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【先行ためし読み!】『ふたごチャレンジ!』10巻 第3回 「なかま」、見つけちゃった!?


今年のうちらの誕生パーティーは、きっと最高の一日になる! だってうまれてはじめて「自分らしいうちら」を、みんなに祝ってもらえちゃう日なんだもん…!!
読むといつでも、ちょっと元気がもらえちゃう、チャレンジしつづけるふたご、あかねとかえでの物語。10巻はいつもよりさらに、ワクワク・ドキドキ・ハラハラが大増量なのです! いますぐためし読みしてね!
(全3回、公開は2025年9月30日(火)まで。




 

4 「なかま」、見つけちゃった!?

 第1回目の2校合同会議が終わって、うちらが会議室を出ようとしたとき。

「――――双葉さん」

 ん?

 しずかに声をかけられて、さっとふりかえると。

 うちを呼びとめたのは……あれ、国見さん!?

 しかも、なんだかうれしそうな、さっきよりも少し、親密そうな表情をしてる?

「じつは俺、前から、双葉さんに会ってみたいと思ってたんだ」

「えっ、うちのこと、知ってたんですか?」

「うん。――――――――だって、きみと俺は、なかまだからね」

 へ?

 なかまって、なんの……?

 すぐにはわからなくて、うちは答えを求めるみたいに、じっと国見さんを見つめてみる。

 国見さんは、だまって見かえす。

 そのとき、鈴華ちゃんが小さく「……あっ」と言った。

「あ、あの、国見さんって、もしかして、じょ――――」

「うん、そうだよ。俺、生まれたときの性別は、女なんだ」

 鈴華ちゃんの声にかぶせるように、国見さんがこたえた。

「え! ええええええ!?‌!?」

 国見さん、女子だったのっ!?

 ぜんぜん、予想してなかった。

 かっこうとか、しゃべり方とか、しぐさとかで。

 ずっと男子なんだと思って、接してたよ!

 わあ、わるいことしちゃったかな――――――――って。

 いや、ちがうか。

 国見さんが、うちを「なかま」と言ったってことは……?

「きみと同じ、俺もね。ただ『自分らしく』生きたいだけなのに、『女の子』を強いられて、ずいぶん苦労したんだ」

「……!」

 国見さんのまっすぐな目が、「きみも、そうなんじゃないか?」って、問いかけてくる。

 うわ……「なかま」って、初めて会ったかも……!

 思わず、言葉があふれてくる。

「……うちも。服装とか、ふるまいとか、おとなにしかられて……どうして自分がしたいようにしちゃいけないんだろうって、思ってました……!」

 今までに経験してきた思いを、すなおに言葉にすると。

「そうだよな……。双葉さんも、大変だったな。俺と同じ境遇の子が、となりの学校にいるってウワサできいてさ。すごくうれしかったんだ。ずっと、会いたいと思ってた」

 国見さんは、やさしくうなずいて、そう言ってくれる。

「国見さん……! うちも、会えてうれしいです!」

「声をかけてよかったよ」

 うちらは目を見合わせて、ほほえみあう。

 今日初めて出会った、同じ委員同士っていうのとは、ぜんぜんちがう。

 なんだろう。戦友……って感じなのかな。

 胸の中で、ジワッと喜びがはじけるような気がした。

 国見さんも、同じだったのかな。笑顔が大きくなって、

「俺は6年だけど、敬語なんていらないよ。なかま同士、これからなかよくしようぜ!」

 ぱんっ! と背中をたたかれて、国見さんはそのまま肩をよせてくる。

 うちは、その力や重さがあったかくて。

 たのもしくて、うれしくて。

 出会ったばかりだけど、思わず肩をだきかえして、「にっ!」と笑いあった。


   ●▲●▲


 あざみ小の実行委員の子たちは、うちらを見送ってくれるみたい。

 あざみ小の校舎を出てから、みんなでおしゃべりしながら、校門まで歩いていく。

 うちがふと、視線を先のほうへ向けると。

「ん、あれって……?」

 あの髪色に、うしろ姿……。

 ランドセルについてるユニフォーム形のキーホルダー!

 わ! まちがいない、太陽だっ!

 そうだよ、あざみ小には太陽が通ってるんだ。

「太陽~~!」

 ぐうぜん出会えたのがうれしくて、うちは声をかけながら、いそぎ足で太陽に近づいていく。

「え、あかね……!?」

 立ち止まってふりむいた太陽は、ビックリした顔をしたあと。

 なぜか、うちの顔じゃなくて、うちのうしろのほうに、視線をやった。

「うれしい、こんなバッタリ会えるなん――」

 ワンコみたいに駆けよろうとしたうちに。

 なぜか表情を消した太陽は、手のひらをむけて、合図してくる。

 え? 「ストップ」って、こと……?

 太陽は、またちらっとうちから視線をはずしてどこかを見て、さっと体のむきを変える。

 そして、それからうちと目も合わせず、門の先に停まっていた車に乗りこんで、去っていってしまった。

 え、ええぇ……? なに、今の太陽……?

「あかねちゃん、明里くんと知り合いなの?」

 うちがとまどって立ちつくしていると、追いついてきたあざみ小の子がきいた。

「うん。友だちだよ!」

 うちがこたえると、あざみ小の子たちが、目を丸くした。

「へー意外!」

「私ら5年児童会組、明里くんと同じクラスなんだ。明里くんって、毎日車で登下校で、うらやましいよねえ」

「明里は体弱いんだから、しょうがないんだろ?」

「でも、最近は調子いいんでしょ? だったら、ちょっとずるくない?」

 えっ……。

 太陽への「ずるい」という言葉に、うちはドキッとする。

「えー、でも、人の体調って、外からじゃわからないものだし。それに、べつに太陽がどういう方法で学校にきてたって、ほかの人には関係ないじゃん」

 思わず言うと、あざみ小の2人が、目をまんまるにして、じっとうちを見る。

 あ、つい、口を出しちゃった。

 しかも、ちょっと口調がキツくなっちゃったし……。

 内心、あせるうち。

 2人は顔を見合わせたあと、

「…………たしかに。それはそうだね」

「うん」

「……!」

 あっ。うちの考え、わかってくれたんだ……!

 あっさり同意してくれて、うちはほっと胸をなでおろす。

「でも、明里って、前よりはちょっと明るくなった気はするけど、まだなんか、よそよそしいよな」

「ねー。なんかクラスの『お客さん』感がぬけない感じ? もっと堂々としてたらいいのにね」

 あざみ小の2人の言葉に、うちはハッとする。

 たしかに、さっき見た太陽は、『らしく』なかったな。

 いつもの太陽は、もっとはれやかに、明るく笑う。

 病気がすごくしんどかったときは、イライラした顔も見たことあるけど……。

 そうじゃないときには、うちにむかって、あんな顔をしたことなんて……?

 内心首をかしげていると、鈴華ちゃんが声をかけてきた。

「あかねちゃん、そろそろ帰りましょう」

「あ、うん」

「じゃあな。また次の会議で!」

「うん、またね、国見さん、みんな!」

 にこやかに手をふってくれる国見さんたち。

 手をふりかえして、うちら緑田小メンバーは帰路についた。


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