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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ 大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』第1回 古びた神殿


つばさ文庫のオリジナルストーリー『大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』をためし読みしよう!
カービィたちは、大切な『宝物』を、ドロッチェ団から守りきることができるのか…!? カービィ、ワドルディ、デデデ大王、そしてメタナイトやドロッチェが登場する、とってもにぎやかなお話だよ。(全5回)

◆第1回

デデデ大王のいないあいだに、ワドルディとあそんでいたカービィ。
いつもの楽しい時間が、しだいにワクワクの探検(たんけん)になっていって…!?

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

古びた神殿

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 

 おひさまも、いねむりしてしまいそうなほど平和な、プププランドの昼下がり。

 

 カービィとワドルディは、広い野原をかけまわって遊んでいた。

 

「こっち、こっち〜! おいでよ、ワドルディ! きれいなお花がさいてるよ〜!」

 

「まってよ、カービィ!」

 

 今日、二人がやってきたのは、これまで一度も来たことのない大草原だった。

 

 広い広いプププランドには、二人がおとずれたことのない場所がまだまだたくさんある。

 

「知らない場所で遊ぶのって、楽しいね!」

 

「うん! 冒険みたいで、ワクワクするよね!」

 

 お花畑でころげまわったり、林の中でかくれんぼをしたり、浅い川を見つけて飛びこんだり。

 

 あんまり楽しくて、つい時間がたつのを忘れてしまう。

 

「もっと遠くまで行ってみようよ、ワドルディ」

 

「だめだよ、カービィ!」

 

 ワドルディは、ぴょんぴょん飛びはねていくカービィを追いかけながらさけんだ。

 

「あんまりおそくなったら、ぼく、大王様にしかられちゃうよ。そろそろ、帰るしたくをしないと!」

 

「やだー! まだ帰りたくない!」

 

「でも、大王様が……」

 

「へーきへーき!」

 

 ワドルディは、プププランドの(自称)いだいなる支配者、デデデ大王の部下。

 

 いつもなら、人づかいの荒い大王に一日じゅうこき使われていて、遊びに出かけるひまなんてない。

 

 今日は、たまたま大王が出かけているので、こうして遠出をすることができたというわけだった。

 

 でも、貴重(きちょう)な休日も、そろそろ終わりが近づいている。

 

「大王様が帰ってくる前に、お城にもどらなくちゃ、大変なことになっちゃうよー!」

 

「ぼくがいっしょにあやまってあげるから、だいじょーぶ!」

 

「だめだめ! よけいに、しかられちゃう!」

 

 ワドルディはあわてて言った。

 

 デデデ大王はカービィを一方的にライバル視しており、何かにつけて張り合おうとする。ワドルディとカービィが友だちだということは、もちろん大王にはひみつだった。

 

 楽しそうに草原を走っていたカービィは、急にぴょーんと大きく飛び上がって、声を上げた。

 

「見て見て、ワドルディ。あっちに、何かおもしろそうなものがあるよ!」

 

「え? 何?」

 

 ワドルディは、カービィが指す方角(ほうがく)に目をこらした。

 

 大きな石造りの建物が見える。太い柱が何本も立っているが、その大半はとちゅうでぽっきりおれているようだ。

 

 りっぱな屋根も、半分くらいくずれている。

 

「こわれた建物……だね……?」

 

「行ってみようよ!」

 

 カービィは、さっきまでよりも、もっと勢いづいて走り出した。

 

「あ、待ってよ、カービィ!」

 

 ワドルディはあわてて、カービィを追いかけた。

 

☆゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・

 

 建物に近づいた二人は、くずれた屋根を見上げて、同時に「わあ……」と声を上げた。

 

「すごく大きな建物だね……! デデデ城より大きいよ!」

 

「でも、ボロボロだよ。もう何年も……ううん、何百年も、ほうっておかれたみたい」

 

「もともと、何だったんだろうね? こんなに大きいんだから、ふつうのおうちじゃないよ。お城かな? 神殿かな……?」

 

 二人は顔を見合わせると、手をつないで、おそるおそる建物に入ってみた。

 

 屋根がくずれているので、中は明るかった。けれど、空気はひんやりしている。

 

 大きな彫刻(ちょうこく)がたくさんあるが、みんな、元の形がわからないくらい、こわれていた。

 

 石のカベには、なぞめいたもようが、びっしりとうきぼりにされている。

 

 おごそかなふんいきだった。カービィとワドルディは、自然と声をひそめてしまった。

 

「なんだか、こわい感じがする……神殿だったのかな……?」

 

「そうみたいだね。奥に行ってみよう!」

 

「だいじょうぶかなあ……」

 

「へーき、へーき!」

 

 カービィが走り出そうとした時だった。

 

 カービィは、なんの気なしに、床の上にあるボタンのようなものをふんづけてしまった。

 

 すると。

 

 床がパカッと割れた!

