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ものがたり

【三題噺「卒業式」「絵本」「こうばん」】ペンネーム:ぽき さんの作品


「三題噺」とは、その名の通り、3つのお題からなる物語。
もともとは、落語の形態の一つで、寄席で演じる際に観客に適当な言葉・題目を出させ、そうして出された題目3つを折り込んで即興で演じる落語です。
現代では、落語のみならず、漫才やトーク番組などでも応用されて用いられています。
ヨメルバに応募してくれた作品の中から、審査員お気に入りの作品を選評とともにご紹介します。今回ご紹介するのは、ペンネームぽきさんの作品。

ペンネーム ぽき さん
(11歳女性)の作品

「ずっと友達だよ!」
そう言って大きな木の下に私たちの宝物の絵本を埋めたのは、2年前の、小学校の卒業式の話だった。

もう信じられない、結花のことなんて。そう思って、私は、結花との思い出のものを、ゴミ袋に詰めていく。もうないかな、と棚をあさっていると金色の鍵が出てきた。2年前、埋めた絵本の入った宝箱の鍵の片方。箱、どうなってるかな?見に行ってみようかな。結花との思い出のものは、これで最後だし。そう思って立ち上がると、私はあの木の下までかけていった。
 
木の下について、息を切らせながら、空を見上げていると、後ろの方から足音が聞こえた。それは、もう一本の鍵を持った、結花だった。私たちは大きく目を開いた。喧嘩して以来会っていなかったな。でも、箱を開けるには一緒じゃないといけないし、ちょうどいい。そう思って、離れたところから声をかける。そうだね。と返事をもらって、絵本を取り出す。もう結花とは会わなくていいと思っていたけれど、なんか胸があたたかい気がする。そう思って、手を重ね、絵本を開いた。

「『友達の忘れ物』……象さんは、旅に出ることにしました。でも、なんだか忘れ物している気がする。少し歩いて、町のこうばんまで戻ってみました。忘れ物、届いていませんか?でも、何もありません。だけど、やっぱり何かを忘れている気がします。けんかした、猿さんのことを思い出しました。猿さんの家を訪ねてみると、涙が溢れてきました。忘れていたのは、友達だったのです。2人は、仲直りして、また会うことを約束して、お別れしました。』
私は、目から涙が溢れてきた。止まらない。もちろん結花も。だって、本当は仲直りしたかったことに気がついてしまったから。
「私たちも、友達の忘れ物、していたのかもね。」
「どうりで、こうばんには届いてないわけだ!」
笑顔で言葉を交わしながら、また、あの卒業式の日のように、ずっと友達だよ!と約束をした。

 

 選 評 
文章のリズム、言葉の使い方にセンスを感じます。短い中で伝えたいことがギュッと凝縮されていて、きれいにまとまっている作品でした。この日の約束が、きっと一生の宝物になるのでしょう。

 


 

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