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ものがたり

【先行ためし読み!】最新・怪盗レッド24 第1回 実咲会長のシークレット企画!?


【レッドの実行役のアスカと、ナビ役のケイ。この2人だからこそ、できることがある!】

楽しい学園祭準備が、ちゃくちゃくと進む中……近所では、不気味な爆破事件がたてつづいていた。
その現場で、アリー先輩のすがたを見かけてしまったアスカは、胸さわぎが止められず…。
アスカとケイの「2人1組ならでは」の絆を感じる最新刊を、どこよりも早くためし読み!
(毎週木曜日更新・全3回)

【このお話は…】
弱気を助け、悪しきをくじく、正義の怪盗。
それが怪盗レッド!

アスカとケイは、まだ中学生だけど、2人1組で「2代目怪盗レッド」として活躍しているんだ!
運動神経ばぐつんのアスカが実行役で、頭脳派のケイが、計画を立てたり指示を出したりするナビゲーター役。

一度は、2人の手で追いはらった、世界的犯罪組織「タキオン」が、再び日本をねらっているらしい!?
そんなとき、同じ学校の先輩でもある緋笠アリー先輩が、タキオンのボス・ノアのふたごの妹だと知って……!?




プロローグ

   カチャカチャ
 部屋の中には、集中した表情で机にむかう、アリーのすがたがある。
「――――得意、ではない。けど、できなくはない」
 アリーは、ぽつりとつぶやく。
 机の上には、さまざまなかたちの細かい機械の部品がおかれている。
 アリーは真剣な表情で、その部品を手にとり、部品同士を組み合わせていく。
 アリーのすわるイスのうしろには、机の上におけない機械が、山のように積まれている。
 ときおりアリーは、うしろをふりかえると、山積みされた中から部品をひろいあげる。
 くりかえすうちに、はじめたころに暗かった窓の外に、今では太陽がのぼりはじめていた。
 1人きりの部屋に、
「大丈夫。きっと、うまくやれる……」
 アリーの小さなつぶやきが、もう一度響いた。



1 実咲会長のシークレット企画!?

 夏休みが終わって、秋のイベントが本格的になる、9月半ば。
 わたしは学校の校門をくぐって、校舎のくつ箱で、くつをはきかえる。
 あれ?
 上履きをはきながら、校舎の奥を見ると、生徒が壁ぎわに人だかりをつくってるのが見えた。
 なんだろう、あれ?
 お知らせの、掲示板があるあたりだ。
 掲示板には、部活の部員募集や、生徒会や学校からのお知らせとかが、よく貼られている。
 いつもは、みんなが集まってたりはしないんだけど。
 興味をひかれて、わたしも近づいてみる。
「わあぁ、楽しみだね」
「今年は、こんなふうにやるんだ」
「今年の生徒会、いろいろ企画してくるね。おもしろそう!」
「でも、ちょっと不安かも、他の学年となんて……」
 人だかりの生徒たちのざわめきから、いくつかの声をききとる。
 んんん?
 なんのことだろう?
 生徒会が、なにか発表したのかな?
 学校からの公式掲示板のとなりの壁に、大きなポスターが貼られている。
 そのお知らせを、みんなは見ているみたい。
「ちょっとごめーん」
 わたしは、人だかりをするするっとすり抜けて、先頭まで行く。
 壁に貼られている紙の前まできて、やっとなにが書かれているのか、見ることができた。
「え~と……『学園祭についてのお知らせ』?」
 壁に貼られた大きなポスターの一番上に、そう書かれている。

 今年の学園祭について、生徒会からお知らせです。

 学園と交渉し、今年の学園祭では中等部は、
 学年混合の、2クラス1チームで、出し物をすることになりました。
 同じクラスや学年だけでなく、
 ほかの学年といっしょにプロジェクトを進めることで、
 いつもよりも、さらにスゴイ企画が実現できるかもしれません。
 さらに今年から、
 これまでは高等部のみが出店できていた野外での屋台を、
 中等部のクラスも出せるようになりました。

