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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ プププランドで大レース!の巻』第2回 ウォーキーのお願い


プププランドに、テレビ・プロデューサーのキザリオがやってきた!撮影するのは、カービィやワドルディ、おなじみプププランドの住民たちに、メタナイトまでまきこんだ、レース番組。優勝して、豪華(ごうか)賞品を手にするのは、いったいだれだ!?

◆第2回

テレビ番組のプロデューサー・キザリオが、撮影の下見のために、とつぜんプププランドにやってきた!
プププランドで撮影するのは、レース番組。
番組で実況(じっきょう)を担当するウォーキーは、『ある人』に協力をお願いするようで……?


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ウォーキーのお願い

 

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 大宇宙を航行(こうこう)する、戦艦(せんかん)ハルバード。

 その中央ラウンジで、メタナイトはゆうがなお茶の時間を楽しんでいた。

 そこへ、この戦艦(せんかん)の責任者、バル艦長がやってきた。

「メタナイト様。プププランドから通信が入っておりますぞ」

「……プププランドだって?」

 メタナイトは、そっぽを向いて言った。

「私は外出中だと言ってくれたまえ」

「またですか。いつもいつも、居留守(いるす)ばかり……」

「かまうものか。あの連中のトラブルに巻きこまれるのは、ごめんこうむる」

「いや、今日の通信の相手は、カービィでもデデデ大王でもありません。ウォーキーからです。ほら、あの、声の大きいやつですぞ」

「……なんだって?」

 メタナイトはティーカップを置いた。

「それを先に言いたまえ。ウォーキーか……めずらしい相手だな。よろしい、つないでくれ」

「はっ」

 バル艦長は、カベぎわのパネルを操作(そうさ)した。

 カベの一部が巨大なスクリーンとなり、ウォーキーの姿を映し出した。

 ウォーキーは、緊張した様子で言った。

「あ、メタナイト様。急に呼び出してしまって、すみません!」

「かまわないさ。私に何か用か」

「はい! 今度開催(かいさい)される、『プププランド☆ときめき☆はちゃめちゃ☆大レース』の件なのですが」

「うん? なんだって?」

 メタナイトが聞き返すと、ウォーキーはおどろいたように息をのんだ。

「ひょっとして、まだご存じないんですか。失礼しました。てっきり、カービィかデデデ大王が知らせているものと……」

「彼らからの通信には、かたっぱしから居留守(いるす)を使うことにしているのでな」

「そうでしたか。実は、このたび、プププランドを舞台(ぶたい)にしたテレビ番組が作られることになったんです。その内容は……」

 ウォーキーは熱をこめて説明した。メタナイトは、興味(きょうみ)なさそうにお茶を飲みながら聞いていた。

「……というわけなんです。おもしろそうでしょ!?」

「さあな」

「プププランドは今、この話題でもちきりなんです。みんな、出場する気まんまんです」

「それがどうかしたのか」

「オレ、大役をおおせつかったんですよ。レースの実況(じっきょう)をするんです」

「ほう」

「それだけじゃありません。番組のプロデューサーが、もしも高視聴率(こうしちょうりつ)をとれれば、オレを正式にアナウンサーにしてくれるっていうんです。あのコメットテレビのアナウンサーになれるんですよ!」

