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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ ミュージックフェスで大はしゃぎ!の巻』第1回 戦士の休日


カービィたちが、音楽の都(みやこ)ルフランで開かれる、ミュージックフェスに参戦! 優勝するのは、いったいだれ!? 2023年12月13日発売予定のつばさ文庫『星のカービィ ミュージックフェスで大はしゃぎ!の巻』の先行ためし読みだよ! 

◆第1回
きびしい修業と特訓の日々をおくるメタナイトとメタナイツたちが、息抜きに向かうのは、惑星ルフラン。どうやら、ルフランでは、有名なお祭りが行われるようで……? 

 

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戦士の休日

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「まもなく、惑星ルフランに到着ですぞ。楽しみですなあ、メタナイト様!」

 バル艦長は、カラフルなパンフレットを手に、興奮をかくしきれない様子で言った。

 メタナイツたちも、それぞれのリュックサックに荷物をつめて、ウキウキしている。

 メイスナイトは、ペンライトをピカピカと光らせて、振り回した。

「これで、コンサートをもり上げるだス! 燃えつきるまで、おどるだス!」

 トライデントナイトは、軽やかなステップを踏みながら言った。

「ダンスなら、負けないぞ! きびしい修行できたえ上げた、オレの超高速ステップを見せてやる!」

 ジャベリンナイトは、笑いながら言った。

「待て待て、ルフランは、住民全員が音楽家だっていう、音楽の都(みやこ)だぜ。ダンスもいいけど、美しい音楽をじっくりと楽しまなくちゃ。オレなんて、一流のコンサートホールに行くために、おしゃれなスーツを買っちゃったからな!」

 バル艦長は、メタナイツたちのはしゃぎっぷりを見て目を細め、メタナイトに向き直った。

「われら戦士にも、ときには、芸術を楽しむことが必要ですな」

 メタナイトは、うなずいた。

「うむ、息抜きは、たいせつだ。それに、今回のイベント――ルフラン音楽祭は、特別だからな」

「記念すべき100回目ですからな! こんなにも長い歴史を持つ音楽イベントなど、他にありません。なんといっても楽しみなのは、最終日におこなわれるミュージックフェス。そして、レジェンド楽器の展示ですぞ!」

 バル艦長は、興奮して声をふるわせた。

 トライデントナイトがたずねた。

「ミュージックフェス? レジェンド楽器? なんですか、それは?」

 ジャベリンナイトやメイスナイトも、きょとんとしている。

 バル艦長は、あきれたようにメタナイツたちを見た。

「なんだ、おまえたち。ルフラン音楽祭の目玉イベントのことを、何も知らんのか」

「はぁ……楽しい音楽のお祭りとしか聞いてなくて……」

「情けない。惑星ルフランの音楽祭は、ただのお祭りではないのだぞ!」

 バル艦長は、パンフレットをチラチラ見ながら説明した。

「えーと……ルフラン音楽祭は、今回で100回目をむかえる、歴史ある祭りだ。音楽祭は十日間にわたって開催され、数えきれないほどの音楽イベントが、町じゅうでくり広げられる。クライマックスは、最終日におこなわれるミュージックフェス。町の中心にある広場に特設ステージが作られ、腕じまんの音楽家たちが、熱い演奏でぶつかり合うのだ!」

「……バル艦長、パンフレットを読んでるだけだス」

「うるさい。そして、今回の音楽祭には、もうひとつの目玉企画がある。それが、レジェンド楽器の特別公開なのだ!」

 バル艦長は、パンフレットをバッと広げて、楽器のイラストをみんなに見せた。

「はるかな昔、ルフランには、『楽器作りの神様』とまで呼ばれた、すご腕の職人集団がいた。彼らが作った楽器は、バイオリン、ピアノ、ギター、トランペットなどなど、さまざまな種類があるのだが、どれも、使われている材料や技術がすばらしすぎて、今では再現することができないと言われている!」

 メタナイトが付け加えた。

「まさに、きゅうきょくの名器。武器でたとえるなら、伝説の武器職人が作り上げた、最高の名剣というところだな」

 バル艦長は、力をこめて続けた。

「すぐれた武器には、精霊がやどるなどと言われるが、楽器も同じこと! レジェンド楽器には、音楽の精霊がやどっているという言い伝えもあるほどなのだぞ!」

「へえ……! そんなすごい楽器、見てみたいです」

「うむ。たいへん貴重なものゆえ、ふだんは地下の保管庫にしまわれていて、だれも見ることができない。が、今回のミュージックフェスに合わせて、レジェンド楽器のうちのひとつ、レジェンド・ギターが、特別に公開されることになっておるのだぁ!」

