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ものがたり

【スペシャルれんさい】『星のカービィ メタナイトと魔石の怪物』第1回 メタナイトの新たな任務


メタナイトが、海の怪物・キングフロッツォ討伐に挑む! 好評発売中のつばさ文庫『星のカービィ メタナイトと魔石の怪物』は、メタナイトが主人公の外伝第4弾!! 大人気外伝のためし読みを、今すぐチェックしよう☆ 

◆第1回
戦艦ハルバードで、次の任務へ向かうメタナイトとメタナイツたち。
これから挑むのは、とてつもなく強くて、しかもおいしそうな、巨大な怪物……!?
大海原をかけめぐる、新たな冒険の始まりです! 
 

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メタナイトの新たな任務

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 戦艦ハルバードのロビーは、いつにない緊張感につつまれていた。

 バル艦長が、メタナイツたちを見回して、重々しく告げた。

「次の任務が決まった。久しぶりの大仕事だ。みな、心してかかるように」

「はっ!」

 メタナイツたちは、力強く声をそろえた。

「任務地は、惑星マリーノ。表面積の八割が海という、海洋惑星だ」

 大きなスクリーンに、青い星の映像が映し出された。

 バル艦長は、けわしい表情で続けた。

「見てのとおりの、美しい星だ。漁業がさかんで、古くから、さまざまなシーフード料理で知られている。特に名高いのは、マリーノでしかとれない貴重な『マリーノガニ』というカニを使った料理だ。マリーノガニのパスタや、マリーノガニのピラフ、マリーノガニのグラタンなど、名物料理の数々は、一度食べたらやみつきになると大評判! 首都マリノア市は、『シーフードの聖地』とまで言われる、美食の都! 数あるレストランの中には、全銀河シーフード・コンテストで、みごと優勝にかがやいた名店も……!」

 バル艦長は興奮し始め、声がどんどん大きくなった。

 メタナイトが、静かに止めた。

「バル艦長、われわれは観光旅行に行くわけではない。任務について話したまえ」

「し、失礼いたしました! 惑星マリーノでの任務は――怪物退治だ」

 アックスナイトが質問した。

「海の怪物、ということですか?」

「うむ。われわれのねらいは、キングフロッツォという名のタコだ」

「……え? タコ?」

 メタナイツたちは、ざわめいた。緊張がほぐれて、笑いがもれた。

 ジャベリンナイトが、ニコニコしながら言った。

「久しぶりの大仕事なんて言われたから、どんな手ごわい敵かと思いましたよ。まさか、タコ退治とは!」

 トライデントナイトも、笑いをこらえて言った。

「よっぽど凶悪なタコなんですか? 想像がつかないなあ」

 メイスナイトが、調子に乗って言った。

「ワシのメイスなら、一撃だス! おさしみにしてやるだス!」

「いやいや、タコは、おでんに入れると最高にうまいんだぜ」

「オレは、バターしょうゆ炒めも好きだな! おしょうゆの、こげた香りが、じゅわあっとタコにからんで……」

 盛り上がるメタナイツたちに、メタナイトがひややかな声で告げた。

「キングフロッツォは、諸君らが考えているような、なまやさしい相手ではない。これまでに、何人もの冒険者たちが討伐(とうばつ)をこころみたが、だれ一人として成功していないという強敵だ」

