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宗田理さんの「ぼくらシリーズ」書き下ろし新作をどこよりも早くヨメルバで大公開!
ぜひ、れんさいを読んで、みんなの感想を聞かせてね。感想はコチラ♪
『ぼくらのオンライン戦争』は2023年3月8日発売予定です! お楽しみに♪
登場人物
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菊地英治(きくちえいじ) 中2 いたずらを考える天才。
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中山ひとみ(なかやまひとみ) 中2 水泳が得意。
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相原 徹(あいはらとおる) 中2 仲間をまとめる。
☆100秒でわかる! ぼくらシリーズの動画はコチラ!
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第2回
相原(あいはら)の自宅、『相原進学塾(しんがくじゅく)』に集まったのは、英治(えいじ)、安永(やすなが)、谷本(たにもと)、天野(あまの)、日比野(ひびの)の五人だ。
「言い出しっぺのカッキーはまだか?」
午後五時を二十分過ぎても柿沼(かきぬま)が来ないので、安永が少しイラついている。
「また誘拐(ゆうかい)されちまったんじゃないだろうな」
天野が本気とも冗談ともつかない言い方をした。
「あいつはおしゃれで気取っていて、金持ってそうに見えるからな」
「その上うわついていてスキだらけとくれば、危なっかしくてしょうがない」
谷本に続いて、日比野が言ったとき、
「だれが危なっかしいんだよ!」
いつのまにか、柿沼が背後に立っていた。慌てた日比野が、
「カッキー、無事でよかった。遅いから心配してたんだよ」
と、とりつくろったが、
「そうか? そんなふうには見えなかったぞ」
柿沼は信じていないようだ。
「いや、カッキーが時間どおりに来ないから、みんな、本当に心配してたんだ。なんと言っても、去年のことがあるからな」
日比野が反論するより前に、相原がいままでの状況を説明した。
「そうだな。遅れてすまなかった。ちょっと話が長引いちゃってな」
柿沼はそう言いながら、その場にいる六人に頭を下げた。
「それは今日の話と関係あるのか?」
英治がきいた。
「ありまくりだ」
「じゃあ早速、聞かせてくれよ」
「わかった。菊地(きくち)は覚えてるか? おれが去年の夏休みに軽井沢で閉じこめられていたこと」
「たしか、おじいさんとおばあさんの別荘(べっそう)に行ってたんだよな」
「そう。そのとおり」
「二学期のはじめに真っ白だったの、おまえぐらいしかいなかったから忘れるわけないよ」
英治はそう言って笑った。
「避暑地(ひしょち)で別荘暮らしなんて、うらやましいじゃないか」
天野が口をはさむと、
「いや、そうでもないんだよ。な?」
英治が柿沼に答えをうながした。
「おれは去年、誘拐されただろ? 別荘へ行かされたのは、東京にいると危険だからっていうおかしな理由さ。それなのに、向こうでも一歩も外へ出してもらえなかったんだ」
「じゃあ、ずーっと家の中にいて何してたんだ?」
安永がきいた。
「家庭教師をつけられて、朝から晩まで勉強漬け。うんざりだったよ」
「うわあ、それは地獄(じごく)だな」
「ときどき、じいちゃんとばあちゃんの目を盗んでこっそり抜けだしたりもしたけどな」
「抜けだしたって、結局は戻って勉強地獄なんだろ? たまんないぜ」
日比野が苦い物でも食べたような顔をした。
「……もしかして、カッキーは今年の夏休みもそれをやらされるのか?」
谷本が気の毒そうにきいた。
「よくぞきいてくれた。おれがみんなに話したいのはそれなんだ」
「どういうことだ?」
「じつは、じいちゃんが先月、心臓発作で倒れちゃったんだ」
「それは心配だな」
「緊急手術のおかげで大事にはいたらなかったけど、しばらくは入院が必要らしい。じいちゃんは今年の夏も軽井沢に行って、庭の手入れや別荘のメンテナンスをしながら、趣味で集めた骨董品(こっとうひん)を眺めるのを楽しみにしてたんだけど、さすがに行けそうもない」
