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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ ディスカバリー 新世界へ走り出せ!編』第1回 プロローグ/うずの向こうは新世界!前編


大人気ゲーム『星のカービィ ディスカバリー』が、角川つばさ文庫から小説になって登場! プププランドにとつぜんあらわれた、ナゾのうずに吸いこまれ、『新世界』にたどりついたカービィたちの冒険を、大ボリュームでためし読みれんさいしちゃいます!(全5回)

◆第1回

今日からは、つばさ文庫から8月8日に発売される『星のカービィ ディスカバリー 新世界へ走り出せ!編』のためし読みがスタートするよ!
いつも平和なプププランドに、とつぜん、大事件発生! 何が起こったのか、いますぐ読んでたしかめてね!


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 プロローグ

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 ぽかぽか陽気(ようき)の、ある昼下がりのこと。

 カービィは、青い空を見上げながら、ひとりで小道を歩いていた。

 いつもなら、こんなに気持ちのいい午後は、友だちのバンダナワドルディとおしゃべりをしたり、遊んだりするのだが、あいにくとバンダナワドルディはいそがしい。

 雨の日がしばらく続いたせいで、せんたくものがたまってしまったのだ。

「ワドルディのおしごと、早く終わらないかな。デデデ大王、自分のガウンぐらい、自分でせんたくすればいいのになあ」

 そんなことを思いながら、てくてくと歩いていると。

 空のかなたから、すうっと黄色い星がすべり下りてきた。

 カービィの顔が、パッとかがやいた。

「あ、ワープスター!」

 この黄色い星は、カービィが呼べばいつでも飛んできてくれる、すてきな相棒(あいぼう)だ。

 今日は、呼ばなくてもやって来た。カービィがたいくつそうにしているので、つきあってくれるつもりなのだろう。

「よーし、遊ぼう、ワープスター!」

 カービィは、たちまち元気づいて、ワープスターに飛び乗った。

 ワープスターは、ぐんぐんとスピードを上げていく。カービィは、はしゃいだ声でさけんだ。

「もっと速く! もっともっと高く飛ぼう! デデデ城の上を、ひとっ飛び……!」

 ワープスターが、ぐいっと角度を上向けた――そのときだった。

 とつぜん、強い風が吹きつけてきて、ワープスターはバランスをくずした。

「わわわわわ!?」

 カービィは大あわて。でも、急いでワープスターにしがみついたので、振り落とされず                    にすんだ。

 「ど、どうしたの!? 今の風は……!?」

あたりを見回したカービィは、あぜんとした。

すさまじい強風にあおられて、草も木もなぎ倒(たお)されんばかり。今にも、大地から引っこぬかれてしまいそうだ。

「あらし……!? でも、あんなにいいお天気だったのに、急に……!?」

 カービィは、空を見上げた。

 そこには、異様(いよう)な光景(こうけい)が広がっていた。

 ついさっきまで、まっさおだった空に、暗い灰色の雲がうずまいている。

 雲の間に、ナゾのうずが出現していた。そのうずが、強い力で、あらゆるものを吸いこもうとしているのだ。

「あれは……!?」

 カービィは、目を見開いてうずを見つめた。

 うずの正体はわからないが、このままにはしておけない。プププランドが、めちゃくちゃにされてしまう。

「たいへんだ! なんとかしなきゃ……!」

 カービィはさけんだ。その声にこたえるように、ワープスターはスピードを上げた。

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 とつぜんのできごとに、プププランドは大混乱。

 家の屋根も、カベも、柱もこわされ、うずに吸いこまれていく。

「きゃあああああ!」

「助けてぇぇぇ!」

 住民たちは、悲鳴を上げながら逃げまどっている。

 プププランドでいちばん大きな建物、デデデ城も、ひとたまりもなかった。

 庭先で働いていたワドルディたちが、次々に風にあおられ、宙(ちゅう)を舞(ま)う。

「うわあああああん!」

「大王様! 助けてください、大王様ぁぁぁ!」

 必死に柱にしがみつき、泣きさけんでも、うずの力から逃(のが)れることはできない。

 バンダナワドルディは、愛用のヤリを地面に突き立てて抵抗(ていこう)しようとした。

 城から飛び出してきたデデデ大王が、手をのばしてさけんだ。

「ワドルディ! オレ様につかまれ……!」

「は、はい、大王様!」

 バンダナワドルディはその手をつかもうとしたが、ギリギリのところで、ヤリもろとも強風に巻き上げられてしまった。

「わああああ! 大王様――!」

「ワドルディ! ぬぉぉぉぉ!?」

 デデデ大王も、おおぜいのワドルディたちとともに舞い上がり、うずに吸いこまれていった。

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 カービィは、ワープスターにしがみついて、ナゾのうずをにらみつけていた。

 なんとかして、あのうずを消さなくては。でも、どうやって……?