 バル艦長は、こぶしを振り回した。

 メタナイツたちは、ワッと声を上げた。

「うわあ、そいつは楽しみですね!」

「見るだけじゃなく、ちょっとぐらい、弾いてみたいだス」

「あはは、無茶言うなよ。うっかりキズでもつけてしまったら、大事件だぞ!」

 メタナイツたちは、わいわいと声を上げ、盛り上がった。

 メタナイトは、そんな部下たちを見回し、重々しく告げた。

「ところで――ルフランに着く前に、君たちにひとつ言っておきたいことがある」

 メタナイツたちは、パッと表情を引きしめて、姿勢を正した。

「はっ、なんでしょうか、メタナイト様」

「このイベントのこと、けっして、カービィとデデデ大王に伝えてはならない」

 バル艦長が、メタナイトの顔を見て、たずねた。

「ほう。それは、また、なぜですかな」

「決まっているだろう。彼らのことだ、歴史あるイベントを、ただのお祭りとかん違いして、大さわぎするに決まっている。すばらしい音楽にも、伝説の楽器にも、まるで興味を持たずにな。そうなったら、音楽祭を楽しむどころではなくなってしまう」

「なるほど、なるほど。おっしゃるとおりです」

 バル艦長は、うなずいた。メタナイツたちも、口々に言った。

「特に、カービィには要注意ですね! あいつはお調子者ですから、最終日のミュージック
フェスに乗りこんできて、ステージを乗っ取って歌い出すかもしれません」

「やめてくれ! カービィが歌ったりしたら、歴史あるミュージックフェスが、台無しだ!」

「台無しどころじゃないだス。惑星ルフランが、かいめつするだス」

 メタナイツたちの心配も、もっともだった。

 カービィの歌は、おんちを通り越して、もはや最終兵器。カービィが歌えば、あたり一帯が、草木もはえない荒野になると言われるほどなのだ。

 メタナイトは、部下たちの顔を見回した。

「そういうことだ。くれぐれも、彼らには知られないように」

「はっ! かしこまりました、メタナイト様!」

 全員が、声をそろえたときだった。

 ロビーのとびらが開き、通信係のアックスナイトがやってきた。

「メタナイト様、デデデ大王から通信がありました。ひまだから、遊ぼうと……カービィもいっしょに」

 メタナイトは、すばやく言った。

「相手にしなくて良い。私はいそがしいと言っておけ」

「はっ、もちろん、そう言っておきました。メタナイト様は、惑星ルフランの音楽祭にお出かけするんだから、おまえたちの相手をしている時間はない! って」

 アックスナイトは、とくいそうに報告した。

 メタナイトは、がくぜんとして、押し殺した声で言った。

「彼らに……音楽祭のことを教えたのか?」

「ええ、おまえたちは知らないだろうが、長い長い歴史をもつ、すばらしい音楽のお祭りなんだぞって言ってやりました! デデデ大王とカービィは顔を見合わせて、すぐに通信を切っちゃいましたよ。あの二人は、音楽にまったく興味がないのでしょう」

 バル艦長が、うめいた。

「ぬぬぬ……まずい……ひじょうに、まずいぞ!」

 メタナイツたちも、アックスナイトに詰め寄った。

「あいつら、押しかけてくるぞ、ぜったい!」

「なんてことをしたんだ、アックスナイト……」

「惑星ルフランがかいめつしたら、アックスナイトのせいだス!」

「え……えええ!? オレ、何か悪いことをしたか……!?」

 アックスナイトは、うろたえた。

 メタナイトは、苦々しい声で言った。

「知られてしまったなら、しかたあるまい。彼らのことは、全力で無視する。ただし、ミュージックフェスについては、最大の警戒(けいかい)をする必要がある。カービィがあらわれて歌いそうになったら、何があっても止めるのだ。ルフランの民を、危険にさらしてはならん!」

「はっ、メタナイト様!」

 さっきまでの、浮かれたふんいきは、どこへやら。

 バル艦長とメタナイツたちは、けわしい面持ちで、うなずいたのだった。

     


メタナイトとメタナイツたちのゆうがな休日……のはずが、なんだかものすごく緊張感の高まる展開に!? 惑星ルフランのミュージックフェスで、いったい何が起こるのか!!?
次回「惑星ルフランへ」をおたのしみに! 
(11月24日公開予定)


『星のカービィ ミュージックフェスで大はしゃぎ!の巻』は2023年12月13日発売予定!


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定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322357

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発売日
サイズ
新書判
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