない。

 うちが絶句していると、脚立を踏みしめる音がして、

「あかねっ、どうしたのっ」

 ふりむくと、かえでがびくびくした表情で、天井裏にちょこんと顔を出していた。

「かえで! きたの!」

「だって、ぜんぜん返事がないから、心配で……っ」

 こわかっただろうに、うちのために、勇気を出して上ってきてくれたんだ。

 かえで、たのもしくなったな……。

 よいしょっと、天井裏にあがってきたかえでに、

「かえで、これ……」

 と、今見つけたものを差しだすと。

「え? ……なにこれ……」

 かえでも目を丸くして、薄暗い中で、じっと「それ」を見つめる。

「ズタズタだけど。これって、制服……セーラー服の切れはし?」

 この生地の感じ。手ざわり……。

「うん、うちもそう思う。こういう布きれが、段ボールいっぱいに入ってたんだ。これ、ハサミかなんかで切ってるよね?」

「うん……どうしてそんなものが、屋根裏に? っていうか……これは一体だれの?」

「え? そりゃ、おばあちゃんしかいなくない?」

 うちのお父さんは、ひとりっ子だし。

「いや、おばあちゃんが子どものころなら、昔すぎるよ。この布、50年くらい前のものには見えない。それに、おばあちゃんは結婚してここにきたんだから、この家で育ったわけじゃないでしょ」

「たしかに。じゃあ、会ったことはないけど、おじいちゃんに年がはなれた妹がいた……とか?」

「かなあ? それか、親戚のものとか?」

 2人でどれだけ話しても、答えがわからずにいると。

「けほっ」と、かえでがせきこんだ。

 ここは、ほこりっぽすぎるもんね。

「ひとまず下りよっか」ってことになった。

 端切れを段ボールにもどして、はめ板のところへひきかえす。

 先にうちが下りて、脚立をしっかり支えてから、かえでもゆっくり下りる。

 脚立を元の場所にもどしてから、

「「なんだったんだろうね……」」

 2人で顔を見合わせて、モヤモヤしていると。

 コンコン

 とびらをノックする音がひびいて、

「あーちゃん、かえちゃん、のどはかわいてない?」

「「おばあちゃん!」」

 とびらを開けると、おばあちゃんが、グラスに入ったオレンジジュースをお盆にのせて立っていた。

「「わー、ありがとー!」」

 ちらっとかえでを見ると、目が合った。

 真剣な表情でこくりとうなずくかえでを見て、うちはきいてみる。

「……あのさ、おばあちゃん。この家に、昔、女の子がいたりした? おじいちゃんの妹とか」

「――――!」

 すると、おばあちゃんの目が、まん丸になる。

「いいえ…………いないと思うわ。あなたたちのおじいちゃんは、ひとりっ子だったし」

「親戚とかは?」

 かえでも、うちにつづけて、たずねる。

「まあ、それならいたかしらね? でも、2人とも、どうしてそんなこと?」

「あ、いや。えっと…………あ、家系図っていうの? そういうのに興味があってさ!」

 と、うちが言うと、おばあちゃんは、ほほえんでうなずいた。

「家系図ねえ! それなら昔、代々書き足していたものがあった気がするわ。どこへしまったかしらねえ」

「あ、すぐに見つからないなら、いいや」

「あら、そう?」

 うーん。なぜか、ごまかしちゃったな。

 っていうのも、屋根裏の段ボールにしっかり封をされてた、ズタズタにされた制服。

 あれを見つけちゃったショックを。

 おばあちゃんに、うまく説明できる気がしなかったんだ……。

「あーちゃん、かえちゃん、お夕飯は、18時ごろでいいかしら?」

「うん! ジュースありがとね!」

 おばあちゃんはニコッとほほえんで、蔵を出ていった。

 ふたたび、2人きりになったうちら。

 なんとなく、また、天井裏へつづく場所に目をやる。

「………ナゾ」「だね…………」

 ピッタリそろったつぶやきが、天井に吸いこまれていく。

「そんな大きな意味は、ないのかな?」

「親戚かだれかのを、捨てるつもりで小さく切ったけど、うっかり捨て忘れちゃったとか……」

「うーん。そうだね。なんかしっくりこないけど……そういうことにしておこうっ」

 うちらは、おばあちゃんが持ってきてくれたオレンジジュースを、一気に飲みほした。


次のページへ▶


この記事をシェアする

ページトップへ戻る