2人1組の正義の怪盗「怪盗レッド」をやっている、アスカとケイの物語。30巻での完結が発表されていて、いよいよ残りは2冊!……さみしいけど、物語はクライマックスにむかって超もりあがっていくから、ぜひ最後までついてきてね! その最新巻である、29巻をためし読み!
「世界の敵」タキオンの最終攻勢の予感……それとはうらはらに続く、いつもの楽しい学園の日常。そのたび思うんだ。「この平和を、壊させない」って。そのために、わたしたちはレッドをやってきたんだから――!(全3回、公開は2026年3月30日(月)まで)
7 伝説の人、ふたたび!
放課後の教室。
机を寄せ集め、その上には色画用紙やカラーペン、のり、はさみがごちゃっと広がっていた。
赤や緑の紙きれが床にも落ちていて、まるで工作教室みたい。
「タイトルは大きく『クリスマス会』でいいよね? 赤と緑、どっちが映えるかな」
優月が、赤いマーカーを手に首をかしげる。
「文字のふちを緑にしてみたらどうですか? ほら、目立つのが一番です!」
奏が、スケッチブックをのぞきこみながら提案する。
そのとなりで、水夏は、サンタ帽やツリーのイラストを黙々と描いていた。
丸みのある線で描かれたツリーには、まだ色がついていないのに温かさがあって、おもわず笑顔になる。
「わあぁ、かわいい! 水夏、絵がうまいよね」
わたしは、水夏のイラストをのぞきこみ、声をあげる。
「そんなことはないけど……アスカはポスターの掲示許可はとってきたの?」
水夏が、照れをかくすぶっちょうづらになってきいてくる。
「ばっちり! 実咲にお願いしてきたよ!」
わたしは、笑顔でグッと親指を立てる。
作っているのは、クリスマス会の中等部むけ参加者募集のポスターだ。
わたしが取りまとめることにはなったけど、もちろん1人でやるのなんて無理だから、すぐに実咲やここにいるメンバーに声をかけた。
実咲は生徒会長という立場的に、1つの催しに肩入れしてるように見えるようなことは難しいみたい。
だけど、手つづきとかで、すごく助けてもらっている。
「それなら、ポスター制作は今日中に仕上げちゃいたいね。みんなに参加を考えてもらうなら、告知は早いほうがいいし」
「ポスター用の画用紙、もっと持ってきます!」
優月の提案に、奏が立ちあがる。
「場所は、高等部の体育館なんだよね?」
「そうだよ。今度の土曜日の、お昼から!」
12月25日より早いけど、当日だと予定が入っている人も多いだろうしね。
「でも、体育館がよく確保できたわね。部活で予約が埋まってるでしょ」
「それがさ、理央先輩が直接、いろんな部にいって、『交渉』して、まとめてきちゃったんだよねー。『いったいどんな魔法を使ったのか』って、詩織会長が頭かかえてたよ」
高等部の詩織会長が、理央先輩から話をきいたときには。
なんと、体育館を使う予定だった、すべての部から許可を得てあって、外堀が埋まったあとだったんだって!
「うわさどおりのすご腕なんだね……それで? パーティーに、定員はないの?」
「中等部からは30人ぐらいだよ。高等部と合わせて80人くらいまでって考えてるみたい」
「ずいぶんと、大規模なイベントになりそうね。ふらっとやってきて、そんなイベントのスタッフをたのんでいく、清瀬先輩のムチャぶりもすごいけど」
水夏が、あきれたような顔をしてる。
「ひきうけちゃうアスカちゃんも、アスカちゃんだよね」
「食事を出して、有志で出し物をやるだけのイベントだから、体育館に入れる人数なら、だいじょうぶだよ。問題は出し物のほうかなあー。あんまり日数ないし」
「…………どうせわたしたちも駆りだされるんでしょ?」
水夏は肩をすくめる。
「ありがと、水夏っ!」
わたしは、笑顔でお礼を言う。
「はい、はーい! わたしも出し物参加しますよっ!」と奏。
「わたしにも協力できることがあったらやるから、言ってね」
優月も、乗り気みたいで安心する。
「もちろん、2人にもお願いするよ!」
なにをやるかは、これからなんだけど。
とにかくいまは、参加者募集をしないとね!
なんだか、急に学園生活がさわがしくなっちゃった。
タキオンのことが頭をよぎると、胸がざわつくのは変わりないけど。
だけど、机いっぱいに広がった赤や緑を見ていると、不安まで上書きされていくみたいで――こういういそがしさは大歓迎だよ!
どれぐらい参加者は集まってくれるかな?
■
「はい、先輩。これが、中等部の参加者のリストです」
わたしは、参加の申しこみがあった生徒をリストにした紙を、テーブルにおく。
ここは高等部の校舎にある、怪盗部の部室。
わたしは放課後、クリスマス会の打ち合わせのために、ここにやってきた。
「いやあ、助かるなぁ」
受けとった理央先輩は、リストにパラパラと目を通すと、すぐにテーブルにもどす。
それもそのはず、理央先輩は前に、中等部をふくめた学園の全校生徒の顔と名前を、覚えてるって言ってた。
ってことは、リストの名前を見ただけで、どんな人がくるのかわかったってことなんだろう。
すごいなあ……。
「でも、紅月さんが、そういう書類を作れるのね」
部室にいた詩織会長が、意外そうな顔をする。
「わたしの力じゃないですよ、まわりが手伝ってくれたんです。そのほかのことも、色々」
リストについては、わたしが悪戦苦闘していたら、ケイがささっとパソコンで作り方を教えてくれた。
おかげで、見やすいリストを、かんたんに作れたんだよね。
「まわりを自然にまきこむところが、アスカの長所だね」
「あのぅところで……なんだか、詩織会長ばかりいそがしそうですけど、理央先輩はなにをしてるんですか?」
おもわず、わたしはじろりと見てしまう。
詩織会長の前には、つみあがった書類の束がある。
けれど、理央先輩の前にはさっきの、わたしがおいた参加者リストがあるだけだ。
「あはは。だって、ぼくができることは、もう終わっちゃったから。いまは詩織の仕事が終わるのを待ってるんだよ」
理央先輩はそう言って、にっこり笑う。
えええ……?
わたしが、つづけて詩織会長のほうに目をむけると、詩織会長が肩をすくめる。
「……本当なのよ。清瀬先輩は、なにもしてなそうに見えて、自分の仕事はあっという間に、しかも完璧に終わらせてしまうから。私もなにも言えないの。それに、これは生徒会の仕事だから、清瀬先輩に手伝ってもらうわけにはいかないし。私ができるようにならないと」
そう言う詩織会長の声には、理央先輩へのあきれと同時に、深い尊敬が感じられる。
う―――ん。さすがは、伝説の生徒会長。
その手腕は、まったくおとろえていないみたい。
「詩織だって、生徒会長をやっていれば、あっという間に要領がよくなるよ」
書類の山にかじりついている詩織会長を、理央先輩はやさしい目で見つめていた。
そんなふうに、あっという間に、日々がすぎていった。
とつぜん降ってわいた準備のいそがしさの中で、笑ったり走ったりしているうちに――気がつけば、もうクリスマス会の当日を迎えていたんだ!