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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ あぶないグルメ屋敷!?の巻』第1回 カービィとデデデ大王


◆第1回

今日からは、つばさ文庫『星のカービィ あぶないグルメ屋敷!?の巻』のためし読みがスタートするよ!
さいきん、「パフェスキー夫人」という名前のお金持ちが、プププランドにひっこしてきたらしくて……?

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

カービィとデデデ大王

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 あくびが出るほどのどかで、あたたかな昼下がり。

 

 カービィは木かげにねころんで、真っ青な空を見上げていた。

 

 いや……正確には、空に浮かんだソフトクリームのような雲を。

 

(はあ……おいしそう。雲って、冷たいのかなあ? ソフトクリームみたいに、あまい味がするのかな?)

 

 考えているうちに、だんだんねむくなってきた。

 

 カービィは、うとうとしながら深く息をすいこんでみた。

 

 すると、カービィの強力なパワーに引きよせられて、雲がするすると空から下りてきた。

 

(うわあ……おいしそう。いただきます!)

 

 カービィは大きく口をあけて、ぱくんと雲をのみこんだ。

 

(ふわふわで、あまーい……それに、からだが軽くなってきたー……雲になったみたいだなあ……)

 

 カービィには、ふしぎな力がそなわっている。それは、すいこんだ相手の能力を、そっく

り自分のものにしてしまえる力

 

 今、カービィは雲の力を取りこんで、ふんわりと宙(ちゅう)に浮(う)かんでいた。このまま風にのって、どこまでも運(はこ)ばれていきそうな気分。

 

(わあ……雲を吸いこんだのは初めてだけど、楽しいなあ……!)

 

 そのときだった。

 

「カービィ! カービィったら、起きてよ! 大ニュースだよ〜!」

 

 カービィはハッとして飛び起きた。

 

「あ……あれ……?」

 

 カービィは、あたりをキョロキョロ見回した。

 

 ソフトクリームみたいな雲は、ぽっかりと空に浮かんでいる。

 

「あれえ……? たしかにすいこんだと思ったんだけど……ただの夢だったのかぁ。なーんだ」

 

 カービィはがっかりして、また木かげにゴロンと転がった。

 

「起きてってば、カービィ。ニュースがあるんだから」

 

 カービィをゆり起こしたのは、友だちのワドルディだった。

 

 カービィは少しすねて、ワドルディにくるっと背を向けた。

 

「うるさいなあ……せっかく楽しい夢をみてたのに……」

 

「夢よりも、このニュースのほうがぜったい楽しいよ」

 

「なんのニュース?」

 

「つい先日のことなんだけどね。このプププランドの西のはずれに、パフェスキー夫人って人がひっこしてきたんだ。知ってる?」

 

「……パフェ!?」

 

 とたんにカービィははね起きて、ワドルディに飛びついた。

 

「どこどこ!? どこにパフェがあるの!?」

 

「ちがうよ! パフェじゃなくて、パフェスキー……」

 

「うん、パフェ好きー! 何パフェ? チョコパフェ? フルーツパフェ?」

 

「えーと……ぼくはバナナパフェが好きだな」

 

「おいしいよね! ぼく、ストロベリーパフェも好き!」

 

「あと、まっちゃパフェもね!」

 

「ほんと? まっちゃパフェって、食べたことないよー!」

 

「おいしいよー!」

 

「今度、いっしょに食べようよ、ワドルディ」

 

「うん、食べよう食べよう!」

 

 手を取り合ってもり上がったところで、ワドルディはハッとした。

 

「……なんの話だったっけ?」

 

「パフェだよ! パフェ大好きー!」

 

「あ、ちがうよ。パフェじゃなくて、パフェスキー夫人の話だよ!」

 

 カービィと話していると、いつもこんな調子(ちょうし)で話がそれてしまう。

 

 ワドルディはやっと用件を思い出して、話題(わだい)を元にもどした。

 

「パフェスキー夫人って人が、西のはずれにひっこしてきたんだ。その人、すごくお金持ちでね、湖(みずうみ)のほとりに大きなお屋敷(やしき)を建(た)てたんだってさ!」

 

「……なーんだ」

 

 食べ物のパフェとは関係ないと知って、カービィはとたんに興味(きょうみ)をうしなってしまった。

 

