「絶体絶命ゲーム」は「こどもでも、命がけで人生を一発逆転できる」という都市伝説のような存在。小学校時代から何度もゲームにまきこまれてきた春馬と未奈は、いつしか【絶体絶命ゲームのレジェンド】に…! 最新刊18巻は11月11日(水)発売。前の巻のラストで、たった1人でつり橋から落ちていった春馬は、いったいどうなったのか!? 大ピンチのゆくえを、どこよりも早くためし読みしてね!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
1 春馬の「失敗」?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ガタガタとゆれる車内で、春馬は目を覚ました。
車の後部座席に寝かされている。
「ようやく起きたじゃ」
助手席の男が声をかけてきた。
村でおこなわれた『絶体絶命ゲーム』の案内人の走馬灯だ。
「ぼくはどうして、ここに……?」
春馬は上半身を起こして聞いた。
「おまえは、橋が爆破される寸前に川に飛びこんだじゃ。まったく無理しやがる」
「それは覚えているけど……」
「ほいでな、わしらが下流を捜したら、川岸で倒れていたんじゃ」
「ぼくを見つけたのは、走馬灯なの?」
「そうじゃ、礼はいらないぞ」
「うん……」
あいまいに返事をした春馬はシートベルトをして、車内を見まわした。
運転しているのは鬼の仮面をつけた村人で、走馬灯は助手席にいる。
後部座席は春馬だけだ。
気を失う前にあらわれた雅は、車に乗ってない。
彼女はどこにいったのだろう?
もしかして、あれは幻だったのだろうか?
「春馬、なにをきょろきょろしとるんじゃ。ちょっと笑ってみせるじゃ」
「えっ?」
「いいから、笑うじゃ」
走馬灯に言われて、春馬が首をかしげながら作り笑顔をする。
瞬間、走馬灯は背面カバーにドクロの描かれたスマホで、写真をとる。
「えっ、なに?」
「写真をとっただけじゃ」
「削除してよ」
「もう仲間なんじゃ、写真くらいはええやろう。
……それよりも、これからよろしくたのむじゃ。いっしょに仕事するのが楽しみじゃなぁ」
「待ってください。それはどういう意味ですか?」
「おいおい、わすれたとは言わせんぞ。最後のゲームでおまえは負けたんじゃ。約束どおり、ドクロ一族の仕事をするんじゃよ」
「いえ、ぼくはゲームには負けてません」
春馬が否定すると、走馬灯はあきれて言い返す。
「おいおい、とぼけるな。おまえは最後のゲームで、時間内に橋をわたりきれなかったじゃろう」
「時間内に村を出ました。ゲームはクリアです」
「いいや、条件は橋をわたりきることじゃ。おまえは橋をわたりきってないじゃろう?」
「でも、村を出ました」
春馬の言葉を聞いて、走馬灯は少し考えてから大きな声で笑いだした。
「そんなことはどうでもいいじゃ。おまえは捕まった。もうドクロ一族に従うしかないんじゃ」
「『絶体絶命ゲーム』のルールは厳守されるはずです。ルール違反は許されません」
「ドクロ一族のやり方はなぁ……、ノールールじゃ」
「そんな……」
こんなことが許されるはずはない。
そうか、これは嫌がらせだ。
こういう嫌がらせを平気でやる人物を知っている。その人物の仕業だ。
「雅先輩ですね。このゲームには、雅先輩がかかわっているんですね?」
春馬が質問すると、走馬灯は眉をひそめる。
「……それはだれじゃ?」
「渋神四星のリーダーですよ。本当は知っているんでしょう?」
「おまえの話は、よくわからんなぁ。くわしく聞かせるんじゃ」
「とぼけないでください。岸に流れついたとき、ぼくは雅先輩のすがたを見たんです」
「なんじゃって!」
走馬灯の態度が変わり、運転手は、阿吽の呼吸で車のスピードを上げる。
春馬たちを乗せた車は、山道を暴走していく。
走馬灯は窓を開けて、背面カバーにドクロの描かれたスマホを外にほうり投げる。
どこからか、パトカーのサイレンが聞こえてくる。
『前の車、とまりなさい』
春馬がうしろを見ると、数台のパトカーが追いかけてくる。
こんな山道に、どうしてこんな数のパトカーがいるんだ?