 どのクラスがチームになるかは、組み合わせを決める抽選会を、後日、体育館で行います。
 結果をいち早く知りたい方は、抽選会を見にきてください。
 みんなで、最高の学園祭を作りましょう!
    春が丘学園中等部生徒会
 だって。
「うわあ~~~~~!」
 おもわず声をあげてしまう。
 実咲ってば、いつのまに!
 親友の実咲が、生徒会長なのに、ぜんぜん知らなかった!
 っていうか、実咲は生徒会メンバー以外、シークレットで企画を進めてたってことだよね。
 でも、当然か。
 正式に決まる前に、友達だからって、情報をもらせるわけがないし。
 学校に話を通して、おおきな変化を実現させたなんて、すごい!
 合同クラスイベントっていうのも楽しみだし、屋台が出せるのも、すごくおもしろそう!
 春が丘学園の学園祭は、もともと近隣でも楽しみにしてる人が多いくらい、盛りあがるんだ。
 1年生だった去年は、教室で喫茶店をやったんだった。
 高等部が、屋外に出店してたのが、気持ちよさそうだったんだよね。
 いままでは高等部だけだったのを、中等部にも広げたのは、かなり学園側と交渉した結果なんだと思う。
 実咲の実行力って、やっぱりすごいなあ!
 わたしは、盛りあがってる人たちの輪の外側に出る。
 すると、人だかりからちょっとはなれたところに、優月がいた。
 優月は友達で、わたしが所属する演劇部の衣装をつくってくれる、家庭科部のエースでもあるんだよね。
「優月、おはよう!」
 わたしはかけよって、声をかける。
「あっ、おはよ、アスカちゃん。ポスター見た? 今年の学園祭は、すごそうだね」
 優月も、お知らせの紙を読んだみたい。
「うん! 実咲がこんなことを進めてたなんて、ぜんぜん知らなかったよ!」
「クラス合同で出し物をするんだね、うちのクラスは、どこと組むことになるのかな?」
 優月が、ちょっと不安そうに言う。
 はじめてのことだから、たしかに、心配な気持ちもあるよね。
 でも、わたしはワクワクするよ!
「きっと、うまくいくって!」
「アスカちゃんが言うと、そう思えてくるかな」
 優月が、そう言って、気を取りなおしたようにほほ笑む。
「クラス組みの抽選会、いっしょにいく?」
「見にいきたいけど、放課後は演劇部の練習もあるから、どうかなぁ」
 学園祭では、わたしたち演劇部も、公演をする。
 去年は助っ人だったけど、今年は、わたしも正式な演劇部員として、公演に参加するんだ!
「わたしも、家庭科部があるからなあ。抽選会から、盛りあがれたらいいんだけど」
 優月が、残念そうな顔をしている。
 家庭科部も、演劇部の衣装もお願いしてるから、たぶん大いそがしだと思う。
「間にあったら見に行こう! 見られなくても抽選会のあとすぐに発表されるだろうし、本番は合同クラスになってからなんだから!」
 わたしが言うと、優月は「うん!」と大きくうなずく。
 でも、そっか。これでわかったよ。
 実咲が夏休み前から、いそがしそうだったのは、このせいだったんだ。
 だいぶ前から計画して、準備をしてきたんだろうな。
 いつのまにか、実咲も、詩織前会長に負けないぐらい、生徒会長が板についてきたよね。
 新しいこともどんどんチャレンジして、生徒からも支持されてるみたい。
 う~ん!
 実咲会長プロデュースの学園祭に参加できるのが、なんだかほこらしい。
 クラスの出し物に、演劇部の公演。
 ほかのクラスのお店も見に行きたいし。
 とにかく、学園祭を目いっぱい楽しんじゃおう!


