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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ 大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』第5回 メタナイトのうらぎり!?


つばさ文庫のオリジナルストーリー『大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』をためし読みしよう!
カービィたちは、大切な『宝物』を、ドロッチェ団から守りきることができるのか…!? カービィ、ワドルディ、デデデ大王、そしてメタナイトやドロッチェが登場する、とってもにぎやかなお話だよ。(全5回)

◆第5回

大切なたまごをドロッチェ団から守ったカービィたち。
そんなドロッチェは、みんなも知ってる『あの人』に協力してもらうことにしたようで…? 
意外な展開に目がはなせません!

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

メタナイトのうらぎり!?

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 デデデ城にもどったカービィを、ワドルディが飛びついてでむかえた。

 

「おかえり、カービィ! 無事だったんだね!」

 

「うん! このとおり、たまごを取り返したよ!」

 

「よかった〜!」

 

 カービィは、たまごをそっと床に置いた。

 

 ワドルディは、たまごがほんとうに無事なのかどうか、じっくり確かめた。

 

 カービィが言った。

 

「たまごはだいじょーぶ。このクッションのおかげだよ」

 

 カービィは、羽毛のクッションを指さした。

 

 クッションにしっかりしばりつけておいたおかげで、たまごにはキズ一つない。多少の衝撃(しょうげき)は、このクッションがやわらげてくれる。

 

「役に立つね、このクッション」

 

「うん! ちゃんとたまごを守ってくれたんだ。さすが、お母さん鳥の羽根で作ったクッションだよ」

 

 カービィとワドルディはたまごからはなれて、ストロンに近づいた。

 

 ストロンは、デデデ大王にやぶれて、しばり上げられている。

 

 それでも、落ちこんだ様子はない。プイッと横を向いて、ふてぶてしい表情をくずさなかった。

 

 デデデ大王が、ストロンをにらみつけて言った。

 

「ドロッチェ団は、盗賊(とうぞく)だが、ひきょうなマネだけはしないと思っていた」

 

「……」

 

「だが、オレ様がまちがってたようだな。たまごをぬすんで売り飛ばそうなんて、断じてゆるせんぞ!」

 

「……」

 

 ストロンは、何を言われても、がんこにだまりこんでいる。

 

 そんなストロンに、大王はいかりをぶつけた。

 

「金に目がくらんで、ひきょうなぬすみをするなんて。ドロッチェも、しょせんはただのコソドロだったんだな!」

 

「だまれ!」

 

 ストロンは、がまんならなくなったようにさけんだ。

 

「団長は、コソドロなんかじゃない。団長は、ひきょうなことなど、ぜったいにしない!」

 

「何を! たまごをぬすんで、売り飛ばそうとしたくせに!」

 

「たまごじゃない……」

 

 ストロンが、何か言いかけた時だった。

 

 バルコニーのほうで、カタリと小さな物音がした。

 

 カービィたちは、バルコニーを見た。

 

 開いた窓から、入ってきたのは――。

 

「あ、メタナイト!?」

 

 カービィはおどろいてさけんだ。

 

 メタナイトは、顔を仮面でかくした剣士である。その正体はなぞにつつまれており、カービィやデデデ大王も、彼のすがおを見たことは一度もない。

 

 どこに住んでいるのかもわからないメタナイトだが、ときどき、ふらりとこのプププランドをおとずれる。その目的も、もちろん、なぞだ。

 

 デデデ大王が、ふしぎそうにたずねた。

 

「どうしたんだ、こんな時間に。しかも、窓から入ってくるなんて、まるでドロッチェみたいだぞ」

 

「そのドロッチェに、たのまれてな」

 

 メタナイトは、静かに剣を抜いた。

 

 カービィもワドルディも、もちろんデデデ大王も、目を丸くした。

 

「メ……メタナイト!? ど、どうした……!?」

 

「ストロンを返してもらいたい」

 

「なんだって……!?」

 

 たじろぐカービィたちの目の前で、メタナイトはすばやく剣をふるい、ストロンをしばっていたロープを切った。

 

 デデデ大王がさけんだ。

 

「何をする、メタナイト!?」

 

「言っただろう。ドロッチェにたのまれたのだ」

 

「きさま、ドロッチェに協力しているのか……!?」

 

「私の用はすんだ。真夜中に、さわがせてすまなかった」

 

「すまなかったで、すむか!」

 

 デデデ大王は顔を真っ赤にして、怒りだした。

 