「でね、もうすぐパフェスキー夫人のおたんじょうびなんだって! おいわいのパーティを開くらしいよ」

 

「……ふーん」

 

 カービィはまた白い雲を見上げて、スーハースーハー深呼吸を始めた。

 

 さっきのは夢だったけれど、気合いをいれてチャレンジを続ければ、いつかは本当に雲をすいこめるようになるかもしれない。

 

「すごく盛大なパーティになるってうわさだよ。なにしろ、大金持ちだから。お屋敷(やしき)には百人ものお客さんが招待(しょうたい)されて、夜どおしダンスをするんだって。すてきだよねえ!」

 

 カービィはまったく聞いていなかった。

 

 会ったこともない人のたんじょうびパーティの話なんて、おもしろくもなんともない。そんなことより、雲をすいこむ練習のほうが大切だ。

 

「すー……はー……すー……はー……」

 

「パフェスキー夫人はとってもグルメで、おかかえのシェフが何十人もいるんだってさ」

 

「すー……」

 

「たんじょうびパーティには、もちろん山ほどのごちそうが出て……」

 

 その一言を聞いた瞬間(しゅんかん)、カービィは大きく息をすいこんだままワドルディに向き直り、一気(いっき)にはき出した。

 

「ごちそう!?」

 

 もちろん、カービィに悪気(わるぎ)はない。

 

 ない……けれど、彼のさけびは強力な空気弾(くうきだん)となってワドルディを直撃していた。ワドルディは野原をころころ転(ころ)がっていった。

 

「わあああ〜!」

 

 カービィは、その後を追いかけながら、さけんだ。

 

「山ほどのごちそう!? ワドルディ、それ、ほんと!?」

 

 ワドルディは何度もバウンドしながら野原をころがり、大きな岩にぶつかってようやく止まった。

 

「い……てて……あぶないじゃないか、カービィ!」

 

「ねえねえ、山ほどのごちそうって、どれくらい? デデデ山ぐらい?」

 

「いつも言ってるだろ。カービィの空気弾(くうきだん)は強力すぎるんだから。息をはくときは、まわりに誰もいないかどうか確かめて……」

 

「とりのからあげは出る? カレーライスは? 冷やし中華は? アイスクリームは?」

 

「ぼくが軽いから助かったけどさ、へたすりゃ大けが……」

 

「パフェは? ねえ、パフェは!?」

 

「……うーん……知らない……」

 

 ワドルディは、文句(もんく)を言うのをあきらめた。食べ物の話に夢中になっている時のカービィには、何を言ってもむだっぽい。

 

「……とにかく、たくさんの料理が出るんだよ。百人の招待客(しょうたいきゃく)が、三日かけても食べきれないくらいだって」

 

「だいじょーぶ! ぼくなら一人で全部食べきれるから!」

 

「あはは! うん、カービィならペロリだよね。でも、招待(しょうたい)されてないから……」

 

「大食い大会で、カレーライス百人前を食べたことあるよ! すっごく、のどがかわいたから、ジュースも百人前飲んじゃったんだ。みんな、びっくりしてたよー!」

 

「それは、すごいね。でもね、このパーティは、大食い大会ってわけじゃ……」

 

「からくて、口の中がピリピリしたから、デザートのアイスも百人前食べた! だから安心して、ワドルディ! ぼく、どんなごちそうが出ても、だいじょーぶだから!」

 

「う、ううん、なんにも心配なんてしてないけど……それより、カービィ……」

 

「ごちそう、ごちそう! 早く行こう、ワドルディ!」

 

 カービィはワドルディの手をつかんで、全速力で走り出した。もう、カービィの頭の中には、山ほどのごちそうのことしかなかった。

 

 ワドルディは、ずるずる引きずられながら必死(ひっし)にさけんだ。

 

「ちょっと待ってったら、カービィ! パーティはまだ始まってない! 一週間後なんだってば〜!」

 

「待ちきれないよ〜! 今すぐ始めてって、お願いしよう!」

 

「だめだってば。それに、招待(しょうたい)されてもいないのに、お屋敷(やしき)に入ることはできないよ」

 

「え?」

 

「招待状(しょうたいじょう)がなきゃ、パーティには出席(しゅっせき)できないんだよ!」

 

 カービィはようやく理性を取りもどして足を止め、首をかしげた。

 

