「絶体絶命ゲーム」は「こどもでも、命がけで人生を一発逆転できる」という都市伝説のような存在。小学校時代から何度もゲームにまきこまれてきた春馬と未奈は、いつしか【絶体絶命ゲームのレジェンド】に…! 最新刊18巻は11月11日(水)発売。前の巻のラストで、たった1人でつり橋から落ちていった春馬は、いったいどうなったのか!? 大ピンチのゆくえを、どこよりも早くためし読みしてね!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2 敵の手におちた未奈
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
村からもどった日、春馬は都内の警察病院に検査入院することになった。
橋から川に飛びこみ、溺れそうになりながら岸まで泳ぎ、乗せられた車が猛スピードでパトカーに激突した。
春馬自身は気がつかなくても、大きなけがをしているかもしれない。
レントゲンを撮り、MRI検査、血液検査、心電図検査など、たくさんの検査をうけた。
そして、結果が出るまで入院することになった。
春馬は警察病院のベッドで寝ていた。
一流ホテルのスイートルームのような、豪華な病室だ。
「検査の結果は、まだ出てないようだな」
竹神刑事が果物の詰め合わせを持って、病室に入ってきた。
春馬はベッドから上半身を起こす。
「ぼく、本当にこんな豪華な病室に入院していいんですか?」
「たまたまVIP専用の病室が空いていたんだ。気にすることはない。……それにしても、こんな豪華な病室が必要なのかねぇ。VIPの考えていることはわからねぇよ」
「ぼくも同じ考えです」
「おう、はじめて気が合ったな」
竹神刑事は、果物の詰め合わせをテーブルにおく。
「ぼく、元気なんですけど、いつ退院できるんでしょう?」
「そんなのは、おれの知ったことじゃない。医者に聞けよ」
「はぁ……」
春馬が困惑していると、竹神刑事が少しだけ優しい口調で言う。
「ドクロ一族の走馬灯を逮捕できたのは、春馬のおかげだ。今日は、その礼を言いにきたんだ。……ありがとうな」
竹神刑事が、春馬にむかって一礼した。
「そんなの、いいですよ。それに、ぼくが意図してやったことじゃないんだし」
「検査結果が出るまで、ここでゆっくり休んでいてくれ」
「あの、竹神刑事。気になることがあるんですけど、教えてもらえますか?」
「なんだ?」
「ぼくといっしょに『絶体絶命ゲーム』に参加した未奈たちは、無事に帰ったんですよね?」
春馬の質問に、竹神刑事は、とぼけた顔をする。
「……あぁ、そうだった。春馬に見舞い客がいたんだ。ドアのむこうに待たせてある」
竹神刑事が病室のドアを開けると、亜沙美が1人で立っている。
「亜沙美、よかった。みんな、無事に帰って……」
言いかけて、春馬は小首をかしげた。
「あれ? 未奈は、いないのかい?」
「その前に、春馬が無事でよかったわ」
亜沙美は、病室に入ってくる。
「それで、未奈と3人の1年生はどうなったんだ?」
「3人の1年生は無事よ。わたしといっしょに帰ってきたわ。……ただ、未奈だけは行方不明なの」
「なんだって!」
驚く春馬に、竹神刑事が落ちつくように言う。
亜沙美は、春馬と別れたあとの話をする。
橋をわたった亜沙美たちが迎えにきたワンボックスカーに乗ると、すぐに眠らされて、目が覚めると、渋神中学の校門の前に座らされていた。
亜沙美と3人の1年生はいっしょだったが、未奈はいなかった。
亜沙美が話し終わったとき、窓は閉まっているのにカーテンがゆれた。
「だれだ!」
竹神刑事が身がまえると、カーテンの裏側から、土黒虹子があらわれた。
「虹子じゃないか!?」
