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【先行連載】しゅご☆れい探偵 第5回


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しゅご☆れい探偵 床丸迷人・作


『たからさがし』
 

5 地縛霊の事情

 

   ピンポーン

 翌朝、いつもの時間ぴったりにドアベルが鳴る。

「あ、玲(れい)、お、おはよう」

 ランドセルを右肩にひっかけて玄関から飛びでたオレを迎えてくれたのは、ぶすー……っとむくれ顔の玲だった。

「おはよ」玲は無愛想(ぶあいそう)に返すと、プイと先に歩きだした。

 うわ、やばいやばい、マジで怒ってる。ちーちゃんが言ってたとおりだ。

 あ、あやまらなくっちゃ。

「な、なぁ」

 小走りで追いついて声をかける。「昨日はごめんな、玲」

「は?」

 短く応えて、ギロリとにらんでくる。「なにが?」

 声に低くドスがきいている。こ、怖い。

「なにが……って、そりゃあその……」

 

“玲さんが、シュゴくんのことを好きだからに決まってるでしょ!”

 

 う……。

  昨夜のちーちゃんの言葉が脳裏にフラッシュバックして、のどの奥で言葉がつっかえる。

 いや、でもしかし、だよ。

 いろんな意味で超優等生の玲が、オレみたいな平均点男にそんなことって、マジであり得るのか?

「あ、え、えと……」

 なんだかめちゃくちゃ意識してしまって、うまく言葉にならない。「き、昨日、オレ、ちーちゃんとの話に夢中になっちゃって……その……すこーし、はしゃいじゃって……」

「あっ、そ。良かったじゃん。でも、それって別にあたしにはカンケーないし」

 素っ気なく言いはなって、玲はさらに歩調を速めた。

「い、いや、だから違うんだって」

  あわてて追いついて、通せんぼするように立ちはだかる。

「なによ」

 玲はピタと足を止めると、上目づかいににらんできた。

 不機嫌度カンペキMAX(マックス)状態だ。

 歩道のまん中で立ち止まって見つめあう(にらみあう?)オレらのそばを、何人かの登校中の江品小(えしなしょう)児童が、迷惑そうな顔でよけながら追いぬいていく。

「え、えっと、その……れ、玲にお願いがあるんだ。て、手伝ってほしいことが……あって……」

「……手伝う? なにを?」

「ゆ、幽霊(ゆうれい)を助けるお仕事」

「は?」

 けげんな目でオレの顔をのぞきこむ玲の眉間に、深いしわが刻まれた。

 うんうん、わかる。わかるよ、その気持ち。昨日の夜、オレもそんなふうになったもん。

 

 ――ちーちゃんは口ごもりつつ言った。

“かわいそうな幽霊を助けてあげてほしいの”と。

 



 

 あっけにとられたオレの口が、ポカンとおおきく開く。

 もちろんその顔は、もみじ山遠足の写真の中の自分ほどにかわいらしくはない。あたりまえだ。あどけなさなど遠い過去の話である。

「……え、えーっと……、う、うーん……」

 うめき声をもらすのがせいいっぱいで、次の言葉が出てこない。

“あ、ご、ごめんね、ちょっと意味不明だよね”

 ちょっとではない。

“でもこんなこと頼めるの、シュゴくんしかいないから……。ダメ……かな?”

「あ、いや、そんなことは……」

 スマホごしではあるけれど、数年ぶりに再会したちーちゃんから頼りにされるってのは、かなりうれしかった。

 できることなら力になってあげたい、とは思う。

 いやそれでも。

 でもでもでも、だ!

「ゆ、ゆうれい……って言ったんだよ、ね? 今」

“うん、ゆううれいって言った。んで、玲さんってたぶん、そういうのケッコー好きでしょ?”

 う、す、するどい。なんでそんなことがわかるんだ?

 

 玲はケッコーな怪談・ホラー大好き女子だ。自分の部屋の本棚に、それ系のマンガ雑誌や小説をずらっと並べるくらいに大好物である。

 そしてそれはどうやら、M県に住んでいるという四つ年上の従姉(いとこ)の影響によるものらしかった。

 その従姉が通っていたN市立あさひ小学校では、オバケや妖怪に関するうわさ話がいろいろあって、ケッコーな頻度(ひんど)でソレ系の事件が起きるみたいなのだ。

 どんなガッコーだよ、オレが愛読している角川つばさ文庫の小説でも、そんな設定ありえねーぞ……ってツッコみたくなるけれど、その従姉さんはじっさいにいろいろ体験しているらしく、玲はたくさんの怪異話(かいいばなし)を聞かされているうちに、興味を持つようになったってことだった。

 ちなみに従姉さんは、

「とくに四年一組女子の出席番号四番になったときが、いろいろあって大変だった」って、言っていたらしい。かなり意味不明な発言であるのだが。

 なお、そのせいなのかどうかはわからないけれど、玲は恋愛系の本をほとんど持ってない。いや、ほとんどではなく、まったく持ってない。

 だから、オレは玲といっしょにいても、あんまりそっち方面を意識することがなかったってワケだ……と、言いわけしておく。

 玲はM市立図書館や街の書店に行ったときだって、まっ先にホラー系の本が並ぶコーナーに行くし、親のスマホや家の居間にあるパソコンを使って怪談系のサイトや動画を見たりもする。

 もともとちょい怖がりな性格のオレは、そんな玲の趣味にむりやりつきあわされて、ケッコー災難って感じてた。

 けど。

 はじめはかなりビビっていたオレも、いろいろな怪談に多く触れるうちにだんだんと好きになっていったんだよね。

 だって怪談ってのは、単に人を驚かせ恐れおののかせるだけの恐怖物語ってだけじゃなく、切なくも悲しい人間の心の物語でもあるってことに気づいたからだ。

 オレはいつのまにか、怪談の奥の深さにじょじょに魅せられていき、やがては……。

 

 って、いやいや、そんなこたぁどうでもいい!

