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ものがたり

【先行連載】『さよならは、言えない。』2巻ためし読みれんさい! 第1回 切ない祈り


5月10日発売予定『さよならは、言えない。(2) ずっと続くふたりの未来へ』を、どこよりも早くためし読みできちゃう先行れんさいスタート!
切ないキュンがいっぱいの感動ストーリー、読んでみてね!(全6回)

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◆第1回

ずっと会いたいと願っていた、大切な人・玲央(れお)との再開がようやくかなった心陽(こはる)。でも、玲央は心陽に何かをかくしているみたいで……?
そして、心陽の目の前で、玲央(れお)はたおれてしまった。
玲央にいったい、何が起こっているの?

 


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切ない祈り

 

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「玲央、目を開けて! お願い! 玲央……!」

 玲央の病室のとびらの前、冷たい床に座りこんだ星羅(せいら)さんは、ポロポロとなみだを流しながら、たおれた玲央の手を、ぎゅっとにぎった。

 目をつぶった玲央の顔は、苦しそうにゆがんでいる。

 ――玲央……!

 私は口から出かかった声を、必死でのみこんだ。

 だって、玲央がたおれたのは、私のせいだ。

 私がいなかったら、玲央は無理なんてしなかった。

 せっかく退院できたのに、また病院に逆もどりすることになんて、ならなかった。

 私の知らないところで、凪(なぎ)や星羅さんといっしょに、学校に通って、授業を受けて、クラスメイトと笑ったりしてすごしていたはずだったんだ。

 罪悪感がどんどんふくれあがってきて、私はくちびるをぎゅっとかみしめた。

 こぼれ落ちそうななみだを必死にこらえていると、うしろから肩をたたかれた。

 振り向くと、そこにいたのは、さっき病室から出ていったお医者さんだった。

「きみ、ちょっとどいてくれる?」

 少しあせった声でそう言われて、私はあわてて、大きく一歩後ろに下がった。

「玲央の主治医(しゅじい)の大久保(おおくぼ)先生だよ。いてくれてよかった」

 先生を呼んできてくれた凪が、そう言った。

 主治医の先生が指示を出し、看護師さんといっしょに玲央をストレッチャーに乗せる。

 私は、星羅さんの後ろから、その様子を見つめることしかできない。

「玲央……!」

 ストレッチャーで運ばれて行く玲央を、星羅さんと凪が追いかける。

 私の足も、無意識のうちに動き出していた。

「……心陽ちゃん」

「……っ」

 振り返った凪と目が合って、ハッと我に返る。

 凪は、無言のまま、悲しそうな顔で私を見つめた。

『君と再会してから、発作がひどくなってるんだ』

 さっき凪に言われた言葉は、本当のことなのかもしれない……。

 やっぱり私は、玲央のそばにいる権利はないし、ここにいてはいけないんだ。

 それを痛感して、私はその場から動けなくなった。

 遠ざかっていくストレッチャーに向かって、『どうか玲央が目を覚ましますように』と祈る。 

 それから、私は凪に視線をもどした。

「私のせいでごめんなさい。もう、二度と来ません……」

 深々と頭を下げると、こらえていたなみだが、ボロボロとこぼれ落ちていく。

 凪の返事を待たずに、すぐさま背を向けて、私は階段に向かって駆け出した。

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 病院を出て、駅までの道を泣きながら歩いた。


 苦しそうな玲央の顔。

 たおれた玲央に、駆けよった星羅さん。

 玲央の手をぎゅっとにぎって、何度も名前を呼んでいた。

 ……婚約者なんだから、当然だ。

 玲央のとなりは、星羅さんの場所って決まってるんだから。

 だけど、その光景を思い出すと、ジリッと焼けつくような痛みが胸に走る。

 気づいてしまったんだ。

 私にとって、玲央がどれほど大切な人かってことに。

 これは、『友情』なんかじゃない。

 ――『恋』なんだって。

「でも、ダメだよ。この気持ちは、あきらめなきゃダメ」


 私は、玲央を好きになってはいけない。

 私がそばにいると、また玲央に迷惑がかかってしまうから。

 それに、玲央には星羅さんがいる。

 いくら好きになっても、絶対にかなわない恋なんだから。

 玲央のために、私にできることは、ふたつだけ。

「玲央の無事を祈ることと、この恋心を忘れること……」

 小さくつぶやいて、自分に言い聞かせる。

 神様、お願いです。

 もう二度と会わないと誓(ちか)うから、どうか玲央を助けてください。

 玲央が元気になって、玲央の大切な人たちと、笑い合えますように。

 そこに私はいないけれど、玲央が元気で幸せだったら、それでいいです。

 罪悪感と不安と悲しみをかかえながら、私は夕映えの空を見上げていのった。



心陽が気づいてしまった自分の『気持ち』。
でも、その気持ちは、かなえてはいけないことが決まっていた……。
玲央のそばからはなれて、いつもの生活にもどろうとする心陽に、さらにピンチが!?
次回 第2回「世界にひとりぼっち」をチェックしてね。


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作:高杉六花  絵:杏堂まい

定価
770円(本体700円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322166

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