驚く春馬に、虹子が「お帰り、春馬」と言った。
「おまえ、ドクロ一族の末っ子の土黒虹子か?」
竹神刑事が警戒しながら聞いた。
「へー、よく知っているね、警視庁特別捜査班の竹神刑事」
「おまえこそ、どうして、おれの名前を知っているんだ?」
「それは、ぼくら一族を捜査している人だからね。ドクロ一族では有名人だ」
「それは光栄だね」
竹神刑事は、携帯していた手錠を手にとる。
「待ってくれよ。ぼくはドクロ一族だけど、悪事にはかかわってない」
「ここに入ったのは、不法侵入だ」
「友だちの見舞いにきただけだ。そうだろう、春馬?」
「竹神刑事、虹子の言う通りだ。不法侵入じゃない」
春馬が答えると、竹神刑事が手錠をしまう。
「逮捕はしない。冗談だよ。それにしても、どこから侵入したんだ? ここは警察病院の中でも、セキュリティーが厳しいんだぞ」
「こういうのは得意だ。姉さんは、もっと得意だけどね」
「虹子、未奈が帰ってないんだ。どうなっているか、わかるか?」
春馬が聞くと、虹子が申し訳なさそうに言う。
「未奈は、ドクロ一族に誘拐されたんだ」
「やっぱり、そうか。それで、未奈は無事なんだよね?」
「そこまではわからない。ただ、未奈を誘拐したのには目的があるはずだ。その目的が達成されるまでは、危害は加えないはずだ」
「危害って……、未奈はゲームにクリアして村を出たんだ。おかしいだろう!」
春馬は怒りで声をつまらせる。
「おまえもドクロ一族の1人なんだろう。滝沢未奈がどうなっているか、調べられないのか?」
竹神刑事の質問に、虹子は首を横にふる。
「無理だ。ぼくは一族のきらわれ者だし、今度のことには、かかわってない」
「それなら質問をかえる。今、ドクロ一族はどういう状況なんだ」
竹神刑事が聞くと、虹子は少し考えてから答える。
「ドクロ一族は長い間、国から依頼されて世間に公表できない裏の仕事をやってきた。そのことが世間に知られると困るので、ドクロ一族との契約を解除したんだ」
「それで、現状はどうなんだ?」
竹神刑事はいらいらした口調で聞いた。
「クビを素直に受け入れて解散を望む『解散派』と、国に裏切られたと反発している『反発派』に分かれたんだ。『解散派』と『反発派』はことごとく意見がちがうんだ」
春馬は、「ことごとく意見がちがう」という言葉が引っかかる。
「虹子はどっち派なんだ?」
竹神刑事が聞くと、「当然、『解散派』だよ」と答えた。
「ドクロ一族は分裂しそうなのか?」
春馬が質問したが、虹子は黙りこむ。
「それで、『反発派』はどうしているんだ?」
竹神刑事が聞いた。
「『奈落』と手を組んだようだよ」
「なんだって!」
春馬が大きな声を出した。
「国にクビになったドクロ一族の『反発派』と、国に反旗を翻した『奈落』が手を組んだということか……」
竹神刑事が腕組みをして考える。
虹子たちの話を聞いていて、春馬は気がついたことがある。
「ドクロ一族がぼくに興味を持ったのは、『奈落』のメンバーを知っているからか」
「そうかもしれないね。春馬なら、『奈落』とのパイプ役にちょうどよさそうだ」
そのとき、竹神刑事のスマホが鳴った。
スマホのディスプレイを見た竹神刑事が、首をかしげている。
「なんだ、これ?」
スマホのディスプレイに、ドクロマークが表示されている。
「それ、ドクロ一族のスマホからの着信だよ」
虹子が言った。
「なんだって、どういうことだ?」
竹神刑事は首をかしげて、電話に出る。
「もしもし……」
「驚いたじゃろう、竹神刑事よ」
「その声は、走馬灯。どうして、おれのスマホの番号を知っているんだ?」
「ドクロ一族の手にかかれば簡単に調べられるんじゃ。それよりも、春馬もいっしょじゃろ。スマホをスピーカーにしてくれじゃ」