 プププランドの住民たちが、なすすべもなく宙に舞っている。

 うずにのみこまれていくおおぜいのワドルディたちの中に、バンダナワドルディの姿を見つけて、カービィは大声を上げた。

「あ! ワドルディ……!」

 しかし、そのとき、へしおられた柱が飛んできて、ワープスターにぶつかった。

 はげしい衝撃(しょうげき)が走る。はずみで、カービィは手をはなしてしまった。

「うわああああああ!」

 宙(ちゅう)に投げ出され、はげしい風にもみくちゃにされて、うずへと吸いこまれていく。

 うずに飛びこんだとたん、すさまじい力に引っぱられて、カービィのからだはビヨーンと長くのびた。

「ひゃあああああああ!?」

 のびたからだが、ぐるぐるとねじれていく。

 しかし、次の瞬間(しゅんかん)には、カービィは元どおり。

 なにが起きているのか、さっぱりわからない。

 どうすることもできず、カービィは気を失ってしまった。


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 うずの向こうは新世界!前編

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「う……うーん……」

 カービィは目を開けた。

 目の前にあるのは、さらさらの白い砂だった。

 ザザー……ザザー……と、のどかな波音が聞こえてくる。

 カービィは、ぴょこんと立ち上がって、あたりを見回してみた。

 白い砂浜に、おだやかな波がよせては返している。

 波打ちぎわから少しはなれたところには、あざやかな色の草が生え、木々が葉をしげらせていた。

「んん……? ここは、どこ……? ぼく……えーと……」

 そこで、ようやく、ナゾのうずに吸いこまれたことを思い出した。

「うずに巻きこまれて、気をうしなっちゃったんだ。ワドルディは、どうなっただろう?」

 カービィは、きょろきょろしながら歩き出した。

 しかし、近くにバンダナワドルディはいないようだ。他のワドルディたちや、住民たちの姿も見えない。

 カービィは、海に背を向け、木々の間に入りこんでみた。

 波の音にかわって、木々の葉が風にゆれる音がひびいてくる。

 うす暗い森が広がっていた。カービィは、森の奥へと歩き続けた。

「しずかだなあ……だれもいないのかなあ……」

 ほんの少し、こころ細くなりかけたときだった。

 前方に、明るい光が見えてきた。

 カービィはホッとして、走り出した。

 そして――森をぬけたとたん、カービィは大声を上げた。

「わああ! すごい!」

 そこに広がっていたのは、信じられない光景だった。

空まで届きそうなほど高い柱のようなものが、何本もニョキニョキと立っている。

地面は、まったいらに固められていて、白いラインが引いてあった。

「ふしぎな町だなあ……!」

カービィは、夢中で走り出した。

柱のようなものに近づいてみると、ドアや窓(まど)がいくつもあり、中に入れるようになっていることがわかった。

カービィはようやく、それが柱ではなく建物だと気づいた。

「うわあ、おっきな家! だれが住んでるんだろう? おーい、おーい!」

 しかし、返事はなかった。

 よく見れば、窓ガラスは割(わ)れているし、カベはひびだらけだ。床は、雑草におおわれている。

「だれも、いないの……?」

 カービィは、建物の中に入りこんでみた。

 中は、静まり返っていた。キョロキョロしながら進んで行くと、いちばん奥に、一台の車がとめられているのが見えた。

「車だ……動くのかなあ?」

 カービィが近づいていくと、とつぜん、車の上にぴょこんと耳が飛び出した。

 顔をのぞかせたのは、三匹の毛むくじゃらの獣(けもの)だった。

 初めて、この世界の住民を見つけて、カービィはうれしくなった。

「こんにちは! ぼく、カービィだよ。教えてほしいんだけど、ここは……」

 しかし、三匹はカービィをにらみつけて、うなり出した。

「ガルルルル……」

 カービィは、とまどった。

「え? えーと……おこってるの? どうして……」

 三匹は、いきなり飛びかかってきた。

「わわわわわ!? やめて、やめてよ!」

 カービィは止めようとしたが、獣(けもの)たちは闘志(とうし)をむき出しにしている。こうなったら、戦うしかない。

「よぉし……!」

 カービィは、大きく息を吸いこんだ。おとくいの「すいこみ」だ。

「ガルルルル!?」

 獣(けもの)たちは、初めての「すいこみ」を受けて、びっくりぎょうてん。吸いこまれないように、姿勢(しせい)を低くし、短い足を必死(ひっし)にふんばった。

 ごぉぉぉぉぉぉ!

 カービィは力をゆるめず、吸いこみ続けた。

 すると、思いがけないことが起きた。

 獣(けもの)たちの後ろの車が、ぐらぐらしながら浮き上がったかと思うと、カービィめがけて一直線に飛んできたのだ。

 カービィは、あわてふためいた。あんな大きなもの、口の中に入るはずがない……!

 しかし、車の直撃(ちょくげき)を受けた瞬間(しゅんかん)、カービィの口はありえない大きさに広がっていた。

 大きな車を、すっぽりと吸いこんでしまえるほどに。

「んごごごごご!?」

 次の瞬間(しゅんかん)、カービィは車をまるごと、ほおばっていた。

 予想もしなかったできごとに、カービィは目を白黒させた。

「んご……ごごごご……んごんご?」

 しゃべることはできないものの、ちっとも苦しくない。カービィは、車の形に変形してしまっていた。

 これは――「くるまほおばり」とでも呼ぶべきか。新しい世界の、新しい能力!?

