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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』第6回


◆第6回
大好評発売中『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』試し読み第6回!
超古代文明ハルカンドラの空飛ぶ船・ローアのパーツを探して、レーズンルインズの遺跡を進んでいくカービィとメタナイト。
そこで、カービィがあらたな能力に目覚める!?

 

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 ふしぎなコピー能力

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 外からの光はだんだん届かなくなり、足元すらよく見えなくなってきた。

 おそいかかってくる敵は、メタナイト一人で次々に倒していった。カービィも敵を吸いこんでみたが、どの敵も、コピーできる能力をもっていなかった。

 カービィは、しょんぼりして言った。

「このままじゃ、遺跡(いせき)のオヤブンと戦えないよ。どこかに、コピー能力を持った敵がいないかな」

「ミスター・ダウターは、私が何とかする。君は、空気弾(くうきだん)で援護(えんご)してくれればいい」

「だけど……」

 二人は、足を止めた。

 道が、行き止まりになっている。メタナイトは顔を上げた。

 遺跡(いせき)の天井(てんじょう)から、太いロープで、大きな岩がつるされていた。ロープを切れば、岩が下の穴に落ちて、通れるようになりそうだ。

 メタナイトはマントを広げて飛び上がり、剣を抜いて、ロープを斬(き)ろうと試みた。

 しかし、ロープは異様(いよう)に固く、しかも太い。どれほど力をこめても、傷一つつけることができなかった。

 メタナイトはあきらめて、カービィの元へ戻った。

「ロープを切ることができれば、先へ進めるのだが……」

「メタナイトの剣でもダメだったの? どうすれば……」

 そのときだった。

 あたりが急に、明るくなった。

「わわわっ!?」

「なんだ……!?」

 薄暗さに慣れていた二人は、あまりのまぶしさに、たじろぎながら振り返った。

 現れたのは、青白く光るふしぎな戦士だった。

 星型のかざりがついた兜(かぶと)をかぶり、鎧(よろい)に身を包んでいる。手にしているのは大きな剣だ。ほのかな青い光は、兜(かぶと)や鎧(よろい)や剣から放たれていた。

 カービィは目をパチパチさせて、さけんだ。

「な、なに!? なんで光ってるのー!?」

「下がれ、カービィ!」

 メタナイトはカービィをかばって、剣を抜いた。

 光る戦士は、ものも言わずに斬(き)りかかってきた。

 メタナイトは、渾身(こんしん)の力で攻撃をはね返し、逆に敵に斬(き)りつけた。

 はげしい戦いとなった。剣技はメタナイトが圧倒的(あっとうてき)だが、体力は光る戦士のほうが勝っているようだ。どちらも、一歩もゆずらない。

 カービィは、安全な場所にしりぞいて、戦いを見守った。

 力は互角(ごかく)――だが、体力に勝る敵のほうが、じわじわとメタナイトを追いつめている。勝手のわからない、薄暗がりの場所では、メタナイトは思う存分に動けない。

 攻めこまれたメタナイトは、バランスをくずし、倒れそうになった。

「あっ、あっ、あぶない、メタナイト!」

 カービィは、夢中で飛び出していった。

 考えている余裕はない。いつもの戦い方と同じく、思いっきり敵を吸いこむだけ!