2 胸さわぎの放課後

 ふうぅ……今日もいっぱい練習したぁ。
 放課後、演劇部の公演の練習を終えて、夕暮れの中、わたしは家にむかっていた。
 演劇の練習って、体力もつかうけど、レッドとしての訓練とは、ぜんぜん疲れ方がちがう。
 セリフを読んだり、演技する緊張感が独特なんだよね。
 体力には自信があるけど、演劇部の練習のあとは、疲労感があるぐらいだし。
 でも、今回の公演では、大事な役をもらえたし、はりきってるんだ!
 これまでにも、いくつか公演はしてきたけど、やっぱり学園祭は特別。
 去年の学園祭で、最初に演劇部とかかわることになった、っていう思い出もあるからね!
 あのとき、幸村先輩から声をかけられて、代役をすることにならなかったら、わたしが演劇部にかかわることはなかったと思う。
 たいせつなきっかけだったんだ。
 そして、今回は去年とはちがう。
 最初からわたしの役が決まってる。
 しっかり練習して、その成果を見てもらう。
 去年より、不安も、楽しみも、大きいよ……!
 そんなことを考えながら、歩道を歩いていると――。
   パンッ!
 んっ? なに、今の音……。
 花火にしては、破裂音が大きい。
 拳銃とかではないと思うけど……。
 ついそんな、物騒なことが思いうかんでしまう。
 わたしは、あたりを見まわすけど、音がした場所はわからない。
 このあたりの道って、入り組んでいて、空き家とかもあったりで、人気がないんだよね。
 そのせいか、音をききつけた人が、建物から出てくる気配もない。
 あっちかな?
 わたしは、破裂音が聞こえた方向にあたりをつけ、走りだす。
 人とは、ぜんぜんすれちがわない。
 あまりにまわりの様子が変わらないから、あの音はわたしの気のせいだったのかもって、かんちがいしてしまいそう。
 ううん。でも、まちがいなく音はしてた。
 細い道を走りながら、何度か曲がる。
 古びたビルがならび、曲がっても曲がっても似たような景色で、気をつけていないと迷っちゃいそうだよ。
「どこだろう……?」
 だいぶ移動したけど、破裂音がした場所は、見つからない。
 破裂音も一度だけだったし、とくに痕跡が残ってないのかもしれない。
 なにか、手がかりがあれば……ん?
 立ち止まって考えていると、一瞬、空気の中に、かすかに焦げたようなにおいがあった。
 こっちだ!
 わたしは、においをたよりに、ダッシュで道を左に曲がる。
 そのまま進もうとして、わたしは思わず足を止める。
 あれって……。
 道を曲がった先に、遠ざかっていく細いうしろすがたがある。
 銀色の光みたいな、髪がなびいていた。
 あの特徴的なうしろすがたは。
 ――アリー先輩?
「ア……」
 わたしは声をかけようとしたけど、すぐにアリー先輩は角を曲がって、すがたが見えなくなってしまう。
 わたしは、なんとなく、キョロキョロとあたりを見まわす。
 このあたりって、アリー先輩が住んでいるところとはちがう方向だよね。
 家の場所は知らないんだけど、住んでいる地域だけは教えてもらったことがある。
 なんで、こんなところにいたんだろう?
 ま、いいか。
 用事があっただけかもしれないし……。
 とりあえず、さっきまで追っていた、破裂音の現場にむかおう。
 空気の中に、かすかに残ったにおいをたどって道を進むと、少し開けた道に出た。
 その道ぞいに建つ5階建てのビルの壁のそばで、数人の人が立ち去ろうとしているのが見える。
 あっ、あそこかな?
「あの、なにがあったんですか?」
 わたしは、立ち去ろうとしていたスーツすがたの若い男の人に追いついてたずねる。
「いや、なんでもなさそうだよ。破裂したような音がしたから気になって出てきてみたら、ここに焦げあとがあってさ。いたずらで、だれか爆竹でもしたのかもな。特になにもなさそうだから、もどるところさ」
 男の人が、首をかしげながら答える。
「そうですか。ありがとうございます」
 わたしはお礼を言って、解散する人に逆行して、壁の近くにいく。
 ほんとだ……。
 ビルの壁に、30センチぐらいの、丸くて黒い焦げあとがついている。
 音の大きさから、爆弾をイメージしちゃったけれど、そういう感じでもなさそう。
 男の人が言っていたみたいに、爆竹とか花火とか、そんなもののあとにも見える。
 人のすぐそばでおきた破裂なら、ケガしていたかもしれないけど。
 ただのいたずらなのかな。
 もし、だれかのいたずらなら、いまのこの様子をどこかから見て、笑っているかも……。
 と思いながら、さりげなくあたりを見まわしたけど、周囲の建物の上階までながめても、とくに人かげはない。
 気のせい……?
 おきたことを考えれば、ただのいたずらで片づけられる。
 だけど、この壁の焦げあとを見ていると胸がざわざわするような、なんか嫌な感じがするんだ。
 勘でしかない。
 でも、こういうときのわたしの勘は、放っておかないほうがいい。
 よし! 決めた。
 帰って、わたしが見たことぜんぶ、ケイに相談してみよう!
 わたしは、焦げあとに背をむけると、走って家にむかった。

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