「しょーたいじょー? 何それ? おいしい?」

 

「食べ物じゃないよ。招待状(しょうたいじょう)っていうのはねえ……」

 

「ショートケーキみたいな味かなあ?」

 

「ショートケーキじゃなくて、ショータイジョ……」

 

「ぼくショートケーキ大好きー! ワドルディは?」

 

「ショートケーキの話はどうでもいいから……」

 

「え!? どうでもいいの!? 信じられない! ワドルディはショートケーキがきらいなの!?」

 

 カービィは「ガーン!」という顔でよろめいた。

 

 ワドルディはあわてて言った。

 

「ううん、まさか! ショートケーキ、大好き!」

 

「良かった〜。てっぺんのイチゴがおいしいよね!」

 

「ぼく、ブルーベリーのショートケーキ食べたことあるよ!」

 

「ほんと!? おいしい!?」

 

「うん! すっごく!」

 

「食べたいなあ!」

 

「今度、いっしょに食べよう」

 

「食べよう食べよう!」

 

 二人は手を取ってもり上がったが、ワドルディはハッとした。

 

「……なんの話だったっけ?」

 

「もう、忘れんぼうだなあ、ワドルディは! ショートケーキの話に決まってるじゃない!」

 

「ち、ちがう。そんな話じゃなくて……ショー……ショ……そうだ、招待状(しょうたいじょう)!」

 

 ワドルディはやっと思い出して、話題(わだい)を元にもどした。

 

「つまりね、パフェスキー夫人から『パーティに来てください』っていうお手紙をもらわないといけないってこと。勝手におしかけたって、お屋敷(やしき)に入れてもらえないんだよ」

 

「ふーん? どうやったら、お手紙もらえるの? お手紙くださいって、お手紙出してみようか?」

 

「そんなことしても、むだだよ。パフェスキー夫人は、仲良しの友だちとか、よほどの有名人にしか招待状(しょうたいじょう)を送らないんだって」

 

「よーし、わかった! 今すぐ友だちになってくる〜!」

 

 再び西に向かってかけ出しそうなカービィを、ワドルディはあわてて止めた。

 

「待って、人の話は最後まで聞いてよ。招待状(しょうたいじょう)がなくてもパーティにもぐりこめる方法が、ひとつだけあるんだ」

 

「なになに〜!?」

 

「パフェスキー夫人の、おかかえシェフになることだよ」

 

「おかか……え……?」

 

「お屋敷(やしき)にはたくさんのシェフがいるらしいけど、まだ足りないんだって。とにかく、大きなパーティだから。それで今、シェフを大ぼしゅうしてるんだ。オリジナルのレシピを考えて応募(おうぼ)すれば、パフェスキー夫人に気に入られるかもしれない。そうしたら、招待状(しょうたいじょう)がなくても、お屋敷(やしき)のキッチンに入りこめる。山ほどのごちそうを、かたっぱしから味見できるってわけ」

 

「味見〜! するする〜!」

 

「ね、いい考えだろ? いっしょにレシピを考えようよ」

 

「うん!」

 

 カービィは大よろこび。空中でくるんと一回転した。

 

「くわしいことは、明日また打ち合わせよう。それまでに、レシピのアイデアをいくつか考えておいてよ。もちろん、ぼくも考えてくるからね」

 

「はーい!」

 

「じゃあね。ぼく、もう帰らなきゃ」

 

「ばいばい、ワドルディ!」

 

 ワドルディはカービィと別れて、来た道をてくてくと引き返していった。

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 さて、ワドルディが帰る場所は、けわしい山の頂上(ちょうじょう)にそびえる、ぶきみな城──その名もデデデ城

 

 ワドルディは、この城に住むデデデ大王につかえているのである。大王の信頼があつい忠実(ちゅうじつ)な部下、と言えば聞こえはいいけれど、ようするに大王の身のまわりの世話(せわ)をする使い走り、雑用係(ざつようがかり)、みたいなもの。

 

 ワドルディは城内(じょうない)の古めかしい石段(いしだん)をのぼり、大王の部屋に向かった。

 

 城を留守(るす)にした時間はほんのわずかだったけれど、そのあいだに、わがままな大王がかんしゃくを起こしていないとも限らない。さっそく、ごきげんうかがいをしなければならない。

 

「大王様、ただいまもどりまし……」

 

