「絶体絶命ゲーム」は「こどもでも、命がけで人生を一発逆転できる」という都市伝説のような存在。小学校時代から何度もゲームにまきこまれてきた春馬と未奈は、いつしか【絶体絶命ゲームのレジェンド】に…! 最新刊18巻は11月11日(水)発売。前の巻のラストで、たった1人でつり橋から落ちていった春馬は、いったいどうなったのか!? 大ピンチのゆくえを、どこよりも早くためし読みしてね!
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3 エンドからの直通電話
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火曜日。
春馬はベッドから起きあがると、病室をうろうろと歩きまわる。
未奈が心配で居ても立っても居られない。
ここを抜けだして、未奈を捜しにいきたい。でも、それは現実的ではない。彼女がどこにいるかわからない。
手がかりは、警察に捕まった土黒エンド。
彼女に面会できないだろうか?
それも現実的ではない。面会するには警察の許可が必要だ。
中学生の春馬が知り合いでもないエンドに、面会させてもらえるとは思えない。
未奈のこと以外にも心配がある。『奈落』にいる、親友の上山秀介だ。
走馬灯の話では、『奈落』は、土曜日に、渋谷でなにかをやるようだ。
なにをやるかはわからないが、危険なことや犯罪なら、とめなければならない。
「……ぼくはこんなところで、なにをしているんだ」
春馬がつぶやいた。
ドアが開き、竹神刑事が部屋に入ってくる。
「なんだよ、そんなところにつっ立って、居ても立っても居られないのか」
竹神刑事に図星を指された。
「……その通りです。それで、未奈の居場所はわかりましたか?」
「いや、まだだ」
竹神刑事は首を横にふった。
「土黒エンドの取り調べはどうなりました?」
春馬のやつぎばやの質問に、竹神刑事はあきれ顔で言う。
「まずは、ベッドにもどれ。病人にうろうろされたら心配でしょうがねぇ」
「ぼくは病人ではありません。検査結果が出てないだけです」
「反抗するなら、おれは帰るぞ」
「……わかりました」
春馬は、しぶしぶベッドに腰をおろした。
「おう、それでいい。エンドの取り調べで、2つわかったことがある。1つは『奈落』にいた連中が、今週の土曜日に渋谷でなにかをやるということだ」
「それなら、もう知っています。なにをやるかまではわからないんですか?」
「それ以上はわからない。もう1つは、滝沢未奈さんのことだ。虹子の言うように、未奈さんはドクロ一族に捕まっているようだ」
「それも知っています。ほかにはなにかないんですか?」
春馬が落胆の表情で聞くと、竹神刑事は苦笑いで言う。
「おれが、この情報だけで、春馬に会いにくるわけないだろう」
「ほかにも情報があるんですね!?」
「────土黒エンドは、春馬以外とは話さないと言ってる。『春馬は今、入院している』と言ったら、電話で話すということだ。話したいか?」
「勿論、話したいです」
春馬が言うと、竹神刑事がスマホを出して留置場に電話をかける。
「……もしもし、竹神だ。エンドを出してくれ」
やや間がある。
「エンドだな。春馬にかわるぞ」
竹神はそう言って、スマホをスピーカーにして春馬にわたす。
「武藤春馬です」
『はじめまして、土黒エンドどす。春馬が、虹子を「奈落」から出してくれたんどすな』
エンドは、澄んだ声の京都弁で話をする。
『いらんことしてくれたどすな。虹子には、あそこで死んでもらおう思うとったんどす』
「そんな……」
『かわりに、滝沢未奈に死んでもらおうと思ってるんどす』
「そんなこと、ぼくがさせない!」
春馬が大きな声で言った。
『威勢がええどすな。そやけど、病院におったら、なんもできひんやろう』
「未奈はどこです?」
『そうどすな。どう表現しよかな。棺桶に片足をつっこんでるどすかな?』
「ふざけるな。未奈を解放しろ!」
『春馬ってそないに感情的なんどすか? 思うとったより、アホどすな』
スマホを持つ春馬の手が、怒りで震える。
「春馬、冷静になれ」
横にいた竹神刑事がアドバイスする。
「……すいません」
春馬は小声で言った。
『どないしたん? これ以上、うちと話す気分じゃないどすか?』
「いや、そんなことはない」
春馬が、怒りをおさえて言った。