「んごぉぉぉぉ――!」

 すごい勢いで、空気がカービィの口の中へ吸いこまれていく。

「……!?」

 光る戦士は、突然の強風に姿勢(しせい)をくずし、よろめいた。

 メタナイトは、巻きこまれないように急いで飛び上がり、さけんだ。

「よせ、カービィ! この敵は、ふつうではないぞ!」

 それは、カービィにも、よくわかった。

 光る戦士は、吸いこまれそうになりながら、ひっしに足をふんばってたえている。

 いつもの敵よりも、はるかに抵抗(ていこう)が強い。カービィは、からだを大きくそらせて、全力で吸いこみ続けた。

「やめるんだ! こいつを吸いこんだら、どうなるかわからないぞ……!」

 メタナイトはひっしに警告(けいこく)したが、カービィは全力で吸いこみ続けた。

 ついに、カービィの吸いこみの力が勝(まさ)った。

 青く光る戦士は、じわじわと浮き上がり、カービィに吸いこまれてしまった。

 たちまち、カービィの姿が変化した。

 頭には緑色の帽子。右手には剣。

 ソードのコピー能力によく似ている。ただ、帽子はまばゆい光を放っており、金色の星かざりがついていた。

 そして、手にした剣は、かつてないほど巨大だった。剣身は、カービィのからだの二倍以上の長さがある。

「わあ……すごい!」

 カービィは、目を輝かせて、剣をかかげた。

 いつものソードのコピー能力よりも、ずっしりと重いてごたえがある。けれど、その分、からだの芯(しん)に力がみなぎってくるようだった。

「カービィ! 平気か!?」

 メタナイトが地面に飛び下りて、カービィに駆け寄った。

「うん、へーき!」

「ぼうしや剣から、光が放たれているぞ……いや、君自身も光っているようだ」

 メタナイトは、カービィの全身を見回し、心配そうに言った。

「こんなコピー能力は、見たことがない。気分はどうだ?」

「だいじょーぶ。なんだか、ちからがわいてくる気がするよ。たぁー!」

 カービィはじっとしていられず、大声を上げて、全力で剣を振った。

 その勢いで、空気がふるえた。メタナイトが、思わずのけぞってしまうほど。

 カービィが振るった剣は、遺跡(いせき)の天井にまで届きそうなほど、大きな弧(こ)をえがいた。

 と同時に、先ほどはまったく歯が立たなかった太いロープが、たち切られた。

 行く手をふさいでいた大岩が、轟音(ごうおん)を立てて、地面にあいた大穴の底へ落ちていった。

 カービィとメタナイトは、顔を見合わせた。

 メタナイトがさけんだ。

「まさか、あのロープを切ったのか? たった一撃で……!?」

「うん!」

 カービィは大剣をかかげて、笑顔になった。

「すごーい! この剣、なんでも切れちゃうんだ! ふつうのコピー能力より、ずっと強いよ。スーパー能力だ!」

「信じられん……」

 メタナイトは、ぼうぜんとしている。

 カービィは、元気よく剣を振りながら、歩き出した。

「これで先へ進めるね。どんな敵が出てきたって、へっちゃらだよ。このスーパー能力で、やっつけちゃうぞ!」

 メタナイトは、カービィの後ろを歩きながら、小さくつぶやいた。

「あの、青白く光る戦士……あの光は、ローアのオールが放っていた光に似ていた。まさか、ローアの力によって、異変(いへん)が起きているのか……?」

 メタナイトは、元気に歩いて行くカービィを見て、さらに小さな声で付け加えた。

「見たこともないふしぎな力を、恐れもせずに、自分のものにしてしまうとはな。カービィこそ、最高のふしぎかもしれん」

 そのとき、どこからか、ボンッ、ボンッと大砲を撃つような音が聞こえてきた。

 巨大な弾丸(だんがん)が、次々に飛んでくる。岩の上に設置されたいくつもの大砲が、侵入者(しんにゅうしゃ)の気配を察して、砲撃を始めたのだ。

 メタナイトは素早く弾丸をよけながら、叫んだ。

「気をつけろ、カービィ。その大剣でも、砲弾はさすがに切れまい。まともに食らったら、大ケガを……」

「へっちゃら! 見てて、たぁぁー!」

 カービィは少しもひるまずに、大剣を水平にかまえてなぎ払った。

 大砲をのせていた岩が、真っ二つに切り裂かれた。

 支えを失った大砲は、次々にひっくり返って、砲撃を止めた。

「はい! これで通れるよ!」

 カービィははしゃぎ回って、先へ進んで行く。

 メタナイトは、信じがたい光景を目の当たりにして、じっくり考えこんでしまった。

 カービィが手にした新たな力は、あまりに強すぎる。このままにしておいて、大丈夫だろうか?

 負担(ふたん)がかかりすぎて、カービィに悪い影響が出てしまうのでは……?

