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「いみちぇん!」「星にねがいを!」で大人気!
あさばみゆきさんの新シリーズ「サバイバー!!」を公開中!
「う、うてな!?」
ヤバイ! こんな高さから落ちたら、首の骨を折っちゃう!
あたしは彼女を受けとめようと、猛ダッシュする——! けど、
「どけ!」
肩をつかまれ、思いっきり後ろに引かれた!
すぐ横を、ダレかがすさまじいイキオイで駆けぬけていくっ!
あたしは尻もちついて、それでもすぐに、バッと前を見やった。
ドッ!
一瞬のうちにあたしを追いぬいたそのヒトは、バネみたいにヒザを沈ませて重力を逃がし、全身でうてなのカラダを受けとめた!
砂ぼこりが大きく舞いあがる。
「……ビ、ビックリしたぁっ」
茶色いケムリの中から、うてなの声!
ぶじだった!?
二階の高さを頭から落っこちたのに、キセキだよ……!
きっとプロのサバイバーが救けてくれたんだっ!
「うてな、ケガは!? ごめん!」
あたしは腰のぬけたまま、彼女のところへ這いよる。
「うん、だいじょぶ……っ」
うてなを抱きとめた人は、彼女をぺいっと放りだした。
「あとちょっとって気のぬけた時は、事故を起こしやすい。訓練につき合わせるなら、自分の限界だけじゃなく、相手のようすも気にかけろ」
ぎろり、あたしに向けられた、キビしい目。
——涼馬くんだ。
まさか同級生が救けてくれたのかって驚くと同時に、身がすくんだ。
今までで、イチバン怒ってる目……!
そ、そりゃ、うてなを大ケガさせるとこだったんだから、当然だ。
「……ごめんなさい。あの、うてなを救けてくれて、ありがとう」
「あんたは。ケガ」
彼はあたしの全身をじろりと確かめて、いきなり手をつかんできた。
血豆のつぶれた、ばんそうこうだらけの手を見られてしまった。
こんなの、あたしの不器用のショウコみたいで恥ずかしい。
パッとひっこめて隠すと、彼は、自分のほうがケガしたみたいに眉をひそめた。
「ひどいな。ふつうクラスのほうがラクできるぜ。こんなふうに痛めることもない」
しかられるってカクゴしてたあたしは、ぱちぱち目をしばたたく。
「……ラクをしたいなんて、思ってないよ。S組のコたちは、だれも思ってないでしょ?」
だって、あたしを救けてくれたサバイバーたちが、簡単にスゴイ人になったなんて思えないもの。
ノドカ兄だって、きっとそうだったハズだ。
そして——涼馬くんだって。
この人の手のひらのカタさを、あたしは知ってる。
正面からジッと見つめかえすと、
「…………あっそ」
涼馬くんは息をつき、投げだしたカバンを取りにもどっちゃった。
彼の歩いていく先に、唯ちゃんや健太郎くんたちが待ってる。
S組のなかでも、成績ポイントの高いコたちの集団だ。
サバサバしてカッコイイ唯ちゃんは、アタッカー授業でいつも涼馬くんにホメられてる。
ほんわかムードの健太郎くんは、ディフェンダー授業で、うてなに並ぶ実力者。
そんなみんなが、こっちを気まずい顔でながめてる。
けど、あたしと目が合ったら、取りつくろうように手をふってくれた。
「これから寮の食堂で、『一週間おつかれパーティ』するんだぁー! 二人も来るっ?」
「六年のナオトさんと千早希さんも出てくれるって! ハイ・ウォールのコツとか、教えてもらえるかもよっ。オレたちじゃ、うまく説明してあげらんないしさー!」
「さそってくれてありがとーっ! またのチャンスに!」
パーティって気分にはなれなくて、両手を合わせてごまかしちゃった。
アドバイス……は、涼馬くんからいっぱいもらってるんだけどね。
それでも上達しない、ダメダメなあたし。
だけどみんなは、そんなあたしをこまりつつも仲間に入れようとしてくれる。
優等生たちらしい、オトナな優しさだ。
けど、それが今のあたしには、むしろ痛いかもしんない。
ほんとに〝担当ナシ〟だなって、レベルのちがいに情けなくなるっていうか……。
「うてなは行ってきたら?」
「いいよぉ。ボクはマメちゃんといるー」
涼馬くんと合流したみんなは、わきあいあいと校門を出ていく。
立ちあがりながら、あたしは首が下をむいちゃう。
「でも、涼馬くんの言うとおりだよね。さっきはムリさせちゃってゴメンね」
「ううん、ボクがウッカリしたせいだよ。でもリョーマさぁっ。マメちゃんだってボクを救けようとしてたのに、わざわざ尻もちつかせるコトないじゃん。あいつ、ほんとにマメちゃん限定ツンツンだよなー!」
うてながプンスカ、ほっぺたをふくらませる。