 言いかけたワドルディの耳に、鋼鉄(こうてつ)のハンマーを打ち下ろすかのような大王のドラ声が届いた。

 

「──おそーい!」

 

 ワドルディはすくみ上がった。

 

 この声からして、大王はむちゃくちゃきげんが悪そうだ……。

 

「ご、ごめんなさい! え、えーと、お使いの帰りに、道に迷ってしまって……」

 

 カービィのところによりみちをしていたなんて正直に言ったら、火に油をそそぐことになってしまう。大王は、カービィを一方的にライバル視し、何かにつけて敵意をむき出しにしているのだから。

 

 デデデ大王は巨体(きょたい)をゆすって、ドタドタと室内を歩きまわりながら、また大声でどなった。

 

「おそすぎる! パフェスキー夫人め、いったい何をしておるのだー!」

 

「……え?」

 

「ひょっとして、オレ様の住所を知らないのか? いや、まさかな。あて先は、デデデ大王様だけで届くはずだもんなー」

 

「……大王様?」

 

「郵便番号(ゆうびんばんごう)がわからないとか? デデデ城の郵便番号(ゆうびんばんごう)か……そんなもん、あったっけかなあ……」

 

 ワドルディは、目をパチパチさせた。

 

 大王が怒(いか)りくるっている原因は、どうもワドルディではないらしい。郵便物(ゆうびんぶつ)を気にしている……ということは。

 

「大王様、ひょっとして、パフェスキー夫人の招待状(しょうたいじょう)をまってらっしゃるんですか?」

 

「ワドルディ。おまえ、もしや……」

 

 デデデ大王は、やっとワドルディに気づいたように顔を向けると、怒(いか)りをこめて飛び上がった。

 

「そうか、おまえのしわざか! ダイレクトメールとまちがえて、パーティの招待状(しょうたいじょう)をすてちゃったんだな!? 大ばかものー!」

 

「ち、ちがいます! 大王様あてのお手紙は、毎朝きちんと調べてます。招待状(しょうたいじょう)は届いてません」

 

「なんでだ! なんで、このオレ様に招待状(しょうたいじょう)が来ないのだ!?」

 

 なるほど。パーティの招待状(しょうたいじょう)が来ないので、大王はイラついているらしい。

 

「大王様は、パフェスキー夫人とお友だちだったんですね」

 

「友だちだと? んなわけ、あるか。会ったこともない!」

 

「え? それなら、招待状(しょうたいじょう)なんて来るはずが……」

 

「大ばかもの! オレ様を誰だと思ってるんだ!? このプププランドの支配者、偉大(いだい)なるデデデ大王様だぞ! オレ様を招待しなきゃ、パーティが始まらないじゃないかっ!」

 

 デデデ大王は顔を真っ赤にして、足をふみならした。城全体が、じしんのようにゆれた。

 

「は……はあ……」

 

 ゆさゆさとゆさぶられながら、ワドルディは目をぱちくりさせていた。

 

 実をいうと、「プププランドの支配者」とか「偉大(いだい)なる大王」とかいう偉(えら)そうな肩書きは、デデデ大王が自分で名乗っているだけである。

 

あきれかえるほど平和なプププランドの住民たちの大半は、デデデ大王のことを「山の上のお城に住んでる、声が大きくて食いしんぼうで、はた迷惑(めいわく)なおとなりさん」ぐらいにしか思ってない。

 

 ひっこしてきて間(ま)もないパフェスキー夫人が、デデデ大王の名前を知っているかどうか、あやしいもの。たとえ知っていたとしても、それは「食い意地(いじ)の張った、いばりんぼ」という悪名(あくみょう)に決まっている。

 

(招待状(しょうたいじょう)なんか、ぜったい来ないと思うなあ……)

 

 とは思ったものの、そんなことは口にできない。

 

 いろいろと苦労はたえないけれども、ワドルディはデデデ大王を尊敬(そんけい)していた。

 

 おそろしくワガママで、人使いのあらいデデデ大王だが、人情には厚(あつ)い一面もある。これまでに、ワドルディは大王に助けられたことが何度もあった(もちろん、恩(おん)きせがましく、偉(えら)そうに……ではあったけれど)。

 

 大王のきげんをそこねないように、ワドルディは調子(ちょうし)を合わせた。

 