「何してるのー? メタナイト、早く早く~!」

 メタナイトの心配にはおかまいなく、カービィはのんきな声を上げている。

「あ、ああ。行こう!」

 メタナイトは気を引きしめ直し、カービィを追った。

 どんな敵も、ワナも、カービィの大剣が切りさいて進んでゆく。二人の行く手をはばむものは、もはや何もなかった。

「行くぞー! たぁぁ! たぁぁぁ!」

 カービィが振り回す大剣は、岩でも砲弾でも、かんたんに切りきざんでしまう。

 ならず者の一味(いちみ)はおそれをなしたらしく、ほとんど姿を見せなくなった。

「らくしょーだね! 遺跡(いせき)のオヤブンも、ぼくがパパッとやっつけちゃうね!」

 調子に乗っているカービィを、メタナイトがたしなめた。

「あまり、張り切りすぎるな。その能力がどんなものか、まだ、わからないのだから。強すぎる力は、長続きしないかもしれないぞ」

「そんなこと、ないって! ぼく、ぜっこーちょーだもん! 見ててね、たぁぁ!」

 カービィは、ぶんぶんと大剣を振り回した。

 前方をふさいでいた大岩が、見事にまっぷたつ。

 しかし――同時に、大剣は消滅(しょうめつ)してしまった。泡がはじけるように、あっけなく。

 剣だけではなく、カービィがかぶっていたぼうしも、あとかたもなく消えた。

 大剣の重さが急になくなって、カービィはバランスをくずし、ころびそうになった。

「あ……あ……あれ……?」

 すっぴんに戻ってしまったカービィは、きょとんとして、自分の手を見た。

「光る剣は……? どうしたんだろう。ぼうしも消えちゃったよ……」

 メタナイトは、ホッと息をついた。

「おそらく、力を使い果たしたのだろう」

「え……?」

「スーパー能力は、通常のコピー能力のように、ずっと使えるわけではないのだ。力があまりに強すぎるがゆえに、時間がたてば消えてしまうのだろう」

「そんなぁ……」

 カービィはがっかりしたが、メタナイトは言った。

「これで良かったのだ。あれほどの強い力を長く使い続ければ、必ず反動(はんどう)が来る。君自身が、大きなダメージを受けることになったはずだ」

「……そうかぁ……わかった!」

 カービィは、すぐに気を取り直した。

「コピー能力はないけど、ぼく、空気弾(だん)で戦うよ! 遺跡(いせき)のオヤブンを、やっつけよう!」

「いや、遺跡(いせき)のあるじに、空気弾(だん)は通じまい。ここは、私にまかせろ」

「だいじょーぶ! ぼく、戦えるから! さいきょーの空気弾(だん)を出せるように、特訓(とっくん)するから!」

「今から特訓(とっくん)しても、間に合わん」

 二人は、言い合いながら、長い坂道を下っていった。

カービィが目覚めたあらたな能力は、スーパー能力!
新能力で道を切りひらき、いよいよカービィとメタナイトは、遺跡(いせき)のオヤブンのもとへ……!!
次回、大バトルの予感です!!

『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』れんさい第7回(5月6日更新予定)に続く


『星のカービィ 天駆ける船と虚言の魔術師』は4月27日(水)発売予定!
購入特典もあるからぜひチェックしてみてね☆



書籍情報

あくびが出るほど平和な、プププランドの昼下がり。
ショートケーキを持って仲良くピクニックをしようとしていたカービィ、デデデ大王、バンダナワドルディそしてメタナイトの目の前で、晴れた青い空を切り裂いて、突如、巨大な船が落ちてきた。
ふしぎな光につつまれた、その船の名は――ローア。
すでに滅びた超古代文明ハルカンドラが生み出した、奇跡の船。
カービィたちは、船の持ち主だという旅人マホロアに助けを求められ、墜落とともに失われてしまった、船のパーツを探すことになった。
遺跡や海の底に雪の中…そして異空間をかけめぐる、大冒険が始まる!
【解説:熊崎信也「星のカービィ」シリーズ ゼネラルディレクター】


作 高瀬美恵 絵 苅野タウ 絵 ぽと

定価
1,320円(本体1,200円+税)
発売日
サイズ
B6判
ISBN
9784041116197

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©Nintendo / HAL Laboratory, Inc. KB22-P3926


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