「まったく、ドジを踏んじまったじゃ」
走馬灯が舌打ちをする。
「どういうことです?」
春馬が聞くが、走馬灯は苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。
車の前方を見ると、パトカーが横むきになって道をふさいでいる。
「危ない!」
春馬が叫んだが、運転手はスピードを落とさず、パトカーの側面につっこんだ。
ドンという強い衝撃で車が大きく揺れた。
車のフロントガラスが割れて、春馬は前の座席の背もたれに体を打ちつけた。
「痛ぁぁぁ……」
車のまわりを、数人の警察官と刑事らしき人たちが囲んでいる。
「はいはい、わかったじゃ。大さわぎせんでえぇ」
走馬灯は、めんどうくさそうに言って、車の外に出ていく。
春馬がとまどっていると、スーツすがたの背の高い男が後部座席のドアを開けた。
「パトカーが1台、壊れちゃったよ」
背の高い男が、側面のへこんだパトカーを気にしながら言った。
「あの……?」
春馬がとまどっていると、背の高い男が警察手帳を見せた。
「警視庁特別捜査班の、竹神浩平だ。おまえ、武藤春馬だろう?」
「はい、そうです。……一体、なにが起きているんですか?」
「その話は、お友だちから聞きな。……あぁ、パトカーの修理費は高そうだなぁ」
竹神刑事はぶつぶつ言いながら、捕まえた走馬灯のところへいく。
「ドジ、アホ、間抜け、使えないやつ!」
辛らつな言葉を並べながら、春馬の前にあらわれたのは、北条雅だ。
「雅先輩! やっぱり、あれは夢じゃなかったんだ」
「その車、ガソリンに引火すると爆発するから、いつまでも乗っていたら危険よ」
「爆発だって!?」
春馬はシートベルトをはずして、急いで車から出た。
「ガソリンがもれてないのに、爆発するわけないじゃない。からかったのよ」
雅が、冷ややかに笑った。
「それくらいにしておけ、春馬がかわいそうだろう」
聞きおぼえのある声は、「渋神四星」の野井翔だ。
「からかいたくもなるわ。もう少しで、ドクロ一族を一網打尽だったのよ。最悪!」
雅は、うんざりしたように言った。
「それ、どういうことですか?」
春馬の質問を、雅は無視する。
「こういうことなんだ」
かわりに答えてくれた翔が、春馬の上着の裏に取りつけられた小型の装置をはずした。
「それは、なんですか?」
「盗聴器のついた追跡装置だよ。ぼくたちは春馬のあとを追って、指名手配されていた走馬灯を捕まえたんだ」
「春馬は、ドクロ一族を捕まえるおとりだったのよ」
雅が不機嫌そうに言った。
「おとり……?」
つぶやいた春馬は、翔が日焼けを嫌っていたことを思いだした。
「そう言えば、翔先輩は日焼けはいいんですか?」
「それなら、心配無用だ。SPF50+の最高の日焼けどめを使っているからね」
高校生になっても、雅先輩も翔先輩も相変わらずの性格だ。
春馬は気持ちを落ちつかせて、翔と雅に質問する。
「ぼくが走馬灯を捕まえるおとりに使われたのは、わかりました。それで、どうして雅先輩と翔先輩がここにいるんですか?」
「話せば長くなるんだけど……。その前に、春馬に話しておかないとならないことがあるんだ」
「なんですか?」
「……実は、4月に芸能プロダクションに所属して、アイドル活動をしているんだ」
「それって、今、話すことですか?」
春馬があきれる。
「あぁ、それから、走馬灯を捕まえられた礼も言っておくよ。ありが……」
翔の言葉を、雅がさえぎる。
「その必要ないわ! 春馬は大きなミスをしたの」
「それは、しょうがないだろう。春馬は、ぼくたちの作戦を知らなかったんだ」
「作戦って、なんの話ですか?」
春馬の疑問に、翔が説明をする。
「ぼくと雅は、訳あってドクロ一族を探っていたんだ」
「訳って、どういう訳ですか?」
「それは順を追って話すよ。ぼくたちはドクロ一族の潜んでいる村を見つけて、彼らの動向を見張っていたんだ。そこに、春馬たちがやってきたんだよ」
「もしかして、ぼくたちがゲームをしているのを見ていたんですか?」
「森の中から監視していただけだよ。それで、最後のゲームで春馬が川に落ちたのを見て、雅と救助にむかったんだ」
「ぼくの記憶にあるのは、雅先輩がやってくるところです」
「そのうしろに、ぼくもいたんだけどなぁ……」
翔がぼやくように言った。
「わたしが偶然、春馬を見つけたのよ」
雅が言うと、翔があきれたように言う。
