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「いみちぇん!」「星にねがいを!」で大人気!
あさばみゆきさんの新シリーズ「サバイバー!!」を公開中!
「サバイバルの五か条」
サ:最初に、そして常に心をしずめろ
バ:場所と状況を確かめろ
イ:命を大切にせよ
バ:場にあるモノを工夫して使え
ル:ルールを守れ。しかし臨機応変に
ぶつぶつぶつぶつ、ウデ立てふせをしながらくり返す。
校庭の砂が手のひらに食いこむのも、もう慣れっこだ。
S組スタートから一週間。
あたしはホントに〝担当ナシ〟そのものだった。
攻守陣の三科目、どれもウマくできなくて、みんなとの差はどんどん開いていく。
みんな優しいから「がんばれー」って応援してくれるけど、「S組のお荷物」的な立ち位置は、すでにばっちり確定だよ。
そして、だんだん分かってきた。
初日は「一年間がんばれば、今の六年みたいになれるんだー」ってワクワクしたけどさ。
実はたんに、S組の訓練についていける人が残っただけなんだ。
午前は、国語とか算数の、ふつうの授業。
だけど、先生はおっそろしい速さで教科書を進めていく。
そのぶんのあいた時間で、午後からは、校庭でのハードな訓練がみっちり!!
みんなはそこで解散だけど、あたしは放課後のチャイムが鳴るなり、「S組訓練㊙教科書」を暗記しながら、下校時刻の放送が入るまで、自主トレ。
——ってのが一日のスケジュールだ。
朝イチで登校して、夜もまぢかにズタボロで帰るから、家族は心配して、「ムリしないで」って。
だけどみんなについてけないなら、あたしは訓練の量でカバーするしかない!
実は、この一週間で、五年生は五人も減っちゃったんだよね。
「もうムリ」って、自分からふつうクラスにおひっこししたそうだ。
でも残ったメンバーは、どんなに訓練がしんどい日だって、歯を食いしばってがんばってる。
もちろんあたしだって、まだまだあきらめるつもり、ゼロだよ!
「以上っ、サバイバルの五か条!」
ラスト三十回めの逆立ちウデ立て、やりきった!
ハーッと息をつき、あおむけに転がる。
「マメちゃん、ちゃんと教科書おぼえてんの? さすがマジメだねぇー」
うてなは朝礼台でごろごろ。
楽さん特製「よいコのにこにこ応急処置テキスト」をめくってたとこだ。
「マジメっていうかさ。現場で生きるか死ぬかってときに、ごそごそ教科書を開けないもんね。だからまずは暗記してこいって、まぁ、そのとーりだなって」
「うえー。ボク、好きなことしかやりたくないよォ」
「うてなは、ディフェンダーに決まってるようなモンだもん。七海さんだって、キャンパーだけスゴイんでしょ?」
「そ! ボク、七海さんのディフェンダー版をめざすんだっ。だからアタッカー授業なんて、リョーマに怒られてばっかだけどさ。ま、いっかなって。ディフェンダーなら、五年じゃダレにも負けないし」
「いいなーぁ。あたしも、なんかトクイな事があったらイイのになー」
うてなみたいに、コレ! って才能があるのって、カッコイイなと思う。
不器用なあたしは、一週間たっても、どこを重点的にがんばればいいのかも分かんないままだ。
すぐそこで、コンクリのカベが夕陽に照らされてる。
……うんっ。まず最初の目標は、「S組で生きのこること」だよな!
「ハイ・ウォール、今日こそはとびこえるよ」
手のひらの砂をパンパン落としながら、立ちあがる。
「まだやんのっ!?」
「あれができたら、やっぱり現場でも役に立つと思うんだ」
将来、あたしが現場に出られるようになったら。
救けを求める人のところへ、一秒でも早く駆けつけたい。
そう思うのは、自分自身が要救助者だったとき、救けてもらうまでの心細くてツラい時間を、さんざん味わったからだ。
ノドカ兄に救けてもらったときの、あのホ~ッとする気持ちは、いまも忘れられない。
だからあたしは、今日もハイ・ウォールに立ちむかう!
…………しかし、気合いとはウラハラに。
あいかわらず「だんっ」「どしゃっ」のくり返し!
まったく進歩してるカンジがしないよぉっ!
「マメちゃぁん、もう明日にしようよぉ~~。おなかすいたぁ」
カベの上から、うてなの疲れきった声がふってきた。
彼女、見かねたのか、とちゅうから補助をやってくれてたんだ。
「あと一回だけ!」
あきらめきれず、手を合わせてお願いする。
はぁいとうなずいた彼女が、もそもそスタンバイしてくれるのを待って。
あたしはふたたび、全力ダッシュ!
「3、2——」
うてなが手を突きだした、その瞬間。
「ひぇっ」
彼女、前のめりになりすぎて、バランスをくずした!
カベのむこうでハシゴにのってるはずの両足が、大きくふり上がる!
そして頭から真っ逆さまに——っ!
<第9回へつづく>
※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
☆感想が届いているよ!
一生懸命頑張っているシーンがいいなぁーと思うよ! だってさ,34回飛ぶってすごい! 憧れる!
涼馬くんの厳しい言葉にも負けないマメちゃんを応援したくなります…!
マメちゃんがキッっと涼馬くんを見上げるところ! マメちゃんの強い意志が感じられました。 うてなちゃんがマメちゃん思いなところも大好きです!
うてなちゃんの「ボクのマメちゃんいじめんなよ」がカッコよかったです。
涼馬くんの冷たいところが好き! マメちゃんのことをフルネームで呼ぶところが何故だかきゅんとする、、
涼馬は確かにいじわるなんですけれど、なんだかんだ言ってマメの練習に付き合ってあげているところなど、どこをとってもなんか嫌いになれないんですよね。
マメちゃんと涼馬くんの掛け合いのノリがとても良い
「ただし、できないヤツは、終わるまで帰らせねーから」というセリフが凉馬くんだけしかいえなさそうで、さすがいじわるエースだなぁと思えて面白いからです。
七海さんの「S組のSはサバイバルのSじゃなくて、スパルタのS 」という名言が めちゃくちゃ面白かったからです。
いじわるエース・涼馬くんについての追加アンケートも、みんな回答ありがとう♡
「キビしすぎっ!」から「いやいや意外と…?」、逆に「冷たいところがいい…♡」と意見がいっぱい!
あなたはどう思った? 次のお話もおたのしみに!
作:あさば みゆき 絵:葛西 尚
- 【定価】
- 726円(本体660円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046320780