 

「うわっ!?」

 

 カービィは、床にあいた穴に真っ逆さま――。

 

「カービィ!」

 

 ワドルディが悲鳴を上げた。

 

 カービィは、とっさに空気をいっぱいにすいこんで、手をぱたぱた動かした。

 

 カービィのからだはふわりと浮き上がり、うまく落とし穴から脱出できた。

 

 これは、カービィが持っている力の一つ「ホバリング」。空気をからだいっぱいにすいこんで、風船のようにうかぶことができる。

 

「ふう。助かった」

 

「良かった、カービィ!」

 

 ワドルディは、ほっとして、カービィにかけよった。

 

「なんで、こんなところに落とし穴がしかけてあるんだろう?」

 

「この神殿、やっぱり、なんだかこわいよ。出ようよ、カービィ……」

 

 ワドルディはすっかりおじけづいてしまったが、カービィは、むしろ逆。きらきらと目をかがやかせた。

 

「こんなワナ、へーきへーき! ワクワクしてきた!」

 

「カービィ!」

 

「ワナがしかけてあるってことは、きっと中に宝物があるんじゃないかな!?」

 

 張り切って走り出そうとしたカービィだが、十歩も進まないうちに急ストップ。

 

 通路が、ふた手に分かれていた。

 

「……どっちへ行けばいいんだろう?」

 

 二人は、通路を見くらべてみた。

 

 どちらも同じようにうすぐらくて、長い通路だった。行く手は、闇(やみ)に閉ざされている。

 

 ワドルディは、迷ってしまった。

 

「うーん……どっちかがワナで、どっちかが正解だと思うけど……」

 

「こっちだ!」

 

 カービィは、パッと決めて、右側の通路に進んだ。

 

「カービィ!」

 

 ワドルディはびっくりした。

 

「どうして? なんでわかるの?」

 

「なんとなく!」

 

「な、なんとなくって……そんなに急いじゃ、あぶないよ! ワナがないかどうか、しらべながらゆっくり歩かないと……」

 

「へーき、へーき!」

 

 カービィは自信たっぷり。何もしらべずに、突き進んでいく。

 

 ワドルディは、おっかなびっくりカービィについていった。

 

 幸いなことに、ワナは一つもしかけられていなかった。

 

「良かった……こっちの通路が正解だったみたいだね!」

 

「でしょ!」

 

「カービィ、どうしてわかったの?」

 

「なんとなく、だよ!」

 

「カービィは、カンがいいのかな……?」

 

 ふしぎに思いながらも進んでいくと、やがて、大きな円形の部屋に出た。

 

 カベにそって、台座(だいざ)がたくさんならんでいる。

 

 それぞれの台座(だいざ)の上に、ふしぎなものが置かれていた。

 

 水晶玉のような、まるい物体だ。一つずつ、色のちがう光を放っている。

 

 建物やちょうこくはボロボロにこわれているのに、台座とその上の玉は、たった今作られたばかりのようにきれいだった。

 

 カービィは台座(だいざ)に近づいて、すきとおった玉をじっと見つめてみた。

 

 それぞれの玉の中に、何かがふうじこめられているようだ。

 

「何だろう、これ……中に、小さな剣みたいなものが入ってる……」

 

「カービィ、さわらないほうがいいよ。ワナかもしれないから」

 

「見てごらんよ、ワドルディ。こっちは、氷の結晶(けっしょう)みたいなものが見えるよ!」

 

 カービィに言われて、ワドルディもおそるおそる玉をのぞきこんでみた。

 

「ほんとだ……こっちは、パラソルみたいなものが入ってる」

 

「こっちは、ムチみたいなものが見えるよ」

 

 二人は、台座(だいざ)の上の玉をぜんぶ調べてみた。

 

 玉の中身は、さまざまだった。かたい石のようなものも、羽根のようなものもある。弓矢のようなものも、タイヤのようなものも……。

 

「……これって、ひょっとして……」

 

 カービィの頭に、パッとひらめいたことがあった。

 

「どうしたの、カービィ?」

 

「ちょっと、ためしてみる! 見てて、ワドルディ」

 

 カービィは思いきって、いちばん近くにあった玉にさわってみた。

 

 ぽんっと音がして、カービィの頭の上に炎がともった。まるで、かがやくかんむりのように。

 

「わっ!?」

 

 ワドルディがおどろいて、目を丸くする。カービィはさけんだ。

 

「やっぱり、思ったとおり! これ、コピーのもとだ!」

 

「コピーの……もと?」

 

「うん! これにさわると、コピー能力が使えるようになるんだよ」

 

 コピー能力は、カービィが持っている、ふしぎな力。

 

 特別な力を持った敵をすいこむと、その力を自分のものにすることができるのだ。

 

 ワドルディは、試しに自分も玉にふれてみたが、何もおきなかった。

 

「ぼくじゃ、だめなんだ……やっぱり、コピー能力はカービィにしか使えないんだね」

 

「うん。いま、ぼくがさわったのは、『ファイア』のもとだったんだ。この玉にさわると、玉にやどっている力をコピーできるんだよ!」

 

「わあ……べんりだねえ!」

 

「こんなにたくさんのコピーのもとが集まってるなんて、夢みたい! すごいや!」

 

 カービィは、大はりきり。

 

「奥まで探険(たんけん)してみようよ、ワドルディ。もっとすごい宝物が見つかるかもしれないよ」

 

「でも……もう帰らないと……」

 

 

「へーきへーき! こわい敵が出てきても、ぼくがやっつけるから!」

 

「カービィ、ぼくが心配してるのは、デデデ大王様の……」

 

「行くよ〜!」

 

 カービィは、神殿の奥へと走って行ってしまった。

 

「あ、待ってよ、カービィ!」

 

 勢いのついたカービィは、だれにも止められない。

 

 ワドルディは、カービィを見失わないように、必死に走った。

 

 

 

     


神殿で、『コピー能力のもと』を見つけたカービィたち。
この奥には、さらにすてきな宝物がねむっているにちがいありません!
カービィたちは、いったい、何を見つけることができるでしょうか。
次回「第2回 大きなたまご」をおたのしみに!


『星のカービィ 大盗賊ドロッチェ団あらわる!の巻』れんさい第2回(10月21日更新予定)に続く


作:高瀬 美恵 絵:苅野 タウ 絵:ぽと

定価
748円(本体680円+税)
発売日
サイズ
新書変形判
ISBN
9784046314376

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