「それなら、カッキーも今年は行かなくてすむな」
日比野が言うと、
「そうじゃないだろ」
柿沼から意外な言葉が返ってきた。
「え?」
「あんなに立派な別荘があるんだ。使わなかったらもったいないじゃないか」
「えっ? まさか……」
「そう。みんなで行って秘密基地(ひみつきち)を作ろうぜ。おれ、去年の廃工場(はいこうじょう)は途中参加だったから物足りなかったんだよ。別荘には部屋もたくさんあるし、プールやテニスコートまであるんだ」
「そういうことか!」
「やったあ! 行こう、行こう!」
日比野と天野が盛りあがったが、
「おもしろそうだけど、その別荘、本当に使わせてもらえるのか?」
相原は冷静だ。
「だから今、病院にお見舞いに行って、じいちゃんとばあちゃんの二人に頼んできたんだよ。この夏は、ばあちゃんもじいちゃんのことがあって別荘に行けないだろうから、おれが代わりをしますって。中のことはだいたいわかってるからって」
「さすがはカッキー。仕事が早いな」
「最初はあまりいい顔しなかったよ。だから、みんなで勉強合宿をしたいと伝えたんだ。そしたら、だいぶ見込みが出てきて、あとひと押しって感じ」
「勉強合宿はいいアイディアだ。その別荘には何人くらい入れるんだ?」
「十五人くらいなら余裕で寝泊まりできると思う」
それを聞いた相原は、少し考えてから、
「じゃあ、そこでうちの塾の夏期講習をさせてもらえないか? それなら親たちも文句を言わないだろうし、おじいさんも納得してくれるよ」
と、提案した。
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「それはいい。『相原進学塾』がバックについてくれたら怖いものなしだ。明日にでも早速話してみるよ」
柿沼は興奮気味に答えた。
「おいおい、秘密基地はどこにいっちゃったんだよ」
天野は納得がいっていないようだ。
「秘密基地を作らせてくれなんて言ったら、即却下(そくきゃっか)される。それは行ってからのお楽しみでいいだろ? じいちゃんに別荘の使用許可をもらわないかぎり何も始まらないんだから」
「でも、勉強合宿をすると言ったのなら、その約束を少しは守らないとな」
相原が言った。
「じつは、じいちゃんから、『勉強するのなら、去年の家庭教師を頼んでやるぞ』と言われたんだよ」
「えー、家庭教師なんてゴメンだぜ」
日比野が天を仰(あお)いだ。
「おれだってゴメンだ。だから、勉強のできる友だちを誘って教えてもらうからって断った。谷本や中尾(なかお)に来てもらえれば完ぺきだと思って。谷本は受けてくれるだろ?」
「おれができることなら構わないよ」
「よし、決まった。あとは中尾だ」
「勉強はするにしても、そればかりじゃつまらないから、参加者は何かの講師(こうし)をやることにしないか?」
英治が提案すると、
「講師ってどんな?」
天野がきいた。
「たとえば……、おれだったら、いたずらとか!」
「そうか! じゃあ、おれは自慢のトーク力を生かしたいな」
「おれはケンカ……、というわけにはいかないから空手にするか」
天野に続いて安永が言うと、
「おれは料理に決まってる。キッチンはあるんだろ?」
日比野が得意げに胸をそらした。
「ばあちゃんが料理好きだから、広くて豪華(ごうか)だぜ。調理器具もたいてい何でもそろっていたはずだ」
「よし、腕のふるいがいがあるぜ」
「なんだかワクワクしてきちゃったな」
柿沼はうれしそうに体をゆらしている。
「じゃあカッキー、おじいさんから正式に許可をもらってくれ。そしたら、おれと菊地でここにいないやつらにも話して参加者を集める」
「ここでしくじったら元も子もないからな。がんばるぜ」
柿沼が相原に向かって親指を立てた。
<第3回とつづく>(2月17日公開予定)
*実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
『ぼくらのオンライン戦争』は3月8日発売予定!
作:宗田 理 絵:YUME キャラクターデザイン:はしもと しん
- 【定価】
- 836円(本体760円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046322005
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