「おかしいですね! 大王様に招待状(しょうたいじょう)が来ないなんて」

 

「ううむ……きっと郵便屋(ゆうびんや)がなまけてるんだろう。けしからんな!」

 

「けしからんですね!」

 

「あとで郵便局長(ゆうびんきょくちょう)をしかりつけてやろう……ところで、ワドルディ。一つ、おまえの意見を聞きたいんだが」

 

 デデデ大王は、カベの一面に取りつけられたドアをサッと開いた。

 

 そこは、大王のウォークイン・クローゼット。

 

おしゃれな大王が買い集めた、ギンギラギンにしゅみの悪い……いや、きらびやかなコスチュームがつめこまれている。

 

「このスパンコールスーツと羽根かざりつき全身タイツ、どっちが良いと思う?」

 

「……はい?」

 

「はい、じゃない。パーティに着ていくには、どっちが良いかと聞いてるんだ」

 

 デデデ大王は、七色のスパンコールがキラキラとかがやくスーツを手に取り、からだに当ててふりかえった。

 

 天井(てんじょう)の照明(しょうめい)がスパンコールに反射(はんしゃ)して、まぶしいったらない。

 

「わっ」

 

 ワドルディはさけんで、手で目をおおった。

 

「む? なんだ、その態度(たいど)は?」

 

 デデデ大王が、うたがわしげにワドルディをにらんだ。

 

 ワドルディは、おそるおそる手を下ろして、言い訳をした。

 

「あの……す、すてきすぎて……目がくらんじゃいました」

 

 たちまち、大王はきげんを直した。

 

「そうか、そうか! おまえは正直なやつだ。なにしろ、特注で作った超豪華(ちょうごうか)スーツだからな!」

 

「さ、さすがです、大王様」

 

 尊敬(そんけい)する大王のセンスだけど……これはいくらなんでもひどいんじゃ……とワドルディがハラハラしながら見守る前で。

 

「だがなあ、こっちの全身タイツもすてがたいと思わんか?」

 

 大王が次に手にしたのは、天井(てんじょう)まで届きそうな巨大な羽根かざりがついた全身タイツだった。

 

 大王は、なやましげな目をして、全身タイツをからだに当てた。

 

「どうだ。セクシーだろう」

 

 これまた、スパンコールスーツよりももっと破壊力(はかいりょく)のあるデザインだった。

 

 ワドルディは、目をそむけることも笑いころげることもできず、呼吸困難(こきゅうこんなん)におちいった。

 

(大王様のファッションは、いつもすごいけど……これは特に……ひどい!)

 

「は……う……あ……っ」

 

「どうした? あまりのセクシーさに声も出せんのか。どちらが良いかなあ」

 

 大王は、スパンコールスーツと全身タイツを、かわるがわるからだに当てて、鏡(かがみ)をのぞきこんだ。

 

「上品(じょうひん)なのはスーツだが、オレ様の魅力(みりょく)をアピールできるのはタイツのほうじゃないかな?」

 

「ど、どちらも……すてき……で……す……」

 

「まったく、オレ様のセンスの良さにも困ったもんだ。どんな服でも着こなしちゃうんだからな」

 

「は、はい。困ったものです」

 

「ま、いい。パーティ当日までに、じっくり考えるとしよう」

 

 デデデ大王はクローゼットの扉(とびら)をしめなおすと、ぶきみな笑いをうかべた。

 

「そうそう、美容院も予約しておかなくちゃ。ジェントルマンのたしなみだ。レディたちの視線がオレ様にくぎづけになっちゃうな……ふふふ……パーティが楽しみになってきたわい」

 

 楽しげに笑うデデデ大王を見て、ワドルディはとてつもなく不安になってきた。

 

 もしも……というより、まず百パーセント確実に、招待状は届くまい。

 

 そのとき、デデデ大王がどれほど怒りくるうことか……考えたくもなかった。



ぜったいに行ってみたい、ごちそう山盛りの、パフェスキー夫人のおたんじょうびパーティ!
はたして、カービィとワドルディ、そしてデデデ大王は、ぶじにパーティでごちそうを食べることができるでしょうか……?

『星のカービィ あぶないグルメ屋敷!?の巻』れんさい第2回(5月20日更新予定)に続く


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定価
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ISBN
9784046313362

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