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【先行ためし読み!】怪盗レッド29 第1回

1 変化の予感と、わるい予感?

 「うぅ……けっこう寒くなってきたなぁ」

 わたしは冷たい風に身をすくめてコートのえりを寄せながら、校門をくぐった。

 吐く息が白いし、足音は、校門の石畳に乾いた音を立ててる。

 12月に入ってから、春が丘学園も、いつもよりざわつきが大きくなった気がするなあ。

 この時期の学校って、いろいろなことが入れ替わるよね。

 まず3年生は、進路のことがあるし。

 受験をするなら、勉強だってある。

 夏休みの終わりに部長が代わらなかった部活は、このタイミングで交代するし。

 生徒会長選も秋にあったし。

 学校の中の環境が、どんどん入れ替わっていく予感が、ひしひしと感じられちゃう時期なんだ。

 それに、なんたって、高等部の3年生の先輩たちが!

 全員が、この春が丘学園からいなくなっちゃうんだよ!!

 その中には、あの、理央先輩や、怪盗部の先輩たちもいる。

 ……怪盗部、どうなるのかな?

 はじめて知ったときはドキドキしたけど。

 部がなくなっちゃうっていうのは、ちょっと……。

 けど、理央先輩のあとを継げるような子なんて、そうそういなそうだもんね。

 しょうがないのかなあ……。

 そんなことを考えながら、とぼとぼと校舎のろう下を歩いていると、目の前のほうから、実咲と詩織先輩がならんで歩いてくるのが見えた。

 2人は、なにか真剣に話しこんでるみたいで、わたしには気づいてない。

「おはようございますっ!」

 わたしは、詩織先輩にむかって、笑顔で声をあげる。

 つづけて「おはよ、実咲」と、実咲にもあいさつする。

「おはよう、アスカ。いま登校?」

「そうだよ。2人とも早いんだね。生徒会の仕事?」

「そう。また、いそがしくなりそうよ」

 詩織先輩はそう言いながらも、どこかうれしそうだ。

 いそがしいくらいが、好きなのかも。

「そういえば、また『詩織会長』、ですね、おめでとうございます!」

 そうなんだ。

 秋の生徒会長選で、詩織先輩は、高等部の生徒会長に選ばれていた。

 ほかの立候補者を、圧倒するほどの得票数だったんだって!

 さすが中等部で「アイスクイーン」なんて呼ばれてた、詩織会長だよね。

「ありがとう。……でも、あなたにその名を呼ばれると、中等部時代を思いだして、不吉な気分になるわね」

 と、詩織会長。

「えええっ、なんでですか!」

 わたしには、すご――――く、いい思い出だよ!?

 そ、そりゃ、顔をあわせるたびに、詩織会長から、なにか注意されていたような気が……しなくもないけど……さ。

「ふふっ、冗談よ、アスカ。これからもよろしくね」

 詩織会長は、クールに言う。

「もうっ」

 わたしは、ほおをふくらませて見せたあと、詩織会長と目を合わせて笑いあう。

 冷静沈着でまじめな「アイスクイーン」だって思ってる人も多いけど。

 本当は、けっこうお茶目なところもあるのが、詩織会長のすてきなところなんだよね!

「あの、ところで2人は、なにを話してたんですか?」

 この2人の組み合わせは、ちょっとめずらしいよね。

 学年がちがうし、実咲は中等部で、先輩は高等部だし。

「いま、『先輩』からアドバイスを受けていたのよ」

 詩織会長が、そう言いながら、実咲に目をやる。

 んんっ?

 詩織会長が、実咲のことを「先輩」と呼ぶって……???

「ちょ! 先輩だなんて、冗談はやめてくださいっ!」

 実咲があわてたように、両手をふっている。

 わたしが、首をひねっていると、詩織会長がおもしろそうに説明してくれる。

「ほら、氷室さんは、1年生のうちから生徒会長になったでしょう。でも、私は中等部では、2年生からだったから」

「なるほどー?」

 それで「先輩」か。

 たしかにそうとも言えるけど、もちろん冗談だよね?

 ……でも、まじめな詩織会長だから、そうとも言い切れないのがこわい。

「ちょっと、『なるほどー?』じゃないから、アスカ! ……いまはおたがいに、中等部と高等部の生徒会にいるでしょ。だから改めて、連携できることはしていきましょうって、話をさせてもらってたの!」

 そうそう。

 実咲も、秋の選挙戦でしっかり選ばれて、生徒会長の2期目に突入している。

 この2人が、それぞれ「生徒会長」として、こうしてならんでいる。

 たのもしいなあ。

 だって、だれよりも学校のことを考えてる人たちだって、わたしは知ってるから。

「どうしたの、アスカ。ニヤニヤして」

「わたしのよく知ってる2人が、生徒会長としてならんでるのが、うれしいなーって」

 わたしが答えると、実咲と詩織会長が、あきれたような顔を見あわせてる。

 あれ? わたし、なんか変なこと言った?

「わたしと詩織先輩をつないでくれたのは、アスカでしょ。そうじゃなければ、生徒会長っていう立場同士でしか、知り合えてなかったよ」

 実咲が、あきれたという顔をしている。

「そうね。プライベートで話すようになったのは、紅月さんがきっかけよ。あなたって、よく人と人を出会わせるから」

 詩織会長は、わたしに目をやって、ほほ笑む。

「ええっ? そうだっけ?」

 記憶は、おぼろげにあるけどさ。

 自分がきっかけだったのかは、ぜんぜん覚えてない。

 この2人を引きあわせようっ! なんて、思ったことはないはずだ。

「アスカらしいなあ」

「そうね。紅月さんは、変わらないわね」

 2人から、同時に納得されてしまう。

 む? ほめられてるん……だよね?

 ちょっと釈然としない気もするけど、そう思っておこう。


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