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ものがたり

【最新20巻発売記念・ためし読み】『世界一クラブ 最強の小学生、あつまる!』第1回


どの巻から読んでもおもしろい! 世界一の特技をもつ、5人の小学生が大活躍! 
事件と笑いがいっぱいの人気シリーズ「世界一クラブ」、待望の【20巻】が10月に登場! 発売を記念してトクベツに【1巻】と【19巻】を大公開! 期間限定でまるごと読めちゃうチャンスをお見逃しなく★(公開期限:2025年12月26日(金)23:59まで)



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1 最強の目覚まし時計


 遠くから、ウーウーと大きな音が頭の中に響いた。

 ……これ、何の音だっけ。

 規則的にくりかえす、心がざわっとするサイレン。

 救急車じゃなくて、消防車じゃなくて……。

 パトカーだ。

 徳川光一は、布団の上で、ぱっと目を開けた。

 その時だった。

 ドンドンドン!

 部屋の外から、階段を駆けあがるけたたましい音が鳴りひびく。

 光一が驚いて飛びおきた次の瞬間、弾けとびそうなほど勢いよく、バーンとドアが開いた。

「おはよう! 光一」

 小柄な、すらりとしたシルエット。

 部屋の入り口で、ショートカットの少女が勇ましい仁王立ちを決めていた。

「なんだ、起きてるじゃん。早く学校行こうよ。もう七時だよ?」

「はあ!? ま・だ・朝の七時だ! っていうか、すみれ。勝手に人の部屋に入るなよ」

 もう小六だぞ?

 こういう、デリカシーがないところはどうにかしてほしい。

 けれど、言っても効果はないんだ。これが。

「別にいいじゃん。幼なじみなんだし」

 光一の苦情にも、すみれは涼しい顔だ。トレードマークのショートパンツ姿で、廊下から光一の部屋にずかずかと足を踏みいれる。あちこちに積みあがった本を、勝手にぺらぺらとめくった。

 光一は、はーっとため息をつく。

 五井すみれは家が隣同士、幼稚園に入る前からの古い幼なじみだ。

 読書が好きな光一とは正反対で、グラウンドをいつも元気に走りまわっているタイプ。とにかく運動神経がバツグンで、いろんなクラブから引っぱりだこだ。

 サッカー、野球、バスケなんかのチームでやる競技はもちろん、陸上や水泳みたいな個人競技でも、めちゃくちゃ強い。

 しかも、けた外れに。

 体育では一人勝ちしてしまうので、先生がいつもチーム分けに頭を悩ませている……なんてレベルじゃない。

 すみれの家のリビングには、地区、東京都、全国、果ては世界大会でもらったトロフィーやら賞状やらが所せましと並んで、今にもはみだしそうになっている。

 名実ともに、世界レベルの運動神経を誇るスポーツ少女というわけだ。

 でも、一番得意なのは……。

「光一、そろそろ下りていらっしゃい」

 一階から、光一の母、久美の声が聞こえてくる。

「すみれちゃんも、もしよかったら、朝ごはんを食べていく? 光一の分と一緒に準備するわよ」

「わーい、ありがとうございます!」

 すみれは歓声を上げて飛びあがると、光一を置いて再びドアまで舞いもどった。

 ここに座りこんでいてもしょうがない。光一もパジャマ姿のまま、しぶしぶ布団からはいだす。

「朝ごはん、家で食べてきたんじゃないのか?」

「そりゃあ食べたけど、早朝からランニングして練習メニューをこなしたら、すっかりお腹減っちゃった」

「……それって食べす」

 ぎ。

 と言おうとした光一は、瞬時に走りこんできたすみれににらまれて、ぐっと言葉を飲みこんだ。

 いつの間にか、しっかりとパジャマのえり元をつかまれている。

 ヤバい。

「光一~!!」

 すみれの目にもとまらぬ動きに合わせて、視界がぐんと回転し、体が宙に浮いた。

「必殺、一本背負い!」

「だから、〈世界一の柔道少女〉がぽんぽん投げ技なんか使うなって!」

 毎日毎日、投げとばされる方の身にもなれ!

 光一の体が、どしーんと布団に叩きつけられる。

 すみれの元気いっぱいな声が、徳川家に響いた。

「一本!」


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