「ドロッチェがどんなやつか、わかってるのか!?」

 

「ああ、もちろん」

 

「ひきょうなコソドロなんだぞ! きさま、そんなやつに味方をするのか!?」

 

「ドロッチェはコソドロではない」

 

 メタナイトは剣をおさめて言った。ストロンは、すばやくバルコニーのほうへ逃げ出している。

 

 カービィが言った。

 

「メタナイト……どうして!? ドロッチェにだまされてるんじゃ……!?」

 

「君たちのほうこそ、ドロッチェを誤解(ごかい)しているようだ。説明を……」

 

「きさま!」

 

 デデデ大王は大声を上げ、床に転がしておいたハンマーを手に取った。

 

 メタナイトめがけて、打ち下ろす。メタナイトはふわりと飛び下がってよけた。

 

「話を聞け、デデデ大王」

 

「話すことなんて、ない! 信じられん。きさまがコソドロに手をかすなんて」

 

「誤解(ごかい)だというのに……」

 

「言い訳なんて、見苦しいぞ!」

 

 大王はハンマーを振り回した。

 

 メタナイトは、やれやれと言いたげにため息をついた。

 

「何を言っても、聞いてもらえないようだな。では、しかたがない」

 

「メタナイト!」

 

「さらばだ」

 

 メタナイトはストロンとともに、バルコニーから飛び出していった。

 

「待て〜!」

 

 デデデ大王が止めようとしたが、間に合わない。

 

 ワドルディが、ぼうぜんとして言った。

 

「どういうことでしょう……まさか、メタナイト様がどろぼうの味方をするなんて……」

 

「ええい、あんなやつとは思わなかった! 見そこなったわい!」

 

 デデデ大王は、腹立ちまぎれに飛び上がって、ハンマーを床にたたきつけた。床にメリメリとひびが入った。

 

 カービィが言った。

 

「メタナイトがどろぼうの仲間になるなんて、信じられないよ。きっと、何か理由があるんだよ……」

 

「どんな理由があるというんだ!」

 

「えーと……たとえば……」

 

 カービィは、いっしょうけんめいに考えた。

 

 自分だったら、どうだろう? もしも、カービィがドロッチェの味方をするとしたら……その理由は……。

 

「たとえば、ドロッチェからおいしいケーキをごちそうになったとか……そして、おかわりが欲しかったら味方になれって言われたとか……」

 

 カービィの頭の中に、山もりのフルーツがのったタルトがポッと思い浮かんだ。

 

 あまいシロップのかかったイチゴやブルーベリー、キウイ、パイナップル……サクサクのタルト生地に、まろやかなカスタードクリーム……。

 

 カービィは、思わずよだれをたらしそうになった。

 

「うわああああ! ぼく、ドロッチェの味方になるー! 今すぐドロッチェ団に入ってくるー!」

 

「お、おちついて、カービィ!」

 

 ワドルディが、バルコニーに飛び出そうとするカービィをつかまえた。

 

 デデデ大王が言った。

 

「おまえじゃあるまいし、メタナイトがケーキなんかにつられるものか。もっと他の理由があるにちがいない」

 

「他の理由……」

 

 ワドルディが言った。

 

「ひょっとしたら、メタナイト様は、おどされているんじゃないでしょうか」

 

「おどし……だと?」

 

「はい。ドロッチェに弱みをにぎられているとか」

 

「うーむ……」

 

 デデデ大王は腕組みをした。

 

「メタナイトの弱みか……そんなもの、あるんだろうか」

 

「えーと……たとえば……実は、ものすごくオンチだとか……」

 

 ワドルディは思いついたことを口にしてみたが、デデデ大王は首を振った。

 

「そんなくだらんことが、弱みになるもんか。カービィを見てみろ。宇宙一のオンチのくせに、ちっとも苦にしてないぞ」

 

「ぼくはオンチじゃないよ!」

 

 カービィは気を悪くして、抗議(こうぎ)した。

 

「デデデ大王には、ぼくの歌の良さがわからないだけだよ! いい、歌ってあげるから、ちゃんと聞いててよ……」

 

「歌うなっ!」

 

 デデデ大王はカービィをどやしつけて、ワドルディを見た。

 

「もっと他にないか? やつの弱みになりそうなことが」

 

「……えーと……えーと……実は、仮面を取るとすごくヘンな顔だとか……」

 