「……なるほど」

「オレ、ずっとあこがれてたんです、アナウンサー。全宇宙にオレの声をひびかせられるなんて、最高ですよ〜」

「……それで?」

 話が長いので、メタナイトはだんだんイライラしてきた。

「用件は何なんだ? さっさと言ってくれないか」

「あ、すみません。オレ、ぜったいに番組を成功させたいんです。なんたって、オレの夢がかかってますから!」

「がんばりたまえ」

「いえ、それが……オレ一人じゃ、自信ないんです。どんなにがんばって宣伝しても、全宇宙の注目を集めるなんてむりだと思うんです」

「……ふむ?」

「どうか、力を貸してください、メタナイト様!」

 言うが早いか、ウォーキーは土下座(どげざ)をした。

 メタナイトは、あっけにとられた。

「なんだって?」

「メタナイト様は、宇宙一のヒーローで、人気バツグン。だれもが名前を知っている、大スターです」

「待ちたまえ。私はそのような者では……」

「そのメタナイト様が出演してくだされば、すごい話題になります」

「私は、テレビ番組などに興味(きょうみ)は……」

「お願いします! オレのとなりで、レースの解説をしてください! 解説者・メタナイト様と聞けば、全宇宙のみんなが興味(きょうみ)をもつに決まっています!」

「ことわる」

 メタナイトは、うんざりして言った。

「私には関わりのないことだ。解説者が必要なら、別の者に頼むんだな」

「メタナイト様より注目を集められる人なんて、どこにもいません!」

「とにかく、私の知ったことではない。さらばだ」

 メタナイトは通信を切ろうとした──そのとき。

「お待ちください、メタナイト様!」

 さけび声がひびいた。

 スクリーンからではない。声は、メタナイトの背後から聞こえた。

 メタナイトはおどろいて振り向いた。

 ずらっと整列しているのは、アックスナイト、トライデントナイト、ジャベリンナイト、メイスナイト……すなわち、この戦艦(せんかん)ハルバードの戦闘員、〈メタナイツ〉の面々だった。

 すぐれた剣術をもつソードナイトやブレイドナイトにくらべると、戦闘力は少し落ちるものの、メタナイトへの忠誠心(ちゅうせいしん)はけっして負けていない。信頼できる部下たちだ。

「どうかしたのか、おまえたち」

 めんくらったメタナイトに、メタナイツたちは口々に言った。

「どうか、ウォーキーの願いをかなえてやってください!」

「夢をふみにじるなんて、メタナイト様らしくないダス!」

「レースの解説者になってください、メタナイト様!」

 メタナイツたちは、いっせいにメタナイトにつめよった。

 さすがのメタナイトも、いつにない部下たちの迫力(はくりょく)に、たじたじとなった。

「どうしたのだ、おまえたち。ウォーキーに頼まれたのか?」

「そうじゃありません! オレたちは純粋(じゅんすい)に、レースの成功を願っていて……」

「ガハハハッ!」

 大きな笑い声でさえぎったのは、バル艦長だった。

「にぶいですぞ、メタナイト様。そいつらは、みんな、レースに出場する気なのです」

「……なんだと?」

 メタナイトは、部下たちを見回した。メタナイツたちは、はずかしそうにモジモジしながらも、正直に白状(はくじょう)した。

「実は、そうなんです。『参加者募集』のチラシを見て、つい……」

「オレ、前から一度、テレビに出てみたかったし……」

「豪華賞品が出るっていうし……」

「オレが映ったら、故郷(こきょう)のかあさんがよろこぶダス!」

「おまえたち……」

 メタナイトは大きなため息をついた。

 メタナイツたちは、必死に言いはった。

「せっかく出場するんだから、番組を成功させたいんです」

「だれも見てくれなかったら、さびしいダス」

「お願いします、メタナイト様!」

 こうなっては、ことわれない。メタナイトは、時には非情なことも辞(じ)さないクールな剣士だが、意外に部下思いなのだ。

「……しかたあるまい」

 しぶしぶながら、メタナイトはうなずいた。

 スクリーンの中で土下座(どげざ)を続けていたウォーキーが、パッと起き上がった。

「引き受けてくれるんですね……あ、あ……!」

 感きわまって、今にも泣き出しそうなウォーキーを見て、バル艦長が顔色を変えた。

「む、いかん! みんな、下がって! キケンですぞ!」

 バル艦長はパネルに飛びついて、通信装置のスイッチを切ろうとしたが、一瞬おそかった。

「うわああああああありがどうござびばずぅぅぅぅ──!」

 ウォーキーの破壊的な絶叫(ぜっきょう)がひびきわたると同時に、戦艦ハルバードの通信スクリーンは、こなごなにくだけちってしまった。

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 その翌日(よくじつ)。

 メタナイトは、さっそくプププランドをおとずれた。

 とりあえず、デデデ城にでも立ちよって、くわしい情報を聞こうと考えたメタナイトだが、城に向かうとちゅうで大きな声が聞こえてきた。

「えっほ! えっほ! がんばって、ワドルディ!」

「カ……カービィ……ぼく、もうダメ……」

 カービィとワドルディの声だ。道のはずれの、木々の向こうから聞こえてくる。

 メタナイトは、そちらに足を向けてみた。

 メタナイトの目に映ったのは、なんとも、おかしな光景だった。

 カービィとワドルディが、からだにロープを巻きつけて、重そうな古タイヤを引きずっている。

 カービィは見かけによらない怪力(かいりき)だから、軽々と引っぱっているが、ワドルディのほうは、そうはいかない。大つぶの汗を浮かべ、顔をまっかにしているのに、タイヤは一ミリも動いていなかった。