竹神刑事はスマホをスピーカーにして、走馬灯に質問する。
「おまえ、警察の留置場だろう。どうやって、電話をかけているんだ?」
「竹神刑事は、なにもわかってないじゃな。そこにテレビがあるじゃろ。見てみろじゃ」
春馬が病室にあるテレビをつけると、東京の霞が関にある警視庁の本部が映る。その建物から白い煙があがっている。
レポーターが建物から少し離れたところから、状況を説明する。
『……最新の情報が入りました。警視庁本部で爆破事件がありました。けが人が数人いるようですが、全員、軽傷とのことです。
それと、警視庁のコンピュータが何者かによりハッキングされ、警備システムがダウンしているとのことです。それにより留置されていた被疑者が、逃走したとみられます』
レポーターのうしろに、顔に『南無阿弥陀仏』と書かれた走馬灯が、スマホを持って立っている。
「そういうことじゃ」
スマホから走馬灯の声が聞こえてくる。
「今すぐに警視庁の本部にもどれ。脱走しても、罪が重くなるだけだぞ!」
竹神刑事が言うと、走馬灯の笑い声が返ってくる。
「おまえはアホか! もどるわけなかろう。ほいじゃ、さよならじゃ」
走馬灯からの電話が切れる。
「竹神刑事、どういうことですか?」
春馬が質問した。
「おれにもよくわからねぇ。警視庁のコンピュータがハッキングされて、せっかく捕まえたドクロ一族の悪人たちが逃げだしたようだ」
「警視庁のコンピュータって、そんなに簡単に侵入できるんですか?」
春馬が疑問を口にすると、竹神刑事はなにかに気がつく。
「何者かが警視庁の中央コンピュータ室に入らないと、ハッキングはできねぇ」
そう言った竹神刑事は、あわてた様子で警視庁本部に電話をかける。
「……中央コンピュータ室に、侵入者がいるはずだ。今すぐ、調べるんだ!」
竹神刑事はスマホ片手に、病室をうろうろと歩きまわる。
少しして、電話相手から返事がある。
「……そうか、捕まえたんだな。……えっ?」
「侵入者を捕まえたんですね?」
春馬が聞くと、竹神刑事が解せない顔でうなずく。
「その人物が警視庁の中央コンピュータ室に侵入して、セキュリティーシステムをダウンさせて、勾留していた走馬灯を逃がしたようだ」
「その人物はだれなんだ?」
虹子が聞くと、「こいつだよ」と竹神刑事はスマホの画面を見せる。
黒のロングヘアに鋭い目つきの若い女性だ。
「嘘だろう!」
虹子が大きな声を出した。
「虹子、だれなんだ?」
春馬が不思議そうに聞いた。
「ぼくの姉さん、土黒エンドだよ。ドクロ一族で、父の次に力を持っている実力者だ」
「その実力者を捕まえたんだったら、未奈の居場所がわかるんじゃないか?」
春馬が聞くと、虹子が不安そうな顔で答える。
「エンドが言うわけない。彼女は策略家で冷酷な性格なんだ」
「飛んで火にいる夏の虫というところか。走馬灯には逃げられたけど、ドクロ一族のナンバー2を捕まえることができたぞ。大きな成果じゃねぇか」
竹神刑事は喜んで病室を出ていった。
「奇妙だよ」
虹子がつぶやいた。
「なにか気にかかることがあるのか?」
春馬の質問に、虹子は首をひねりながら答える。
「エンド姉さんは冷酷非道なんだ。警察に捕まるようなドジをした走馬灯を助けるために、こんなことをしたとは思えない」
「それじゃ、どうして、あんなことをしたんだ?」
「わからない……」
第4回につづく(11月2日(月)更新予定)
書籍情報
- 【定価】
- 1,034円(本体940円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324054
コミカライズ版は2027年1月5日まで公開中!
その他の連載はこちらからチェック!▼