「う~~ん。涼馬の名誉のために、いちおうフォローしといてあげようかな?」
いきなりの、背後からの声。
ふり返ったら、楽さんと七海さんがすぐソコに立ってた。
※
二人も寮に帰るところだったみたいだ。
楽さんはほっぺたをかき、涼馬くんの消えたほうに目をやる。
「さっきのね。マメちゃんだったら、二人とも大ケガだったよ。落ちてくる人間を受けとめるって、超むずかしいワザなの。だから巻きこまれないように、確実に遠ざけてあげたんじゃない?」
思いもよらない言葉に、あたしは目をしばたたいた。
「じゃあ、涼馬くん、あたしのことも守ってくれて……?」
「ボクも、ただのイヤがらせだと思ってた」
「ハハッ。くっそマジメに『理想のサバイバー』をやってる涼馬だよ? わざと乱暴はしないなー」
あたしはうてなと顔を見合わせる。
ひどいカンちがいをした自分に、カァッとほっぺたが熱くなった。
「でも、あんなに冷ややかな涼馬さんは、初めて見ますね」
「たしかに。マメちゃんってば、いったい涼馬に何しちゃったの」
やっぱり去年からいっしょの二人も、ヘンって思うような態度なんだ。
ますます肩が落ちちゃうよ。
「あたしの成績がサイテーだからですかね……。現場で〝担当ナシ〟に足ひっぱられたら、みんなの命にかかわるって言ってましたもん」
「あー、なるほど。そのうち実地訓練もあるからねぇ」
ナットク顔でうなずいた楽さんに、あたしは逆にぽかんとする。
「実地訓練とは——、一年に何回か、とつぜん行われる訓練で、ボソボソボソ……」
七海さんが説明をはじめてくれたけど、ぐぬっ、ぜんぜん聞きとれない!
あたしは彼女のメガホンを、サッと口にあてた。
「予告なしで、いきなりサバイバルな場所に放りだされるんです」
やたらとクッキリ聞こえた言葉が、めちゃくちゃ不穏だったぞ!?
——でも、もしかして、その訓練って……。
「そうそう。くわしいコトはヒミツだけどね。なんもない砂漠とか、コンテナ船で海を漂流とか。一番キツかったのは、廃鉱山の火災現場。学校で現場を買いとって、ほんとに火をつけるからね」
「ほ、ほんとの火災ですか!? その中に放りだされる……って、すごくハードな……」
「そんなの、うっかりしたら死んじゃうじゃん」
思わず声がふるえるあたしたちに、二人とも平気な顔でうなずく。
「サバイバーが、いきなりのサバイバル状況に対応できなかったら、話になんないからね」
「あなたたちもS組に入るとき、約束の書類を書いたはずです。『命を学校にあずける』『S組にかかわることはヒミツにする』などなど……」
うてなが青ざめた。
たしかに保護者といっしょに直筆でサインしたの、あたしも覚えてる。
もし学校で死んでもモンク言うなってイミ——? って、びっくりしたんだ。
「実地訓練では、ケガ人はたくさん出ますし、過去にはゆくえ不明になった生徒もいると聞きます。命がけですから、〝担当ナシ〟さんとチームを組みたい人は、正直、いないのではと」
「しかもその時のチームの成績は、プロになるまでついて回ってくるんだよね。そりゃ、チームポイント下げられんのは、ぼくもイヤっちゃあイヤかな。というかイヤです」
七海さんに続き、楽さんまでも、追いうちのヨーシャないお言葉だっ!
「だけどあたし、どうしても、サバイバーにならなきゃで」
あたしはゆるゆるとメガホンを下ろした。
服の下、だいじなホイッスルに手をあてる。
これをくれたノドカ兄とは、もう半年も会えてない。
しっかりしなきゃって、がんばってはいるけど。
心にはぽっかり……大きな穴があいたままなんだ。
今わたしとノドカ兄をつないでくれる場所は、S組だけしかない。
だからこそ、どうしても彼とのヤクソクを守りたい。
つぎ会えたときに、「ちゃんとサバイバーめざしてるよ!」って、胸をはれる自分でいたいから。
——でも。
ほかのコたちには、あたしの存在がメーワクだってのは、本当だよね。
一生懸命やってもトクイがないコは、夢をあきらめるしかない……のかな。
ギュッとこぶしをにぎりこむ。
「先生たちも、マメちゃんは実地訓練に入れないと思うけどね。ヘンなうわさも流れてるし」
「うわさ? 実地訓練のことでですか? それってどんな」
「アホらしいようなのだよ。ま、ケガしないように、自主トレもほどほどにね」
センパイたちは、ひらひら手をふって歩みさっていく。
おつかれさまでしたって頭を下げ、あたしは二人の背中をじっと見おくった。
……くやしいなぁ。
みんなみたいに、トクイのない自分がくやしい。
「マメちゃんっ!」
ばむっ!