 カービィが、メタナイトに気づいて駆けよってきた。

「あ、メタナイトだー! どうしたの? メタナイトもレースに出るの?」

「いや……君たち、何をしているんだ?」

「見てのとおり! からだを、きたえてるんだよ」

「レースのために?」

「もちろんだよ! ぼくら、優勝をねらってるんだ」

 張り切っているカービィとは反対に、ワドルディはヘトヘトだった。

「ぼくは……優勝どころか……ゴールにたどりつけるかどうか……」

「がんばって、ワドルディ! あと、ダッシュ百本、いくよー!」

「む……むりぃ……!」

 すっかりへこたれているワドルディを見て、メタナイトは仮面の下でほほえんだ。

 二人のじゃまをしないよう、静かにその場をはなれようとした時だった。

 ふと、視線を感じたような気がして、メタナイトはハッとした。

(……だれだ?)

 さりげなく、周囲をうかがってみる。

 少しはなれた木々のかげに、身をひそめている者がいた。

 黒ずくめの服に身をつつんだ、小がらな人影だ。うまくかくれているが、メタナイトの目はあざむけない。

(プププランドの住民ではないな。何者だ?)

 なぞの人物は、ふっと姿を消してしまった。

 メタナイトは、すばやく追いかけた。

 だが、たちまち見失ってしまった。あとには、何の手がかりも残されていない。

 メタナイトの追跡(ついせき)をかわして、けむりのように消えてしまうとは……。

(ただ者ではない)

 メタナイトは考えこんだ。

(何を探っていた? 関わりたくはないが、気にかかるな……)