 衝撃(しょうげき)の瞬間(しゅんかん)を目撃(もくげき)した三びきの獣(けもの)は、ぼうぜんとして、あとじさった。

「ガルルル……」

「ガル……」

 からだをふるわせ、顔を引きつらせている。「なんだ、こいつ……」「やばいぞ!」とでも言いたげに。

 カービィがチラッと彼らを見ると、三匹は飛び上がり、キャンキャン鳴きながら逃げていった。

「ん……んご……んご?」

 カービィは、追いかけようとして、気づいた。

 今のカービィは、すっかり車の形になっている。足元はタイヤだ。

 ためしに走り出してみると、ぐんとスピードが上がった。

 その勢いで、カベを突きやぶり、外へ飛び出す。

 ひびだらけの道路も、急な坂道も、なんのその。

 アクセルもブレーキもハンドルもない、カービィのふしぎなドライブが始まった。

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 まぶしい日差しをあびて、カービィは気持ちよく走り続けた。

 大きな川にかかる橋を渡り、ハイウェイをつっぱしって、どこまでも。

 歌い出したくなるほど、楽しい気分。

 軽快(けいかい)なドライブを続けていたカービィは、空を小さな影がよぎったことに気づいて、視線を上げた。

 何羽もの鳥が飛んでいる。足のツメで、なにかをつかんでいるようだ。

 小さなオリだ。オリの中になにかを入れて、運んでいる……?

 目をこらしたカービィは、ハッとした。

 オリの中にいるのは、ワドルディだった。おおぜいのワドルディたちが、オリに入れられ、運ばれている。

「ワドルディ……!」

おどろきのあまり、思わず声を上げていた。

その瞬間(しゅんかん)、カービィの口から車がころがり出て、くるまほおばりがとけてしまった。


 カービィは、元の姿にもどって、夢中で鳥たちを追いかけた。

「待てー!」

 けれど、鳥たちはスピードが速い。すぐに、見失ってしまった。

 カービィが足を止めかけたとき、かすかに声が聞こえてきた。

「助けてー! 助けてー!」

 だれかが、助けを求めている。

「……あっちだ!」

 カービィは、声の方向へ走り出した。

 たどりついた場所は、小さな町だった。いや、かつては町だったであろう場所だった。

 建物はすべてこわされ、ガレキの山になっている。

 そのあいだをぬって、例の毛むくじゃらの獣(けもの)たちが走り回っていた。

 上空には、あのオリをつかんだ鳥たちが飛んでいる。オリにとらえる獲物(えもの)をねらっているようだ。

「た、助けてー!」

 逃げ回りながらさけんでいるのは、大きな耳をした、水色の生きものだった。

 獣(けもの)たちにかこまれ、鳥たちにねらわれて、絶体絶命(ぜったいぜつめい)の大ピンチ!

「こらぁぁー!」

 カービィは声を上げ、獣(けもの)や鳥に向かっていった。

「ガルルルル!」

「クァァァァ!」

 カービィに気づいた獣(けもの)や鳥が、いっせいにおそいかかってくる。

 しかし、本気になったカービィには、かなうはずがない。あっというまに、勝負がついた。獣(けもの)たちも鳥たちも、鳴き声を上げて逃げ出していった。

 水色の生きものは、カービィのそばにやって来て、ほっとしたように言った。

「ありがとう。助かったよ~!」

 しかし、すぐに顔をくもらせて、続けた。

「でも、あの子たちは……ワドルディたちは、さらわれちゃった……」

「え? きみ、ワドルディのこと知ってるの?」

 カービィは、おどろいてたずねた。

「ぼく、ワドルディの友だちのカービィだよ。きみは……?」

 カービィがそう言うと、水色の生きものは、うれしそうにさけんだ。

「カービィ!? わあ、きみがカービィなの!? そうかあ、ワドルディたちから、きみのことたくさん聞いてたよ。いつか会えるといいなあって思ってたんだ。よろしくね、カービィ。ボクは、エフィリン!

「エフィリン……」

「うん。ボクも、ワドルディたちの友だちなんだ。いっしょに町を作って、楽しく暮らしていたんだよ。でも、あいつらがおそってきて……」

 そのときだった。

 大きな声がひびいた。

     


あたらしい能力「ほおばりヘンケイ」が使えるようになったカービィ。でも、なんだかワドルディたちが大変なことにまきこまれているみたい。
あらたな仲間・エフィリンと出会ったカービィのところへ、大声をひびかせてやってきたのは、いったいだれ?
次回もお楽しみに!

『星のカービィ ディスカバリー 新世界へ走り出せ!編』れんさい第2回(8月12日更新予定)に続く


作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと

定価
792円(本体720円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046321800

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