
今年のうちらの誕生パーティーは、きっと最高の一日になる! だってうまれてはじめて「自分らしいうちら」を、みんなに祝ってもらえちゃう日なんだもん…!!
読むといつでも、ちょっと元気がもらえちゃう、チャレンジしつづけるふたご、あかねとかえでの物語。10巻はいつもよりさらに、ワクワク・ドキドキ・ハラハラが大増量なのです! いますぐためし読みしてね!
(全3回、公開は2025年9月30日(火)まで。
4 「なかま」、見つけちゃった!?
第1回目の2校合同会議が終わって、うちらが会議室を出ようとしたとき。
「――――双葉さん」
ん?
しずかに声をかけられて、さっとふりかえると。
うちを呼びとめたのは……あれ、国見さん!?
しかも、なんだかうれしそうな、さっきよりも少し、親密そうな表情をしてる?
「じつは俺、前から、双葉さんに会ってみたいと思ってたんだ」
「えっ、うちのこと、知ってたんですか?」
「うん。――――――――だって、きみと俺は、なかまだからね」
へ?
なかまって、なんの……?
すぐにはわからなくて、うちは答えを求めるみたいに、じっと国見さんを見つめてみる。
国見さんは、だまって見かえす。
そのとき、鈴華ちゃんが小さく「……あっ」と言った。
「あ、あの、国見さんって、もしかして、じょ――――」
「うん、そうだよ。俺、生まれたときの性別は、女なんだ」
鈴華ちゃんの声にかぶせるように、国見さんがこたえた。
「え! ええええええ!?!?」
国見さん、女子だったのっ!?
ぜんぜん、予想してなかった。
かっこうとか、しゃべり方とか、しぐさとかで。
ずっと男子なんだと思って、接してたよ!
わあ、わるいことしちゃったかな――――――――って。
いや、ちがうか。
国見さんが、うちを「なかま」と言ったってことは……?
「きみと同じ、俺もね。ただ『自分らしく』生きたいだけなのに、『女の子』を強いられて、ずいぶん苦労したんだ」
「……!」
国見さんのまっすぐな目が、「きみも、そうなんじゃないか?」って、問いかけてくる。
うわ……「なかま」って、初めて会ったかも……!
思わず、言葉があふれてくる。
「……うちも。服装とか、ふるまいとか、おとなにしかられて……どうして自分がしたいようにしちゃいけないんだろうって、思ってました……!」
今までに経験してきた思いを、すなおに言葉にすると。
「そうだよな……。双葉さんも、大変だったな。俺と同じ境遇の子が、となりの学校にいるってウワサできいてさ。すごくうれしかったんだ。ずっと、会いたいと思ってた」
国見さんは、やさしくうなずいて、そう言ってくれる。
「国見さん……! うちも、会えてうれしいです!」
「声をかけてよかったよ」
うちらは目を見合わせて、ほほえみあう。
今日初めて出会った、同じ委員同士っていうのとは、ぜんぜんちがう。
なんだろう。戦友……って感じなのかな。
胸の中で、ジワッと喜びがはじけるような気がした。
国見さんも、同じだったのかな。笑顔が大きくなって、
「俺は6年だけど、敬語なんていらないよ。なかま同士、これからなかよくしようぜ!」
ぱんっ! と背中をたたかれて、国見さんはそのまま肩をよせてくる。
うちは、その力や重さがあったかくて。
たのもしくて、うれしくて。
出会ったばかりだけど、思わず肩をだきかえして、「にっ!」と笑いあった。
●▲●▲
あざみ小の実行委員の子たちは、うちらを見送ってくれるみたい。
あざみ小の校舎を出てから、みんなでおしゃべりしながら、校門まで歩いていく。
うちがふと、視線を先のほうへ向けると。
「ん、あれって……?」
あの髪色に、うしろ姿……。
ランドセルについてるユニフォーム形のキーホルダー!
わ! まちがいない、太陽だっ!
そうだよ、あざみ小には太陽が通ってるんだ。
「太陽~~!」
ぐうぜん出会えたのがうれしくて、うちは声をかけながら、いそぎ足で太陽に近づいていく。
「え、あかね……!?」
立ち止まってふりむいた太陽は、ビックリした顔をしたあと。
なぜか、うちの顔じゃなくて、うちのうしろのほうに、視線をやった。
「うれしい、こんなバッタリ会えるなん――」
ワンコみたいに駆けよろうとしたうちに。
なぜか表情を消した太陽は、手のひらをむけて、合図してくる。
え? 「ストップ」って、こと……?
太陽は、またちらっとうちから視線をはずしてどこかを見て、さっと体のむきを変える。
そして、それからうちと目も合わせず、門の先に停まっていた車に乗りこんで、去っていってしまった。
え、ええぇ……? なに、今の太陽……?
「あかねちゃん、明里くんと知り合いなの?」
うちがとまどって立ちつくしていると、追いついてきたあざみ小の子がきいた。
「うん。友だちだよ!」
うちがこたえると、あざみ小の子たちが、目を丸くした。
「へー意外!」
「私ら5年児童会組、明里くんと同じクラスなんだ。明里くんって、毎日車で登下校で、うらやましいよねえ」
「明里は体弱いんだから、しょうがないんだろ?」
「でも、最近は調子いいんでしょ? だったら、ちょっとずるくない?」
えっ……。
太陽への「ずるい」という言葉に、うちはドキッとする。
「えー、でも、人の体調って、外からじゃわからないものだし。それに、べつに太陽がどういう方法で学校にきてたって、ほかの人には関係ないじゃん」
思わず言うと、あざみ小の2人が、目をまんまるにして、じっとうちを見る。
あ、つい、口を出しちゃった。
しかも、ちょっと口調がキツくなっちゃったし……。
内心、あせるうち。
2人は顔を見合わせたあと、
「…………たしかに。それはそうだね」
「うん」
「……!」
あっ。うちの考え、わかってくれたんだ……!
あっさり同意してくれて、うちはほっと胸をなでおろす。
「でも、明里って、前よりはちょっと明るくなった気はするけど、まだなんか、よそよそしいよな」
「ねー。なんかクラスの『お客さん』感がぬけない感じ? もっと堂々としてたらいいのにね」
あざみ小の2人の言葉に、うちはハッとする。
たしかに、さっき見た太陽は、『らしく』なかったな。
いつもの太陽は、もっとはれやかに、明るく笑う。
病気がすごくしんどかったときは、イライラした顔も見たことあるけど……。
そうじゃないときには、うちにむかって、あんな顔をしたことなんて……?
内心首をかしげていると、鈴華ちゃんが声をかけてきた。
「あかねちゃん、そろそろ帰りましょう」
「あ、うん」
「じゃあな。また次の会議で!」
「うん、またね、国見さん、みんな!」
にこやかに手をふってくれる国見さんたち。
手をふりかえして、うちら緑田小メンバーは帰路についた。