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 メタナイトはデデデ城にやってきた。

 ろうかを進むとちゅうで、早くも、デデデ大王のドラ声が聞こえてきた。

「さあ、えんりょはいらんぞ。どんどん食べるがいい。ケーキもフルーツも、山ほどあるぞ! 飲み物はどうだ? もっと飲め、飲め!」

 どうやら、先客がいるらしい。しかも、パーティの真っ最中のようだ。

 メタナイトは、かまわずに広間に入っていった。

 デデデ大王は、愛用のイスにふんぞり返って、上きげんだった。テーブルの上は、大皿に盛られた食べ物で、あふれんばかり。

 来客用のソファにすわっているのは、見なれない若者だった。ゴテゴテとかざり立てた、はでな服に身をつつんでいる。

「いや、もう、おなかがいっぱいだよ、デデデ大王くん。食べ物は、もういい」

「そうか? では、そろそろ大事な話をするか。今度のレースのことなんだがな、オレ様が優勝できるように、ちょこちょこっと細工(さいく)を……」

 メタナイトは、軽くせきばらいをした。

 デデデ大王はパッと振り向いて、イスから飛び上がった。

「メタナイト!? き、きさま、いつからそこに!? だまって入ってくるとは、無礼なやつ!」

「案内役のワドルディがいなかったのでね。勝手に入らせてもらった」

「オ、オレ様は、やましいことなんてしてないぞ! テレビのプロデューサーをもてなして、優勝させてもらおうなんてことは、これっぽっちも……!」

 デデデ大王は、まっかになって、こぶしを振り回した。

 大王の不正な作戦は明らかだが、メタナイトは取り合わなかった。レースの行方なんて、メタナイトにとってはどうでもいい。

「なるほど、君がテレビ・プロデューサーか」

 メタナイトが言うと、はでな服装の若者は、フサッと髪をかき上げた。

「ボクは、有名プロデューサーのキザリオさ。キミも、レースに参加したいのかい?」

「いや。私はただ、レースの解説をたのまれただけだ」

「……解説?」

 キザリオの顔から、にやけた笑いが消えた。

「なんのことだ? ボクは、解説なんて、たのんでないぞ」

「ウォーキーからたのまれたのだ。気は進まないが、しかたない」

「な……ちょっと待て。解説なんて、いらな……」

「ほほう、きさまが解説者か。おもしろい!」

 デデデ大王が、キザリオの言葉をさえぎって、身を乗り出した。

「オレ様の大かつやくを、しっかり解説するんだぞ! オレ様の魅力(みりょく)を、全宇宙にいるオレ様のファンに伝えろ!」

「待ってくれ。解説なんて、番組の予定には……」

 食ってかかったキザリオだが、デデデ大王はまったく聞いていない。大きな手を振って彼をだまらせ、上きげんで言った。

「紹介しておこう。こいつはメタナイトといって、オレ様の部下みたいなもんだ」

「……だれが部下だ」

「こんなヤツだが、なかなかのキレ者だ。オレ様には遠くおよばんが、それなりに人気もあるらしい。こいつが解説を引き受けたとなれば、全宇宙の話題になるぞ!」

「わ……話題……?」

 キザリオの顔が、ますます引きつった。

「こ、困るよ、話題なんて! ボクの計画が……!」

「……なに?」

「い、いやぁ、なんでもないよ!」

 キザリオは、作り笑いを浮かべた。しかし、声がうわずっている。

 どう見ても、あやしい。だが、メタナイトは何くわぬ顔で言った。

「ところで、スタッフは何人ぐらい来ているのだ?」

「え? スタッフ?」

「テレビ番組を作るには、おおぜいのスタッフが必要だろう。いま、プププランドには何人ぐらいのスタッフがいるんだ?」

「スタッフなんていないさ……ボク一人だよ」

「一人? 一人で番組を作る気か?」

 メタナイトが、仮面の奥からじっと見つめると、キザリオはそわそわして答えた。

「今のところはまだ、下見だからね。ボク一人で十分なのさ。もちろん、本当の撮影の時は、おおぜいのスタッフが来るよ!」

「なるほど……それでは、さっき見かけた人物はテレビのスタッフではないのか」

 メタナイトはひとり言のように言って、キザリオの表情をうかがった。

 キザリオはビクビクしながら、たずねた。

「さっき見かけた……って?」

「不審(ふしん)な人物がいたんだ。全身、黒ずくめで、何かを探っているようだった。てっきり、テレビのスタッフだと思ったのだが、ちがったようだな」

「く……黒ずくめ……!?」

 キザリオはすくみ上がった。すかさず、メタナイトはたずねた。

「心当たりがあるのか?」

「ま、まさか! 知らないよ、そんなヤツ!」

 キザリオはごまかし笑いをして、立ち上がった。

「おっと、長居をしすぎちゃったな。ボクはいそがしいんでね、そろそろ帰るよ。グッバイ、キミたち」

「……ふむ」

 メタナイトは、早足で出ていこうとするキザリオの背に向けて、言った。

「やるからには全力をつくす、それが私の流儀(りゅうぎ)だ。この番組、必ず成功させるぞ」

 キザリオは振り返った。顔色がひどく悪くなっている。

 メタナイトは、念を押すようにつけ加えた。

「もちろん、全宇宙に向けて放送するのだろうな? なるべく多くの人に見てもらいたいものだ」

「う、うん、もちろんだよ、メタナイトくん。いい番組になることを願ってるよ」

 そして、キザリオは逃げるように走り去ってしまった。

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 キザリオが出ていった後、デデデ大王がたずねた。

「黒ずくめの人物というのは、何者だ?」

「さあ……よくわからない。キザリオは何か知っている様子だったな」

 メタナイトは考えこんだ。

「デデデ大王、この話、どうもあやしいぞ。あいつ、本当にテレビのプロデューサーなのか?」

「うむ、もちろんだ」

「証拠(しょうこ)は?」

「証拠(しょうこ)なんて! 本人がそう言ってるんだから、まちがいないわい」

 

 大いばりで言われて、メタナイトは小さくため息をついた。デデデ大王は、ずるがしこいくせに、だまされやすい。

「気にかかるな……あいつがやろうとしているのは、ただの番組作りじゃなさそうだ」

「む? どういう意味だ?」

「まだ、わからない。しかし、この話にはぜったい何かウラがあるぞ……」

 メタナイトはひとり言のようにつぶやいて、デデデ大王に背を向けた。

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 さて、いっぽう──。

 デデデ城を飛び出したキザリオは、山道を下りながらブツブツぼやいていた。

「黒ずくめの不審(ふしん)な人物、だって! 弱ったぞ。まさか、クーロンがこんなに早くプププランドにあらわれるなんて!」

 彼はフサフサの髪をかき回し、うめき声を上げた。

「先をこされたら、たいへんだ。ぜったいに、クーロンより先にアレを見つけなくちゃ! それにしても、あのメタナイトってヤツ、よけいなことを……」

 キザリオは舌打ちをした。

「プププランドの連中は単純(たんじゅん)だから、かんたんに手玉に取れると思ったんだがなあ……メタナイトのヤツだけは、どうやらキレ者らしい。今さら、テレビの話は全部ウソだなんて言えなくなっちまった……ああ、弱った弱った……」

     

メタナイトが見かけた黒ずくめの人物――『クーロン』とは?
そして、キザリオのテレビの話は全部ウソ!!??
キザリオは、プププランドで、いったい何をしようとしているのか……。
キザリオのたくらみを知らないままのカービィたちをまきこんで、いよいよ撮影開始!
次回「レース、スタート!!」をおたのしみに!(3月31日公開予定)

 


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