『それでええどす。お利口はん』
「ぼくとしか話をしないって、どういうことですか?」
気持ちを切り替えて、春馬が聞いた。
『うちが警察に捕まったのは、春馬とゲームがしたいからどす』
「ぼくとゲームをしたいだって……?」
『春馬は村での「絶体絶命ゲーム」の最後のゲームで、条件をクリアしたと言うてるようやけど、ドクロ一族はそれ認めてへんのどす』
「5分以内に村から出るルールでした。ぼくはクリアしました」
『条件は、あの橋をわたりきることや』
「でも……」
言いかけた春馬を、エンドがさえぎる。
『村を出た、言いたいねんな。車の中でもそう言うとったどすな』
「どうして、そのことを……?」
エンドの言っている車の中とは、春馬が走馬灯と乗っていた車のことだ。あのときの会話を、どうしてエンドが知っているのだ? 車に乗っていたのは、春馬と走馬灯だけだ。いや、鬼の面をかぶった運転手がいた。
「もしかして、あのときの運転手か?」
『そうどす。うちは警視庁本部に侵入したわけやない。パトカーに乗せられて、ここにやってきたんどす』
エンドの話を聞いて、竹神刑事はくやしそうに言う。
「運転手はやとわれただけだと思って、警官に見張らせてなかったな」
『建物に入れてくれたさかい、あとは中央コンピュータ室に侵入するだけどした』
「まんまとやられたなぁ」
竹神刑事が頭をかく。
『それよりも春馬、さっきの話のつづきをするどす』
「わかりました。それで、村から出るゲームの結果はどう判断されたんですか?」
『そやな、走馬灯の言うように「ゲームに失敗した」とも考えられるし、春馬の言うように「ゲームをクリアした」とも考えられるんどす。ゲーム説明のときに、はっきりさせるべきだったどすな。それで、春馬にはゲームをやり直してもらうことにしたんどす』
「ぼくに、もう1回ゲームをやれというんですか?」
春馬が聞いた。
『そうや。もういっぺん、「絶体絶命ゲーム」をやるんどす。拒否したら、未奈の命はあらへん』
エンドが言うと、竹神刑事が間に入る。
「こいつはまだ入院中だ。『絶体絶命ゲーム』なんか、させられねぇ」
『せやったら、未奈は死ぬだけどすな』
「できる。ぼくはゲームをやるよ」
『ゲームに成功したら、未奈は解放するどす。ほんで、「奈落」がなにをやろうとしてるのか、教えたる』
「失敗したら、ぼくがドクロ一族の仕事を手伝うのか?」
『そんなんせんでええ。うちは、春馬には興味がないんどす』
エンドが、そっけなく言った。
「ゲームに失敗したら、どうなるんだ?」
『大勢の犠牲者が出るだけどす』
「ど、ど、どういうことだ……」
『それ以上は、ゲームが始まるまでは言えないどす』
「そ、そ、そんな……」
そこまで言うと、春馬は苦しそうな顔をしてベッドに倒れこんだ。
「春馬、どうした!?」
竹神刑事が声をかける。
春馬は、ぶるぶると体を震わせている。
「今日はここまでだ。春馬が倒れた」
竹神刑事が、スマホにむかって言った。
『まだ死ぬには早いんとちがうどすか?』
「ぼ、ぼくは死なない。……ゲームは、いつ開始だ?」
春馬は、胸を押さえながら聞いた。
『土曜日の正午どす。その時間に、うちに会いにくるんやで』
エンドの電話は切れた。
竹神刑事がナースコールを押すと、すぐに看護師がやってくる。
看護師のうしろに影のようについて、病室に入ってきた人物がいる。
「急に倒れたんだ」
看護師に説明した竹神刑事は、病室に忍びこんできたその人物に目をむける。
「おい、なにをやっているんだ」
看護師のうしろについて病室に入ってきたのは、虹子だ。
「決まっているだろう。春馬の病状を見にきたんだ」
「なるほど、昨日、おまえがどうやって病室に入ってきたかわかったぞ。ずっとおれのうしろについてきてたんだな」
「……そんなことより、春馬の心配をしたら」
虹子に言われて、竹神刑事は春馬に目をむける。
春馬は、ベッドに横になり苦しそうな顔をしていた。
第5回につづく(11月4日(水)更新予定)
書籍情報
- 【定価】
- 1,034円(本体940円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324054
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