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【先行ためし読み!】『ふたごチャレンジ!』10巻 第1回 1年ぶりの「お誕生会」!


今年のうちらの誕生パーティーは、きっと最高の一日になる! だってうまれてはじめて「自分らしいうちら」を、みんなに祝ってもらえちゃう日なんだもん…!!
読むといつでも、ちょっと元気がもらえちゃう、チャレンジしつづけるふたご、あかねとかえでの物語。10巻はいつもよりさらに、ワクワク・ドキドキ・ハラハラが大増量なのです! いますぐためし読みしてね!
(全3回、公開は2025年9月30日(火)まで。




 

1 1年ぶりの「お誕生会」!

「母さん、いってくるね」

「はーい。楽しんでらっしゃい!」

 車を降りて、見送ったタイミングで。

「よっ、太陽(たいよう)!」

 俺――明里(あけり)太陽を呼ぶ声がして、ぱっとふりむくと。

 自転車を押しながら、ニカッと笑う、すっかり見慣れた彼がいた。

「よっ、藤司(とうじ)!」

 おんなじように返してみると、なんだかくすぐったい。

 藤司が通ってるのは緑田小で、俺はあざみ小。

 性格も行動パターンも、俺とぜんぜんちがうし。

 本当だったら、こんなふうになかよくなることもなかったはずなんだ――――本当だったら。

 藤司は、自転車を店の駐輪場に停めてから言う。

「太陽も、今きたところか?」

「うん。ナイスタイミングだったね!」

「それにしても……」

 藤司は、目の前の建物と、手もとのスマホを交互に見る。

 ファミレスくらいの大きさで、レンガ調の外装の、オシャレなお店だ。

「会場って、ホントにここで合ってるんだよな!?」

「うん、あかねたちのおばあちゃんの知り合いのお店なんだってね」

「なるほどなあ。こんなビッグなところでやる誕生会、初めてだぜ!」

 藤司が感心してる。

 藤司って友だちがすごく多そうだけど。

 それでもこんなお誕生会は、やっぱりなかなかないんだなあ。

「でもホントに、プレゼントいらなかったのかな?」

「かえでとあかねにそろって『気楽にきてもらいたいんだからっ』『絶対、絶対、絶対持ってこないでね!』って言われたら、あげられないよな。…………まあ、べつに用意してるけど」

「ん?」

「いや、おれたちにはアレがあるって話。絶対2人とも喜ぶぜ!」

「だね――――じゃ、いこうっ」

 ドアを押すと、

 カラカランッと心地よい音が鳴った。

「あっ、藤司くん、太陽くん!」

 かえでさんが俺らに気づいて、ニコッと笑いかけてくれる。

 お。

 今日のかえでさん、なんだかいつも以上にかわいいな。

 薄ピンクのふわっとした素材のワンピースを着ていて、髪もアイロンで巻いてあるみたい。

「今日は、きてくれてありがとうっ」

「こちらこそ、お誘いありがとう!」

「…………」

 ん? 藤司、やけに静かだな。

 ちらっと横目で見ると、藤司はかえでさんを見て、顔を真っ赤にしてる。

 かえでさんも、ふしぎそうに首をかしげて、

「藤司くん? 大丈夫?」

「あ、その……かえで、すげえかわいいから」

 藤司がまっすぐかえでさんを見つめて言うと、かえでさんのほおも、ぽっと赤くなる。

「……ありがとっ」

 あれ、この2人。

 去年のクリスマスのときと、ふんいきがちがうような?

 藤司もかえでさんも、わたわたしてるように見えつつ、リラックスしてるっていうか。

 とにかく、もっともっと仲が深まったみたいだ!

 ん、そういえば。

 かえでさんは、お誕生会らしく、トクベツな装いをしてるけど。

 あかねは今日、どんな服を着るんだろう?

 あかねのことを思いうかべると、少しだけ胸がふしぎな感じになる。

 むずがゆいような、いごこちのわるいような。

 そうだ、みんなでお花見した日に感じた、あのふしぎな気持ちと同じだ……。

 いったい、これはなんなんだろう……。

 そこへ、

「じゃ―――――――――ん! みんなっ、おっまたせ―――――!」

 あかねの声がして、集まっていたみんなの目が、いっせいにそっちにむいた。

 ――――と。

「「「!?」」」

「あかね――――!?」

 俺は、目に飛びこんできたものを見て、その姿勢のまま、かたまってしまう。

 だって――――腰に手をあてて胸をはるあかねは。

「本日の主役」と太字で書かれたタスキをかけて。

 さらに、サングラスとヒゲまでつけてるんだもの!