「メタナイトが、すがおを見られるようなヘマをするとは思えん」

 

「……そうですね。うーん……」

 

 考えこんだワドルディにかわって、カービィがさけんだ。

 

「実は、一か月に一度しかおふろに入らないとか!」

 

「……ないな」

 

「実は、ものすごく食いしんぼうだとか!」

 

「おまえが言うな」

 

「実は、女の子だとか――!」

 

「そんなわけがあるか――! まじめに考えろ!」

 

「うーん」

 

 三人そろって頭をしぼったが、何も思いつかない。

 

 デデデ大王が言った。

 

「やつの弱みなんか、どうでもいいわい。とにかく、メタナイトがコソドロの一味になったことは確かなんだ。オレ様たちは、やつらの魔の手からたまごを守るぞ!」

 

「うん……でも、ちょっと悲しいね」

 

 カービィは、元気をなくしてつぶやいた。

 

「メタナイトは、ぜったいに曲がったことなんてしないって信じてたのになあ……」

 

「ああ、オレ様だって信じてたさ! でも、目の前で事実を見せられてはな。メタナイトめ……!」

 

 デデデ大王は、ギリギリと歯を鳴らした。

 

「あいつには、何を考えてるかわからんところがある。このたまごには、やつの目がくらむくらいの価値があるんだろう」

 

 それを聞いて、ワドルディが片手を上げた。

 

「デデデ大王様。ぼく、一つ気になってることがあります」

 

「なんだ」

 

「さっき、ストロンがおかしなことを言ってたんです」

 

「え、おかしって? なになに? クッキー? チョコレート?」

 

「カービィ、そのおかしじゃなくて……」

 

「じゃあ、どのおかし!? おせんべい? キャラメル? 食べたーい!」

 

「ええと、そうじゃなくて……」

 

 ワドルディはこまった顔で、話題を元に戻した。

 

「ストロンは、『たまごじゃない』って言ってました」

 

 デデデ大王とカービィは、顔を見合わせた。

 

「む……そんなこと、言っていたか?」

 

「はい。大王様が『たまごをぬすんで、売り飛ばそうとしたくせに!』って言ったら、ストロンは『たまごじゃない』って言い返していました。あれは、どういう意味だったんでしょうか……」

 

「たまごじゃない……って言われてもね」

 

 カービィは、たまごに近づいて、じっくり見つめた。デデデ大王と、ワドルディも。

 

 三人は、たまごをそっとなでたり、顔がくっつきそうなほど近づいてみたり、くんくんとにおいをかいでみたりした。

 

「どこからどう見ても、たまごだけどなあ」

 

「だが――そう見えるだけで、実はたまごじゃないのかもしれんぞ」

 

 デデデ大王は、うなった。

 

「たまごにそっくりな宝石なのかもしれん。それなら、やつらが目の色を変える理由もわかるというものだ」

 

「えー……宝石には見えないよー」

 

「たたいてみれば、はっきりするんだがな。割れればたまごだし、割れなければ……」

 

 デデデ大王は、ハンマーをにぎりなおした。カービィはあわてて止めた。

 

「ダメだよ! お母さん鳥がたまごだって言ってたんだから、たまごにきまってるよ!」

 

「うーむ……」

 

「とにかく、ぼくら、約束したんだから。お母さん鳥がもどってくるまで、このたまごをしっかり守るって」

 

「そのお母さん鳥は、いつもどってくるんだ?」

 

「十日後って言ってた。十日後に、あの神殿に帰ってくるんだ」

 

「十日か……よし」

 

 デデデ大王は、うなずいた。

 

「ドロッチェ団とメタナイトは、きっとあきらめずにたまごをねらってくるだろう。十日間、なんとしても守り切るぞ!」

 

「守り切るぞー!」

 

「これから毎晩(まいばん)、交替(こうたい)でねむることにしよう。必ず誰かが起きていて、たまごを見張るんだ」

 

「おー!」

 

 カービィとデデデ大王は、いつものいがみ合いを忘れて、がっちりと握手(あくしゅ)をかわした。
 


 


カービィ、デデデ大王、ワドルディで協力してたまごを守ることに!
でも、ドロッチェの「たまごではない」という言葉の意味は?
そして、メタナイトの行動の真意(しんい)は……?
気になる続きは、つばさ文庫『大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』で確認してね!


作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと

定価
748円(本体680円+税)
発売日
サイズ
新書変形判
ISBN
9784046314376

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