うてなに思いっきり背中をたたかれ、ゲェホッとむせる。
「まだS組が始まったばっかじゃん! チームもボクと組めばいいんだし。もしも実地訓練にあたっても、ボクがディフェンダーとして、マメちゃんを守ってみせるよ!」
ねっ、とのぞきこんでくる彼女の、心配そうな瞳。
「ありがと、うてな」
あたしはキュッと、ふくふくホッペを抱きよせる。
うてなをアテにするなんて、サバイバーとしてナシだけど。
でも実地訓練までには、きっといっぱい、自分を成長させるチャンスがあるはずだ。
胸のホイッスルを、しっかりとにぎりこむ。
ノドカ兄も「マメなら、なんにだってなれる」って信じてくれた。
そばにいなくたって、あの言葉はずうっと覚えてるよ。ノドカ兄。
——あたしは、双葉マメ。
今は、指でつまめちゃうような、つまんないタダの豆でも。
あきらめずに水をあげつづけたら、ぐんぐん伸びて、天までとどく豆の木になれる——ハズッ!
まずは自分で自分を信じてみよう!
だけど今日はもう、涼馬くんの忠告どおり、ハイ・ウォールの訓練はやめとかなきゃな。
「じゃ、授業の復習しよっか!」
「じゃ、帰ろっか!」
同時に正反対のことを言っちゃったあたしたち。
二人して砂ぼこりまみれの顔を見合わせ。
ブハッとふきだして笑いあった。
※
今日は待ちに待った、二泊三日の遠足合宿!
ず~~っと、勉強&訓練だけの日々をすごしてきて。
山でハイキングなんて、テンション上がっちゃうよねっ!
「ええと、『おおぜいの負傷者を、いっぺんに救助するとき。まずはダレから手当てするかを、選んで決めましょう』」
しかし〝担当ナシ〟はバスに座るなり、すかさず勉強するのだっ。
あたしはこの一か月でいよいよ、クラスメイトから、「マメちゃんなら、このくらいデキてればいいよ。がんばりすぎも良くないよ」なんて、なぐさめられるようになってしまった!
このままじゃダメだっ!
「お。それ、選別のトコ?」
教科書を読みあげてると、となりの席から、うてなが顔をよせてきた。
「それって、ケガ人がいっぱいの時に、歩けるかみてー、呼吸あるかみてー、脈とってーって、手当ての順番を決めるヤツだよね」
「さすがうてな! ばっちりだね」
「えへへー。ディフェンダーのことだからさ。けど他のはホンットだめ。あのアタッカー鬼リーダー、さわやかに、ちょースパルタだしさぁ。もう、あいつの授業うけたくなぁーい!」
うてなが嘆きながら、キャラメルを教科書にのっけてくれた。
「ありがと、うてな」
ぱくっと食べちゃったあとで、はたと気がついた。
「えっ。なんでオカシ持ってんのっ? お弁当もオカシも、配られるから持ってきちゃダメって、遠足のしおりに——、」
「これでマメちゃんも同罪だ~っ」
食いしん坊のうてなは、ひゃっひゃっひゃとワルい顔で笑う。
「お、居のこりコンビも三号車か。ヨロシクね」
ヒョイッとのぞきこんできた、にこにこ笑顔!
楽さんっ!!
「「おひゃよンゴざいまンゴッ」」
キャラメルを飲みこみそうになっちゃって、二人してセキこむ!
「な、なになに。そんなにビックリするほど、ぼくがカッコよかった?」
ジョーダン(?)を言いながら、楽さんは奥の席へ。
そのすぐあとに、気配のないお人形さん——じゃないや、七海さんが続く。
「なにやら、あまい香りがしますね……」
ぎくうっ!
あたしたちは身をすくめ、超高速で口の中のキャラメルを溶かす。
「あれ。七海さんも楽さんも三号車? ミニバスでリーダーがそろうって、すごい確率ですね」
足どり軽く中に入ってきたのは……っ、風見涼馬!