 会場じゅうの人が目をまん丸にしているのが、おもしろくて。

「……………………あははっ」

 つい俺が吹き出すと、会場じゅうに笑いの波が広がっていった。

「あははははっ」

 ヤバい、ツボに入っちゃって、ぜんぜん笑いが収まらない!

 俺が、せきこむくらい笑っていると、

「だ、大丈夫っ、太陽!?」

 と、あかねがあわてた様子でとんできた。

「ふふ……うん、大丈夫。……さすがあかね、登場するだけで、みんなをこんなに楽しませられるなんて、やっぱりすごいや!」

「えへへ、ありがと! うち、前からこういうの、やってみたかったんだよねー!」

 ピカピカの笑顔でピースするあかね。

 かえでさんの服を見て想像していたものとは、ぜんぜんちがったけど。

 この笑顔を見られただけで、今日こられてよかったなあって思えるよ。

「おーいあかね! さすがじゃん、こんな広い店なのに、どこにいるかすぐわかるよ!」

 俺は初めて見る男子が、笑顔であかねに声をかける。

「わ、真壁! へへっ、今日の主役だからね! あ、吉良くんもきてくれてるー!」

「まあ、いろいろ世話になったから」

「うれしー! さわも、ありがとね!」

「あかねちゃん、お誕生日おめでとう!」

 どんどん集まってくる友だちが、あっという間にあかねをとりかこむ。

 あかねはいつも、みんなの真ん中にいて、自分らしい。

 まぶしいなあ……。

 そんなあかねを、なんとなく目で追っていると。

   ♪♬♪

 ふと、弾むようなピアノの音色がきこえてくる。

 あ、これ、有名なバースデーソングだ。

 この音、生演奏だよね。

 だれが弾いているのかなと……見まわすと、あ、ピアノ。

 その前にすわって演奏しているのは、鈴華さんと……

「えっ!」

 それはなんと、俺がよーく知ってる、あの久遠!?

 ええと、連弾ってやつかな。

 久遠、もうこんなに弾けるようになったんだ。

 しかも、あの内気だった久遠が、こんなたくさんの人の前で弾くなんて……!?

 緊張は、しているみたいだけど。

 それ以上に、自信に満ちた表情で演奏してる。

「……」

 変わったんだな。久遠。

 俺も……久遠みたいになれるのかな。

 俺も、変われるのかな?

 見ていると、なんだか、自分だけおいていかれたような、あせりと……。

 希望と、パワーと……。

 いろんな気持ちが、俺の内側にわいてくる。

 美しい音色につられて、会場にいるみんなの視線が、少しずつピアノのほうへ集まってる。

 お誕生会の始まりのサインなんだろうなってことが、自然と伝わる。

 バースデーソングを弾きおえ、立ちあがった2人。

 そろってペコリと頭を下げると、わあっと拍手が起こる。

「鈴華ちゃん、久遠ちゃん、すご~~~い!」

「ステキなプレゼントありがとうっ!」

 久遠と鈴華さんが目を見合わせてニコッと笑うと、それを合図にしたように、店内に音楽がかかった。

 今度は、はやりのアップテンポの曲。

 おっ、きたぞ!

 俺が、ぱっと藤司のほうを見ると、目が合って、ニヤッとほほえみあう。

 俺は何歩か下がって、ジャマにならない位置に移動する。

 ほかの人もさっとすばやく動いて、みんなでフォーメーションを作る。

 そして、前奏が終わると、会場にいるみんなが、同時におどりはじめる!

「「えっ、なになに!?」」

 声をそろえておどろく、あかねとかえでさん。

 2人とも目をまん丸にして、キョロキョロと会場を見まわしてる。

 俺は体調をくずすといけないから、激しく体を動かすのはむずかしいんだけど。

 曲のサビに入ったところで――。

「太陽!」「うんっ!」

 藤司が空けてくれたスペースに、俺は動く。

 あかねの目の前っていう、特等席だ。

 そして、俺もみんなといっしょに、おどりはじめる!

「ええっ、太陽まで!?」

 ふふっ、あかね、さっきよりもビックリしてる。

 ――――じつは、通しでおどるのはムリでも、サビの部分だけならいけるかもって、俺も、サプライズの練習に参加させてもらっていたんだ。

 もちろん、練習してたことは、あかねにはヒミツで。

 ちょっとドキドキしたけど、一度も体調をくずさなくて、今の俺ならいけるってわかった。

 やった。

 おどろかせられっぱなしじゃなくてよかった!

 本番まで、けっこう――――――――いや、かなり自主練してきたことは、ナイショだ。

 あかね。俺だって、やるときはやるんだからねっ。


第2回につづく(7月24日公開予定)


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書誌情報


作: 七都 にい 絵: しめ子

定価
836円(本体760円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323620

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