すっかり外が寒くなり、春から秋にはたくさん見かけた虫たちも、12月に入ってからはほとんど見つけられなくなってきました。
昆虫好きの人たちにとっては、春まで寂しい季節が続きます。
でも、冬になったからといって、昆虫を探せないことはありません!
冬にしか見られない昆虫の姿を見に行く絶好の機会でもあります。
今回はそんな「冬でも探すと見つかる昆虫の探し方」についてお話しします。
▼目次
●昆虫は冬に何をしている?
●冬でも見つかる昆虫たちを紹介します!
①【カブトムシの幼虫】
②【ツチイナゴ・クビキリギス】
③【オオムラサキ・ゴマダラチョウなどチョウやガの仲間】
④【冬に活動する昆虫】
寒くなると外で昆虫を見かけることがほとんどなくなりますが、彼らはどこで何をしているのでしょうか?
日本の昆虫たちは冬になると「越冬」をします。
冬の間はうまく体が動かなかったり、食べる餌がなかったりするため、寒い冬が終わるまで、みんなそれぞれの方法で寒い冬を乗り越えています。越冬をする方法は昆虫の種類によってさまざまです。
カブトムシの場合は幼虫の状態で冬を越えます。夏の終わりに腐葉土の中に産みつけられた卵は、秋の初め頃に孵化します。そして腐葉土を食べながらどんどん成長し、大きく成長した幼虫の状態で冬を越えます。
アゲハチョウは蛹の状態で冬を越え、暖かくなった3月下旬頃に成虫が羽化します。カマキリは卵の状態で冬を越え、春には卵からたくさんの幼虫が産まれてきます。
成虫で冬を越える種類もいます。バッタのなかまのツチイナゴや、キリギリスのなかまのクビキリギスは冬の草むらで、草の根元に掴まって寒い冬を乗り越えています。
このように昆虫たちは、それぞれの方法で冬を乗り越えています。
まずはカブトムシの幼虫を探す方法を紹介します。先ほどお伝えしたように、カブトムシの幼虫は腐葉土を食べます。腐葉土とは、枯れ葉や木が腐って土のように細かくなっているものです。カブトムシの幼虫を探すには、夏の間にカブトムシの成虫を見つけたことがある雑木林に行き、そのような腐葉土の中を探す必要があります。
一番見つけやすいのは、大きな朽木の下です。雑木林の中に横たわっている朽木の下にはたくさんのカブトムシの幼虫が隠れていることがあります。大きく、ボロボロになっている朽木の下を見るのがポイントです。カブトムシの幼虫が隠れている場所には、必ずたくさんの彼らの糞があるため、それを頼りに探すのがよいでしょう。腐葉土を掘る際に硬いスコップや石などを使うと、幼虫を傷つけてしまうことがあるため、ゆっくりと慎重に掘り進めましょう。
幼虫を探したあとは必ず土を埋めたり、木を元の位置に戻したりと必ず元に戻してから帰りましょう。持ち帰ったカブトムシの幼虫は、ホームセンターなどで販売されているカブトムシマットで飼育すれば、春から夏にかけて蛹や成虫に変態していく様子を観察することができます。また、朽木や倒木の下にはカブトムシの幼虫の他に、コクワガタの成虫なども隠れていることがあるので、一緒に探してみましょう。
冬でも大きなバッタやキリギリスのなかまを探すことができます。それはツチイナゴとクビキリギスです。
彼らは河川敷や公園など、草が多く生えている草原に生息しています。そして冬になるとその草原の枯れ草などの根本の方で、じっとして冬を乗り越えます。冬でも暖かい日には少し移動することもあるようなので、天気のいい日中に草原を探すと彼らに出会えます。またクビキリギスと似た、シブイロカヤキリというキリギリスも成虫で越冬しているため、捕まえたらじっくりと違いを観察してみましょう。
チョウやガのなかまは種類ごとにさまざまな状態で越冬します。
アゲハチョウは蛹、ルリタテハやキタテハなどは成虫、ミドリシジミのなかまは卵で冬を越します。中にはオオムラサキやゴマダラチョウのように、幼虫で冬を越える種類もいます。

アゲハチョウの蛹
オオムラサキやゴマダラチョウの幼虫は、大きなエノキの木の葉っぱを食べます。冬になると、幼虫たちは木の根本まで降りてきて、地面の枯れ葉の裏で越冬します。彼らが生息している地域に行き、エノキの木の根本で葉っぱを捲ると、越冬している幼虫を見つけることができます。越冬している時は枯れ葉に擬態するため、緑色の体を茶色にして越冬します。

オオムラサキの幼虫
オオムラサキとゴマダラチョウの幼虫は非常によく似ていますが、背中の突起の数を見ると見分けることが可能です。オオムラサキの幼虫の背中の突起は4つありますが、ゴマダラチョウの幼虫の場合は3つ(+小さな1つ)となっています。
ただ、近年は特定外来生物のアカボシゴマダラというチョウが、この2種に混じって越冬していることがあります。アカボシゴマダラの幼虫は越冬時も少し緑色をしており、背中の突起も、2番目と4番目の突起が小さくなっているので見分けがつきます。アカボシゴマダラは特定外来生物に指定されているため持ち帰って飼育することができないので、飼育を検討する際は、しっかりと見分けることが大切です。
最後に、他の越冬する昆虫たちとは違い、冬にのみ成虫活動をする昆虫を紹介します。それはガのなかまです。冬に活動するガは数種類おり、種類によって発生時期もさまざまです。
代表的な1種がウスタビガです。
ヤママユガ科のなかまで、体にふわふわとした毛がたくさんある大型のガです。ウスタビガは6月頃に幼虫が蛹になったあと、夏と秋を乗り越え、11月後半頃に羽化を始めます。そして羽化してきた成虫は食事をすることなく、1〜2週間の成虫寿命で活動を終えます。そのため11月後半から12月中旬にのみ成虫活動を見ることができるガとなるため、彼らを観察できるのは1年の中での寒い季節のみとなります。
ウスタビガの発生が終わっても、フユシャクと呼ばれるガのなかまが12〜3月頃に活動します。筆者は半信半疑で2月の夜の森に入り、目の前にガが飛んでいた光景に衝撃を受けました。そしてこのフユシャクのなかまの中には、「メスが翅を持たない」という面白い特徴を持った種類がいます。この翅を持たないメスは、木の幹などでじっと掴まっており、オスが飛んでくるのを待っています。
フユシャクのなかまを探すのは、夜に自然公園などに行くのがおすすめです(※フユシャクのなかまの中には昼に活動するものもいます)。なるべく暖かく、風の少ない日を選ぶのがポイントです。そして夜の森にガが飛んでいるのを見つけたら、今度は手すりや柵をじっくり見ていきましょう。翅のないフユシャクのメスは、そのような人工物の目立つところでオスを待っていることが多いです。
翅を持たない姿は非常に面白く、最初見た時はガとは思えないでしょう。
このように、冬だからといって昆虫がいなくなっているわけではありません。みなさんの見えないところに隠れて、この寒い冬を乗り切っているのです。
この記事を参考に、冬にしか出来ない昆虫観察を楽しんでみてください!
写真:PIXTA
【プロフィール】
むし岡だいき
昆虫採集YouTuber 。チャンネル登録22万人 、一番好きな昆虫はコロギス。