「偶然にしては、すごい勢いで山道を駆けていったけど」
「……ぼくは雅先輩を見たあと、気を失った。そして、目を覚ましたら車の中だった。それは、どうしてですか?」
春馬の質問に、翔は小さくうなずいて話をする。
「ぼくたちが春馬を助けようとしたとき、すぐうしろから走馬灯たちがやってきたんだ。それで、春馬をおとりにする計画を思いついて、追跡装置を仕掛けて隠れたんだよ」
翔の話を聞いて、ようやくなにが起きていたのか理解した。
「春馬がわたしの名前を口にしなかったら、走馬灯はドクロ一族の拠点にいっていたのよ。そうすれば、一網打尽にできたの。もう少しで大手柄だったのよ」
雅に言われて、春馬は理不尽だと思いながらも「ごめんなさい」とあやまった。
「春馬は気にしなくていいよ。走馬灯を捕まえられただけでも、お手柄なんだ」
「ところで、先輩たちはどうしてドクロ一族を探っていたんですか?」
「その話は、パトカーの中でしてくれ」
もどってきた竹神刑事に言われて、春馬たちは無傷のパトカーの後部座席に乗った。
「なにごとにも、タイミングというのがあるだろう」
翔はそう前置きしてから、彼らになにが起きたのかを話しだす。
「ぼくと雅は、『絶体絶命ゲーム』の世界大会に出ようと考えていたんだ。それには、国の公認が必要なんだよ」
「国の公認って、国のどの部署の公認がいるんですか?」
「春馬ならよく知っているだろう。深井アイだよ」
深井アイは日本でおこなわれる『絶体絶命ゲーム』の主催者で、『奈落』代表の深井蓮の姉だ。
「先輩たちは、どうして『絶体絶命ゲーム』の世界大会に出たいんですか?」
「この大会は特別なんだよ。いわば、世界のエリートを決める大会なんだ。この大会で優勝したら、進学や留学や就職も思うままなんだ」
「今でも、思うままなんじゃないですか?」
「レベルがちがうのよ」
黙って話を聞いていた雅が、口をはさんだ。
翔は苦笑いして、話をつづける。
「風祭ミッシェルが渋神中学でやりたい放題やっているのは、優勝はしなかったけど『絶体絶命ゲーム』の世界大会に出場したからなんだ」
「……なるほど、そこまではわかりました。それで、どうしてドクロ一族につながるんですか?」
「ぼくたちは、もう少しでアイの公認がもらえそうだったんだ。それが、タイミング悪く春馬と未奈が『奈落』からもどってきたんだ。それでアイは、世界大会の日本代表は春馬と未奈がいいのではないかと言いだしたんだ」
「いやいや、ぼくと未奈は『絶体絶命ゲーム』の世界大会には出ません」
春馬はあわてて否定したが、翔は首を横にふる。
「本人がそう言っても、相手はアイだ。というか、アイのうしろには国がついているんだ。逆らうことはできない。それでも、出場しないと言いはるなら……」
「どうなるんです?」
「おそらく、この国に暮らせないくらいの嫌がらせをされる。まぁこれはぼくの憶測だけどね」
「まったく、やっかいだな」
春馬はため息まじりで言った。
「本当よ。やっかいなときに帰ってきたわよ」
雅が嫌味たっぷりに言った。
「……それで、どうなったんですか?」
春馬は雅を無視して、話題をもどした。
「『絶体絶命ゲーム』の世界大会に出場したいなら、行方をくらましたドクロ一族を探れと言われたんだ」
そういうことか。
アイは『奈落』の代表をしている弟の蓮を捜しているのだ。そして、『奈落』はドクロ一族とつながっているようだ。
「……でも、それは警察の仕事でしょう?」
春馬が聞くと、翔は小声で言う。
「警察内部にドクロ一族とつながっている人物がいるらしいんだ。それで、ぼくと雅が素人探偵をやることになった」
「そういうことか……」
「春馬がわたしの名前を出さなかったら、一網打尽だったのに……」
雅は、相当にくやしいようだ。
「その話はもういいだろう。春馬はなにも知らなかったんだ」
翔の言葉は、かえって雅を怒らせた。
「その話はもういいって、どういうことよ!」
「あっ、いや……。あとは春馬と話してくれ」
翔はそう言うと、窓の外を見て知らんふりをする。
そのあと、春馬は雅にたっぷり嫌味を言われた。
第3回につづく(10月30日(金)更新予定)
書籍情報
- 【定価】
- 1,034円(本体940円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046324054
コミカライズ版は2027年1月5日まで公開中!
その他の連載はこちらからチェック!▼