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【先行ためし読み!】怪盗レッド29 第3回

9 燃えあがるのは……?

 片づけを終えるころには、外はすっかり暗くなっていた。

 なんだかんだと手伝ってくれていた水夏たちにも、先に帰ってもらった。

 いまの季節は、暗くなるのも早いからね。

「アスカたちも、そろそろ帰っていいよ。戸じまりは、ぼくたちでしておくから」

 理央先輩に言われて、体育館を見まわすと、残っているのは怪盗部の3人と、わたしとケイだけだった。

「えっ、でも……」

「アスカ。いこう」

 迷っているわたしに、ケイが視線でうながしてくる。

 理央先輩たちの様子を見て、わたしはやっと気づく。

 そっか。

 怪盗部の3人で残って、話したいことがあるのかも。

「じゃあ、お言葉にあまえて。お先に失礼します!」

「失礼します」

 わたしたちはバッグを持ちあげると、体育館を出る。

 いつも人の声のあふれている学園の校舎も、この時間はしずまりかえっている。

 でも、さびしさはなかった。

 クリスマス会の楽しさの余韻が、心にまだ残っているからかも。

 昇降口でくつにはき替えて、ケイとならんで校舎を出た。そのとたん、

「わっ、さむっ!」

 頬を刺すような冷たい空気に、おもわず身をちぢこまらせる。

 マフラーをしっかり巻きなおして、よし、少しでも体が温まるように、ランニングのペースで家をめざそうよ――って言おうと、ケイにむかってふりむいた、そのとき。

「……?」

 ケイは、片手に持ったスマホの画面を見つめながら、けわしい顔で立ちすくんでいた。

 そのようすに、わたしの警戒モードが、瞬時にスイッチオン!

「なにがあったの?」

 わたしは、少し声をひそめて、たずねる。

 まわりに人かげは見えないけど、念のためだ。

「――いま、ラドロから送られてきた。つい数分前の画像だ」

 ケイはそう言って、スマホの画面をこちらにむけてくる。

「――――!」

 そこに映しだされているのは、動画だった。

 炎に吞まれて燃えあがる、洋館風のお屋敷。

 窓から赤い炎が噴きだし、夜空をまがまがしい色に照らしている。

 黒煙が広がって――屋敷全体が崩れ落ちていくように見えた。

「花里家が管理する、屋敷だそうだ」

「えっ!?」

 これが、花里家のお屋敷!?

「琴音さんはっ!? だいじょうぶなの!?」

 おもわず声が大きくなる。

 でも、かまっていられない。

「この屋敷にいま、花里家の人間はいなかったそうだ。使用人や管理人は、炎上がひどくなる前に脱出して、軽傷ですんだらしい」

 その言葉に、ほっと息をつく。

 そっか、花里家くらいなら「お屋敷」といっても、たくさん持っていそうだもんね。

「でも、なんで花里家のお屋敷が……?」

 火の不始末?

 それにしては、燃え方が大きすぎる。

 なにか、すごく可燃性の高いものに引火したとか。

 複数の場所から、同時に燃えたとか。

 そんなことでもないと、こんなに大きなお屋敷全体が炎に包まれるほどになるとは、思えない。

「屋敷が炎上する前に、爆発があったそうだ。それも複数回」

「爆発って……まさか!」

 わたしの頭の中で、やっとつながった。

 ラドロのビルと同じように、爆弾がしかけられた?

 だとしたら、これは……っ!

「――ああ。日本国内で、タキオンと敵対している最大の勢力は、ラドロ、そして花里家だ」

 ケイの言葉が、わたしが思いうかんだことを読みとったように、教えてくれる。

「じゃあ――! またブラック・タキオンのしわざってこと!?」

「この場で断定はできない。帰ったらすぐ情報収集をはじめる」

 ケイははっきりとは言わなかった。

 けど、ほぼ確信しているみたいだった。

 そうだよね、こんなことがつづいて、偶然のわけがない!

 家に帰ると、ケイは、わたしたち共有の部屋に飛びこんでいった。

 猛スピードで、パソコンを動かしてる。

 わたしはケイの邪魔をしないように、リビングで、うずくまる。

 落ちつかない気持ちをそらそうと、テレビをつけると、夕方のニュース番組が流れた。

『ただいま入ったニュースです。花里グループで有名な花里家が所有する屋敷が、炎上中とのことです。動画を入手しましたので、ご覧ください』

 男性キャスターが読みあげると、画面が切り替わる。

 さっき見た洋館だ。

 スマホで撮ったのか、縦長の画面で画質は荒い。

 それでも、火の勢いはさらにはげしく、燃え盛っている様子がしっかり伝わる。

『ケガ人などの情報はまだ入っていません。花里家当主の花里源一郎氏、孫の琴音氏の安全は確認できているとのことです。なお、火災の原因については警察と消防が調査中です』

 画面がスタジオに切り替わった。

 ラドロは、屋敷の管理者が軽傷を負ったという情報までつかんでいた。

 マスコミより、くわしい情報を手に入れるルートがあるんだね。

 わたしは、スマホを手にとる。

 ニュース番組で報道されてた。

 ってことは、わたしが花里家のお屋敷の炎上を知ってても、もうおかしくない。

 トークアプリを開いて、七音と琴音さんにメッセージを送る。

 七音は、琴音さんと知り合いらしいし、探偵だ。

 なにか知っているかも。

 琴音さんは……いまは、私のメールどころじゃないとは思うけど、送らずにはいられなかった。

   ピコン

 十分ぐらいして、スマホの通知がくる。

 七音からだ。

『花里家の屋敷の火事については、まだわからない。調べているところ。でも琴音さんは無事』

 簡潔なメッセージだし、それ以上の情報はなかった。

 それでも、七音からも琴音さんの無事を知らせてもらえて、ほっとする。

 なんでブラック・タキオンは――ニックは、花里家の屋敷を炎上させたんだろう?

 ラドロの次は、花里家。

 ケイも言っていたけど、たしかにタキオンに敵対する2つの勢力ではある。

 ただ、この爆発や炎上の規模だと、ラドロも花里家も、すごい被害ってほどではない。

 ラドロは、ケイにいち早く連絡できたていどには、活動できてる。

 花里家だって、たくさんある屋敷の1つが炎上したからって、タキオンとの敵対をやめるなんて思えない。

 当主であり、琴音さんの祖父の花里源一郎さんは、ずっとタキオンと敵対してきた。

 いろんな事件に巻きこまれることもあったけど、それでも折れたりしなかった。

 きっと、今回だって、方針を変えるとは思えないよ。

 ということは……?

 ケイが言うとおり、「べつの目的がある」のだとして。

 それって、なんなんだろう。

 ニックは、なにを考えてるの?

 わたしは、次のニュースに切りかわった番組をききながしながら、言い知れぬ不安に自分の腕をギュッとつかんだ。


このつづきは2/11(水)発売の『怪盗レッド29 怪盗と探偵と泥棒の合同作戦⁉の巻』で読んでね。
いよいよ盛りあがるのは、このあと! 響も、ファンタジスタもさらに活躍するから、ぜひお楽しみに!



書誌情報


作: 秋木 真 絵: しゅー

定価
858円(本体780円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323903

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