ほかの生徒たちから、ワッと喜びの歓声があがる。
五年はうてなとあたし、唯ちゃんと健太郎くん、涼馬くん。給食班のメンバーだ。
あとは楽さんたち六年が四人。
以上、生徒九人でこのミニバスはみっしり満席だ。
(ただし、でっかい筋肉先生が、一番まえの座席をふたつ占領してる)
「〝担当ナシ〟も来るのかよ。今すぐ帰れ」
「いやですー」
今朝もツンツンな涼馬くんに、あたしはげぇぇって顔を、さらにしかめて返す。
すると彼もあたしを冷たーく見下ろして、手のひらを突きだしてきた。
「違反キャラメル、没収」
「「うええええっ」」
どうしてバレてんのっ!
縮みあがるあたしたちに、涼馬くんはシラッとして、キャラメルの箱をかっさらう。
「においで分かんだよ。楽さんたちは目をつぶってくれただけだ」
と、前の席から、先生ののぶとい声。
「双葉マメと空知うてな、成績ポイントからマイナス1点なァー」
「ギャ! 先生っ、あたし30ポイントしかなかったんですけどっ。今、あと何点ですか!?」
「ボクのもっ!」
「双葉マメは、のこり20ポイントきってるぞ。空知うてなは、マイナスは多いが、ディフェンダー訓練でポイント回復してたからな。70から変わってない」
「ワァ……」
絶句するあたしに、涼馬くんはあきれたタメ息だ。
「〝担当ナシ〟のほうは、いよいよこの遠足で、S組からサヨナラだろうな」
うしろの席へ歩いてく彼を、あたしはふるえながら見おくる。
ちょうど、パチッと健太郎くんと目が合った。
と思ったら、彼はニガ笑いで、そそっと前に視線をそらす。
だよね。コメントしづらい気持ち、わかりマス……。
「え、え~とさ、五年生。『強勇学園、ナゾの怪事件』って知ってる?」
「なんですかソレッ。おもしろそう!」
「よーし、オレが教えてあげよう。実地訓練に出た、未知の危険生物のはなし!」
めんどうみのいいセンパイ、千早希さんとナオトさんが、あわててみんなを盛りあげてくれる。
危険生物? 未知のって、エイリアンとかUMAみたいな?
みんなは、たぶん楽さんが言ってた「ヘンなうわさ」にキョーミしんしんだけど。
あたしは遠足どころじゃない気分になっちゃった。
はぁぁ……っと息をつき、教科書にべしょっと顔をうつぶせた。
※
あれ、あたし寝てた?
目を開けたとたん、こめかみがズキッと痛んだ。
お昼のお弁当をバスで食べたあと、いつの間にか、ぐっすり眠りこけてたみたいだ。
あたしの肩にもたれかかってるうてなが、ぷうぷう寝息をたててる。
バスの中はぶきみなほど静かだ。
もう現地に到着したのかな。
立ちあがって、みんなを見まわしてみたら、
「い、いないっ!?」
運転手さんも、前の席にどかっと座ってた筋肉先生も——、
涼馬くんたちリーダーも、まるっといない!
変だ。ざわっと両うでにトリハダが立つ。
あたしはハジかれたように席を立ち、バスの外へとび出した。
「……なんだこれ」
砂浜にうちよせる白い波。そよそよとポニーテールをゆらす、潮風。
上空に円をえがく、とんびの影。
あたしはバッとしゃがんで、波うちぎわの濡れた砂を手でにぎる。
本物だ。夢じゃない。
なんで海っ!?
この物語の続きは、「サバイバー(1)いじわるエースと初ミッション!」の紹介ページのためし読みボタンから読めるようになるよ。
まさかすぎる展開に、マメたち9人の命運や――いかにっ!!?
※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
作:あさば みゆき 絵:葛西 尚
- 【定価】
- 726円(本体660円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046320780
☆感想が届いているよ!
すっごく面白いです! 次が気になる終わり方なので 楽しみだし飽きません!
こういう系のお話を始めて読んだけど、思った以上にすごく面白かった
ウデ立てふせをしながら『サバイバルの5か条』を言うなんて…マメちゃんすごいーー!!
マメちゃんが自主練とかをしていて頑張れって応援したくなった。
出来なくても、諦めずに頑張っている所が好きです!!!
いつも感想うれしいです♪ たくさん届いていてのせられなかった感想も、ぜんぶ読ませてもらっています。
先行おためし読みをさいごまでたのしんでくれて、ありがとうございました!
ますますハラハラドキドキな展開がまちうけるこの続きの物語、本で読んでみてくださいね☆(担)