 メタナイツたちは、静まり返った。

 バル艦長が言った。

「聞くところによると、キングフロッツォは、船のイカリをかんむりに仕立ててかぶっているそうだ。その姿は、まさに、海の王と呼ぶにふさわしいということだ」 

「船の……イカリを……かんむりに!?」

 メタナイツたちは、顔を見合わせた。

「どれだけデカいタコなんだ!」

「大きさもだけど、頭の良さや器用さにもおどろくよ。かんむりを作るなんて、ふつうのタコにできることじゃないぜ」

 メタナイトが言った。

「その通り。ヤツは、ひとすじなわでは行かない怪物だ。加えて、私たちは、海の怪物との戦いにはなれていない。困難な任務になるだろうが――決して、不可能ではない」

 メタナイトの声は、いきいきしていた。

 敵が強ければ強いほど、闘志(とうし)を燃やす。それがメタナイトなのだ。

 部下たちも、うれしそうに声を上げた。

「もちろんですとも! われわれに、たおせない敵なんていません!」

「待ってろ、キングフロッツォ! 特製おでんの具にしてやるぜ!」

「ワシはやっぱり、おさしみがいいだス~!」

 バル艦長は、満足げにメタナイツを見回して言った。

「これより、惑星マリーノに向かう。首都マリノア市にて、情報収集をおこない、具体的な討伐作戦を立てる」

「はっ!」

 メタナイツたちは張り切って、姿勢を正した。

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 さて、数日後。

 メタナイト一行が到着したのは、惑星マリーノの首都マリノア市。まっさおな海に面した、美しい港町だ。

 バル艦長は、ソワソワとあたりを見回して言った。

「シーフード料理のレストランが、たくさん並んでますな! 腹がへっては戦はできぬと言いますし、まずは腹ごしらえをしましょう。名物のマリーノガニ料理を……」

 メタナイツたちも、ウキウキしていた。

「オレは、カニピラフが食べたいな」

「カニぞうすいも、うまいぜ」

「こんなにたくさんレストランが並んでると、迷っちゃうな」

 一行が、メイン通りを歩いていると。

 背後から、すっとんきょうな声が聞こえてきた。

「うわあ、海のにおいがする! おいしそうな、においだよ!」

「浜辺で貝を焼いてるんだわい。うひょー、たまらん!」

 メタナイトたちは、ぴたっと足を止めた。

 アックスナイトが、うろたえて言った。

「え!? こ、この声は、まさか……!」

 メタナイツたちは、口々に叫んだ。

「カービィとデデデ大王!? なぜ、ここに!?」

「まさか、オレたちをつけて来たのか? なんのために……」

「落ち着きたまえ、諸君」

 メタナイトは、押し殺した声で部下たちに言った。

 しかし、彼自身もちょっと落ち着きをなくしていた。大事な任務の前に、いちばん会いたくない二人の声を耳にして、動揺(どうよう)している。

「なぜこんなところにいるのかわからんが、とにかく、やつらに関わってはならない。無視するぞ」

「はっ!」

「どこかのレストランにかくれましょう」

 一行はうつむいて、足を速めた。

 けれど。

「あー、メタナイト!? メタナイトだー!」

「むむ? 部下を引き連れて、観光旅行か? のんきなヤツらだわい」

 さっそく、見つかってしまった。

 一行は駆け出そうとしたが、もうおそい。

 カービィは、うれしそうにすっ飛んできて、メタナイトたちにまとわりついた。

「わあい、ぐうぜんだね! こんな場所で、メタナイトたちに会えるなんて! メタナイトたちも、カニ料理を食べに来たの?」

「カービィ、放してくれないか。われわれは、君らのように遊びに来たわけではないのだ。大事な任務があり……」

「にんむ? ぼくらもだよ! コックカワサキのお手伝いをしてるんだ!」

 その言葉どおり、カービィとデデデ大王を追いかけて、ワドルディ隊とコックカワサキが走ってきた。

 コックカワサキは、息を切らせて叫んだ。

「メタナイトさん!? みんなそろって、どうしたんですか? ひょっとして、みなさんも、料理修行の旅に?」

「料理修行……だと? どういうことだ?」

 メタナイトは、逃げるのをあきらめて、たずねた。

 コックカワサキは、あいそよく答えた。

「ぼく、前から、惑星マリーノに興味があったんです。なにしろ、シーフード料理の聖地とまで言われてる星ですからね! 見てくださいよ、これ!」

 コックカワサキが差し出したのは、一冊のガイドブックだった。

 表紙には、カニピラフ、カニのパスタ、カニのグラタンなど、おいしそうな料理の写真がたくさん散りばめられている。

 バル艦長が、思わず叫んだ。

「おお、これが有名な、マリーノガニ料理! 全銀河シーフード料理コンテストで優勝したという……!」

「そうです、そうです。このガイドブックを見ていたら、もう、がまんできなくなっちゃって。シーフード料理修行の旅に出ることにしたんです。でも、ひとりじゃつまらないから、カービィとデデデ大王もさそって……」

「さそうな」

 メタナイトは、けわしい口調で言った。

「修行とは、孤独(こどく)なものだ。だれかをさそってするものではない」

「メタナイトさんの修行とはちがうんですよ。料理は、楽しくやらなくちゃ」

「そうだよ!」

 うれしそうに叫んだのは、カービィ。

「ぼく、コックカワサキの修行のお手伝いをするために、いっしょに来たんだよ。カニチャーハンもカニグラタンもカニおにぎりもカニだんごもカニパフェも、てってー的に修行するんだ!」

 カービィは、今にもよだれをたらしそう。

 デデデ大王が、カービィを押しのけて言った。

「オレ様もだ! この星にあるすべてのレストランを制覇(せいは)し、プププランドに至高のカニレシピを持ち帰るぞ!」

 けれど、大王の足元で、バンダナワドルディが心配そうに言った。

「でも、大王様。マリーノガニのメニューを出しているレストランが、見当たらないのですが……」

「なに? そんなわけがあるか。この星の、いちばんの名物料理なんだぞ」

「そうなんですけど……」

 その間に、メタナイツたちも、すばやく周囲のレストランをチェックしていた。

 どの店も、店の前に写真入りのメニューや、料理のサンプルなどをならべている。

 魚のムニエル、エビフライ、貝のスープ……など、おいしそうなメニューばかりだが、名物のマリーノガニを使った料理は、どこにも見当たらなかった。

 バル艦長が、小声でメタナイトにささやいた。

「なんと、異変が起きているようですな。もしや、キングフロッツォのせいで……?」

「うむ。調べる必要があるな」

 メタナイトはうなずき、カービィとデデデ大王に向かって、そっけなく言った。

「私たちは、大事な任務におもむく。君らとは、ここでお別れだ」

「えー? にんむって、なに?」

「君らに話すことは何もない。さらばだ」

 メタナイトは、くるっと背を向けて歩き出した。バル艦長とメタナイツも彼に続く。

 デデデ大王が、ブツブツと言った。

「まったく、感じの悪いヤツだわい! せっかく声をかけてやったのに」

 カービィは、ちっとも気にしていない様子で言った。

「メタナイトだって、おなかがすいたら、ぼくらといっしょにお食事したくなるよ。それより、ぼくらは、ぼくらのにんむをやろう!」

「うむ! まずは浜辺だ! 行くぞー!」

 カービィとデデデ大王は、メタナイトたちとは逆の方向へ走り出した。

「あ、待ってください、大王様! カービィ!」

「ぼくは、屋台じゃなくて、全銀河シーフード・コンテストで優勝したレストランの料理を研究したいんだけど……おーい、待ってよ!」

 ワドルディ隊とコックカワサキも、急いでカービィと大王を追いかけた。

     


遠い惑星までやってきて、カービィ一行とまさかの出会いを果たしてしまったメタナイト。
カービィに別れを告げて、立ち去っていったけれど……もちろん、これでお別れになるはずもなく!? 気になる続きは、次回「怪物キングフロッツォ」でチェックしてね! (4月10日公開予定)



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