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ものがたり

【スペシャル連載】サバイバー!! 第4回


「いみちぇん!」「星にねがいを!」で大人気! 
あさばみゆきさんの新シリーズ「サバイバー!!」を公開中!

 

二十メートル全力ダッシュを、連続で六本!

 息があがったとこで、逆立ちしたままウデ立てして、さらに腹筋!

「次、校庭十周! 健太郎、しっかりしろ! 唯も本気出せ! もっとスピード出せんだろっ」

 給食のあと、いよいよ始まったS組の訓練授業

 担任の「(きん)(にく)(せん)(せい)」は、なぜかいない。

 かわりに校庭にひびくのは、「(こう)」成績トップ・(かざ)()(りょう)()の、やたらとさわやかな声だ。

 彼だって同じメニューをこなしてるのに、めっちゃ楽しそう!

 髪をサラサラなびかせ、よゆうの笑顔でみんなにハッパをかけてる。

「うっ、うそでしょ……!」

「ボク、もうゲンカイ」

 あたしとうてなはゴールラインで、スッ転ぶように地面へたおれこんだ。

 五年生たちはみんな、打ちあげられた魚ジョータイ。

 ひっくり返り、ほぼ呼吸コンナンだ。

 六年はとっくに集合して、ビシッと整列して待ってくれてる。

 さっすがセンパイたち、去年から訓練してるだけあるなぁ……!

 あたしも一年後には、あんなふうになれてるのかな?

 最後の一人がギブアップして、保健室に運ばれてったあと——

 朝礼台でくつろいでた背の高い男子が、ひょいっと身がるく地面におりた。

「さぁて。みんなそろったかなー」

 さっき()()(しょう)(かい)してくれた、S組の総リーダー、

 六年の()()()(がく)さんだ。

 すらりとした高身長に、優しげな表情。

 髪をハーフアップにまとめた彼は、ほんとに優秀生? ってかんじの、ゆる~い雰囲気だ。

 だけど、総リーダーってことは、リーダーのなかのさらにリーダー。

 一番すっごいヒトってことだよね?

 彼はにこにこ笑いながら、校庭にへばりつくあたしたちを見まわした。

 リーダーのおつかれさまのあいさつで、や~~~~っと帰れるのかな。

 おふろで足をもんどかないと、あした立てなくなりそうだよぉ……。

「では、いま(、、)から(、、)第一回、S組訓練に入ります! 六年は自主トレね。五年はこのまま残って、リーダーたちからの授業をうけてもらいまーす」

「………………えっ」

 五年生一同がみんなで目をかっぴらいた。

 い、いまから? いまから訓練が始はじまるの?

 じゃあさっきまでのってマサカ、ただの準備運動ォ!?

「どしたの? あ、そっか。えるのは先生じゃないの?って? いい質問だねー」

 そっちじゃないデス!

 ——ともツッコめなくて、みんなただただ、静まりかえる。

 いや、生徒が生徒を教えるって、新情報にもビックリだけどさ……っ!

 凍りつくあたしたちに、自主トレを始めてた六年がいっせいに笑ってる。

 去年の彼らも、同じ反応をしたのかも。

「このS組では、成績トップ3の生徒——すなわち三人のリーダーが、みんなを教えることになってます。生()たちだけで訓練をするのは、『自分たちで考えて、自分たちで動く』っていう、サバイバル精神を育てるためだね。だけどもちろん、先生たちは監視カメラごしに、ぼくたちを見てるから、安心して。ね、涼馬」

 楽さんがとなりを向くと、涼馬くんはたのもしい笑みを浮かべた。

「大丈夫だ。おれたちは、すでにプロのサバイバーたちにまざって、災害の現場にも出てる。質問や心配なことがあったら、エンリョせずガンガンぶつけてくれ」

 あこがれの視線が、五年のみならず六年からも、彼らに集まる。

 リーダーたちは、もうホントの現場に出てるんだ……!

 ノドカ(にい)もS組にいた時は、飛び級のあと、五年から現場に参加してたらしい。

 サバイバーの任務は、家族にもヒミツ。

 だから、どんなふうに働いてたのかは知らないけど。

 ——あたしは一度だけ、任務中のノドカ兄を見たことがあるんだ。

 

 去年、四年生の社会科見学で、科学館に行った帰り道のことだ。

 バスが通りかかってた橋が、いきなり真ん中から折れて落っこちちゃったの。

 なんで急にそんなコトが起こったのか、実はいまだにナゾのままなんだけどさ。

 あたしたちは運わるく、その怪事件にブチ当たっちゃった。

 横だおしになったバスは、どんどんナナメにかたむいてく。

 このまま谷底に落っこちて、おしまいだ……! って絶望してた時。

 ノドカ兄が、サバイバーとして(たす)けに来てくれたんだ。

 彼はもの静かで、だれにでも、おだやかにほほ笑んでる人だけど。

 あたしには「マメ、おいで」って、目を細めるトクベツな笑顔で、手をつないでくれるんだ。

 その時も、バスの上からのぞいた大好きな笑顔に、ものすごくホッとして。

 今度こそ、あたしもそっちがわに回りたい。

 サバイバーになって、とおなじチームでうんだって、心に決めたの!

 

「S組には弱い人間はいらない。人の命を救うのに、自分が守ってもらおうなんて話にならないからね。だれよりも強く、だれよりもチームの役に立てる人間をめざしてもらうよ」

 楽さんの力強い声に、あたしは彼を見つめなおした。

「なので。成績ポイントが0になったら失格! ふつうクラスにおひっこしになりまーす。自分のポイントは成績表にのってるから、チェックしといてね。いま五年生は五十人いるけど、毎年、六年になる前には半ぶんくらいになってる。まずはS組で生きのこれるように、がんばって」

 半ぶん!? まっさきにふり()とされそうなの、〝担当(パート)ナシ〟のあたしじゃん!

 あたしの成績表、「C」の下に、たしか30ポイントって()いてあった。

 うてなは70ポイントだった?

 こ、これは、ノドカ兄のことをボーッと考えてる場合じゃないぞっ。

「それではっ。S組副リーダー、(じん)担当(パート)(つき)(しろ)(なな)()の登場でーす

 

 

<第5回へつづく> 

 

 

 

※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。

 

☆3話の感想が届いているよ!

涼馬くんカッコ良すぎます! もう今すぐにでも大ファンになっちゃいそうです!
「夢のスタートラインであきらめられない。」って固い決意が好き!!
すっごい面白い
なんで急に冷たくなったのか気になるぅー


作:あさば みゆき 絵:葛西 尚

定価
726円(本体660円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046320780

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