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テレビでもお馴染み、東大生で昆虫ハンターの牧田習の初書籍「昆虫ハンター・牧田 習のオドロキ!!昆虫雑学99」。身の回りにいるちょっと気になる虫から、レア度100%の変わった虫まで、その魅力をイラストと共に解説しています。今回はその中から「ゲンゴロウモドキ」「ダイコクコガネ」「オニヤンマ」をご紹介。
ゲンゴロウモドキは「モドキ」だけど、れっきとしたゲンゴロウ
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「モドキ」という言葉を聞くと、なにかに似ているものや偽物という意味を想像すると思います。実際、昆虫の名前にはカマキリモドキやアゲハモドキなど、この「モドキ」という言葉がよく登場します。しかし、カマキリモドキはカマキリではなくカゲロウの仲間ですし、アゲハモドキもアゲハチョウではなくガの仲間です。そこは「似ているけど別の種」なのです。
そんな中、モドキという名前にもかかわらず、元の昆虫と同じ仲間であるものがいます。それはゲンゴロウモドキです。ゲンゴロウモドキは、モドキといえどもゲンゴロウの仲間で、生態もゲンゴロウにかなりよく似ています。さらに驚くことに、新種として発表されたのは、本家のゲンゴロウよりもゲンゴロウモドキのほうが先なのです。本来であれば、ゲンゴロウモドキのほうが「ゲンゴロウ」を名乗ってもいいくらいです(笑)。先に見つかっていたのにもかかわらず、日本語ではモドキ扱いされるゲンゴロウモドキ、少しかわいそうですね。
〈データ〉
名前:ゲンゴロウモドキ
体長(成虫):3〜3.5cmほど
生息地: 日本(北海道、本州北部)、中国、ロシア、モンゴル、カナダなど
活動時期(成虫):4〜10月
特徴:オスの前脚は広がった形になる
採取難易度:★★
ダイコクコガネは うんちのボールを作る
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牧場に行くとウシやウマなどのたくさんの動物がいます。もちろん、その動物たちのうんちも落ちていますよね。うんちの周辺を見渡していると、少し古いウシのうんちのそばの地面に、穴があるのを見つけました。気になって掘ってみると、びっくり。突然、うんちのボールが現れました! 「何者が作ったのかな!?」と思っていると、うんちのボールと一緒に黒いコガネムシが出てきました。そう、このコガネムシはダイコクコガネといい、動物のうんちを食べる習性がある昆虫です。
ダイコクコガネは穴を掘り、その中にウシやウマなどのうんちを運び込み、そのうんちでボールを作る習性があります。うんちのボールを作る目的は、その中にメスが卵を産み、卵から生まれた幼虫がうんちをエサとして食べて育つからです。
それにしても、コガネムシが作ったとは思えないくらいきれいな丸い形です。うんちのボールを見つけたら、ダイコクコガネのボール作りを温かく見守ってあげましょう。
〈データ〉
名前:ダイコクコガネ
体長(成虫):2〜3cm弱
生息地:日本、朝鮮半島、中国
活動時期(成虫):6〜9月
特徴:オスは立派なツノを持つ
採取難易度:★★★★
オニヤンマは ウサイン・ボルトより速い
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私たち人間は、軽く走るだけでも時速10㎞ほどのスピードを出すことができます。陸上競技の100m走で人類最速記録を持つウサイン・ボルト選手は、最高時速45㎞ほどのスピードで走ることが証明されています。人間って意外と速く走れるんですね。では、人間よりもはるかに小さいトンボはどのくらいのスピードが出せるのでしょうか? 今回はトンボ代表として、日本最大のトンボ・オニヤンマで考えたいと思います。
オニヤンマは川の近くなどに生息し、小さな昆虫などを捕まえて食べます。そのため、素早く飛びまわって獲物を捕まえます。体長10㎝ほどの昆虫だし、きっと人間よりも少し遅いぐらいでは……と思いませんか? しかし、オニヤンマはなんと時速70㎞ほどで飛ぶことができるのです! 人類の最速記録をトンボは余裕で超えています。
日本では一般道を走る自動車の法定速度は時速60㎞なので、もしオニヤンマが自動車だとスピード違反です(笑)。オニヤンマがこんなにも速く飛べる理由は、羽を動かすための筋肉がすごく発達しているからです。生まれながらにして筋肉ムキムキのオニヤンマ……。うらやましいですね。
〈データ〉
名前:オニヤンマ
体長(成虫):9〜11cmほど
生息地:日本、朝鮮半島、中国、ロシアなど
活動時期(成虫):6〜10月
特徴:生きている時の目は緑色で美しい
採取難易度:★★
今回紹介した虫たちをはじめ、全99もの虫の小噺が詰まった「昆虫ハンター・牧田 習のオドロキ!!昆虫雑学99」、ぜひチェックしてみて。
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【プロフィール】
牧田 習(まきたしゅう)
幼少期から昆虫が好きで、高校時代には学会(日本甲虫学会、日本昆虫学会)に参加する。現在では海外の研究者と協同で昆虫研究を進め、新種を発表するなどして昆虫研究家として活躍している。