 今、問題にすべきは、ちーちゃんのとんでもない頼みごとなのだ。

「かわいそうなゆうれいを助ける……って、どういうことだよ?」

“シュゴくんは、地縛霊(じばくれい)って知ってる?”

 もちろん。

「自分が死んでしまったことに気づかないままとか、自分の死を受けいれられずに、ある場所にずーっと居つづける霊(れい)のことだろ?」

“うん、そう”

 ほんのすこしだけさみしげに、ちーちゃんの声のトーンが下がった。

“この世のなにかに未練が残って、思い入れのある場所にすがりついたまま動けない幽霊(ゆうれい)のことだよ”

 ふむ。

 で、それがなんなの?

“地縛霊となった幽霊は、その胸の内に抱えている想いや未練を、生きている人間に伝える手段がないの。だから天国にも行けないままそこに居つづけて、ひたすらに悲しみを募らせているだけなんだ”

 ふ、ふむ。それはたしかに気の毒でかわいそうな話だ。

 でも、そんな地縛霊事情を、どうしてちーちゃんが知ってるわけ?

 あっ!

 も、もしかしたら、怪談系の物語あるあるパターンか?

 たとえば、ちーちゃんちの実家は超有名な神社かお寺で、ご先祖様に高名な陰陽師(おんみょうじ)とかがいて、お父さんが超すごい神主さんとかお坊さんとかで数々の呪術(じゅじゅつ)を使いこなす人で、それでそれで、ちーちゃん自身もその血を引いた超スーパー霊能力巫女(れいのうりょくみこ)さんだったりして、「破(は)ーっ!」とか叫んだら右手から青白い除霊光線(じょこうこうせん)を発射できるとか?

“シュゴくん、マンガの読みすぎだよぉ”と、ちーちゃんは、けらけら笑った。

“わたしのお父さんは造船工場勤めの技術者で、お母さんはN県の公務員。超ふつーで平々凡々な家族だよ。同居してたおばあちゃんふくめて家族全員、霊感ゼロだったし”

  そ、そっか。

 まぁ、そんなベタな設定、そうそうあるわけないよな。角川つばさ文庫でも読んだことないし……。

“でも、申し訳ないけど、そこんとこの事情も今は聞かないでほしいんだ。話せるときがきたなら、いつかきっと……”

 ああ、わかった。そういう約束だもんな。

 で、具体的にはどうやれば『かわいそうな幽霊』を助けられるってわけ?

“それはね、シュゴくんが今持ってるスマホを使うんだよ”

「へ?」

 オレは耳に押しあてていたスマホを、まじまじとながめた。

 うちの親が使っているメーカーのモノとは違うけど、まぁどこにでもありそうな見た目のスマホだ。

 これがなにか?

 あ、そう言えば昼間に話をしたとき、ちーちゃんはこいつのことを『特殊(とくしゅ)だ』って言ってたよな?

 いったいなにが特殊だってんだ?

 あっ! ま、まさか、どこかのヒミツのボタンを押したら青白い除霊光線がビャーッと発射されて……。

“その発想はもう横に置いておいてほしい”

 ……すみません。

“とにかくシュゴくん。明日そのスマホを持って、行ってもらいたいところがあるんだ。もちろん玲さんといっしょにだよ”                                   

「どこに?」

“それはね……”

 ちーちゃんはささやくような声で、その場所を告げたのだった。

 

「……ってのが、昨日の夜の電話の内容」

「な、なんだか、すごい話ね」

 さすがの玲(れい)もあっけにとられている。

 あまりのトンデモ展開に、彼女の怒りもどこかへすっ飛んでってしまったようだ。

 ま、たしかに突拍子のない話すぎるのは事実だ。オレだって、ちーちゃんからのお願いじゃなければ、バカバカしすぎて相手にすらしていないだろう。

「じゃあ、えっと、ちー、千夜……さんは、その場所に地縛霊がいるって言ったわけ?」

「うん。悲しい思いを抱きながら、たたずんでいるって」

「そうなんだ。スマホは持ってきてるの?」

「ああ、ランドセルの奥底にしまってる」

 

 幽霊が写る――つまり、心霊(しんれい)写真を撮ることができるカメラ機能を搭載(とうさい)したスマホを、ね。

 

「……で、行くわけ?」

「うん」 

 半信半疑ではあるけれど、ちーちゃんがオレをからかっているとも思えないからね。

 今日の放課後、実際に自分の目で確かめてみようと思ってる。

「だから、いっしょに行ってほしいんだ」

「え……でも……」と、玲はすこししぶった。

 けど、心の奥底でうずうずとうずまく好奇心には勝てなかったようだ。すぐに思い直したように、

「うん、行く」とうなずいた。

 よし、決まりだ。

 

 



 

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